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世界を震撼さす破綻の連鎖
欧州・マネーゲームのツケ人民に
              国家財政食い物にし破局へ   2011年10月26日付

 リーマン・ショックから3年がたったなかで、ギリシャを中心にした「欧州ソブリン(国家財政)危機」が深刻な様相を見せている。今年8月にはアメリカが債務上限をめぐってデフォルト(債務不履行)騒ぎをやるなど、いまや資本主義各国がどこも国家破綻の危機に瀕し、あるいは道連れになるまいと慌てまくって衰弱しきった姿を露呈している。サブプライムローン破綻から翌年のリーマン・ショックを経て、その後は公的資金注入によって、金融システムの破局をごまかしてきた。ところがアメリカを中心とする金融機関が息を吹き返したかわりに、今度はツケを肩代わりした各国の国家財政がパンク。国債を引き受けている金融機関も危機になっている。そして米日欧に中国、ロシアなどの争奪が激化し、世界各国で共通して緊縮財政など人民に犠牲を強いて矛盾が先鋭化している。
 
 日本から巻き上げられる資金

 昨年春に表面化したギリシャ危機を巡って、この間、各国の通貨当局が「金融恐慌」押さえ込みに躍起になってきた。ECB(欧州中央銀行)やIMFは度重なる資金供給をおこない、ギリシャのデフォルト状態を包み隠しながら延命措置を講じてきた。しかし、事態は終息するどころか、アイルランドやポルトガルにも財政破綻の危機が波及。スペインやイタリアといった経済規模の大きい国の長期金利も急上昇するなど、ギリシャと関係する国国がドミノ倒しのように傾きはじめ、ドイツやフランスも大慌てでソブリン危機回避に奔走することとなった。
 10月にはギリシャ国債を大量に保有していた大手銀デクシア(仏ベルギー系)が破綻。ベルギー政府やフランス政府が公的資金を注入して解体する事態になった。ギリシャが債務不履行(デフォルト)に陥ると、巻き込まれて心中する運命にあるのが、国債保有などの形で資金をギリシャ政府へ貸し付けていた欧州の主要な銀行群である。
 その金額は2010年段階でBNPパリバ(フランス)が50億。、ギリシャ・ナショナル(ギリシャ)が129億。、デクシア(ベルギー)が35億。、ソシエテ・ジェネラル(フランス)が27億。、ドイツが15億。、RBS(イギリス)が12億。、クレディ・アグリコル(フランス)が7億。、ウニクレディト(イタリア)が6億。、サンタンデール(スペイン)が2億。、バークレイズ(イギリス)が1億。と、主立った10銀行の貸出額だけでも284億。(約3兆円)に達している。
 ドイツやフランスはじめ欧州各国が慌てているのは、ギリシャがデフォルトすると南欧各国にも危機が飛び火しかねず、国家破綻が起きるたびにこれらの金融機関が保有している国債も紙屑となって焦げ付き、複雑に絡み合った金融システム破綻の余波が自国に及ぶためだ。前述の10銀行が、ギリシャも含めて財政破綻が問題になっているポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアの五カ国に貸し付けている総額は、2167億。(約22兆9700億円)にもなる。
 なお、日本の銀行や生損保の大手金融九社もギリシャやポルトガルなど南欧の重債務五カ国向けの投融資残高が約2兆8700億円に達することが明らかになっている。
 欧州各国は「管理デフォルト」といってギリシャの債務を削減し、銀行の資本を公的資金によって増強する方向に進んでいる。ギリシャ国債を買っている金融機関に元本を50〜60%減らさせて債権放棄を求めるというもの。減損させると金融機関も巨額の損失をこうむるとして、穴埋めのために公的資金を最大で1000億。(10兆6000億円)投じることも打ち出した。EUでは欧州金融安定化基金(EFSF)から公的資金を注入する仕組みになっている。その金は各国の政府保証付き債券であって、実質的に国債発行(借金)で借金を膨らませてまかなう格好になる。財政危機で恐慌状態になっているのに、それを財政支出で乗り切ろうというわけで、ますます危機は深まらざるを得ない。
 ギリシャ国内では超緊縮財政がしかれ、国民の反発が高まっている。若年層の失業率は40%を超え、仕事はないのに税金は跳ね上がる。金融機関や富裕層がバブルを謳歌した後の尻ぬぐいを国民に強いることへ怒りが爆発し、デモやゼネストといった抗議行動に発展している。

 円買いで超円高現象に 債務棒引に動く米国

 「欧州ソブリン危機」はヨーロッパに限った騒ぎではなく、世界同時株安がじわじわと進行しはじめた。インドやブラジル、中国といった新興国でも通貨安(平均して2割下落)と株安が進み、夏場以降に急速な勢いで資金が逃げ始めた。欧州の銀行が手持ちのドル資金が足りないために資金を引きあげたことが要因とされている。数カ月前まで、欧米の株式市場や通貨市場から逃げてきた投機マネーの流入によって通貨高で頭を悩ませていたと思ったら、今度は90年代末のアジア通貨危機再来にもなりかねない、いっきに資金引きあげという事態へ急展開している。
 世界市場では投資信託やREITも収縮し、金や石油といった商品市場からもマネーが引き始め、ファンドも業績悪化の一途をたどっている。世界の投資マネーはヘッジファンドからも資金を引きあげ始める様相となった。そして向かった先が円買いで、超円高現象が起きている。世界的に見て通貨が上昇しているのは日本だけで、1000兆円近い債務を抱えていながら、しかも財政支出をともなう東日本大震災に見舞われているなかでも、「他よりはリスクが少ない」「安全資産」などといって投機マネーが張り付いている。
 この最大の要因はアメリカで、FRB(米連邦準備制度理事会)が途方もなくドルを刷り散らして市場に注入し、公定歩合を段階的に引き下げてきたこと、供給量が増えるおかげでドルの価値が下がり、ドル不信、あるいはユーロ不信とあいまって日本の円高につながっている。世界各国は輸出産業などにテコ入れして経済のカンフル剤にしたい、内需を喚起したい願望から意図的に自国通貨の切り下げ合戦をしてきた。このなかで、ヘッジファンドが便乗して円買い(円高)の動きをとり、円高が最高値に達したところで決済して売り抜けば、ボロもうけになる関係がある。
 また日米関係においては円高で債務の棒引きがやられている。日本政府や金融機関が保有している米国債は数百兆円にものぼる。ドル安になればなるほど、ドル紙幣や米国債の「資産」価値は目減りし、アメリカの金融バブルの原資として巻き上げられた挙げ句に紙屑にされることとなる。
 こうして日本国内の輸出企業の収益低下を見込んだ株安も連鎖反応で進み、海外移転に拍車をかけ、国内産業の空洞化、失業、就職難をひどくする要因になっている。日本政府も売り払えば数百兆円にもなる巨額の米国債を抱えたまま目減りさせ続け、大企業は二五〇兆円もの内部留保を蓄えておきながら、東北大震災の復興資金を出し惜しみ、緊縮財政や増税に舵を切るというデタラメさが暴露されている。そしてアメリカが死にものぐるいで市場独占を企んでいるTPP路線を突き進んでいる。国民の心配をせずに万事アメリカの指図で動く政府・財界の売国ぶりを見せつけるものとなっている。

 より深刻な破綻隠せず リーマン破綻後拍車

 2007年のアメリカを震源地にしたサブプライムローン破綻から4年。翌年のリーマン・ショックから三年が経過した。暴走してきたマネーゲームによって世界経済が震撼した後、アメリカやEUはじめ先進各国は量的緩和や金利引き下げ、中央銀行による国債買い取りなど、国家財政にたかりながら延命を図ってきた。その結果、金融危機からついに国家破産の危機へと向かい、各国で景気後退があらわれ、米日欧間の犠牲転化の争奪が激化。いよいよ世界恐慌への本格的な突入が避けられない情勢になっている。
 このなかで、イラク、アフガンに続いてリビア侵攻が起き、米欧帝国主義が死にあがきのような資源争奪を繰り広げ、暴れ回っている。民主化を掲げて戦争を仕掛け、指導者を殺し、一つの国の統一を破壊して大混乱に陥れ、欧米企業が好き勝手に利権を強奪していく。各国の国民経済なり政治的統一なりはどうでもよく、自分たちがもうければよいという帝国主義の凶暴さを暴露している。
 世界恐慌の導線になったサブプライムローン証券の破綻は、70年代ニクソン・ショックによる金ドル交換停止以後の新自由主義、金融自由化経済の破綻であり、世界各地にバブル経済を起こし、架空の需要でドル支配を謳歌してきたアメリカの破綻にほかならない。ニクソン・ショックから後、金融と通信の技術革新を武器にして世界に新自由主義市場の拡大をはかり、サブプライムローン証券に象徴されるイカサマ金融で世界中の富を強奪してきた。反社会的な金融の論理で産業は支配され、人間性も社会性も無視した大競争が強いられ、奴隷的労働と失業、飢餓人口、貧困人口が増大した。
 世界中が貧乏になっていくから消費需要がなく、買い手がいないから、最終的にアメリカ本国でITバブルをひねり出し、それが破綻してイラク戦争にのめり込む過程で、住宅ローンバブルの借金需要を創出し、すべてがパンクして資本主義経済はガタガタに崩壊を始めた。
 リーマン・ショック後は、天文学的な財政出動によってしのいだが、今度はより深刻な国家破産、破局へと突き進んでいる。金融独占資本が引き起こした大恐慌・大不況で経済は回らず、犠牲転嫁された人民はどの国でも生きていけない。「リビアがかわいそう」では済まず、他人事ではない困難が万国共通となっている。
 野田政府のTPP参加、大増税などの姿勢は、アメリカとそれに隷属する日本の財界の要求である。衰退著しいアメリカは日本の富を奪い取ってきたが、TPPによる全面自由化で根こそぎ日本市場を奪い取ろうとしている。日本社会の崩壊と勤労人民の生活の困難は、日本だけではなく万国共通の問題となっている。
 事態の進行は、このような金融投機資本の支配のもとでは世界が成り立たないことをあらわしている。資本主義も極限まで進み、資本主義であるが故の世界の崩壊となってあらわれている。
 いずれにしても社会を成り立たせる原動力は生産活動であり、労働者をはじめとする生産を担う働く人民が、社会の公益を代表して、共同して社会を担う、そういう力を大結集し、世界各国の人民と団結して国際金融資本の支配とたたかうことにしか展望はない。


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