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「戦争する国」への新防衛大綱
              米軍肩代わり戦に肉弾差し出す   2009年6月24日付

 麻生政府が今年末に決定する新「防衛計画の大綱」(2010〜14年度)の策定に向けた基本方針を明らかにした。「中国の軍事的な台頭」や「北朝鮮の核、ミサイル開発」などを口実に「装備、要員の縮減方針の転換を図る必要がある」と明記。米ソ二極構造の崩壊以後、1995年策定の大綱から削減傾向にある予算を増額させ、軍備・兵員の増強に乗り出す方向転換を明確にした。さらに敵基地攻撃能力の保有を検討する意図も明らかにした。自民党政府はここ数年、戦争体験者を先頭にした戦争反対世論を無視し、ひたすらアメリカの要求にそってアフガン戦争、イラク戦争など戦地への自衛隊派兵に道を開き、有事法制、米軍再編、住民を動員したテロ訓練など戦時国家作りをすすめてきた。そして、いまや米軍肩代わりの戦争に乗り出すため、海賊対処法や臨検新法制定を急ぎ、自衛隊を「戦争ができる軍隊」に転換させようというのである。
 基本方針は中国や北朝鮮の動きについて「周辺地域の軍事力が近代化、活発化している」と強調。「現在の防衛力による各種事態への対応力に限界があり、実効的な対応が必要だ」と軍備増強に乗り出す姿勢をあらわにした。現大綱(04年策定)で、「本格的な侵略の可能性は低下。装備、要員を抜本的に見直し縮減を図る」としていた規定を抜本的に転換。「実効的な対応」といって戦争へ突き進む意図も示している。具体的には、04年大綱で定めた陸上自衛隊の定員15万5000人を16万人にして5000人増やすことなどを明記している。装備についても「対応能力を常続的に運用して高い能力を示すことで各種事態を抑止する」と主張。「専守防衛」としてきた建前を「抑止力強化」を口実に転換させ、「ミサイル防衛(MD)システムの強化」など先制攻撃可能な装備の拡充を盛り込んでいる。
 そして巧妙に潜り込ませたのが敵基地攻撃能力の保有だ。直接には「敵基地攻撃能力の保有」の文面を使っていないが、「情勢の変化を踏まえた選択肢の確保」との表現で事実上検討に乗り出す意図をあらわにした。
 さらにテロ対策や災害対処をふくめた多機能な自衛隊に向け「費用対効果を高めるよう防衛力の役割を再整理する」との方針も明記。「コンピューターシステムへのサイバー攻撃対処を充実させる」など多様な分野で防衛力を増強する意図を示した。このほか「国際協力活動への積極的な参加」「防衛交流の活発化」なども明記した。国民の批判世論を恐れて全体として曖昧な表現であるが、人に分からないようにして重大事項をすすめる手口を浮き彫りにしている。

 誤情報でも開戦の危機 自民党国防部会提言
 新防衛大綱について、もっと突っ込んだ表現をしているのは、自民党国防部会がまとめた提言である。
 「集団自衛権の行使にむけた憲法解釈の変更」を明記。すでに「米軍艦の防護」「米国に向かうミサイルの迎撃」「多国籍軍防護のための武器使用」「多国籍軍への補給・輸送・医療などの支援」など4類型の検討に着手している。「米軍が攻撃された!」となれば即座に日本を自動参戦させるものである。
 そのうえに「敵基地攻撃能力保有の必要性」も明記した。提言では、イージス艦などにトマホーク巡航ミサイルを搭載して高精度の攻撃能力を開発することも明記した。「集団的自衛権の行使」とセットで「敵基地攻撃能力」を持つなら「テポドン発射」などの情報が流れれば、自衛隊がすぐさま報復攻撃に乗り出す。かりに誤情報であっても取り返しがつかず、かつての日中戦争などのようにずるずると全面戦争突入へ引きずり込ませる体制である。
 軍備増強の具体策では、「スパイ衛星の研究開発」「自衛官定数24万人を長期的に確保する」ことを明記したほか、「骨太方針を見直して防衛予算を確保する」「防衛産業へ補助金を出す」など軍需産業関連予算の拡大を要求。そのほか自衛隊海外派遣を随時可能とする恒久法の制定、アメリカと直結した指揮系統をつくるための国家安全保障会議(日本版NSC)の新設、武器輸出3原則の緩和なども盛り込んでいる。

 海外侵略へ道開く企み NYテロ事件後拍車
 「防衛大綱」は今後10年間の防衛力のあり方を定める計画で、1976年から具体化されてきた。76年から1995年までの大綱は米ソ二極構造のもとで「日本が力の空白となって地域の不安定要因にならないよう必要最小限の“基盤的防衛力を保有”」と規定していた。それが米ソ二極構造崩壊後の95年防衛大綱になると「基盤的防衛力構想は維持し“大規模災害への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献”を防衛力の役割に追加する」となり、しだいにPKOなど「国際貢献」を掲げた自衛隊海外派兵になっていった。もともと痛ましい戦争の反省から憲法でも規定された戦争放棄の内容を「専守防衛」といって軍備保有に道を開き「国際貢献」といって海外派兵を強行。さらには「後方支援」「日米同盟」といい、ようするに戦地への海外派兵に道を開いてきたのである。
 そしてNYテロ事件後の04年大綱には「テロや弾道ミサイルの脅威」にふれて「新たな脅威が発生した」と規定。「多様な事態に実効的に対応し、国際平和協力活動に主体的、積極的に取り組む」とした。このもとで06年10月に北朝鮮核実験問題が起きると安倍首相(当時)が経済制裁を発動。「臨検」実施の法整備やミサイル開発を開始した。さらに07年1月には防衛庁を「防衛省」に昇格させ、自衛隊の「付随的任務」だった「海外活動」を「本来任務」に変えた。「専守防衛」の建前もかなぐりすて「海外派兵」を本来任務としたのである。それは陸・海・空3自衛隊が米軍と一体となって海外でたたかう対テロ戦斗部隊として変貌させることとなった。
 陸上自衛隊は「日本へ着上陸する外国軍隊とたたかうため」といって組み立てられた編成・装備・訓練を抜本転換。「着上陸の可能性が減ったので戦車、火砲を削減し、普通科(歩兵)を中心に強化を図る」とした。装備は対戦車などとの戦斗ではなく対人戦斗へ変わった。その目玉として「対テロ戦」と海外派兵を中心任務とする秘密部隊「中央即応集団」が発足した。各部隊の戦斗訓練も市街戦に重点を置いた内容となっている。
 海上自衛隊も全艦隊の部隊編成が変化している。従来艦艇部隊は沿岸や近海警備にあたる内戦部隊と外戦部隊(海外派兵が任務)に大別されていた。しかし08八年4月から外戦部隊の典型である護衛艦隊がすべての艦隊の配置を掌握。海外派兵中心の部隊編成に変わっている。連動して訓練内容も海上での他国船舶への臨検拿捕作戦、「対テロ戦」での地上特殊任務など変化している。昨年9月海上自衛隊第1術科学校の特別警備隊養成過程で1人が15人を相手に格斗して死亡したが、それは臨検などを想定した過酷で異常きわまりない訓練がすでに始まっていることを示している。
 航空自衛隊も近年長距離輸送機能、対地攻撃機能の強化、偵察・攻撃用の無人機の開発、戦斗機の改良、弾道ミサイル防衛の実用化が目標としてあげられ、実用に移されてきた。空自の訓練内容も空中給油を受けた長時間航行、戦斗機による交戦練習など、旧来の偵察・監視とは違う内容が主になっている。

 日本の若者肉弾に使う 米国が周到に準備
 さらに許し難いことは米軍が指揮棒をとって、自衛隊を肉弾として使う策動を周到にすすめてきたことである。日米政府は2005年2月の日米安全保障協議委員会(2+2)で「日米共通の戦略目標」に「テロリスト・ネットワークのせん滅」を追加して以後、「在日米軍再編」計画を本格化させた。それは日本に米軍司令部を移転させて自衛隊司令部と一体化させ日本を丸ごと米軍指揮下に置くこと、日本の自衛隊基地をすべて米軍基地化することであった。そして屈辱的なことはイラクやアフガンの戦斗で敗退につぐ敗退を重ね米兵の死者が続出する一方で、日本の若者を「怖いもの知らず」の肉弾として使う準備をアメリカが周到にすすめてきた現実である。
 米国防総省も2010年に「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」が予定されているが、今年1月に発足した米オバマ政府はブッシュ前政府のゲーツ国防長官を留任させた。それは「核のない世界」とか「イラクからの撤退」を宣伝するオバマ政府であるがブッシュがすすめた戦争戦略をなんら変化させないことを示している。このもとでカートライト米統合参謀本部副議長は、今月4日、ワシントン市内で講演し、QDRに新たな戦略を盛り込む考えを示した。カートライトは「現在の海外基地は日本やドイツと戦った際のものだ」といい武力で奪い取ったことを強調。そしてイラクやアフガニスタンでの戦斗が「少なくとも5年から10年続く」とのべ、先の大戦や冷戦期の戦斗形態からの発想転換を要求している。その意図が、自民党政府をして2010年大綱で「集団的自衛権」「対テロ」などといって敵基地攻撃能力を保有させ、日本の若者を米軍の肩代わり戦争で肉弾にすることにあるのは明らかである。

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