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市民困窮のなか箱物突っ走り
下関・中尾市政1年
               議会は皆与党になって    2010年3月29日付

 「本案は原案通り可決すべきものと決しました」。3月26日、下関市議会の最終本会議では、予算を審議してきた各常任委員会からの報告が延延と続き、採決になると昼寝していた議員たちが目を覚まして、起立賛成で黙黙とお墨付きを与えていった。大不況でかつてなく下関の街が冷え込んでいるなかで、200億円規模の新庁舎建設関連事業や55億円を投じる駅前開発その他の巨額箱物事業が、次から次へと流れていく。これに対して「ちょっと待て!」という者がいない。“箱物食い散らかし市政”は、退場に追い込まれた江島潔前市長から「市民派」装いの中尾友昭市長にバトンタッチすると、やっていることは同じで、モノ欲しそうな連中がみな与党利権にまぶりついて、安倍・林代理市政の翼賛化が進化することとなった。就任から一年がたった現状を見てみた。
 中尾市長は27日、市長就任からの一年間を振り返って、自己採点で80点をつけてみせた。新庁舎問題にも区切りがついたといってはばからない。「耐震・劣化診断の結果や合併特例債の有利性や期限を考慮すると、(庁舎を)すべて残す方がムダだとわかった。経営的な判断をした」「選挙では“中尾に任せる”という人も多かった」と発言した。
 一年前に「このご時世に借金して本社社屋を建て替える経営者がどこにいますか!」と聴衆に説教していたが、人に怒鳴っていたと思ったら自らが実行してみせた。というより、はじめから選挙公約を守る気などなかった。
 「ウソでも何でも言って勝つのが選挙」などと選対幹部らが論議していたことを、そっくり実行しはじめた。
 あるかぽーと開発、老人休養ホーム・満珠荘、新庁舎にせよ、主要な約束をみな放り投げて、結局実行しているのは江島市長が進めてきた箱物散財政治の踏襲で、一方では市民税滞納者への厳罰化などもはじまった。市長就任後、さっそく「海外出張に行きたい」と言い始めて職員を驚かせていたが、今年は念願かなってトルコ旅行にも行けることになった。
 多くの市民が唖然としているのは、下関市長になった者はいつも公約破棄をへっちゃらでやってのけることである。「中尾は“超”がつくほど真面目」とイメージ戦略を繰り広げたのとは逆に、泥水ならガブ飲み状態といっても違和感がない。新庁舎建設まできて街の隅隅で「大嘘つき」「ダマされた」「詐欺だ」と評判になりはじめた。
 新庁舎についてはいまのところ、現庁舎を30億円かけて耐震改修して、さらにその横に床面積が約2倍の「市民サービス棟(九階建て)」を建設する計画を「公約の一部変更」といっている。ところが本人にも議会にもそのつもりはないようで、現庁舎は時期が来れば解体するか、もしくは現状のままにする方向に向かっている。耐震改修には合併特例債を充てず、期限切れになる一五年度まで手を加えずに先延ばしすること、それよりも先に教育委員会、保健所棟を解体して建設する「市民サービス棟」が動きはじめた。「ワンポイント・リリーフ」の任期が切れ、新庁舎が完成した後に次の市長が「30億円もかけて保存するのはムダ」と舵を切ればよいだけになる。
 山口銀行の所有地を買い取った場所に新博物館、JR西日本・山口銀行と三者で進めている駅前にぎわいプロジェクトには総額150億円のうち55億円を市財政から拠出。新年度だけでも25億円もの予算が、すんなり議会で承認された。幡生ヤードには教育センターを建設し、新庁舎候補地だった勝山対策として勝山支所・公民館の建て替えもトッピング。豊田、菊川、豊北町の総合支所は「人数、機能に見合った規模に建て替える」つまりコンパクト化する構想も唐突に浮上した。
 市政を推進するトップとその周辺の首がすげ替わった事、それに伴って利権集団に多少の変化があらわれている以外に、代理人市政の性質は何ら変化せず、箱物食い散らかしが止まらない。
 箱物利権ありきの暴走市政は泉田市政が道筋つけた人工島がもっとも分かりやすい例で、いまになって「一隻入港した」「二隻目も入港した」とニュースになるほど利用価値がない。似たように、ライフライン整備に膨大な経費を注ぎ込んだ区画整理事業(市の認可事業)も需要がなく、広大な用地にイズミが出店して商業施設の市街地戦争を誘発したり、跳ね上がった固定資産税に地主が悲鳴を上げたり、開発利権のツケがのしかかることとなった。道路をつくるのが目的だった椋野地区も、ブローカーから買い取った土地に市営住宅ができるほかは、区画整理をし過ぎて売れ残るばかり。
 そして大型店競争の結果、下関駅にぎわいプロジェクトをブチ上げた下関駅前からはダイエーが九月撤退を表明して衝撃が走った。シーモールのおよそ三分の一を占めていたテナントが退いたところに、さらにシネコンを含んだ商業施設を建設し、JRと下関市が駅ビルも建設するプランで、だれがどう見ても経済情勢とおかまいなしのデタラメな事業であるが、議会でもほとんど問題にならなかった。放っておいたらシーモール周辺が幽霊屋敷にもなりかねないのに、開発利権で突っ走る。「JR西日本と山口銀行、大和町(安倍事務所)で話がついているのだから、邪魔したらダメ」などという関係者もいる。

 市税減るのに過剰投資 徴収は厳罰化を強化

 「450億円の合併特例債は使い切らなければ損なのだ」といって過剰投資にのめり込む。特別会計もひっくるめると2300億円ともいわれる借金をますます積み増しする方向に向かっている。
 下関の財政状況を見てみると、箱物で食いつぶしている場合ではない。自主財源である市税は毎年減るばかりで、新年度は339億円。一昨年から比較すると21億円減と、すさまじい減り方を見せている。その市政が一般会計だけでも1175億円、特別会計と合わせたら2096億円の予算を組む。
 予算の一割にあたる116億8000万円を市債発行すなわち借金でまかない、貯蓄にあたる基金は26億円取り崩す計画だ。基金残高は今年度末には169億2300万円まで減少すると見込んでいる。歳出の部分では、これまでの借金償還にあてる公債費が126億3000万円と全体の一割を占める。
 いま現在は大盤振る舞いであるが、合併特例債が切れたのちには優遇措置がなくなり、国からの地方交付税が毎年のように減額となる。その際に、借金負担を丸抱えして市民サービスを猛烈にカットするほか道はない。国そのものの財政が破綻しており、2010年度予算は95兆円のうち40兆円が国債発行によるものなのだ。
 減る市税収入を補う為に厳罰化を強化したのが中尾市長で、就任してからは市民税が払えず困窮している市民に督促状が送りつけられたり、差押えが急増。22年度からはさらに徴収を強化し、専門職員を配置して「5億円を捻出する」と目標数値を掲げている。しかし市民生活が豊かにならないことには、制裁をいくら強化したところで失う市民税の額がはるかに大きい。箱物散財をやっている傍らで人口は「2050年には20万人まで減る」街へと変貌を遂げている。

 戦時中並の借金に膨張 国の財政

 近年、小泉改革を筆頭に「財政再建」が叫ばれ、国も地方も市民サービスをカットして自己負担を増やし、年貢奴隷のようにして税負担を強化してきた。しかし下関市政を見ても箱物利権ばかり繰り広げて、ゼネコンや政治家ばかりが食い散らかすのを市民は目撃してきた。
 大盤振る舞いの国家財政がどうかというと、世界的にも稀に見る債権国で、国と地方の借金を合計すると1100兆円を超えている。債務残高のGDP比率ではEUから追い出されそうなギリシャよりもまだひどい。
 なぜこれほどまでに巨額の債務を抱えることになったのか。1990年の日米構造協議で米国政府の要求として「10年間で430兆円の公共投資公約を実行する」と約束させられて内需拡大をすすめ、途中の94年の日米構造協議で200兆円が上積みされ「2008年までに総額630兆円の公共投資公約」に変更となり、国も地方も箱物が奨励された。その結果が夕張であり、全国の自治体の破産状況へとつながった。
 日本の場合、国債を発行するといっても買い取っているのは銀行や郵政資金で、つまり国民の金を注ぎ込んでいる。これらが焦げ付いたら1000兆円を巻き上げられるようなもので、要するに国民資産が担保になっている。残り300兆円借金を膨らませて「国民の金融資産1400兆円」「国の債務1100兆円」のバランスが逆転すると、金利が急上昇して国債は紙屑となり、借金ができなくなって破産することになる。借金残高GDP比率が先進国で最悪なのが実態となっている。
 小泉内閣が発足した2000年代初頭に国債残高だけなら530兆円といっていたが、アッという間に膨れあがった。そして外務省は、日露戦争以来、初めて外国要人に国債の説明会を開催。戦時中並の借金額へと雪だるま式に膨れあがっていることを物語った。

 

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