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市民の力で政治状況が激変
グローバル市政の崩壊
                 記者座談会・下関市長選       2005年4月2日付

  豊関合併にともなう下関市長選は、三つどもえ戦のなかで現職・江島潔氏がかろうじて当選したが、有権者数から見た得票率は19%で、信任とはいえない結果となった。選挙結果は大きな反響を呼び、下関の政治的な激震を起こしたといえる。この選挙をめぐって、市民の反響はどうなっているか、選挙結果をどう評価するか、どうしてこういう状況になったか、今後の市民がすすもうとする方向はどういうところにあるか、など本紙記者座談会をしてみた。
   
 デタラメ市政を支える勢力 労組・「革新」の欺瞞暴露
 A 市民のなかでは、まず出たのは「くやしい」というものだった。しかし1日2日たつと、江島市長の方が無惨なことになっており、市民の力が勝ったという世論がひじょうに大きく広がっている。難攻不落とも思われた支配構造をガタガタにさせたし、市政を変えるのはいまからだという確信になっている。
  ゴミ袋値下げの会のある母親は、江島市長を四選させないためにがんばってきたから、がっくりした面もあったと話していた。しかし現職は市内では約3万票しかとっておらず、郡部もふくめて4万6000票であったことにたいして、批判票が7万票もあったことに、逆に力がわいてきたといっていた。
  教育アンケートの街頭宣伝が、選挙後もスーパーの前や地域でつづけられているが、選挙のあとの方が、人だかりが大きくなっている。つぎつぎに若い母親や年配者が「選挙で示された勢いを止めてはいけない」「アンケートを預かろう」と寄ってくる。公共事業を地元発注しないことなど、いろいろなことが話題に上がっている。
  ある建設業の経営者は、開口一番に「江島市長が信任されていないことが証明された市長選結果だ」といっていた。これまでだと四年間は干されると、がっくりしてあきらめていたが、「ゴミ袋値下げ運動の人たちと、いっしょにがんばらないといけない」「おかしいことでもしたら、四年後を待たず市長を変えよう」と、たたかう機運が高まっていた。
  ある老人は、「わたしは自民党を支持してきたが、もう安倍には入れんぞ」と怒っていた。別の婦人は、「なぜ安倍さん林さんはわざわざ東京から来て、下関で嫌われている江島市長のテコ入れをするのか」と怒っていた。市民にひどいことをしてきた江島市長をムリやりとおした安倍事務所、林事務所が汚れの元凶であり、そこにほこ先がむきはじめている。江島市長を使って下関をダメにしたのは安倍、林代議士ではないかと。
  市民の力が確信になっている。選挙で終わりではなく、これがスタートという実感になっている。まさに画期的なことだ。安倍事務所があれだけの権謀術数をめぐらしてきたが、市民の力がはね返し、難攻不落と思われた基盤が大きく崩れた。
   
 江島市政の不信任 旧市内は3万票以下
  得票数を見ると江島潔氏は4万5938票、中尾友昭氏が4万3468票、松原守氏が2万6838票だった。江島氏は2年まえに3選された市長選で、7万9000票とっており、今回は約4万6000票で激減だった。そのうち、事情を知らない旧郡部への依存が大きく、郡部から1万5000票以上が現職に入ったとみられる。つまり旧市内では3万票以下しかとっていない。新しい下関市の有権者数は23万9000人で、このうち江島市長の得票率は19・3%で、5人に1人も認めていない。これは立派な不信任だ。「市長ではなくて盲腸だ」といったおばさんもいる。
 B 市民の実感として、自分のまわりで江島支持という人を聞いたことがないと、どこに行っても語られていた。年代では、江島票は老人層が多く、50代、60代は多くが反江島票を投じており、現役世代は現職批判が多かった。建設業者や商店主など、従来の自民党支持層がのきなみ、批判票を投じている。江島市政の3期10年にたいして、「つづけさせると下関が沈没する」という強烈な怒りだ。主婦層や若い人たちも、総じて現職を落とすことに必死になっており、総スカンの状態だった。
 A 政策については江島氏がゴミ袋値下げをしないと回答したのにたいして、中尾、松原の両氏とも値下げすると約束した。あるかぽーと開発は白紙撤回、公共事業は地元発注など、元県議の2人は江島氏の政策を否定するという点でほぼ一致していた。結果、2人のかかげた政策には7万票が集まったのだから、江島氏はその政策を採用する義務を課せられたということだ。

 三万でも疑惑多い得票 労組や公明票が動く
 C 旧市内で江島氏がとった3万票は、だれが入れたのだろうかと不思議がられている。表だってめだたないのだ。
 D JR西日本は労資ともども、関連企業もあげてフル回転で選挙にとりくんでいた。下関駅や梶栗駅、長府駅を江島市長がつくりかえたり新設すると公約したが、どこからどう見ても利益誘導だ。利益誘導が選挙違反だという意識はそうとうに薄れて、選挙だから当然だというのがあたりまえのようになっている。
 郵便は特定郵便局と普通郵便局、組合幹部がいっしょになって、中央から論客が来て市長選と郵政民営化反対をくっつけて江島支持をやる奇妙なものだった。社会党を支持していたという全建総連は江島後援会のパンフレットをおろした。一人親方に仕事をちらつかせて、家族もふくめて3000票近くを抑えたつもりだろうが、現場の作業員たちは破り捨てていた。
  連合下関や公明党は、自主投票といっているが、終盤かなりの部分が現職支持で動いていた。連合出身の松原には林兼だけだったという話だった。各種の宗教団体も、それぞれが現職で傾いていた。
 連合は、企業としての利権関係の深い三菱、神鋼などの旧同盟系はもちろん、JRや全逓なども江島だった。労働組合が、市内の労働者の職を奪い、食えないようにしている現職市長を支持する。公然と江島支持を世間に訴えるのははばかられるが、実際行動ではよその労働者を不幸にすることで資本にとり入り、自分の小さな利益をはかるというものだ。労働組合は支配勢力に反対するというのが世間の常識であったが、その逆で、労働者や市民を攻撃することで、江島市政を支える勢力になっているということだ。労組を動かすには金がいるというのは、以前からの下関の定説だ。
 D 公明党も、自主投票といっていたが、一定部分は現職批判で動いたが、上からはやはり江島で動かしたと見られる。上層の幹部が金をもらって票を動かすというのは世論の定説となっている。「信仰を金で売るのか」との怒りがある。

 「共産」掲げた集団暗躍 江島市政批判はせず
  注目されているのが「共産党」の看板をかかげた集団だ。県議選の1万3000票はどこへ行ったのかと見られている。NHKの出口調査で「共産党」支持者のうち、2〜3割が現職に入れたという結果が出ていたことに、よそから来た記者が「下関は変わっていますね」と驚いていた。
 F 高教組のOBに電話があって「松原に入れよ」といってきたという話がある。ゴミ運動にも関係する婦人のところには「中尾がよい」といってきたという話がある。ある組合関係者は、「市議選などで江島市長との取引がある」と語る人もいる。破たんした日韓高速船問題で田川弁護士らが亀田前市長を追及して、江島市長を助けて以来依存関係があるといっている。
 はっきりしていることは、この10年、かれらが江島市長とたたかった姿を市民が見たことがないということだ。今度の選挙でも、江島批判を聞いていない。市議選で1万票しかなかったのが、かれらの退潮のなかで3000票ふえたのは、どこと取引したのだろうかとも見られている。また自民党側が、3人ともに自民党推薦願いを出させたことで、「自分の党派から出ている県議選には行くが、あとはだれに入れても同じだから現職でいくか」とごまかせる条件をつくったと思う。
 E 関係の薄い支持層のところでは「中尾」といい、一定の組織関係のところでは「松原」といい、自分たちの組織の内部かかなり近い腐った部分のところでは江島でやったのではないか。公然と現職支持といえば、大衆を欺くことができない。しかし現職与党でいい位置はほしい。紳士ヅラをしながらコジキ的ものほしさが同居しているというのが特徴だ。人人は「共産党」といえばまだ体制批判と思っている人がいるが、中央が「安保」も自衛隊も天皇も容認するというなかで、安倍・江島容認は不思議ではない。この辺に、2400票差の江島当選の秘密があるのではないか。
  安倍事務所が選挙は強いという神様のような印象があり、江島現職が勝つというとき、その神様の秘密は、公然とは安倍・江島支持とはいわないが、かくれてそれをやる以上のような革新ヅラした勢力がいることにある。労働組合を労働貴族が占領する状態をやめさせ、宗教界でも金で信仰を売るのでなくまっとうな真実をとおすようにし、「共産党」腐敗集団のインチキも市民的に暴露するなら、この神話は崩壊する。
 F 90年代に入るとソ連や東欧が崩壊し、いわゆる戦後の米ソ二極の対立構造が崩壊した。アメリカの一極支配が露骨になるが、同時に社会主義勢力の崩壊、日本でも労働組合や左翼勢力が崩壊し、自分の損得のために大衆を裏切って体制側の協力者になっていく。旧来の保守系以上の体制擁護派になっていく。10年の江島デタラメ市政はこのような時代のあだ花だ。江島市長は、労働組合、革新勢力の抱きこみにはかなり気を遣ってきた。こうして、自民党支持の保守層が江島市政に総反発し、これらの元の革新勢力が支えるという逆転状況になっている。

 選挙を巡る操作もマヒ 市民主導の選挙で
  選挙では安倍事務所の選挙マジックが働いてきたがそれも出がらし状態になったと思う。対抗馬が出るのをつぶすというのが第一弾。これが中尾氏の出馬で覆された。そしたら松原氏を出して現職批判を分断し、現職打倒は奇跡という状況をつくる。そのうえに、3人とも自民党推薦願いに誘い、だれにかわっても江島市政と同じだという印象を与える。
 A これらを突き破っていったのは市民の運動だ。選挙は候補者が主人公で市民はその応援団ではない、選挙で市民の運動を強めることが一番大事だ、新しい市長ができても裏切らなかった市長はいない、それを縛りつけて、市民のいうことを聞かせる市民の力をつくらなければなんにもならない、というのが市民の共感を呼んで、市民運動のパワーになった。
 ここで、決定的な役割をはたしたのが婦人たちのゴミ袋値下げを求める運動だった。これが10万人の署名を集めたことが、この選挙では一番の注目点だったし、中尾氏が手をあげた原動力だったし、松原氏が一番注目したのもそれだった。そして3人の候補者を呼んで市民の質問にたいして政策を問いただす公開討論会が開かれたのが、画期的なことであり、市民主導選挙の証となった。
   
 大衆運動が原動力 市民の要求束ねる
  どうして選挙における市民勝利がつくられたかだ。第一は、江島市長が3期10年で、むちゃくちゃをやってきたからだ。それへの市民の怒りが爆発したということだ。それらの市民のなかの要求を集めて、政策要求にまとめ、政策的な対立点が鮮明になったこと、そして市民の大衆運動になったことが原動力になった。
 A やはり母親たちが集めたゴミ袋値下げ署名が大きかった。江島市長3選の2カ月後からはじまったゴミ袋値下げ署名は、職場や地域に手から手へと回されて、自治会もとりくんで10万数千人の署名が集まった。12月に母親たちが「ゴミ袋を値下げすべき」と署名簿を提出したが、江島市長は「10万、20万人であろうが、下げる気はない」と、まったく聞く耳を持たなかったことが、一つの起点となった。
  ゴミ袋値下げ要求は、それだけではなかった。署名する市民の根底には、公共事業の現場がダンピング入札政策で、建設労働者にとって食えない状態になっていることなどがあった。市民が必死で払っている税金が、県外へと流れていき、夫や子どもの地元雇用のためには使われず、妻子すら養えなくなっている。1月中旬からはじまった教育アンケートは、2カ月で旧市内50校の小・中学校から、1200人分が寄せられた。使用禁止トイレが100カ所以上にのぼること、犬猫以下のアルマイト食器で食事マナーも破壊しているなどへの怒りが噴き上がった。
  ゴミ袋値下げの会の公開討論会が局面を変えた。「市民の声を聞く市長を実現する市民討論会」を3回つづけて実施して集約された、@環境問題、A教育について、B商業活性化、C公共事業・雇用問題を、公開討論会で市長候補予定者に問いただすことを決めた。3月12日に開かれた下関市長選公開討論会は、ひじょうに緊張感があった。3氏の実際の姿、その違いがハッキリとあらわれた。
  参加した市民は「はじめて自分の目、耳で、投票する人を決めることができた」と喜び、別の市民は「一部の政治家が決めてきた市長選から、市民のための市長選になってきた」とのべた。市民の力が市長選を動かしたことを実感するものとなった。中尾氏も、「市民党でいきます」と、それまでの企業回りからトーンをかえた。
   
 構造改革と対決へ 各階層の運動に
 E 3期10年のあいだ江島市長が実行してきたのは、アメリカ仕こみのグローバル政治だ。それが地方の市政でやられたらどんなことになるか、下関は安倍、林、江島体制でその先端をきることになった。自由化、市場原理が時代の先端のようにいうが、大企業やゼネコンは官制談合になり、小さいところだけが自由競争のダンピング強要で、労働者はまともに食べられないまでピンハネされる。もちろん民主主義どころではない。このグローバル市政を瓦解させたのは全国への下関市民の貢献だ。
 安倍晋三代議士は「次期総理候補」とおだてられ、そのメンツをかけた選挙だといって、安倍事務所が江島選対をすべて丸抱えでとりくんだ。ところが安倍氏の方が真青になる結果となった。「自民党のクリーンな選挙の顔」どころか、「下関市政の汚れの元凶」「選挙の疫病神」とみなされる羽目になった。
 F 規制緩和というが、建設業もそうだが、商店街では米屋も酒屋や薬屋、肉屋も魚屋もつぶれていった。倒産や廃業、自殺にも追いこまれた。だから、市民の怒りは半端なものではない。命がけのところがあ局面をかえた。
  下関市民の会の街宣カーで、グローバル化でホームレスになるという訴えは、反響が大きかった。全国2番目に電子入札を導入する。県下で一番高いゴミ袋を押しつけて、「もうすぐ全国でやられるから」と自慢する。下関市立大学も行政の予算措置が全国一低く、小・中学校の図書費も飛びぬけて少ない。介護保険料や国保料も高い。全国が嫌がる米艦船を呼んで、異例の歓迎セレモニーをおこなう。海外旅行も外相なみの全国トップクラス。アメリカ仕こみのグローバル政治、構造改革の全国の先端を実行したのだ。

 時代遅れの江島市政
  あのイデオロギーの突破が問題意識となった。ピンハネするものが時代の先端のようにいって、働くものが時代遅れあつかいされて、食えないようにされる。教育も医療も福祉も「受益者負担」「自己責任」といって、社会的保障を悪のようにあつかう。ようするに金がもうかるかどうかが最高の正義で、社会のために役立つかどうかは時代遅れというものだ。自分のためが時代の進歩で、人のため社会のためは時代遅れというのだ。どっちが進歩かという問題が鋭い対立となった。その根本は、生産する人民、とくにみんなで協力しあって集団的にものを生産する労働者が時代のもっとも先進的な階級だということの否定をまかりとおらせてはならないということだ。
  英語とコンピュータを使う野蛮人だ。原爆という最新兵器を使った野蛮人だ。刃物を持った野蛮人が幅をきかせる時代というのは、つぶれるほかはない。また地方の大事さ、郷土愛を否定した国際化が進歩のような顔をしている。江島市長はアメリカの小学校を出たアメリカ市民という意識で、民族劣等意識がひどい。郷土の歴史などクソくらえだ。しかし地方に根がない国際人はいない。そういうものはアメリカ人からはバカにされる。それは国籍のない地球人、つまり宇宙人のような存在だ。エイリアンが地球人に化けて人類絶滅のたたかいを挑むという映画がはやりだが、下関の市民絶滅攻撃にさらされる気分に似ている。
 国際主義というとき、自国の独立を要求する以上、他国の独立を支持するというものだし、それぞれの民族に根のない国際主義はない。「地方より東京が上」「東京よりニューヨークが上」とみなす。この辺は左翼的な部分にも江島氏型のグローバリズム人間に共通したものがある。歴史を創造する人民は全部地方で生産し生活しているのだ。地方をとり去ったら人間の実体はなくなる。
 B 下関の市民を大事にしないものが、国民を大事にできるはずがなく、いわんやアジアのことや北朝鮮のことを大事に思うわけがない。安倍氏は北朝鮮にたいして経済制裁を叫ぶ旗頭だが、なんのことはない下関でさんざん経済制裁をやっている。

 市議会の抜本的刷新を
 C 今後の課題として、市民の運動を強めることがもっとも重要だ。労働組合が反市民反労働者の江島与党になっている。市内の労働者を苦しめる側にいる。こういう状況を突破する労働者の運動を再建するともっとも力のあるものになる。ホームレスのような状態におかれている労働者の要求は充満している。これを運動体にすることが重要だ。中小業者や農漁民の運動、婦人や青年の運動、また教師や文化人、知識人の運動など、それぞれの基本的な要求に根ざして共通の要求の運動を起こすことだ。
 E 戦争問題もある。江島市長は熱心に米軍を呼んでいる。軍港化だ。戦争体験者の新鮮な怒りを共有し、この力も結集しなければならない。
 A 下関の市長選は全国的にも注目されている。本紙のホームページもひじょうに注目されている。グローバリズム市政との市民的なたたかいということで、自分のところも同じとして、新鮮さを感じている。
 D 市民のなかでリコールをやろうの声が強まっている。いずれにしろ、もう一段市民の力を強めなければならない。さらに保守、革新ごちゃごちゃになって江島与党となっている市議会の実態を明らかにし、抜本的な刷新をしなければならない。ここにも市民と結びついた代表を送りこんで、大衆運動を基本にしてかれらを規制する力をつけなければならない。地方は国に、国はアメリカに、という調子でいいなりにさせる強力な流れにたいして、市政を市民の手にとりもどす市民の運動を強める確信ができてきたというのが、今度の選挙の成果だと思う。

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