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青年を使い捨てにする社会
将来展望ない不安定雇用
               個人努力では解決せぬ    2006年6月30日付

 「ニート」「フリーター」といった言葉が、青年にとってはまるで悪いことでもしているような意味合いをもって氾濫している。「若者がしっかりしていないからだ」と、個人責任のようにいわれるが、働こうにもまともに職がないのだ。正社員でも非正社員でも低賃金、長時間労働で「使い捨て労働」の社会の実態にぶつかるのだ。これを自分個人ではどうすることもできない壁が立ちはだかっている。青年が親の世話にならなければ生活できず、結婚もできず、子どもも産めないという現実が広がっている。、これは青年にとって残酷なだけではなく、日本社会が成り立っていかなくなっていることを示している。青年の実情を聞いてみた。

 大学出たけど派遣やバイト
 専門学校を中退して下関に戻って仕事につこうとした23歳のA君は、職安に何度も足を運んで水産物の貿易会社、自動車工場、石材屋など何社もの面接を受けた。2社は門前払い、4社は電話の応対を理由に採用されなかった。たいした理由もなく蹴られるという苦い経験を何度もした。「男は車の免許だけを持っていてもつける仕事がない」と語る。大手運送会社にバイトで入ると、引越し作業を担っているのは派遣社員ばかりだった。仕事を探すかたわら派遣会社にも登録し、事務所移転後の片付け作業で1日6000円で働いた。
 最終的には知りあいの紹介で水産関係の会社でアルバイトとして働きだしたが、「下関は仕事がなく、あっても契約社員などが多い。求人票を出していても採用しない会社もある。きちんと働ける仕事をつくってほしい」と実感をこめて語る。まわりの友だちを見ても、仕事をする意志はあるが就けない人が多い。
 下関でも、大学を卒業してコンビニやガソリンスタンドでアルバイトをする若者が多い。新卒採用を逃せば、雇用状況は一段ときびしくなる。コンビニでバイトをする23歳の店員は「大学を卒業してまだまともな仕事につけたことがない」と悔しい表情。バイトをしながら職安に行ったり、求人雑誌で探したりしている。合同企業説明会などに参加し、最近も福岡や山口市まで面接を受けに行ったが、「不採用」の通知が送られてきた。
 なぜ落とされるのかわからない。「大学をだぶったのがいけないのだろうか。何回も落とされると受けるのが怖くなる。しかしまた企業説明会があるから参加する」と、自分自身を励ますように語る。「親は“とにかくきちんと仕事についてくれ”という。自分もそのつもりはある。家を出て親から自立したい」と苛立ちも見えた。
 そして1度仕事をやめたり、コンビニやスタンドのアルバイトからぬけだそうと仕事を探してもあるのは契約や派遣などの非正規雇用の「使い捨て労働」ばかりだ。
 下関市内にある、携帯やパソコンの部品などの精密機器製造工場は、労働力の中心は20代から30代の若者だ。そのほとんどが契約社員、期間社員。2交代制勤務で日勤は午前7時半から午後7時半まで、夜勤は午後7時半から午前7時半までの12時間労働。入社して半年ごとに契約更新の用紙が渡される。会社の雇用期間の限度は3年と決められており、その時点で会社に必要がなければ切り捨てられる。時給1200円、時間外手当、休日手当、夜勤手当などで給料は月25万円以上。
 しかし2交代制は身体が慣れるまではきつく、身体のリズムをくずすので、入れ替わりが激しい。毎週のように新しい契約社員が10数人入ってくる。「今はいいけど、でもずっと契約社員では生きてはいけない。早くきちんとした仕事を見つけないといけない」と23歳のB君は語る。高校を卒業して地元を離れて進学し就職したが、やめて下関に帰ってきて、入ったのがこの会社だった。きちんとした仕事を見つけたいがなかなか見つからず、焦る気持ちが顔にも出ていた。

 30歳で体ボロボロ トヨタ系の企業・限度こす労働現場
 下関市内のある派遣会社では、登録会員の4割を10代から20代の若者が占めている。“稼ぎたいときに稼げる”と宣伝しているが、仕事に呼ばれないときはまったく呼ばれない。日雇いのような事務所の片付け作業や製造工場など、1日何千円かで仕事が入ってくる。
 派遣に登録する若者は、仕事が見つからないためつなぎで登録する人や、いったん働いてやめた人が多い。22歳のC君は、以前水産会社の15時間労働に耐えられずやめた。だが車の免許がないためなかなかつける仕事がない。今は派遣登録して午後5時から10時、11時まで水産市場の機械そうじの仕事をする。保険をかけていないため病気をしても病院に行かれず、車の免許をとるお金もない。「なぜ就職できないのだ」と厳しい現実に直面している。
 派遣労働による「人の使い捨て」は急速に伸びている。アメリカの構造改革要求で労働派遣法が86年に施行され、13業種で人材派遣が認められた。その後96年、99年に改定され、04年に製造業への派遣労働を解禁した規制緩和によって、派遣労働者が激増している。99年度に106万人であった派遣労働者は、03年度には236万人と2倍以上にふえ、05年度には派遣労働を使っている企業は38.5%にのぼり、1つの製造業現場に3、4社の派遣会社からの労働者が働いている。
 この政策によってトヨタやブリヂストンなど大企業は派遣、契約、期間工をふやし、外国人労働者もいれて、労働者を酷使しばく大な利益を上げている。トヨタに入れば身体がボロボロになるまで酷使され、30過ぎまでしか身体が持たないといわれる。 
 マツダの下請工場の経験が語られた。ほとんどパート、アルバイトで主婦層が圧倒的だ。就業時間は朝8時〜夕方5時、休憩は昼に40分、10時と15時に10分ずつの計1時間だ。残業代は半時間でつくが、タイムカードを29分で入れれば、1分足りないので手当はつかない。同じく朝、1分でも遅れれば8時間労働に満たないと見なされる。仕事は車のエンジン内部の部品製造で流れ作業。2b以上のパイプをクリップのように曲がったもう1本のパイプにつけて1つにする“圧入”という作業がある。その後、別のパイプを2本つけたり、切ったり曲げたりという作業が多くの人の手を通ってくり返される。1時間に約80本、1分間に1本以上の早さで流さなければ間に合わない。
 これだけ働いて正社員の給料は13万〜14万円。ここから保険、年金、親睦会費など引かれものが3万円近くある。さらに会社で弁当を買えば月に約7000円、手元に残るのは10万円を切る。これから携帯代や月月の車のローンなど払えば、「1人暮らしどころではない、手元に残るのはスズメの涙。マツダ本社はいらなくなった下請会社は切り捨てる。下請会社は従業員を使い捨てる」と正社員で働く23歳Cさんは語る。正社員でも使い捨て労働は同じだ。

 非正規雇用は57% 20代、30代の世代・完全失業率は8.7%
 若者が自分の仕事に将来を託すことができないのが現実だ。食料品関係でも、小売の取引先がどんどん自己破産していき会社が規模を縮小せざるをえない。病院に勤めていても診療報酬の改定で患者にはしてあげたい治療もできず、病院経営にも大きな影響を及ぼしている。介護現場には若者も多いが、国の介護保険制度の改悪で介護従事者の地位が引き下げられている。将来にわたる職の保障がない状態が、若者のなかで増えている。
 05年の日本の若年層(15歳から34歳)の総人口は総務省の調べで1098万6000人。学生や主婦などを除いた労働力人口は663万7000人で、そのうちの就業者は634万3000人となっている。完全失業者数は29万4000人で、とくに15歳から24歳までの完全失業率は、8.7%と全体の完全失業率4.4%の二倍となっている【表参照】。
 しかも20代、30代の働く若い世代の多くがアルバイトや派遣、契約などの不安定な使い捨て雇用しかなく将来の展望が描けない。総務省の調べでは05年度の15歳から34歳までの就労者634万3000人のうち、パート、アルバイト、派遣社員などの非正規雇用の労働者が360万人と全体の57%を占めている【表参照】。高校、大学を卒業しても自立できるまともな仕事に就けないのだ。
 青年の半数以上が非正規雇用の不安定な状態、正規雇用といってもいつ体を壊すかもしれない殺人的労働。将来の生活の展望はもてないし、結婚し子供を産むという、人間社会を維持していく根本条件すら保障されていない。その一方では、ホリエモンとか村上とかボロもうけするものがおり、アメリカには四兆円も寄付する金持ちがいる。青年に希望がない社会は成り立つわけがない。

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