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市民が市長選挙の主導権を発揮
            下関 危機感強い現職陣営   2005年3月19日付

 下関市長選の告示となるが、「市民のための市政をとりもどそう」という市民のかつてない高揚が起きている。選挙は豊関地域合併にともなうものだが、3期10年の江島市政にたいする審判となる。有料指定ゴミ袋を値下げさせる会が主催した市長選公開討論会は、3氏が市民の批判の前に出てきたことからして、市民の力が市長選を動かしていることを実感させるとともに、市民が反対することを逆に自分の手柄として開きなおる江島氏の姿勢が、異常な印象を与えた。こうして、「市民はあきらめなくてよい」「市政を変えることができそうだ」「選挙がおもしろくなった」との世論がいっきに広がることとなった。現職江島氏はかつてない批判のなかにあるが、自民党安倍事務所を頼りとした、奇想天外な選挙マジックありの態勢である。それと対立するのは市民であり、とくに「今度は選挙に行かなければならない」という婦人層の動きが大きな力を発揮するすう勢である。選挙をまえに、市民との対立点はなにか、選挙情勢はづなっているか見てみた。
  
 ピンハネ構造に強い憤り
 多くの市民が江島市政のもとで食っていけない状態が、市民の怒りの底で渦巻いている。武久町の工事現場で土木作業員のKさん(36歳)は、ごつい手に公開討論会の報告チラシを持ち食い入るように見ていた。「働いても、働いても苦しくなるばかり。1日8000円で、子ども2人に妻は食べていけない。この会社にいつまでおれるか、失業保険もなく不安でいっぱいだ。現場で汗水たらしているものが食えなくなり、市外大手ばかりがピンハネしていく仕組みを変えなければ」と、切実な願いをぶつけた。
 朝から夕方5時まで重機やダンプに乗り、週のうち3日は夜8時半から翌日の四時まで、代行タクシーに乗っている。郊外の自宅アパートまで1時間かかるため、帰宅せずに自家用車の中で3時間ほど仮眠して、朝がくれば直接、工事現場にむかう。小学3年と5年の子どもと過ごしたいと思っても、休日さえ1日1万円で鮮魚運搬の仕事が入ることもあり、同じ家に住んでいても妻子に会うこともままならない。
 建設労働者は約1万2500人いる。賃金は土木作業員で、10年まえの半分近くまで下がった。市内の建設現場で起きた労災の死傷者数は、2000年は85件だったものが、01年が102件、02年が113件、03年が100件と、3年連続で3ケタとなった(下関労基署調べ)。最低賃金まで引き下げられ、ケガをしても病気をしても自己責任。ムリをしてケガをすれば、家族もろとも奈落の底に落ちていく。
 下関市が突出しているのが条件付き一般競争入札と電子入札で、小泉首相の地元・横須賀市につづいて全国2番目で、2002年8月からスタートさせた。昨年6月からは最低制限価格をとりはらい、地元業者のあいだでは底なしのダンピング競争がはじまった。1件の工事入札に30社、40社と殺到して、落札率が50%台のものも続出することになった。地元業者は仕事をするたびに赤字がふえるという、悪循環におちいってしまった。
 一方で、小さな仕事にまでゼネコンが食いこんでくるようになった。2003年4月から8月まで5カ月のあいだに、ゼネコンや大企業が落札した2億円以上の発注は7件で、金額ベースで見ると33億3000万円で全体の6割強を占めていた。ゼネコン、大企業の7件の平均落札率は96・9%となっており、電子入札が導入されても自由競争原理は地元業者だけで、大手は官制談合原理であったことがわかる。
 典型的なのが、高いゴミ袋代とかかわって、1昨年6月に総額65億円をかけて完成した全国3指に入る豪華なリサイクルプラザ、スイートルームのじゅうたん仕様の奥山工場。両施設で約180億円がつぎこまれた。これらは官制談合の情報どおりに安倍晋三代議士の出身・神戸製鋼所が落札したものだった。加えて運営費として毎年八億円が、随意契約で払われている。神鋼はこれらの施設を建設する技術は持たず2〜3割のマージンをとって、西松建設に丸投げ、下請、孫請などに入った実際に建設にあたる業者は二重三重のピンハネにあい、追加工事の代金を踏み倒されて倒産した会社もあった。
  
 意識的な殺人政策 電子入札や大型店出店
 こうしたピンハネのもとで、年間4億〜5億円がゴミ袋代として市民から巻きあげられ、建設労働者は妻子も養えないホームレスのような状態におかれた。地元雇用は冷えきってしまい、下関中央工高や早鞆学園の土木・建築科は、10年まえはほぼ地元業界に就職できたが、「いまは頼みこんで数人がやっと。地元に仕事が少なすぎる」(就職指導の教師)という状態である。
 公共事業のダンピング入札政策を見直してほしいという建設業界からの要望には、「一万人にとおしてもらっているわけではない」と、江島市長から頭ごなしにはねつけられてきた。公開討論会でも「行政から見れば効率がよい」と突き放した。市内に仕事が回らず、税収もないようにしたのでは、効率などというものではなく、行政崩壊である。
 商業政策では大型店誘致をすすめ、何十億円もの血税をつぎこんだ埋め立て地「あるかぽーと」に、3万平方b規模の複合型商業施設を計画している。野放しの大型店出店ラッシュで、市内における大型店の店舗占有率は7割まで上がっている。ピーク時に4667店(1979年)あった小売業商店は、2002年には2949店までへり4割が消えた。かつて31あった商店街のうち10の商店街がなくなった。農漁民や中小の製造業者が生産する商品は買いたたかれる。3年まえに80億円かけて新築したばかりの唐戸市場も、セリ場を大和町の下関漁港市場に移すことから、建物はムダになり業者の困難は大きくなる。
 こうしてみずから命を絶って生命保険をつぎこむ経営者があいついでいる。下関市内の自殺者は1994年には年間38人までへったものの、2000年は67人になり6年間で76%増加。2002年が63人。自殺者が出ることがわかって、電子入札を続行し、大型店出店を促進するのは、意識的な殺人政策といえる。ものをつくり出し富をつくり出す源泉である働く労働者が仕事がなく、あっても食えない賃金というのでは、下関を支える根幹を破壊する政策である。

 10万人超す署名も無視 ゴミ袋問題
 1昨年6月からはじまった、母親たちのゴミ袋値下げ運動は、市民の切実な生活要求を背景にして、たちまち全市に広がった。母親たちや自治会などから10万3000人分の署名が1昨年末に提出されたが、江島市長は「10万でも20万人でも、下げる気はない」と検討の余地すらなくはねつけた。公開討論会でも「下関でとりくんでいることが、全国であたりまえになる」とのべ、全国に迷惑をかけて悪かったというのでなく、全国に先がけて自慢すべきだという態度であった。市民の不幸が市長の手柄というのである。
 下関の燃やせるゴミの大袋は1枚50円で、山口市の五倍、北九州市の3倍という異常な高さのうえ、指定ゴミ袋は特許つきの“ミミ”をつけたため、大分県の一業者しかつくられない疑惑つき袋。

 犬猫以下の食器に使用禁止トイレ うっ積する母親の怒り
 ゴミ袋値下げさせる会の母親は、教育アンケートを今年1月中旬からはじめた。旧市内の親を対象にしたもので、2カ月のあいだに小・中学校の全50校1200人分が寄せられた。多く指摘されているのが、昭和30年代から変わらない、犬猫以下のアルマイト製の給食食器。下関市のぼこぼこのアルマイト食器と、美祢市や豊北町のプラスチックのような耐熱性食器の差に、母親たちはびっくりした。子どもたちはアルマイト食器に温食を入れると、熱くて持てずに犬食いをしていることや、竹製のハシは煮沸で弓なりになって、具をつまむことに苦労していた。これでは、食生活のマナーの教育は逆効果であり、下関で育ったことを誇りにできない。
 “使用禁止”のトイレは1年以上が25カ所、1年以下をふくめると100カ所にのぼることが明らかとなった。台風で壊れた門が何カ月も放置されている小学校、照明が切れたままの体育館、校舎の外壁が落ちてもロープで通行止めにしたままの中学校などがあった。江島市政となって毎年、教育費は10%カットされてきたが、アンケートで使用禁止トイレが問題になると、市教委があわててトイレの修繕をはじめたことは「県下一子どもを粗末にしている下関の教育行政も、みんなで力を合わせれば変えることができる」と母親たちは確信を深め、市政を突き動かす力になっている。
   
 市長縛る力結集へ 揺らぐ選挙安泰構図
 どうしてこのような聞く耳のない市民不在の市長が、3期10年も市長ポストに座りつづけることができたのか。これまで選挙が安泰だったからである。下関では、安倍代議士に飼われたなら、市民に嫌われても市長ができることが定説であった。江島市長は後援会を持たず、今回も選対本部は安倍事務所を挙げて、選挙を支えている。
 さらに江島市政になんのチェック機能もはたさない市議会の腐敗である。サンデンの労組出身の小浜俊昭議長が、通算10年以上も同ポストに居つづけるという、全国的な記録を持つ。そして市議会は、保守も革新も、どこにどう境界線があるのかわけがわからない状態で、年間1000万円をこえる議員報酬をもらって、ボスザルにかしづくサル軍団のようだとみなされている。
 だが今度の選挙は、婦人をはじめとする市民の運動によって、難攻不落とも思われた安倍・江島態勢が揺らいでいる。公開討論会での江島氏の緊張して青ざめた顔が、市民の評判となり、「安倍事務所がしめつけを強めている」という情報が、かれらの危機感の深さを実感させている。
 かれらのなかで江島選挙は、総理候補である安倍晋三氏のメンツがかかる選挙といわれている。これまでの腐れ縁からして、自民党推薦候補という面からして、自民党幹事長代理としては格好がつかないのであろう。だが、安倍派が支持者をしめつければしめつけるほど、気づいたら安倍晋三氏の首の方がしまっていた、という結果になりかねない情勢ともなっている。
 スジをとおして江島氏とともに安倍氏が心中するか、自民党推薦のスジもメンツも捨てて、乗りかえて実をとるか、勝ち馬に乗るのは安倍事務所の得意技という経過がある。松原陣営から「勝った」の声が上がっているが、安倍事務所が旧知の関係である松原氏に乗りかえたのならその可能性をうかがわせる。しかし、いっそのこと恥も外聞も捨てて中尾氏に乗りかえるかということも、いままでのいきさつから見ると、ないとはいえない。
 選挙マジックがさまざまに想定されるにせよ、市民との力関係が決定するものであり、選挙の主導権は市民の方にある。下関をないがしろにするデタラメな江島市政が安倍事務所頼みであったことは明らかである。市民にとってはこの江島市政への審判が第一の課題となる。
 どのような選挙結果になるか、選挙後に市民のいうことをいかに聞くようにさせるか、市民の側の力の結集がこの選挙の最大の課題となる。

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