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社会荒廃させる小売り寡占化
規制緩和で外資の日本進出
              略奪商法で生産者も危機   2004年9月16日付

 大型店による値下げ圧力が、この数年間の出店ラッシュとともに激しくなっている。下関市内にある大型店35店(うち建設中2店)のうち、13店(4割)が8年まえの大店法廃止、2000年の大規模小売店舗立地法の施行後に出店されたものである。大型店同士のつぶすかつぶされるかのダンピング競争は、政府の規制緩和策のもとで、西友を傘下におさめたのにつづき再建中のダイエー買収をもくろむ、世界最大手の米資本ウォルマート(年商28兆円)の日本乗っとりを背景に激化しているといわれる。それは伝統的な小売・卸業者をしめ殺しているが、農漁業や製造元にたいする値下げ圧力も、すさまじい略奪のような様相となっている。卸売市場もまともに価格形成ができなくなり、商店街を消滅させ、労働者には低賃金を押しつけている。

 大型店出店の過熱化 下関
 下関市内をめぐる出店攻勢を見ると、長府外浦町の旧マリンランド跡地に、「イオン長府ショッピングセンター」(総店舗面積1万5700平方b)が05年1月の開店予定。豊前田町3丁目にはスーパー「ハローディ」(1700平方b)が11月オープン。また東大和町の元ミサワホーム住宅展示場跡地に、ホームセンター「グッディ」が出店をさぐる。新規出店に対抗する既存大型店は、「グッディ」建設予定地から50bほどのホームセンター「ディック・ワン」が、3割増となる9200平方bに増床する。ベスト電器山の田店は1・3`b先にヤマダ電機が進出したことで、現在の2倍以上となる2376平方bにする増床計画を立てて、まき返しをはかる。100円ショップも5店舗を展開して、なお旧マリンランド跡地などに計画をすすめている。
 とくに店舗数できわだっているイオングループは、ジャスコをはじめ、バリュハウス二店(うち1店は予定)、ホームワイド2店、合計5店が出店している。直取引の取引先にたいして過酷なまでに値下げを要求することで、「乾ききったタオルをさらにしぼる」といわれている。民主党・岡田代表の実兄が代表取締役でもあるイオングループは、ウォルマートがはじめた直取引を手がけ、卸をとおさないで流通資本が生産現場に直接圧力をかけて、いうことをきかなければ製品は店頭の陳列台からしめ出してしまうなど、「生産現場を泣かすことで、のし上がってきた」シビアな経営で知られている。
 市内の大型店シェアは小売業の全売場面積・約30万平方bのうち、店舗面積2000平方bの大型店35店(増床予定もふくむ)だけで合計20万平方b。1%の大型店が店舗面積の七割近くを占有しているということになる。一方で地域の商店街のなかには、シャッターをおろす店があいついでいる。下関市内の小売業商店はピーク時に1979年には4667店あったものが、2002年には2949店と、この間に1718店も減少した。また下関市内にピーク時にあった31商店街のうち、3分の1にあたる10商店街は消滅してなくなった。
   
 卸売り市場価格形成できず
 戦後から農水産物の需要と供給のかなめとなってきた卸売市場は、大型店の影響により価格形成ができなくなっている。
 「大型店はサンマ数百箱を、これまで1箱2000円でとっていたのに、“特売日をうつから、1匹15円で1箱600円にしてくれ”“もしできないで、ほかにやれるところがあれば、おたくとは取引停止”とくる。価格形成などできない。大型店のやり方ははじめから脅しだ」と、卸のある関係者は大型店のやり方のえげつなさを訴える。
 フグを中心にあつかう水産加工所の50代経営者は、「市場や卸という機能は、季節ものや気候で価格がかわっても、生産者が行きづまることがないよう、加工業も小売業もみんなが食べていけるようにつくられてきた。いまは大型店が生産費にあわない価格を、好き勝手に要求してくるから、年間で漁業者が1万人近く離職するような事態になった」と憤りをのべる。
 中小業者が中心の県営下関漁港の10年間を見ると、水揚高と鮮魚店、買受人の数は連動して落ちこんでいる。下関市内の鮮魚店数が1972年には352店だったものが、2002年にはわずか118店(減少率は66%)にまでへったことが、買受人の減少に深刻にかかわっている。1994年には買受人は95人だったが、2003年には2割減の78人に激変した。下関漁港の水揚量は、94年に10万8000dだったものが03年には4万7000d(56%減)にまでへった。かわって県外から鮮魚、輸入魚を運んでくる大型店のものが、市民の全消費量のうち七割をこえているといわれる。
 40代の仲卸業者は、「10年まえから魚価低迷で、漁業者がへりつづけて水揚げがへって、ぬきさしならないところまできているというのは事実。しかし水揚げがへっているのは築地市場でも福岡、大阪でも同じ。それだからといって行政は規制緩和で市場特区を申請して、力のある買受人を新規参入させることで、水揚量をふやすといっている。いま新規参入できるものは大型店ぐらいしか見あたらない。仲卸の淘汰(とうた)で寡占化がすすみ、魚価はますますたたかれることになる」と、大手独占を警戒している。
 青果卸の関係者は、「2008年には規制緩和で市場手数料が自由化されるが、よっぽど価格形成の力があるか特殊なものでもないと生き残れない。早い話が国は、“小さい卸、仲卸はつぶれていいですよ”といっている。大手が淘汰するための規制緩和ではないか」「市場は生産者に数日で支払うが、大型店は支払いサイドが長い。農家に直取引をさせるということは、倒産すればいっしょにつぶれる。電子取引になると数カ月間の値段を決めて契約書をかわして、台風でダメになっても契約書をたてにとられて、損害賠償を起こされる世界になってくる」と、日本の食糧自給にかかわる重大事だと訴えている。
 
 生産現場は、原価割れに
 生産現場ではまともでない価格形成の影響が直撃している。記録的な暴風と豪雨をともなった9月初旬の台風17号、18号は、ネギの産地・安岡地区にも深い傷あとを残した。梶栗町では鍋物にも入れる白ネギが出荷寸前で倒され、褐色にしなびた葉の先をとり土寄せをしながら、70代の農民が嘆く。「わしらには3度目の台風がくる。1カ月たってネギが出荷できるまでになっても、品薄なのにすぐに中国産が輸入されて、値もたたき落とされる。半年近く世話してきたのに、肥料代と手間賃にもならない。若い人が農業ができなくなり、荒廃した田畑がふえたのは、値が下がるからだ」。
 十数年にわたり魚価が実質下がりつづけているため、下関漁港に入る漁船は年年へっている。「沖合底引きは10年間ほどで、5統(2隻で1統)がやめて13統までへった。十数年まえは年の暮れのタイは12匹入りで5万〜6万円していたのに、いまは2万円しかない。水揚げは多いのに赤字つづきだ。1組当りで人件費や油代、経費を足すと3億円かかるが、いまの水揚げでは届かない」と沖合底引きの荷主は語る。魚はとれても魚価が下がって、人や船を維持していくのに見合わないために、廃船に追いこまれた漁業者たちは船からおりて、失業者の列に加わっている。
 製造業も事情は同じで、もずくスープ発祥の地・彦島地区で、生産加工にたずさわる水産加工所の経営者は、「大型店と取引するようになって、卸値をたたかれて原価すれすれでなにをやっているかわからない。原料のもずくが2倍、3倍の値段になっても、同じ卸値を要求されるから、やめるところも出ている」と訴える。冷凍食品の工場経営者は、「大型店は五割引セールに協力してくれなど、とてもできないことをいう。大型店の陳列ケースには、ニッスイや加ト吉など大手の輸入冷凍品しか置かれなくなった」と話す。
 コスト削減のしわ寄せは、従業員のリストラ「合理化」、後継者不足など深刻になっている。作業場で汗流して働いていた鉄工所の50代社長は、「企業として頭が痛いのは、若者に技術の継承をどうしていくか。コスト競争で即戦力しか雇えない、いまの状況では職人の高齢化とともに、船をつくる人がいなくなる。捕鯨禁止とあわせて、モリを撃つ人やキャッチングボートや母船をつくる人間がいなくなったが、同じ状況だ」とのべる。農水産物から加工品、工業製品まで、流通再編からまき起こされたあらしは、失業をふやし国内産業を空洞化させるなど生産現場をズタズタにしている。
   
 たたかわなければ生活守れぬ
 中堅ディスカウントの流通業者はのべる。「規制緩和で政府が派遣労働を認めたことで、いままで正社員でやっていたところに、社会保険も年金もいらないパート、アルバイトが大量に入ってくるようになった。これは人件費の価格破壊だ。おかげで30代で子どもをかかえて現代版“女工哀史”のような、先行きに不安をいっぱいかかえている人たちがどれだけふえたことか。若者のフリーターも、名前はよく聞こえるが同じ状況だ」。価格破壊と値下げ競争のおおもとには、労働者の労働力が安売りされており、実質賃金が低くなっているもとで、購買力がなくなり安いものを買っているのである。
 つづけて流通業者は、「ディスカウントといってもわれわれは100円の豆腐を売って、やっと30銭の利益を上げるような商売をやっている。イオンやヨーカ堂といえども、小売業のもうけより、キャッシュカードのローンで消費者金融のように利子で利益を上げているようなもの。ウォルマートがダイエーを買収すれば、傘下におさめた西友とあわせて日本で単独トップになる。これが攻勢をはじめれば、日本市場はひとたまりもないだろう」とのべる。
 水産の50代仲卸業者は、「価格破壊を持ちこんだダイエーの中内氏を、かつて国会に招へいして経済論をぶたせて規制緩和のもとをつくった。ダイエーが一兆円以上の負債をかかえて行きづまったのに、政府は既定路線で規制緩和をすすめている。これでは日本はつぶされてしまう」と危惧(ぐ)をあらわにする。規制緩和がウォルマートなど外資参入の地ならしとして、生産現場や中小業者をなぎ倒しながらすすめられ、労働者の賃金も引き下げている。規制緩和による外資への市場開放と、強盗のような弱肉強食の略奪経済が横行することで、小売業者、卸売業者だけでなく農漁業、製造業の生産者も、そしてだれよりも労働者がさんざんに生活を破壊されている。このようななかで、たたかわなければ生活は守れないとの思いはどこでも強まっている。

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