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規制緩和とは奴隷労働づくり
下関・ダンピング入札
             大手の官製談合は奨励   2004年11月9日付

 下関市の江島市政が全国に先がける公共事業のダンピング入札政策は、市内の1万2500人といわれる建設労働者を失業、半失業状態に追いこみ、サービス残業や仕事が終わったあとにも深夜労働をさせるなど、奴隷労働を生み出している。「国際競争力を高める」などといってアメリカの指図で小泉構造改革がすすめられているなかで、江島市長は地元中小業をなぎ倒すことで、金融機関の不良債権のもととなっている、ゼネコンや大企業に公共事業を独占させて、市民の税金を金融機関が吸収し、それがアメリカに流れていくことに奉仕している。しかし地元の労働者がいなければ、ピンハネどころか道路一本できないことも事実で、江島市政のダンピング入札政策をやめさせて、人間らしい生活をさせよとの勤労市民の声は強く広がっている。
   
 「人間らしい生活させよ」の声強まる
 左官のAさん(50代)は、3年まえに勤めていた会社がつぶれて、日給月給で建設現場に入るようになった。左官になって三十数年のベテランで、10年ほどまえには日給1万5000円前後だったが、いまはその半分程度しか手元に入ってこない。
 この1年近くは、災害対策で急傾斜地をコンクリートで固める建設現場にたずさわっているが「もとがダンピングでとっているから、いい仕事をしろとか、早くやれといわれてもできるわけがない。人夫出しの会社だから、どれだけピンハネするかしかない」と憤りを語る。「働いても働いてもよくならない暮らし、まさにそれだ。貯金はないから、いまのうちに葬式代ぐらい貯めておかないとと思っている。寝るまえのアルコール1杯と、休日にぶらぶらすることだけのために働いているようなもんだ」と、退職も近づき先行きの見えない生活に不安を感じている。
 妻と1人息子とは、5年まえに別れた。「わしの給料が少なくなって、生活がやっていけなくなり、かあちゃんから逃げられた。息子も中学を卒業して東京に働きに行った。ここの建設現場だけで働いているものは、独身か年金生活者しかやっていけない」と憤りを覚えながらも、やめればつぎに雇ってくれるところはないと耐えている。家族が離散したのも家計がやっていけなくなったのも、人間らしい生活すらさせないバカみたいに低い賃金のためである。

 昼は建設現場夜は水産加工 連鎖倒産に追込まれ
 3年まえBさん(52歳)は、まだ寒さが残る3月の夕刻、九州のある港の岸壁から、車ごと海へ突っこんだ。知り合いの建設業者が不渡りを出して、連帯保証人の建設業者Bさんが数億円もの借金をかぶり連鎖倒産に追いこまれた。10年まえには年収1000万円近くあったが、この数年は仕事がないうえにダンピングがこたえ、倒産であっという間に年収ゼロに転落した。
 昼間の人が見ているところで死ねば、比較的早く生命保険が出ると調べたうえで“自殺”を選んだ。中学1年生の男の子を頭に、3人の子どもたちと妻には、自宅に遺言を書き残していた。しかし海に勢いよく突っこんだ車はフロントガラスが割れ、見ていた人のケータイ電話ですぐにレスキュー隊がかけつけて、Bさんは海中から引き揚げられた。心配した家族はすぐにかけつけて、二度と同じまねはしないようにと、妻から生命保険を解約させられた。
 一から出直しの仕事探しをはじめたものの、50歳間近のBさんに就職口はなかなか見つからない。結局、建設現場に入り1日8000円の日給月給で、真黒になって肉体労働をしている。年収は4分の1以下に下がり、とても家族4人を養えるような仕事ではない。建設現場で5時まで働いて、つぎは人材派遣会社から派遣された水産加工場にアルバイトにむかい、6時から11時ごろまでシューマイなど冷食づくりにかよう。深夜労働もふくめて時給800円で割に合わない低賃金だが、週末ごとに給料がもらえるからと働いている。1週間のうち6日間ぶっとおしで働き、日曜は眠りつづけるという最低ラインの生活。いま就いている仕事は「明日から来なくてもいい」といわれてもおかしくない不安定な状態で、家族5人が必死で支えあって生きている。
 賃金の切り下げで、人間らしい生活ができないとの怒りは、建設労働者全体の声となっている。下関市内のある地場大手業者でも、二百数十人いた建設労働者のうち半数をリストラ「合理化」した。労働者1人1人に給料大幅カットを示して、のめば会社に残れるが、いやならやめてくれというものだった。また別の地場大手業者は、現場部門を子会社化して、建設労働者の賃金は最低ラインまで引き下げて、保険や年金もなくして日雇いのようになった。それもまだいい方で、ダンピングした公共事業の下請や孫請をおこなう業者のなかには、ケガをしても労災もなければ、病気をしても社会保険がない、戦前のような無権利、低賃金の奴隷労働があたりまえのようになっている。

 労災死傷は3年連続3ケタ 労働条件も悪化
 賃金だけでなく労働条件も、ダンピングした公共事業の現場は悪化の一途をたどっている。下関市内の建設現場で起きた労災の死傷者数は、2000年は85件だったものが、01年が102件、02年が113件、03年が100件と、3年連続で3ケタとなった(下関労基署調べ)。この8、9月には台風災害の家屋補修で、スレートを踏みぬいて転落死したケースや、河川工事中にユンボごと倒れて作業員が死亡している。昨年1年間で見ると下関市内での建設業の死亡事故は5件で、1985年から19年間でもっとも多かった。昼間に肉体労働をして、夜は2時、3時まで代行タクシーや食品工場、アルバイトをするなど、体を酷使したためであり、まともな生活ができないほどの低賃金は、ダンピング競争をやめさせないかぎりふえる一方である。
 下関市発注の公共事業でダンピング競争が広がったのは、指名競争入札をやめて、2002年8月から条件付き一般競争入札と電子入札を導入してからである。「構造改革なくして景気回復なし」「痛みをともなう構造改革」と小泉首相が登場して、地元の横須賀市でスタートさせたのにつづいて、下関市では江島潔市長が全国2番目に導入した。さらに今年6月からは最低制限価格をとりはらい、底なしのダンピング競争がはじまった。
    
 規制緩和迫る米国 地方経済破壊に拍車
 これは1990年の日米構造協議からはじまった動きだった。内需拡大のために今後10年間に430兆円(のち630兆円に引き上げ)の公共投資をおこなうこととあわせ、アメリカとのあいだで不透明な公共事業入札を是正するとの約束をおこなった。それは公正、公平などとは名ばかりで、ゼネコンと金融機関をつうじて、アメリカが日本の税金を直に吸い上げるためのものだった。
 金丸信の汚職事件がマスコミでとりあげられ、さらに政、官、財のゆ着をあばいていったが、最終的に談合の摘発に流れついた。ゼネコンが談合事件摘発でつぶれたというケースはほとんどなく、公正取引委員会のターゲットは地方の建設業者や職員が多かった。その間に規制緩和がすすめられ、これまでゼネコンと地元大手、中小零細業者と分けられていた公共事業の垣根がとりはらわれ、入札制度が変えられて地方の小さな仕事にまでゼネコンが入ってくるようになった。電子入札は全国どこからでも入札参加ができる。市町村合併もこれまで築きあげられてきた地方経済を破壊して、ゼネコンや大企業が入ってくるのに好都合だった。
 そのうえに規制緩和は持ち株会社化を認めるなど、独占禁止法を緩和して大手独占の寡占化がすすんだ。ある業界関係者は、「建設業界ではスーパーゼネコン、中堅ゼネコンのわずか五十数社が、40兆円といわれる日本全土の公共事業の90%前後をとり、残り10%以下を何十万もの中小業者が分けあっていたが、今後はゼネコンの占有率がさらにすすむだろう」と指摘している。別の業者は、「測量設計で市外業者が30%で落札した。市外業者がダンピングを順番にやって、地元業者を干してつぶしてしまおうという計画だった」と、全国でもすさまじい争奪戦となっている下関の様子を語った。

 電子入札導入で大手が独占 市内の発注状況
 下関市の発注状況を見てみると電子入札を導入して1年後、2003年4月から8月まで5カ月に、市が発注した2000万円以上の公共事業は、54件(金額・約53億5000万円)あったが、ゼネコンや大企業が入ってきた2億円以上の発注は七件で、金額ベースで見ると33億3000万円(62%)を占めていた。ゼネコン、大企業の7件の平均落札率は96・9%となっており、談合をつづけていたことがわかる。なかには業界で官製談合と指摘されたものもあった。
 これにたいして地元中堅業者が入っている2000万以上〜5000万円未満の工事は、件数では32件と6割を占めているが、金額ベースで見ると12%(6億4000万円)しかなかった。12%の狭い予算枠に、多いときは1件の入札に38社が殺到して、たたきあいをしている。32件の平均落札率は77・1%で、最低制限価格である75%台のものが27件にのぼった。来年2月の豊関合併で、豊浦郡四町もダンピング競争に巻きこまれれば、郡部では基幹産業となっている建設業の衰退が、農閑期に農家が建設労働で働くなどで家族を支えてきた、地域経済全体を揺るがすことは必至である。
 とりわけ2003年6月から、労働者派遣法の改定がおこなわれて、派遣期間が1年から3年に延長され、製造業への派遣も公認することとなった。1日8000円の日給月給で働くBさんのように、昼間は建設現場で夜は派遣会社から食品加工ラインに入る人がふえている。「国際競争力強化」の名のもとに、雇用労働者のうちで30%を占める1500万人のパート、アルバイトとあわせて、行政による奴隷労働のデタラメな促進がおこなわれている。
 神戸製鋼所九州支社が受注した奥山工場ゴミ焼却炉やリサイクルプラザの現場では、社会保険にも厚生年金にも入っておらず、労災もかかっていない九州からの建設労働者が多くいたことが、地元の労働者のあいだに衝撃を与えた。九州を中心に宇部や下関など周辺の労働者が集められたが、低賃金で働かせたうえで下請に不払いをおこなうなど、「仕事がないときに足元を見るようなやり方だった。地元の知っているもの同士なら、とてもできない暴力的なものだった」と語られていた。リサイクルプラザは60億円で落札率は99・9%だったが、下請孫請に出すときは、ダンピングの工事現場で働く建設労働者の賃金であった。
 一時、神戸製鋼所は連結決算で1兆円の有利子負債をかかえ、株価は50円を切るなど経営不振におちいっていたが、荒稼ぎのピンハネ業で金融機関に借金返済をおこなってきた。鉄鋼が好調といわれるいまも、10月26日には沖合人工島につながる県道の橋りょうを、4億数千万円で落札するなど公共事業に手を広げている。鉄鋼専門の神戸製鋼所は土木建築ができるわけがなく、自民党・安倍晋三元幹事長かかわりのピンハネ業といわれ、実質は地元の建設労働者がいなければ存在すらできないことを示している。このことは市内の建設労働者が、つぶされかけている企業内から産業的、地域的に団結して、労働者とその子弟の生活を守るために、ダンピング入札政策をやめさせるたたかいが切実になっていることを教えている。

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