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戦後の国家的な詐欺と横領
               年金問題 「老後保障」と騙す    2007年6月15日付

 厚生年金、国民年金の年金納付記録が5095万件も未統合のまま放置され、旧台帳から統合されていないものが新たに1430万件も判明、国家的な空前の詐欺、横領事件として、「国は信用できない」「救済ではなくて完全に弁済せよ」との怒りの世論が全国的に噴き上がっている。「アメリカいいなりで税金も国民のために使っていないが、年金資金でグリーンピアをつくり、ただ同然に売り払い、財政投融資につぎこんで返済のめどもない。こうして保険料をつり上げ、給付は半減。これは政府の横領だ」と、対米従属の戦後日本資本主義への信頼は、音をたてて崩れている。

 全国の社会保険事務所に相談殺到
 全国の社会保険事務所には相談者が押しかけ、年金相談専用電話は鳴りっぱなし、40万件に達している。アルバイトが対応する相談電話で、まともに答えられたのは1万件にすぎない。下関社会保険事務所でも、1日約200人が相談に押しかけている。
 主人が三菱重工で働いていたという夫人S氏は「団塊の世代が1番ひどい目に合った。60歳で年金がもらえるというので、40年余一生懸命に厚生年金をかけてきたのに、いまだにとれない。給付額も現役世代の8割といっていたのに、いまや半分強しかない。これは契約違反の大詐欺だ」と語気強く指摘する。
 続けて、「安倍首相は電話相談アルバイトの人件費を社会保険から出すといって追及され、“国が出します”と簡単に答えたが、私たちの税金ではないか。政府の詐欺、踏み倒しの始末をなぜ国民に転嫁する。税金を自分のポケットマネーぐらいに思っているのか」と怒りはおさまらない。
 そして、「欧米ならゼネストになっている。連合はストをかまえて、政府に正しい解決を迫り、働くものの老後を守るべきではないか」としめくくった。
 定年前に退職し、自営業者となったK氏は「今明らかになった大規模な年金踏み倒しは、年金保険料の横領につぐ横領の行きついたものだ。この世の中は信用できない。政府は“リゾート開発”を煽り、年金積立金でグリーンピアなどを建て、破たんさせてただ同然にたたき売り、道路公団をはじめ各種公団、特別会計に年金積立金を財政投融資としてつぎこんだが、返済のめどもない。国民の金を好き勝手に使い果たす政府あげての犯罪だ」と語る。
 続けて、「そのたびに年金制度を改悪し、保険料をつり上げ、給付を引き下げてきた。政府が基礎年金への国庫負担を給付費の2分の1とする約束をはじめから実行し、年金積立金を年金給付以外に使いはたさなければ、このようなことは絶対にない」と指摘する。
 最後に、「アメリカいいなりで米軍再編に3兆円もつぎこみ、老後の医療も、介護も切り捨て。国民の税金を国民のために使わず、年金保険料も好き勝手に踏み倒す。こういう政治は、明治維新のように変えるほかない」と強調した。
 社会保険事務所によると2005年度の年金受給者は、厚生年金2424万人、国民年金2299万人で計4723万人(一定部分は重複)、加入者は厚生年金3296万人、国民年金3316万人で計6612万人。受給者、加入者を合わせると1億1335万人。年金納付記録未統合5095万件、旧台帳から未統合分1430万件、合計6525万件は年金受給・加入人口全体の58%に値する。この「消えた年金」は、まさに空前の国ぐるみの踏み倒しである。

 低賃金押付け踏み倒し 日本の年金制度
 日本の年金制度は、世界に例を見ない高収奪を特徴としている。また、戦中、戦後と「老後の安心」とだまして労働者、勤労人民を低賃金のもとで働かせた歴史がある。
 日本に年金らしいものができたのは、天皇制政府が第二次世界大戦に突入した1941(昭和16)年に発足した労働者年金保険法(工場労働者だけを対象とした)、その2年前の船員保険法だけだった。1875(明治8)年の海軍軍人恩給と、翌76年の陸軍軍人恩給、1884(明治17)年の官吏恩給、それぞれの恩給は、天皇国家に忠誠をつくしたものに対する恩賞で、社会保障の年金とは縁もゆかりもない。
 天皇制政府が、敗戦までの4年間、工場労働者と船員からかき集めた保険料のすべてを戦費につぎこんだ。この「年金制度」は戦費調達のための国民収奪の具にほかならなかった。
 日本の年金制度発足の経過は、天皇制国家の衣鉢をつぐ政治家、官僚によって、戦後も「老後の安心」「生活保障」はないがしろで、高収奪と独占・大資本のための財政投融資の資金調達につぎこまれ、最近では「財政投融資禁止」と称して米日金融独占の要求に応じて投機資金に使われている。安倍政府が強行する社会保険庁解体、市場原理による「日本年金機構」に再編、年金積立金を全面的に金融市場に引き出し、今日問題になっている5095万件の年金納付記録の未統合、旧台帳分の1430万件の未統合の責任と、完全な弁済もうやむやにしようとしている。
 戦後、1954(昭和29)年、労働者年金保険法として戦中発足した厚生年金の大改定をおこなった。その内容は、保険料の大幅値上げと、支給開始年齢の55歳から60歳へのひきのばしであった。婦人は55歳に据え置いた。戦前の官吏の恩給が社会保険に再編されたのは国家公務員が1959年、地方公務員は1962年である。そして農漁民、自営業者、臨時・日雇労働者を対象とした国民年金が1961年に発足。「国民皆年金」とした。だが、国民年金給付額は40年間に渡って高い保険料をかけて月2000円、「孫のアメ玉代」と猛反発を受け、厚生年金は1966年度まで給付額月1万円というものだった。
 50年代後半から60年代の「高度経済成長」で日本は「世界第2の経済大国」へのし上がっていったが、労働者、勤労人民の年金は劣悪なままで、73年には「年金改善統一ストライキ」がたたかわれるに至った。当時の田中角栄内閣は「年金元年」を叫び、給付水準の2倍強、物価スライド制を導入せざるをえなかった。独占資本と政府は「老後の安心」「資本主義の社会主義的改善による永遠の繁栄」を、マスコミを動員して大宣伝した。
 ところが、70年恐慌にみまわれるや、独占資本と政府は行財政改革に乗り出し、第2臨調は82年に「自立・自助」、「相互扶助」「民間活力導入」の理念による年金制度改革をうち出し、85年に実施した。その最大の内容は、国民年金と厚生年金、共済年金の一部を統合し、基礎年金をつくり、低い国民年金に合わせて平準化、サラリーマンの妻もこれに強制加入、厚生年金・共済年金の保険料を引き上げた。さらに、89年の年金改悪で、支給開始年齢を男女とも65歳とし、段階的に強行実施している。婦人の場合は55歳から60歳へのひきのばしに続いて65歳へのひきのばしが押しつけられる。
 支給開始年齢五年ひきのばしで、厚生省の示したモデル年金で試算すると、1人当り1200
万円も年金給付を削られる。こうして、年金給付額は現役時代の給与の8割から、6割弱へと大幅カットされた。

 保険料引上げ給付は減 現在の年金改革
 小泉―安倍と続く市場原理による年金改革はさらにこれに拍車をかけて、2017年度まで保険料を、厚生年金、国民年金ともに引き上げ続ける。そして、給付額も、現役給与所得の50%に引き下げる。
 現在、厚生年金保険料は年収の14・6%で、2017年には18・3%まで引き上げ、給付額は現役平均の5割弱に引き下げる。現在、下関社会保険事務所管内の厚生年金給付額の平均は、月14万円弱である。国民年金は、現在の保険料は月1万4100円、毎年2、300円ずつ引き上げて、1万7000円近くに引き上げようとしている。そして給付額は、月6万3000円程度である。
 ちなみに、最低生活のセーフティラインである生活保護扶助は、60代の1人暮らしで月7万二2370円プラス家賃実費である。これから見ても国民年金はもとより、厚生年金給付額がいかに低いか歴然である。これが高い保険料を40年間、1回も欠かさず納めてきた結果である。
 この年金、大改悪の過程で、年金納付記録のあわせて6525万件の未統合、踏み倒しが露呈したのである。K氏が指摘するように、これは年金資金横領の行きついた先である。厚生年金、国民年金の年金積立金は、2000年度末には164兆4000億円に達しており、2050年には443兆6206億円に達すると発表されている。
 日本は、国際労働機関(ILO)の常任理事国であるが、ILO条約に定めた「社会保障(年金)の積立金は、それ以外に使ってはならない」との規定もなにもあったものではなく、財政投融資につぎこみ、米日の独占資本のためのインフラ整備や海外侵略のための融資資金に投入してきた。そして公国、公社、公庫などに投入した大半がこげついている。
 そして、財政投融資への横領が、米日独占資本にとって有用でなくなると「自主運用」と称して、株や債券の投機に横領し、これも大損を出している。
 安倍政府が、社会保険庁解体、市場原理による民間型の「日本年金機構」への再編を、法案を強行して急ぐのは、米日金融独占の要求で、将来400兆円規模となる年金積立金を金融市場に全面的に引き出し、投機資金とするためである。
 これが、年金積立金の食いつぶしであり、年金制度のさらなる改悪を招くことは必至である。

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