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市外発注やめ市内に仕事回せ
              下関 急激に進む市民の貧困    2009年10月23日付

 下関の街が急激に寂れている。郊外や市街地に行政主導でショッピングセンターばかりつくっているが、「賑わい」どころか、人口減少に加えて購買力が落ち込んでおり、モノを買える人間がいない。三井金属系のMCSが大量首切りをやり、神戸製鋼や三菱など大手企業は容赦なく労働者を路頭に放り出す。中小企業もバタバタと倒産。このなかで行政は市外発注ばかりして外に金を流す始末で、市内業者が潰れ、職もなく給料もない状態になっている。そして「下関にぎわいプロジェクト」「中心市街地活性化」の開発利権に巨額の税金を投入することになっている。安倍・江島体制以来の市外発注で市内にカネを回さない。これを中尾市政がつづけることに、激しい怒りが渦巻いている。
 下関一番のネオン街である駅前の豊前田は、ここ数年で更地が増えて駐車場だらけになっている。数十b通りを歩いただけで何カ所もあるのに気付く。「久しぶりに飲みに行ってショックを受けた」「茶山通り(シャッター街)化が進んでいる」と話されている。
 店主の一人は「サンシズカ(地元資本のスーパー)も撤退して、その他の店も経営難でシャッターを閉めていった。土地を遊ばせても仕方ないから駐車場になる。不景気でみなが飲みに出てこない。あと、全国チェーンの居酒屋やカラオケに客足を奪われている。夜になっても最近は人通りがまばらだ」と様子を話した。
 客待ちしていたタクシー運転手に聞くと「凸凹と店が畳まれて駐車場に変わる。いまの下関を象徴しているようだ。昔のように車が身動きつかなくなるような賑わいが消えた。MCSなどで働いていた若い子がパッタリ来なくなった。大企業は派遣の子たちを大量に首切りしたし、中小企業も青息吐息。みんな生活がやっとだ。金曜日、土曜日に出てきて飲んでいく層が限られてきた。私らタクシーも給料は安いが、サンデン(バス)も運転手の手取りは十数万円という。みんな懐が寒いんだ」といった。
 国道に面した大通りでも空きビルが増え、「テナント募集」の貼り紙が目立つ。大手企業の支店や出張所が小郡方面に移転する流れも止まず、空洞化が進んでいる。
 不動産業を営んでいる男性は「“カネは天下の回りモノ”といっていたのは昔のことで、みな外部に流れていく。大手の工場に勤めているのは少数で、ほとんどの市民は中小企業で働いている。下関では特に割合が大きい。それなのに肝心の中小企業の体力がなくなっている。カンフル剤であるはずの公共事業まで市外に出すから、地元が潤うわけがない。商店は県外資本の大型店になぎ倒される。このお金も県外に逃げていく」といった。

 苦しむ地元の業者 繰り返される市外発注

 お金が市内で循環せず、流れが明らかに変わっている。そのもっとも典型的なのが安倍代理市政のもとで意識的に繰り返されてきた市外発注だ。60億円をかけて建設中の社会教育複合施設(細江町)は、三菱商事が撤退したと思ったら、森元首相のお膝元から潰れかかっていた真柄建設(石川県)を連れてきて一括発注。同社が倒産して広成建設(広島市)が請け、その下請には長崎県や福岡県から業者が連れてこられる。運営企業もみな、市外企業が請け負った。
 750億円かけて建設している人工島もしかり。地元企業が共同企業体で入っているように見せて、実際には市外大手が分捕ったようなもので北九州ナンバーが溢れかえる工事現場となった。豊浦町湯町の観光施設も広成建設、五億円かけた梶栗駅も広成建設、二九億円かけている長府駅整備も広成建設。150億円かける駅前開発も広成建設が実質的に取り仕切ることは間違いないといわれている。あるかぽーと開発は大和リース、市営駐車場の管理運営はトラストパーク(福岡市)、市営住宅の管理業務もトラストパーク、駅前開発も事業者はトラストパークにやらせようとしていた。子どもたちの給食を作る調理場業務は北九州の業者。海響マラソンの弁当まで北九州に発注する始末で、土木工事だけにとどまらない。
 9月議会の総務委員会で、市契約室は平成20年度の入札・契約状況について報告した。件数換算では93・7%を市内業者が受注し「“公共事業の地産地消”といわれる地元優先発注が全般的に行われている」などと大手メディアが取り上げた。
 配布された資料を見てみると、確かに建設工事では全体で123億7600万円(1103件)の仕事が発注され、そのうち市外業者が15億4800万円(金額ベースで12・5%)受注。市内業者の受注額は108億2900万円(87・5五%)だった。選挙前年で地元発注を増やしたため、川中中学校建設や第一別館改修工事、海響館のペンギン御殿など比較的大きな工事に地元が食い込んだので、数字だけは上向いた格好になった。かつて年間100億〜110億円ほどを地元企業が平均的に受注していたのが、2002年を境に70億〜80億円へと一気に縮小され、しかも“横須賀方式”導入(2002年)のダンピング競争政策がもたらされて、二重の苦しみを味わってきた分野だ。
 ただ、市が発注する業務は入札室が管理して公表されるものだけではない。20年度の実績では、その他に各課が直接発注する「業務委託」が約60億3400万円あった。そのうち48億6300万円(3266件)が随意契約で、市外業者にどれだけ発注されたのかは、明らかにされない。
 「業務委託」のなかで設計・コンサルタント部門では「安倍事務所周辺が連れてきたパシフィックコンサルタンツが年間四億円も独占的に受注していた時期があった」といわれるなど、ブラックボックスになっている。業者のなかでは「業務委託の仕事は下請に入ると代金がなかなか元請から支払われなかったりする」「この分野は最低制限価格のルールが適用されず、随契以外の指名競争になると三割の叩き合いにもなる」と語られている。「入札改革」とは別物扱いになっている。
 市内に30社ほどいる印刷業界でもダンピングが熾烈で、「予定価格30万円の仕事を7万円で取っていったり、75五万円のものを20万円で取っていったり、銀行管理になっていた1社が凄まじい叩き方をする」と問題になっている。叩いて取った仕事が九州や山口市方面に流れて結局「市外発注」になって市内業者が苦しんでいるとも指摘されている。
 そして無料情報誌(秋と春の年二回それぞれ六万冊を作成)が創刊されたと思ったら約1500万円で電通が業務を請け負い、デザイン・取材・印刷・配布など一括受注で持っていった。2年に1回発行している『暮らしのサービスガイド』も大阪市のサイネックスが受注。市が1100万円かけていた経費を払わないかわりに、同社が市内の物販・飲食店、企業や病院をたずね歩いて、個人経営の医療機関なら八万円、小さなお店でも五万円と多額の広告を求めるようになった。市内から吸い上げて、編集・印刷・製本・各戸配布まですべての業務が市外業者に流れた。

 労働者の給料も減 安値競争激化の中で

 地元中小企業が請け負う仕事はガタ減りして、みなが殺到して奪い合うようになった。安い工事をさせられる業者は、資材や労働者の賃金を極限まで削りこんでかつがつまかなう。会社の経費など出ず、出費覚悟の仕事になるが、受けなければ資金繰りが滞る。
 10年まえには大工なら1日1万5000〜1万8000円が支払われていた日当が、今は半値の1万円前後。土木作業員は1万5000円前後だったのが6000〜1万円といわれる。北九州などから労働単価の安い企業が押し寄せるので、なおさら過酷な競争に拍車がかかってきた。
 市外業者を選択するのは、抜き取りを容易にするためというのが業界の常識である。市長の立場としては躊躇することであるが、へっちゃらでやってきた。さらに親分の代議士側が中央の大手企業、市外の政治家への影響力を持ちたいという点で、下関を犠牲にしてよそにサービスをする必要があるのだろうと観測されてきた。
 市民にカネが回らなくなったのは、統計を見ても歴然としている。この地域の生産性を示す市町村民所得は、15年前の平成6年に8425億8300万円だったのが平成18年段階で7566億1200万円へと約860億円も下がっている。その内訳を見てみると、雇用者報酬のなかで労働者が受け取っている「賃金・俸給」は4891億8600万円から4297億6500万円へと594億円も減少している。
 財産所得のうち家計部門は894億6000万円から403億900万円へと5割以上減少している。低金利政策が影響したもので、家計が受け取っていた524億円(平成6年時点)の利子所得(預金利息など)は、平成18年にはマイナス約25億円にまでなった。受け取る額よりも住宅ローン、カードなどで銀行に支払う方が多くなった。
 給料収入や利息収入が合計して1000億円以上も減った。購買力がすさまじい勢いで減退したことがわかる。働く場所がどうなったか見てみると、15年前の平成6年調査で旧豊浦4町を含めて1万7104カ所あった下関市内の事業所は平成18年時点で1万3319カ所へと22%減少し、そこで働いている従業者は13万7242人いたのが12万609人へと12%減少した。
 結果、全国平均の2倍の割合で生活保護世帯が溢れ、子育てに公的援助を必要とする家庭の割合は3倍。「全国の10年先をいっている」と行政で認知される状況になった。その間、企業所得は1834億円からおよそ350億円増加して、2184億円に伸びた。
 市街地開発で店だらけ。全国チェーンが押し寄せてますます街から現金を吸い上げる。圧倒的な市民は店を必要としているのではなく、買い物できる収入と仕事を求めている。「200億円の公共事業前倒し」「地元優先発注」を叫んでいた中尾市長であるが、早急に転換させること、地元経済が潤うような政策をさせることが求められている。

 

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