トップページへ戻る

先行して進む日米軍事一体化
安保法制後付けで体制整備
                鉄砲玉にされる自衛隊      2015年10月26日付

 「邦人の生命を守る」「国を守る」と叫んで、「安保関連法制」を強行成立させた安倍政府が、自衛隊に集団的自衛権を行使させる参戦体制を強力に具体化している。自衛隊の戦地投入を想定した訓練をくり返し、南スーダンに派遣した自衛隊に「駆けつけ警護」の任務を加えることを検討し武器開発を促進する「防衛装備庁」を発足させた。安倍政府は登場以来、秘密保護法、日本版NSC設置法など歴代政府ができなかった戦時立法成立を強行してきたが、法律に先行して実態はすでに進行している。

 米軍の身代わりとして戦地へ

  昨年から自衛隊と米軍が頻繁に共同訓練をくり返している。戦斗訓練や銃撃訓練など訓練内容は明らかに集団的自衛権行使、すなわち米軍の戦略にもとづき、自衛隊を戦時動員する訓練へ傾斜している。
 今月、中国地方で実施した日米共同警護出動訓練も、自衛隊が岩国基地や川上弾薬庫など米軍施設を守る内容だった。「テロ対策」で自衛隊が米軍基地の防衛で出動する訓練である。連日国会前で戦争阻止の抗議行動がくり広げられ、基地撤去世論が噴出する情勢下で、自衛隊が米軍基地防衛で国民弾圧に乗り出す姿を想起させている。
 陸上自衛隊がおこなう国内最大規模の実弾射撃演習「富士総合火力演習」にしても近年重視しているのは、米海兵隊の殴り込み作戦を手本にした離島奪還訓練である。「島嶼防衛」というが、どうみても他国を海から急襲し侵攻する訓練である。
 アメリカの訓練施設に自衛隊が呼ばれて、水陸両用車を使って米軍に物資を運ぶ後方支援訓練をしたり、中東市街地を模した訓練場を使った市街戦訓練の機会も増えている。
 米軍機への空中給油、米艦への海上給油、武器弾薬輸送、空母への離着陸を想定した戦斗飛行訓練など「日本の国防」とは関係ない米軍に尽くす訓練が横行している。一人で多人数を相手にする過酷な実戦訓練も多く、自衛隊員の自殺者も増えている。
 8月には沖縄でブラックホークが墜落したが、そこに自衛隊員が同乗し、米軍と地上戦を想定した訓練の真っ最中だった。兵士不足にあえぐ米軍は自衛隊を身代わりとして戦地に投入する訓練に力を入れており、日本の若者が戦地で命を落とす危険が、現実味を帯びている。

 防衛でなく殴込み訓練

 安保法制成立で一気に日米同盟強化を具体化する流れが加速しているが、その実態ははるかに先行している。米軍と自衛隊との一体化は早くから進められており、イラク戦争時から自衛隊が米軍の下請軍隊であることに変わりはない。自衛隊を統制しているのは、まぎれもなく米軍で、アメリカが首相を含め日本の政治を統治し、武力機構をも動かしている関係である。
 自衛隊をめぐって、アメリカが想定するのは中東・アフリカ地域で台頭し戦火を広げている「イスラム国」や反米勢力掃討作戦へ動員することである。安保法制では自衛隊の新たな対米協力に、米軍艦船の防護、中東ホルムズ海峡での機雷掃海、アメリカへ向かう弾道ミサイルの迎撃を盛り込んだが、軍事衝突の最前線に引きずり出す意味をもっている。「地球の裏側まで」といい出動範囲の地理的制約をとり払い、「切れ目ない対応」といって自衛隊の恒久派遣を可能にしたが、それは犠牲の多い米軍地上部隊を今後自衛隊に肩代わりさせるということである。
 「日本有事」以外の脅威をすべて「グレーゾーン事態」と位置づけて、集団的自衛権を発動できるようにしたり、PKOで同じ部隊の要員が攻撃されれば武器で応戦する駆けつけ警護を認めることも具体化している。
 自衛隊が米軍と一体となって世界中で戦争に乗り出すことで、相手から報復攻撃を受ける危険性を高めているのが実際である。すでに世界各国へ旅行や仕事で赴く日本人がテロや誘拐事件で被害にあい犠牲者も出ている。自衛隊の派兵範囲を地球的規模に広げた結果、地球的規模での報復攻撃を覚悟しなければならなくなっている。

 米軍司令部直結で指揮

 陸海空自衛隊は指揮系統、装備、部隊編成の全面にわたって、ここ数年間で様変わりしてきた。冷戦終結後アメリカがうち出した、日米ガイドラインの方針に基づく「専守防衛」の建前をとり払い、アフガン戦争、イラク戦争、モザンビーク、カンボジア、ルワンダなどPKO派遣に乗りだし、海外派兵活動を拡大してきた。2007年には防衛庁を防衛省に昇格させて陸・海・空自衛隊の統合運用体制をつくり、「海外活動」を「本来任務」に格上げした。この年に日本版海兵隊である中央即応集団(約4000人)を陸上自衛隊に結成し、本格的な戦争を想定した米軍下請部隊としての原型を作っている。
 「国防」や「国民を守る」ことが任務なら、米軍仕様の武器や、長期海外派遣を想定した戦斗機や軍艦を大量に揃える必要はない。しかし米軍と情報を共有し米空母を守るためのイージス艦、米軍機に給油するための空中給油機、米本土を守る弾道ミサイルシステム、ヘリ空母など米軍支援を目的とする高額装備を買い揃えた。その後、米軍は在日米軍再編計画を実行に移し、キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部を置き、そこへ陸自中央即応集団司令部を移転。アメリカがもっとも渇望している地上戦部隊である陸上自衛隊の指揮系統の上に、米軍司令部が直に君臨する体制ができ上がっている。陸上自衛隊をめぐっては2017年度には離島奪還作戦専門の水陸機動団を発足させ、地上戦専門の日米共同司令部を作る計画も動いている。横田の空軍と横須賀の海軍はすでに司令部が一体化しており、自衛隊は丸ごと米軍指揮下に組み込まれている。
 そして米軍の中枢司令部や実動部隊は中国のミサイル射程外のグアムに引き下げ、指揮や攻撃はは無人機など遠隔操作を主体にする方向だ。アジア諸国の軍事作戦は、アジア人同士をたたかわせるという戦略で、米軍は高見の見物をする体制にほかならない。米軍は警察予備隊発足時から、自衛隊の装備は常に米軍に従属した中途半端なものしか持たせず、法外な値段で売りつけてもうけることを常套手段としてきた。
 米軍は最初から自衛隊を下請軍隊としか見ておらず、日本を守ったことなどない。アジア侵略の拠点として日本国内の米軍基地を利用してきたことは朝鮮戦争、ベトナム戦争を見ても歴然としている。

 国あげて軍需産業支援

 自衛隊が持つ武器開発から購入や、民間企業の武器輸出の窓口を担う防衛装備庁が発足した。自衛官400人を含む1800人体制で約2兆円の年間予算を握る巨大官庁である。安倍政府は昨年四月に武器輸出3原則を改定し、武器や「防衛」装備の輸出を促進する企業支援策を練ってきたが、軍需産業の利潤獲得を国家あげて支援し戦争ビジネスに乗り出している。経団連は「国家戦略として推進すべきだ」との提言を出し、軍需産業が軒並み色めき立っている。
 今年1月の安倍首相の中東外遊では、イスラエルの無人戦斗機開発受注をめぐり、機体や搭載兵器を担当する可能性が高い三菱重工や、遠隔制御技術を任されるNECなど軍需産業や銀行、商社、建設会社が大挙して同行した。中東や各国へODAをばらまいて米国軍需企業やネオコン勢力を潤わせているが、その裏でF35戦斗機の部品など日本の軍需製品を売り込んで買わせる兵器ビジネスに乗り出している。中東は世界最大の武器市場で、紛争が長引き、戦火が拡大するほど軍需産業は戦争ビジネスでもうかる関係にある。アメリカのハリバートンなどは兵器を売ってもうけ、その兵器で破壊された復興需要でもうけ、倒産寸前の経営が一気に息を吹きかえした。ここへの参入を企むのが三菱重工などの大企業で、安倍首相がせっせとばらまくODA資金を中東各国を迂回する形で回収する手口も明らかになっている。
 三菱は戦前も戦争で膨大な利益を得たうえに、空襲ではことごとく工場への攻撃を免れた。こうした財閥系企業が再び戦争狂いの体質を丸出しにしている。売り込みを図っている自衛隊の装甲車や潜水艦、艦艇、戦斗機、誘導ミサイル装置、新型クラスター爆弾、空母撃破用対艦ミサイルなど、どれも「専守防衛」ではなく侵略・攻撃兵器である。軍需依存で大不況を切り抜けようとすればするほど、日本への戦争の危機が拡大する関係である。
 さらに防衛省は軍事研究で研究費を支給する制度を開始した。1件当り年間3000万円で超高速エンジンや、無人車両技術など28分野で公募をかけるもので、109件の応募から神奈川工科大、東京電機大、豊橋技術科学大、東京工業大など4大学を含む9研究機関を指定した。大学研究費を削りながら、軍事分野研究には予算をつけるもので、大学や研究者を軍事技術研究に縛り付けていく学問破壊も露骨になっている。

 「国防」掲げ国民を動員

 もともと日米ガイドラインについては、「国防のため」という装いをとってきた。しかし米ソ2極構造が崩壊すると「ソ連が攻めてくる」といっていたのを「朝鮮や中国が攻めてくる」「周辺事態に対処する」といいかえ、今度は「切れ目のない体制」と称し、平時から先制攻撃態勢をとることを具体化している。
 「危険だ!」「攻めてくる!」と煽りながら進めているのは、日本の戦争総動員体制づくりであり、その日本における軍備増強が近隣諸国との軍事緊張を高めていく関係である。「日米安保」は最初から「国民を守る」ことなど念頭になく、「守ってやる」と欺きながら、日本をアメリカの戦争に動員する条約でしかなかったことは、戦後70年の経験から見ても疑いないものだ。
 安保法制で強調した、「集団的自衛権行使」は、製造業をはじめ、海外移転をくり返す大企業の、海外工場、設備、利権や企業資産を守り、現地労働者や住民の反発を鎮圧するために自衛隊を派遣する根拠となる。米国の国益を守るだけでなく、多国籍企業の海外権益を守るために自衛隊が地球の裏側まで飛んでいき鉄砲玉にされる関係にほかならない。世界経済が行き詰まり、大企業や金融資本が国内市場を食いつぶし、軍事衝突も辞さないほど横暴な海外市場略奪をやっていることが根っこにあり、資本主義が末期にきていることを示している。
 日米「安保」条約に縛られて半世紀以上経たが、米軍基地がある岩国や沖縄をはじめ、日本全国で「日本を守ってくれた」という実感は全くない。第2次大戦で原爆を投げつけ、全国に空襲をやって日本を単独占領したあげくに行き着いた先は、世界中で米軍や大企業権益を守るために日本の若者を肉弾として差し出すところまできた現実である。アメリカの戦後支配を突き破って日本の独立を求める世論、基地撤去の世論を強め、下から大衆的な運動を束ねて、戦争阻止のたたかいに大合流させること、全国的な統一戦線の力で、安保関連法を廃止に追い込み、安倍暴走政治を叩き潰すことが待ったなしの課題になっている。


トップページへ戻る