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戦争に立ち向かう大交流の場に
広島「原爆と戦争展」主催者会議
              被爆者の実体験受け継ぐ意欲   2016年7月20日付

 広島市西区の己斐公民館で17日、今月29日から開催される第15回広島「原爆と戦争展」(主催/原爆展を成功させる広島の会、同長崎の会、下関原爆被害者の会)の第2回主催者会議が開かれた。
 
 安倍政府の改憲策動のなかで 大学生スタッフも活動開始

 会議には、広島市内や廿日市市などから被爆者や被爆二世、主婦、社会人、学生など約30人が参加し、71回目の原爆記念日を迎える情勢や宣伝活動の反響の特徴について交流。参院選を経て、新しい戦争の動きを危惧(ぐ)する世論が強まるなかで、広島の経験と思いを学びに全国・世界から訪れる人人の要求に応え、戦争の真実と体験を旺盛に語り継ぐこと、戦争に立ち向かう世論を束ねる大交流を実現するため世代をこえて尽力することを確認した。
 初めに広島の会副会長の眞木淳治氏が挨拶した。「先の参院選の結果は、与党の過半数獲得となったが、選挙戦の過程ではもっとも重要な憲法改定、安保法という重大争点を意図的に避けて、アベノミクスや経済問題でごまかした。衆参両院で3分の2の議席を確保し、今後は“なにをやっても通る”という形がつくられたことが非常に心配される。それだけに、この原爆展運動や平和学習での証言活動の意義は増している。今年も上半期はたくさんの学校に被爆体験を語りに行ったが、子どもたちの感想文の多くは、真剣に話を学び、平和な将来をつくる積極的な内容であり、心強く感じる。昨年成立した安保法制は、全国の学生や憲法学者、大学人、弁護士、宗教家、婦人団体など多くの人人が立ち上がって反対したが、政府与党は数の力で強引に押し切った。国民の生命、財産を守るためといいながら、この間の事件を見るだけでも、結果はあきらかに日本人の生命を危険にさらしている」と指摘した。
 さらに「8月6日に向けて全国各地から来る人人にパネルを見てもらい、“何をいっても変わらない”とあきらめるのではなく、この戦争政策についてははっきりと対抗し、日本の平和のため、国民の命を守る一貫した精神に基づいて語りかけていきたい。学生、若い人たちの力を借りて頑張り抜きたい」と決意をのべた。
 続いて、7月24日に『原爆展物語』を上演する劇団はぐるま座の岡田真由美氏が、公演準備の過程で、広島の会の被爆者を招いて広島市内の学校で体験を語る授業を実施したことに触れ、「若い先生方も初めて被爆体験を聞いたと感動を語っていた。宣伝のため各学校を回ると校長からも快く協力を得られており、公演の成功を通じて原爆展運動に貢献していきたい」とのべた。
 広島の会の事務局がこの間のとりくみの経過と会期日程を報告した。
 宣伝活動を6月末から本格的に開始し、市民各界から賛同者は16日現在までに154人(非記名を含む)となり、被爆者、戦争体験者、被爆2世、原爆遺族、大学生、院生、留学生、現役世代が名を連ね、町内会長、老人クラブ会長、医師、寺、保育園長、教師、大学教員、公務員、会社役員、主婦まで幅広い層の人人が加わっている。また、大学での展示会に参加し、被爆者の訴えを受け止めた大学生を中心に、平和公園での街頭原爆展、市内の宣伝活動、展示会場での受付・案内などへのスタッフ参加希望者は、留学生を含めて22人にのぼり、すでに活動を開始している。
 毎週土・日の下関原爆展事務局スタッフの宣伝活動とあわせてすでにポスターは1350枚、チラシは約2万6000枚が配布されている。同時に、市内の小・中・高、幼稚園・保育園にも約6万5000枚が配布され、学校ごとに参観の呼びかけがされている。
 会期中には、長崎や沖縄、山口、福島など全国の様様な地域から訪れる人人、若い世代との全国交流に力を入れるとともに、世界各地から訪問する外国人との交流も昨年以上に力を入れることを確認し、原爆と戦争展運動を全国、世界に広げるための働きかけを強めることを提起した。
 論議では、この間、広島市内の小・中学校、修学旅行生に体験を語るとりくみを進めてきた被爆者たちがその反響を語った。
 81歳の婦人被爆者は、「毎年語りに行く学校では、年ごとに顔見知りの関係になり、手を振ってくる子どももいる。感想文も想像をこえる言葉が並んでいる。子どもは大人以上に情報に敏感で、私たちの子ども時代よりもはるかに知識が豊富だ。だから、戦争の経過から原爆投下の目的まで話してもちゃんと理解している。私たちの言葉が強い記憶として残り、それに応えようとする心意気に、とてもやりがいを感じている。被爆体験を持つ民謡グループの仲間にも“一緒に語りに行かないか”と声をかけている」とのべた。
 日赤看護学生として被爆した婦人は、「子どもたちの感想には励まされる。現在の看護学生に話をする機会もあったが、“びっくりした”と感想を送ってくる。当時は治療どころではないくらい薬も食料もなく、看護師はただ患者さんの死を看取る以外にすべがなかったこと、同級生たちもいかに悲惨な最期を遂げたかを伝えている。学生は“同じことは今の私たちにはできないかもしれないが、その志を受け継いで頑張ります”と返事をくれる。今年で90歳になるが、話ができる機会がある間は、原爆がもたらした現実と戦争がいかにむなしいものであるかを伝えていきたい」と力強くのべた。
 また、他の被爆者からも「言葉一つ聞き漏らさず聞いている子どもたちの感想を読むと責任の大きさを感じる。同時に、戦争があった事実は知っていても、その悲惨さについては学校教育で十分に教えられていない。先生も初めて知ったと驚いている。子どもたちが成長の過程で、私たちの話の意味を理解していってもらいたい」「学生さんたちの積極的な参加が心強い」と、若い世代の真剣さへの感動が口口に語られた。

 意気込み語る学生たち

 それを受けて、スタッフとして参加した学生たちも意気込みを語った。
 学内での原爆展をきっかけに参加した広島出身の女子学生は、「小学校の6年間、平和教育を受けてきたが、このパネルを見て戦争の知識や平和への思いが足りないことに気がついた。平和公園での街頭展示では、パネルを並べた瞬間からたくさんの人たちが集まってきて、外国人に声をかけるとほとんどの人が賛意を示していく。関心の高さを実感すると同時に、これまでの自分の意識の低さに危機感さえ感じている。たくさん学んでいきたい」と意欲的に語った。
 同じく広島市出身の女子学生は、「学内の展示会で被爆者の話を聞いたのが広島の会との出会いだ。小・中・高でも毎年被爆者の話を聞いてきたが、大学に入り、その機会がまったくなくなってしまい、被爆者の話を聞かせてもらうことがどれほど貴重なものかということが初めてわかった。学生になって初めて広島市から離れ、毎年夏になるたびに原爆に対する温度差に違和感を覚えていたところだった。この活動を通して被爆者の思いを受け継いでいきたい」と率直な思いをのべた。
 学生たちの真摯な発言に、被爆者たちからは「一緒に頑張ろう!」「よろしくね!」との激励や拍手が送られた。
 PTA役員として毎年親子で被爆体験を学ぶ会を準備している40代の男性は、「参院選の結果は、悔しい思いもある。ろくな政治家がいないし、マスコミもまともに争点を伝えないが、それで仕方がないといって通していったら、前の戦争のくり返しだ。国民の声を抑えつけ、権力の都合のいいようにコントロールしていったのがかつての戦争だった。議席の3分の2を抑えた勢力によって改憲の発議が可能になるが、自民党の憲法草案は、権力者を縛るためにある憲法を国民を縛るものに変えようとしている。世論操作の情報が洪水のように流されるなかで、国民が正しい選択ができるきっかけをもっと増やしたい。被爆者の実体験にもとづく思いは説得力が違う。それを伝えながら、地域やサークルなどいろいろな組織を通じて、身近な場所で声を上げて戦争反対の世論を喚起していきたい」と決意をのべた。
 男性被爆者は、広島出身の学生たちが「今まで聞いたことがなかった」と驚く内容として、「これまで、アメリカの原爆投下が“戦争を早く終結させるため”であり、“多くの人の命が救われた”という言い訳を信じこまされてきたが、8月6日の広島、九日の長崎をへてもなお、敗戦前日の8月14日に岩国、光の大空襲、新潟の土崎、愛知県春日井、埼玉の熊谷大空襲など、翌日には終戦することがわかっていながら大量の爆弾を投下して何百人もの人を殺している。アメリカの言い訳は通用するものではなく、断じて正当化できるものではないということを伝えると、目から鱗が落ちるような反応をしていく。これを機に、いろんな体験を聞いてもらうことが非常に重要だ」と強調した。
 下関原爆展事務局のスタッフから、今年から新たに展示に追加する「語れなかった東京大空襲の真実」パネルについて説明があり、「東京都内での原爆展キャラバン活動で聞いた東京都民の経験は全国的に強い衝撃を呼んでいる。大いに論議に役立てて欲しい」とのべた。
 また、平和公園での街頭展示では、毎回、外国人の関心が非常に強いことや、参院選で「改憲勢力が三分の二」といっても実体はきわめて脆弱であり、「既成の政党政治があてにならないなかで、国民規模で戦争を食い止める運動をつくりたい」「戦争体験者が高齢化するなかでその思いを受け継ぎたい」という世論は政党政派の枠をこえて大きく渦巻いており、展望を求めて訪れる人人が例年以上に増していることも報告された。英訳版の被爆体験記を買って帰国した米国人から「核兵器の全廃のために役に立ちたい」と連絡があり、改めて体験記のまとまった注文が寄せられていることも紹介され、「全国的にも世界的にも、戦争を食い止めるため真実を求めて行動する機運が高まっている。この要求に応えて旺盛に交流し、運動の輪を広げていこう」と呼びかけられた。
 第15回広島「原爆と戦争展」は、7月29日から8月7日まで、広島市中区袋町の合人社ウェンディひと・まちプラザ(まちづくり市民交流プラザ、袋町小学校隣)北棟四階ギャラリーで開催され、会場では被爆者たちが常駐して体験を語る。5日には会場ロビーで全国交流会が開かれる。

 

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