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下関を東京采配の街にするな
来年3月に迫る下関市長選
              安倍・林代理市政の番頭争い    2016年10月7日付
 
 安倍首相のお膝元である下関市では来年3月に市長選挙が迫り、市民のなかで関心が高まっている。中選挙区から小選挙区に移行して以後、歴史的に自民党安倍派と林派の持ちつ持たれつの関係が築かれてきた山口4区において、その番頭役となる下関市長のポストは安倍・林の代理人がつき、それを山口銀行やJR西日本、神戸製鋼所、三菱、林派系列のサンデンや山口合同ガスといった企業群が抱える形で市政が実行されてきた。前任の江島潔が蛇蝎の如く市民から嫌悪された状況のもとで、この八年はつなぎ役として反江島機運に便乗してあらわれた中尾友昭(林派出身)が市長をやってきたが、当選後は公約破棄を平然とくり返し、市民を裏切ってきただけでなく、思い上がりが青天井で手が付けられないレベルまで勘違いが進行してしまったこと、為す術なく下関の街が衰退してしまったことを多くの市民が憂い、市長としてあまりに程度が悪すぎるという評価が支配的なものとなった。3月の市長選に向けて市民世論はどう動いているのか、対抗勢力はいるのか、記者座談会を持って論議した。

 不審電話で候補者たちを瀬踏み

  2期8年続いた中尾市政の評判が散散なものになっているなかで、来年3月に市長選を迎える。現職の中尾は6月議会で早くも出馬表明した。関谷議長が率いる志誠会が促す形で立候補表明したのを見て、「関谷との手打ちが終わったのだ」と事情通たちは見なしていた。以前から関谷が出馬に色気を見せているというのは公然と語られていたが、「3期終了後にバトンタッチする」を前提にして今回は中尾支援に回り、「次は僕が…」で話がまとまったという見方だった。以後、関谷がおとなしくなったというのが周囲の評価だ。
  しかし、如何せん中尾の評判が悪すぎるものだから、ここにきて「それなら僕が…」の動きが活発になっている。志誠会は中尾応援でまとまっているのかと思いきや、香川昌則(安倍事務所書生経験者の市議)が再チャレンジに向けて同僚議員の説得を始めたり、何とも知れない動きを見せている。一方で、安倍事務所秘書上がりの前田晋太郎(市議)も市長ポストへの色気を捨てたわけではないようで、これもどうするのかはっきりしない。林派が退場に追い込まれるチャンスを捉えて、今度こそ安倍派が天下をとり返すのだといわんばかりの意気込みも感じさせている。関谷としても、仮に安倍派若手たちが次期市長のポストを得て何期もやってしまうと自分の芽が消えるため、中尾応援の側から同じ安倍派を叩きつぶすという動きを見せる可能性が大きい。まさに利害のひしめきあう暗闘だ。
 C 現職の中尾や林派でいえば、先日後援会の会合を開いて関係者を集め、3期目に向けて活動を開始した。塩満久雄(自民党林派・県議会副議長)などが“中尾友昭を励ます会”を開くのだといって会費8000円のパーティーに参加しろと企業に呼びかけたり、カネ集めをしている。中尾陣営は市長選の際にカネを集めたがる傾向がある。一期目も唐戸魚市がバックアップする格好で某銀行が軍資金を融資したのだとかがもっぱらの評判だったが、「市民派」を前面に押し出して市民からも後援会費と称して固定カンパをとっていた。それで元唐戸魚市の社長秘書とか後援会幹部たちが連日のように海峡ゆめタワーの某店で宴会をくり返していたもんだから、ひんしゅくを買っていた。この何年かは、中尾が東京に行く度に「安倍先生! 安倍先生!」とおべんちゃらをしている姿にみなが辟易していた。見ていて恥ずかしくなると話題になっていたくらいだ。3期目への欲は相当なものだ。
  目下くり広げているのは水面下の暗闘で、自薦候補たちによる願望が先行している印象が強い。しかしいつもそうなのだが、結局のところ、安倍事務所なり代議士が首を縦に振るか否かをこれらは上目遣いで気にしている。選挙区での矛盾や軋轢が生じて衆院選に影響が及ぶのを安倍事務所は基本的に恐れている。選挙の度に山口4区の安倍票は減り続け、前回選挙でも前々回に比べていっきに1万8000票も減らした。従って安倍派A組もB組もC組も失いたくないし、林派の機嫌も損ねたくない。労働組合の連合や公明票も失いたくない。可能な限り地元のもめ事は地元に委ねて、「私は何もいっていないし、関係ありません」を貫きたいというのが基本だろう。だから市長選挙も「オマエがやれ!」と明言して派内を統一するようなことはなく前段の指名選挙も含めて例え安倍事務所のコントロール通りにいかなくても、勝った者をとり込んで利用すればいいというスタンスだ。子分たちもそんな事情を計算ずくで、「先生! 僕を見てください!」の乱闘をやる。「勝ち馬に乗ってくる安倍事務所」「3日前の安倍事務所」等等、歴史的な振る舞いを見てそんなことをやっている。
  基本的に安倍派支配が貫かれている下関で中尾が市長をできたのは、江島の評判が悪すぎたことと、放り投げ直後の衆院選を市長選後に控えたもとで、合同ガスやサンデンなど林派の同族企業票を失いたくないという安倍派の都合が働いていた印象だ。そのなかで、林派がうまいこと1期目は市長ポストを得ていった。安倍派は親分の裁定がないなかで友田有(県議)が出馬し、秘蔵っ子だった香川も出馬して三つ巴の選挙で中尾が勝った。今度の場合も仮に安倍派が乱立して立候補すれば共倒れが確実で、笑うのは中尾友昭及び林事務所ということになる。
 D 暗闘をくり広げている本人たちは感情的になっている印象も強い。関谷&中尾前田のバトルがひどいのか、半年以上前から「前田が豊前田にある酒本市議(民進党)が経営するライブハウスで女を引っかけ、それが実はヤクザの美人局だったことからカネを払わされた」という噂がまことしやかに広がっていた。企業経営者とか自民党関係者がヒソヒソと噂していた。本人が全否定しても噂は瞬く間に広がった。安倍事務所が抑えているのか、あるいはウソを意図的に拡散している者がいるのかは知らないが、話の主をたどっていくと、主に林事務所の秘書や関谷周辺が拡散している風だった。「酒本の店」等等の具体的な話から信憑性を感じている人も多いが、風説を流布して市長候補から叩き落とす力が働いているとすると、自民党同士でありながら大変なものだと思わせる出来事だ。当の前田本人は全力で否定している。
  ただ、風説の流布など珍しいものではない。かつての市長選でも安倍事務所の秘書をしていた佐伯が工藤会組員に依頼して、「古賀敬章は朝鮮人だ」「北朝鮮にカネが流れる」と中傷ビラをまいたことがあった。対抗馬を叩きつぶすためには何でもありだ。あのときは、絵画を買いとる名目で取引していたのに佐伯が約束通り全額支払わなかったために「ヤクザを嵌めるとはいい度胸をしている」ということで安倍事務所に銃弾が撃ち込まれたりした。下関はノドグロの水揚げが日本一の街だが、政治の世界のハラグロも日本一の街だ。
  最近、市民のなかで市長選に向けた電話調査がおこなわれていることが話題になっている。突然電話がかかってきて、市長にするなら現職の中尾友昭、市議の前田晋太郎、香川昌則、県議の西本健治郎のだれがいいか? という内容だ。「こんなことこれまでなかった」と驚かれている。だれが調査しているのか電話を聞くだけではよくわからないが、自民党が業者に依頼して調査をしているのだと見なされている。ある市議に聞いたら、中国の大連あたりから業者が電話をしているのだという。いずれにしても何者かがカネを出して市長選情勢をさぐっている。仮に自民党がやっているのだとしたら情けない話で、オマエたちの組織なり党員の肌感覚でわからないのか? とも思うが、誰が勝てる候補なのか瀬踏みしている者がいる。
  申し訳ないけれど、中尾、前田、香川、西本を並べられても、50歩100歩というか群を抜いて大人気な者がいるのだろうか? 中尾の評判は確かに悪いが、だからといって前田、香川、西本が人気があるということにはならない。事情通のなかには、この瀬踏みの後に実は大本命登場なのだと示唆する声もある。前回選挙で安倍事務所は経産省キャリア官僚で下関西高校出身者を口説いて失敗したようだが、外から引っ張ってくるというのも十分考えられる。あるいは、「選挙はある」の「あるある詐欺」をやりつつ実は中尾続投で上の方では話がついていて、林派安倍派の紛争は回避し、他からの立候補を牽制していると見なすこともできる。まだどう転ぶのかわからないというのが実態だ。下関の選挙はすべてが欺しで、安倍晋三が国政でTPPの公約を破棄したり、言行不一致なのも今に始まったものではない。ウソやハッタリが当たり前のような政治風土が根付いている。

 街の疲弊著しいお膝元 中尾市政の8年

  中尾になって8年になる。江島市政の14年に続く中尾市政で、下関は散散に疲弊してしまったというのが市民の実感だ。最初に「市庁舎は建設しない!」「大不況のさなかに本社ビルを建て替える経営者がどこにいるのか!」と叫んで当選したのが、当選後は「公約の進化だ!」と開き直って新庁舎を建設して有権者を驚かせた。そして、「経営者の視点」といってやったことは、税金の取立強化、滞納者への容赦ない差し押さえや、市職員への明元素教育、消防庁舎の海沿いへの新築移転や駅前開発など、江島前市長からひき継いだ箱物に加えて、勝山支所建設、旧郡部の総合支所の建て替え、新博物館建設、幡生ヤードの教育センター建設など大型箱物事業のオンパレードだった。
  基本的に江島時代につくった基本計画に則って市政は実行されてきた。中尾でなくとも誰がやっても同じだという声もあるが、要するに市長にどんな人物がなっても下関市政は安倍・林の代理人として操縦される関係だ。国政における代議士の発言力を利用して中央から予算を引っ張ってくるし、中央省庁との関係を良好なものにするために部長ポストをキャリア官僚たちの受け入れ先として確保している。地方自治すなわち住民の意思に基づいておこなわれる行政運営ではないことが、街作りのバカさ加減にもあらわれている。
  典型的なのが市財政を55億円つぎ込んだ下関駅にぎわいプロジェクトだろう。使う市民からは酷評されている。自転車道ができて、東口は送迎車両が停車することも、後続車が停車車両を抜かすこともできない構造になって使いにくくなった。駅そのものが迷路のようで、「入口がわからない」といわれている。バスターミナルも駅に入るすべての路線バスの乗降場として「中の島」がつくられ、エレベーターまでとりつけられたが、バスを降りた客全員がエレベーターや階段を使って人工地盤に上がらないといけないなど、不便すぎて利用されず、結局競艇場と小倉の競輪場行きの乗り場になっている。使用目的や使う人の利便性より、建設ありきで事業が進むので使いにくい施設が増えていく。それでいて国土交通省の実験的試みでもある自転車道を全国に先駆けて作ったとかで表彰されている。自転車人口が少ない勾配の街で、必要か否かを度外視して予算的都合だけで都市改造がやられる。
  市役所も同じで、いまだに迷子になる市民が後を絶たない。巨額箱物をやるという目的だけが実行されていくから、あんなお粗末な建物ができる。あと象徴的なのが、岬之町のコンテナターミナルの人工島移転だ。現役の荷役会社や労働者は「人工島は冬場の強風で仕事にならないからやめてくれ」といっているのに、行政は聞く耳なく、ガントリークレーンが壊れたのを口実にして強行した。コンテナターミナルを人工島に移転すれば、とくに冬場は風が強く稼働日数は限られる。船会社が接岸を嫌がって他港に荷が流れれば下関港の存続にもかかわってくる重要問題だ。ところが問答無用で立ち退かせて、岬之町はウォーターフロント計画を実施するといっている。下関の根幹になっている産業をつぶして遊び場作りを優先させる。
 港湾局長は何年か前まで国土交通省の役人が天下っていたが、使い道のない人工島にしても、国の采配ですべてが動き、その仕事を安倍派幹部の関門港湾建設などが受注していく仕掛けだ。200億円かける長府浄水場整備も安倍代議士の出身企業である神戸製鋼所が受注しようとしている。そのために水道料の値上げが実施された。下水道事業にも、奥山清掃工場にも神戸製鋼所が入り、垢田のリサイクルプラザも含めて、環境部門は独占しているような状態だ。市長が江島であろうと中尾であろうと、万事がそのようになっている。逆らったら役所の部長クラスも含めて居場所などない関係だ。
  市民を激怒させているのは、税金の取立て強化だろう。初当選した2009年3月はリーマンショック直後で、MCSの派遣切りなどもあり下関の疲弊は深刻だった。市税収入も億単位で減っていくなかで、税金を滞納すれば有無をいわさず貯金や年金を差し押えたり、生命保険や子どものためにとかけていた学資保険まで差し押さえられたりと、やり方のひどさにみなが衝撃を受けた。給料を差し押さえられて市役所に抗議に来た市民が逮捕されたこともあった。合併算定替えが平成27年度に始まり、31年度には34億円も地方交付税が減ることがわかっているなかで、「財源が足りない」といって、市民から巻き上げていった。
  「経営者の視点」ではなく厳密に言えば「ハートフーズ(唐戸魚市関連会社)の視点」なわけだが、市長に誰がなろうが取り込んでいくし、引き続き安倍・林代理市政を実行していく仕掛けの中で市民生活との矛盾がさまざまに発生している。郷土下関をどうするのか主体性がない政治の産物が衰退著しい下関の姿だ。
  駅前開発にしてもにぎわったのは山口銀行とJR西日本だった。神戸製鋼所だけでなく、JR西日本も梶栗駅を行政につくらせたり、長府駅建設に30億円近く使わせたり、税金のつかみ取りのようなことをくり広げてきた。市政とか自治体財政にこうした企業群が寄生しているおかげで、税金をいくら差し押さえして巻き上げてもカネが足りない。水道の蛇口は開きっぱなしにして「水が足りない!」といっているのと同じだ。公共の福祉に資するという行政本来の役割をなおざりにして、市政が私物化されている状況を解決しなければ、下関市政に地方自治など貫かれない。
  目下、市長選情勢にもっとも敏感に反応しているのが市役所の幹部職員たちだ。「中尾続投」と思いきや、ここにきて風向きが変化しているのを察知している職員も多い。選挙応援の見返りで中尾体制でもさまざまなポストがやりとりされていたが、風を読み切れるかどうかに出世がかかっているようだ。

 市民運動の力が決定的 閉塞状況打開のため

  今のところ有権者には受け皿がない。中尾、前田、香川、西本といってもみな安倍・林の紐付きばかりで、まさに「誰がなってもいっしょ」状態だ。このなかで市民運動はどう進んでいくかが重要だ。既存の政治勢力があてにならないという意味で、全国の先をいっている。総翼賛化の政治構造も、よそより先駆けたものになっている。連合も安倍派で、民進党も安倍・林の配下にある。労働組合の中枢も自民党の別働隊みたいなものになっている。これが下関の政治の特徴だ。連合、公明、社民、「日共」に至るまで総翼賛化して、安倍支配の植民地みたいな状況になっている。これは市民運動で下から突き上げて、ぶち破っていく以外にないという意識が近年は強いものになっている。
  中小企業は老舗がつぎつぎに倒れ、若者には職がない。農村部には働き手がいない。水産都市といいながら、漁港市場の主力である以東底引きも減船が続いている。産業振興の課題は待ったなしだ。しかし箱物や開発に明け暮れて、下関のお金が働く者のところには回らず、銀行を中心に空中でクルクル回ってパンクしている。これが「アベノミクス」だ。それで産業と雇用がなくなって、山銀も下関では商売にならないから、100万人都市の指定金融機関になりたいという願望とセットで北九州に殴り込みをかけている。山口県内は食い散らかしてしまった。
  市民生活は困難さが増している。そして中尾8年でもさんざんに疲弊してしまった。これをどう立て直すのかが市民の最大関心になっている。少子高齢化が全国ダントツで進行したが、子どもが増えて活気がある町にどうするか。若い親たちの働く場を下関でどうつくるか。農林水産業や製造業など、現金収入になる地場産業をどう守って振興していくか。地元商業をどう守るか。箱物利権をやめて市民の必要な事業に目を向けた地元業者への発注をどう増やすか。医療も介護も高負担を緩和し、老人が安心できるようにどうするか。旧豊浦郡の合併後の切り捨てをやめて急激な過疎化にどう対応するのか。山ほど課題がある。中尾みたいな観念的な空元気や口八丁で解決するような事態ではない。
 国、県の支配、安倍・林代理、山口銀行代理の独特な政治支配の構造があるなかで、不断に市民世論と運動の力を発揮して、実行させるというのでなければ展望にならない。今のところ組織票優位の裏通り選挙で、目に見えない形でバトルが進行している。閉塞した状況を打開するのは、市民運動の力が決定的だ。
 
 

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