トップページへ戻る

死に体の安倍改造内閣
                 改憲も官邸主導も破綻     2007年8月29日付

 先の参議院選挙で大惨敗したが退陣を拒否した自民党安倍首相は27日、党役員人事と内閣改造をやった。安倍首相はお決まりの「戦後レジーム(体制)からの脱却」とか「憲法改定」などの威勢のいい言辞は出せなくなり、大統領気取りの「官邸主導型政治」も引っ込めざるを得なかった。ブッシュ政府は「テロ特措法の延長をせよ」とわめき立て、財界も「改革をつづけよ」と叫んでいる。明らかにイラクをはじめ全世界の人民がブッシュ政府の市場原理改革、戦争政治に強烈な打撃を加えているのと呼応して、小泉政府以来の構造改革、対米従属の戦争政治に対して日本人民の反撃の力が彼らをして追い込んでいる。参議院選挙を期して情勢は大きな転換をしていることをあらわしている。

 安部型暴走派を更迭
 自民党役員人事では、幹事長に麻生太郎、政調会長に石原伸晃、総務会長に二階俊博がついた。いずれも参院選大敗後いち早く安倍続投を支持した「お友達」であるが、不満渦巻く自民党内すらまとめる力量は疑わしい。
 改造内閣の顔ぶれを見ると、民意無用でアメリカ仕込みの新人類型・安倍「お友達」の突っ走り組が引っ込んで、いくつかの派閥のボスやベテラン、それに安倍に退陣を迫った人物が重要ポストについている。与謝野官房長官、町村外相、高村防衛相、額賀財務省、舛添厚生労働相らである。昨年の総裁選で安倍を支持した者、あるいは無派閥で一定の距離を置いた者などだ。自民党の危機のなかで挙党態勢というわけだ。
 程度の悪い閣僚を更迭して、ベテランが登場したといっても、もっとも不信を買ったのは安倍首相本人であり、閣僚が替わっても変わりばえがしないのは当然となっている。自民党の選挙総括ですら首相の「民意とのズレ」とか「危機管理能力の欠如」と、いかにも「ぼんくら首相」といわんばかりの評価をしているほどだ。代わるべきコマもいない、自民党の危機なのである。
 官邸人事できわだつのは、安倍がアメリカのホワイトハウスのまねをして配置した首相補佐官五人を2人に減らしたことだ。まるで大統領になったつもりの「官邸主導政治」が売りであったが、あえなくパンクした。「チーム安倍」と呼ばれた連中の多くは、東大―ハーバード大ケネディスクールの卒業生で、アメリカ・CIA仕込みのグループ。国民の世論なんて訳が分からないおぼっちゃんの突っ走り組で、その連中のとりまとめ役が塩崎前官房長官だったが、あえなく更迭された。
 また、国家安全保障担当の首相補佐官で、7月に「しょうがない」発言で首になった久間大臣のかわりに防衛相に就任した小池百合子は、アメリカの国家安全保障会議(NSC)をまねた日本版の国家安全保障会議を官邸に設置し、アメリカと直結させる役割を果たしたが、事務次官更迭問題で安倍を見限りケツを割った。
 安倍首相は組閣後の記者会見で、「戦後レジームからの脱却」や、憲法改定、集団的自衛権についての憲法解釈変更を内閣の優先課題とすることを口にすることもできなくなった。先の国会で強行採決した国民投票法にもとづく憲法審査委員会の設置は、まず参院ではできなくなった。また、安倍お抱えの集団的自衛権に関する懇談会は、一〇月に報告を出すことになっているが、アメリカが攻撃されれば自動的に日本が反撃するというような、親米丸出しのふざけた内容を法制化する見こみもなくなった。

 暴走政治の破綻を露呈
 9月の臨時国会で焦点となる「テロ特措法」について、ネグロポンテ米国務副長官や駐日米大使シーファーらがむき出しの内政干渉をしても、延長は難しくなっている。小泉前政府が「日米同盟」をたてに強引に始めた自衛隊艦船によるインド洋での米英など各国艦船への洋上給油が継続できなくなる可能性も出てきた。27日付の「朝日」には、キャンベル元米国防次官補代理とグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長が連名で、民主党・小沢代表を非難する一文を寄稿するほどブッシュ政府は焦りの色を深めている。
 アメリカ側は野党にも給油活動の情報を提供するといい、安倍政府も野党と話し合い理解してもらうといっているが、血税をアメリカの戦争協力に使うことに憤る世論が強まっているなかで、民主党もそうやすやすと妥協もできなくなっている。もしも参院で否決された法案を与党が衆院での3分の2以上で強行するとなれば、政局は混乱し解散・総選挙となり、安倍内閣の命取りになりかねない情勢である。
 民主党・小沢代表が、「テロ特措法延長反対」というのも、基本は日本人民の世論が押し上げているものであるが、同時にアメリカ支配層のなかでもイラク戦争の失敗からブッシュを見限り上手にイラク撤退をすることが主な流れとなっていることが背景にある。
 安倍首相は組閣後の記者会見で、しょうこりもなく「改革と経済成長を続ける」といい、経済閣僚は2人とも留任した。しかし860兆円を超える赤字(赤ちゃんを含む1人当り650円以上の負債)をどうするのかという財政再建のほか、年金など社会保障制度の再構築、その財源としての消費税率引き上げ中心の税制改革など、問題は山積している。しかし安倍首相や新閣僚からはどんな具体的処方箋も示されなかった。人民の怒りを前に、自民党内でも「当面消費税率引き上げは無理」との声も上がっているが、来年度予算の編成作業も難問が目白押しである。
 この自民党安倍政府を一気に狂わせたのは参議院選挙で表面化した大衆の力である。民意は小泉、安倍政府とつづいた市場原理主義にもとづく構造改革による農漁業の切り捨て、労働者の慢性的失業、老人や婦女子など医療や介護、税負担の増大などによる貧困化を許さないというものであった。これもアメリカの要求で日本経済をアメリカ資本に支配させ、彼らと日本独占資本が結託して大儲けする仕組みをつくることへの怒りであった。そしてアメリカのいいなりで戦争ができる国にするという政治、その根本として対米従属の売国と亡国の政治を許さないという世論であった。この大衆世論が自民党政治に鉄槌を加えたのである。
 安倍第2次内閣は「人心一新」をしてあくまで「改革」と戦争の道をすすめるというわけである。自民党自身の参院選大敗の総括では、「安倍政府と民意のズレ」をあげた。しかし「民意とのズレを直す」どころかズレを広げる構えである。アメリカかぶれの代議士3代目のあけすけな売国政治を手直しして、民意を欺瞞する工夫をしてなんとかアメリカと財界の意向を実現していきたいというものである。新内閣は死に体となった安倍自民党政治の2番煎じといえる。

 ブッシュ政府も死に体
 安倍首相が大惨敗をし四方八方からボロクソに叩かれながら首相の椅子にしがみつくのは、替わりがいないほど自民党の危機が深いことと、ご主人であるアメリカのブッシュ政府が死に体となっており、アメリカそのものが次の方向が確定しないことが、自民党政府がどうしてよいのかわからない背景となっている。
 アメリカ支配層中枢は、すでにブッシュに見切りをつけ、次の政治的代理人の物色を始めている。来年秋の大統領選挙も事実上半年繰り上げて始まっており、民主党の大統領候補選びが共和党に先んじて今やたけなわである。
 支配層中枢、独占財団においては、イラクについても米軍撤退は避けられず、あとはどううまく撤退するかとなっている。対朝鮮でも米朝2国間協議にアメリカが応じざるをえなくなり、核無能化に応じて朝鮮のテロ支援国家指定の解除、平和条約締結による交戦状態終結へと動いている。対イランでも、国連安保理を使った制裁決議が頓挫し、国際原子力機関(IAEA)とイランの査察協定締結へと進んでいる。
 イラク戦争を主導し、安倍を首相に担いだアメリカのネオコン(新保守主義)勢力はすでにブッシュ政府から離脱し、ブッシュ大統領の補佐官や政府高官も相次いで閣外に去っている。安倍自身はもはやよりどころを失い、迷走するほかない。朝鮮問題で「拉致解決がなければ」と突っ張ってきたが、六者協議でまったくカヤの外に置かれてどうにもならなくなっているのがそれを象徴している。それを見て、小沢・民主党代表も強気に出ているにすぎない。

 テロ特措法延長阻止へ
 参議院選挙結果と安倍改造内閣の有様が示すことは小泉、安倍とつづく暴走政治が破綻し、政府危機になっているということである。ブッシュ政府の登場に対応した小泉、安倍政府の暴走政治は、今や日本人民の反撃によって打ちのめされ、情勢の大転換をつくりだしているのである。
 民主党は選挙の約束もあり、テロ特措法反対とか生活者優先などいっているが、基本は第2自民党であり、対米従属政治に変わりはない。しかし国民によって縛られている関係である。
 このようななかで、情勢全体を動かしていく最大の力は、大衆の全国的な世論と運動である。小泉、安倍政府とつづく構造改革政治による貧困化と日本社会の破壊に反対し、さらにアメリカの国益のために日本を戦争に駆り立てる方向に反対して、独立、民主、平和、繁栄の社会を実現する、全国的な大衆運動を発展させる条件が非常に大きくなっている。なかでも米軍再編や国民保護計画などと結びついた自衛隊の海外派兵の本来任務化に反対する具体的な課題としてテロ特措法阻止の全国的な運動が重要な課題になっている。