トップページへ戻る

中電組合で困難な上関の漁民
深刻に出ている伊方原発の影響
              原発で内海漁業は壊滅   2004年11月25日付

 山口県下で一番高額な油を購入させられていたことがわかった上関の漁業者のなかでは、原発問題以来、漁民がひどい圧迫を受けてきたことが真剣な論議となっている。「どうして上関だけこんなに高いのか」「油代だけじゃないはずだ」「協同組合が中電に乗っとられて、わしらが損をしている分、もうけている連中がいる」「だまされていた」、また「伊方原発3号機以後海の状態が変わってきた。このままいったらどうなるか」と、深刻な論議がかわされている。伊方原発に加えて上関に原発をつくるなら、内海漁業は壊滅となる。これまで全県の漁民にものをいわせなかったシカケも、県による信漁連再建支援金の条件であった。同じように、岩国では広大な藻場をつぶして米軍基地の埋め立てをやらせ、下関では人工島を認めさせ、宇部岬では産業廃棄物処分の埋め立てを認めさせ、漁場破壊でもすさまじい打撃を与えた。こうして10年のあいだに山口県の漁民は4割がへった。二井県政の上関原発を推進しながら県一漁協をやるというのは、はじめから新漁協もつぶすものであり、漁業破壊しか考えていないことを示している。
 
 法外に高い上関の油代
 全県の漁民からも、上関が人ごとではないとの思いから、上関の漁業者を心配する声が上がっている。上関では「自分たちだけではどうにもならないのだ」と苦しい心境が語られる。小さい町に20年以上中電という大企業が居座り、国や県の権力を背景に、町役場も漁協も、四代ではお宮まで中電が乗っとってしまって、全県、全国の力に頼らなければうかつに逆らえない構造ができているのである。
 上関の底引き漁師の1人は、よそとの油代の違いを比較して計算していた。底引きに使うA重油も、防府海域と比べると10〜12円も高額である。「わしら底引きは年間100万円ほど油を使うから17万〜20万円多く手数料をとられていたことになる。1回の漁で200gほど使うから、10円違えば2000円ピンハネされていたことになる。漁師は毎日毎日沖に出て貧乏暇なし。命をはって魚をとってきてこの様か。そんなこととは気づかずにひたすら働いてきた。油が高いのは近年にはじまったことじゃないから、ずっともうけ分をぬかれていたことになる」といった。表情は真剣そのものだ。腹の怒りはおさまらない。「わしらだけの力じゃどうにもかなわない。漁師のために外側からガンガン書いてくれ」と語った。
 別の漁師は、「補償組合の結末だ」といった。「上関だけどうしてこんなに漁師がひどい目にあっているのか。これじゃ漁業で食っていけないはずだ。わしらは外側の世界がどうなっているのか知らなかったが、山口県のなかでも上関海域だけこんなに油が高いのはおかしい。どこにどんな秘密があるのか」と憤りをこめて語る。
   
 魚につく値段が貧弱 悪質なピンハネ構図
 ことは油代に限定される問題ではない。漁業者のなかでは、歴史的にうっ積した思いが語られている。漁民同士のつながりの弱さにつけこまれた上関では、国、県、中電によって24年間にもわたって原発計画で地域がじゅうりんされてきた。それは漁業振興の願いと鋭く対立してきた。
 上関では原発問題当初、漁業はとるに足りないものという宣伝が支配していた。90年代に入り、上関は漁業が中心であり、漁業振興をはかるという装いで、県が力を入れたが、格好ばかりでこの結末となった。
 漁協は中電や県水産部に乗っとられ、都合のよい原発推進組織に姿を変えて、本来の機能をはたしえないものになってきた。広島という大市場が近くにあるにもかかわらず、共同集荷や出荷の事業が発展せず、製氷器も個人が購入してまかなっていたり、魚を生かしておくいけすもない。冷蔵庫すらないところもある。たくさんの魚が水揚げされるのに町内には市場もなく、雑魚に付加価値をつけるような水産加工場もない。漁業者は長年建設を要求するが「原発ができたら金が入ってつくれる」といって、要するにつくる気がない。それぞれがバラバラに仲買と個人契約を結んで、バラバラに出荷するのに任せている。漁師は沖で一生懸命に魚をとってくるが、一本釣りでとってきた高級魚も、底引きや建網がとってきた魚も、仲買に「相場買い」で買いたたかれている。委託して市場に出荷しても、手数料をぬかれた金額が手元に届くと、たいして変わりがない。同じ海域を泳ぐ一本釣りのアジが大分で水揚げされたものはキロ3500円する「関アジ」といわれ、四国で水揚げされれば「ハナアジ」といわれる。広島市場でも上関のアジは重宝され、いいときで3800〜4200円もの値がつくといわれるが、上関の港で水揚げされたものは浜値が700〜1500円で買いとられていく。
 腹にすえかねて個人で市場に持ちこむ漁師もいるが、そうすると魚の数がそろわないので競り順は後回しで、鮮度が落ちて値が上がらない。沖に出て魚をとって、さらに自分で市場に持っていくという過酷な状況には限界があり、経費もまかなえないことから、そのうちにあきらめて仲買に頼らざるをえないという経緯をたどってきた。
 ハッキリしていることは、「瀬戸内海の心臓部」といわれる好漁場だけに、魚そのものはけっしてよそに劣るような貧相なものではない。魚につけられる値段が貧相なのである。最大の問題は協同組合が機能していないことにある。原始的ともいわれる「相場買い」と歴然としたピンハネの存在が、漁業生産量にたいして漁業収入が低い大きな要因であり、地域全体の漁業経営の困難に拍車をかけている。
 北浦の組合関係者にいわせるなら「20世紀と21世紀ほどの違いだ」と驚きをかくさない。協同組合の強みを生かして、トラックを仕立てて都会の市場に持ちこむなど方法はいくらでもあるが、組合長らの脳味噌の関心は漁業振興によってもうけをあげることよりも、漁業者の生産に寄生して法外な手数料をとったり、別目的に関心がむいているのである。油代ともども全県の漁業関係者が「ありえない」と驚く実態になっている。
 町内漁協の某幹部は、漁民のために機能しない漁協経営の実態が、中電・原発と切り離しては考えられないことを説明する。「上関は中電が乗りこんで漁協が崩壊したも同然。漁場管理もムチャクチャ、魚の出荷もバラバラ。協同組合の“協同”の文字はなくなって、好き放題されてきた結果だ」とさめざめとした表情で語った。

 24年間中電が地域蹂躙
 油代だけにかぎらず、仲買のピンハネもわかっていながら規制が効かず、価格交渉など皆無であること、漁業補償交渉をかかえる中電が長年にわたって幹部衆の引っこぬきや飲ませ食わせをやり、一方をとり立てて一方を村八分にするなどの分断工作や利用をくり返してきたことが、漁業者間の不必要な軋轢(あつれき)を生み、結束崩壊を深刻なものにしてきたと昔からのいきさつをふり返った。
 原発以来の20年、油代だけでも400万円は余計にピンハネされ、魚の販売では年間30%ほど余計にピンハネされていたとして、年間500万円の水揚げの人で150万円、20年間では3000万円となる。補償金どころではなかったのである。もっとも苦労したのは上関の漁民であった。
 油代など資材代、魚代など推進派も反対派もなく平等にピンハネされた。中電の方からすれば、補償金を出したといっても、漁業をつぶしてしまい、住民が住まなくなった方がのちのち具合がいいのである。
   
 戦時下の厳戒態勢 今時の「先進地」
 上関町のGHQ(占領軍)といわれる中電は、尾熊毛におかれた「前線基地」立地事務所から毎日町内におそろいのファミリア(マツダ車)に乗った工作員を送りこんで、家族関係から子どもや孫の就職先、血縁関係、どこの家とどこの家がどんな理由によって不仲か、どこの家にはどんな弱みがあるかなどの情報をシラミつぶしに調べあげてきた。20年来の調査活動によって蓄積されたぼう大なデータが、選挙や漁業交渉、土地交渉などが動くとき、親兄弟、取引先、恩義関係者、勤め先などあらゆるところがピンポイントで動いて、住民にものをいわせぬ仕組みがある。
 山口県内でも「テロ対策厳重警戒態勢」とか監視社会の色彩が濃くなってきたが、人口4500人に満たない小さな田舎町は、20年もまえから戦時下のような厳戒態勢がつくられている、いわばいまどきの「先進地」である。
 そうした中電支配に県政が加担して、平井前知事の時代から柳井水産事務所が四代地先の共同漁業権書き換えや漁業補償妥結の旗を振り、原発建設のために奔走する関係がつづいている。県政や自民党、大企業、ヤクザ、弁護士、裁判所、警察、商業マスコミなどあらゆる権力が総ぐるみになって、「国策」として推進しているだけに、他の地域では想像できない抑圧構造ができあがっているのである。組合長個人の力はひ弱であっても、背後の力が強力にバックアップしてそれを支えている。
  
 県1漁協の行く末示す 内海漁業の危機
 山口県では、県水産部が強権的にすすめる1県1漁協合併計画が、漁業破壊策として猛反発を食らっているが、全県の漁協から見たとき、漁業者から漁協が奪いとられている上関の状況は、「1県1漁協」の行く末を示す深刻な「モデル」になっている。そして、上関原発計画は瀬戸内海漁業全体の存亡がかかった問題だけに、人ごとでない問題として注目されている。
 上関と平生の組合長は、県水産部との関係がよその地域の組合と比べるともっとも密接である。柳井の水産事務所に入り浸ってきた関係にある。この県のかかわりが強いことが漁業破壊の強さとなっている。潮田水産部長が柳井水産事務所の所長のおりに、原発海域売り飛ばしの旗振りとなった山根組合長が、内海側の海区調整委員会の会長にとりたてられたことについて、地元では「上関原発も絡んだ県1漁協で全県の漁民を泣かせるために県がとり立てたのだろう」「それは全県の漁業者に迷惑をかける」と共通して語られている。
 二井県政は、一方で山口県の漁業の再建などといって県1漁協合併を持ち出したが、もう一方で上関原発をつくるというのでは、内海漁業を壊滅させ、県1漁協などはじめからつぶれることを見こんでいるとしか説明がつかない。漁業を愚ろうしているのである。
 すでに、瀬戸内海では伊方3号機が運転を開始した10年まえから漁獲の減少がすさまじいものになっていると内海の漁師たちは語っている。統計上でも内海側の総漁獲量は15年まえに3万4000dあったものが、90年代の中旬あたりから減少の一途をたどり、03年には1万3700dと6割も減少している。有明海だけでなく瀬戸内海も「異常事態」になっているのである。
 上関の漁師たちは「エビがぜんぜんとれなくなった。昔は網が揚がらずに破れるほどとれていたのに。岩国の埋め立てや工場排水などでだんだん汚れてきた内海が、伊方3号機でとどめをさされた形だ」「フグがとれない。1000本針を垂らしてもまったく食わないときがある」「いまごろは海水が冷えていなければおかしいのに、9〜10月時期の魚がいる。イワシがいない。温暖化もあるといっても最大原因は伊方だ」など話されている。
 漁場の変化は大小さまざまな沿岸工事をはじめ、大きなものでは岩国基地拡張や宇部の産廃処分場建設、伊方3号機の稼動などが要因になって、ボディーブローのようにジワリジワリと進行した結果、「海は変わった」のである。漁場の変化は、藻やプランクトン、卵などの影響、それと食物連鎖する小さい魚、大きい魚などに影響が広がり、数年たってみると見違えるように変わっているのである。いわば生態系の変化が起きていく。このうえに上関原発を建設するなら、漁場破壊もきちがいざたであり、四国、九州にいたる内海漁場を死滅させることはまちがいない。

 漁業破壊の最たるものが上関原発
 県下の漁業者のなかでは上関原発計画に反対する世論は広範囲に渦巻いている。それは権利漁協だけの問題ではなく、周防灘・伊予灘全体の死活にかかわった問題であり、共同漁業権関係組合を脅し、買収して、他は関係ないといってすむ問題ではない。
 これまで全県漁民を黙らせていたのは信漁連問題であった。二井県政は信漁連再建とかかわって、県が信漁連にたいして支援金を出す見返りとして組合長らに連帯保証のハンコを押させ、県がやる公共的な事業に協力することという条件をつけた。信漁連再建以来、漁民や漁協にばく大な負担をかけたうえに、実行したのは岩国基地拡張であり、下関人工島であり、宇部の産廃処分場建設であり、そのさいたるものが上関原発建設計画であった。それらを実行した最近になって、「県の支援金は貸付金であり、返済せよ」といい出した。こうして漁民をだまして山口県の漁場に甚大な被害を与えてきた。
 原発をつくって内海をつぶすなら、県1漁協も成り立つわけがない。「漁民を救うため」などといっているが、漁民負担といい、上関原発といい、漁業破壊政策とわかっていて強権的に実行・加担するなどということは、県政・水産行政の腐敗にほかならない。
 山口県内の漁業者のなかでは、信漁連再建問題と絡んだ漁民負担の問題、漁業生産者をなぎ倒す1県1漁協合併の問題が広範囲な怒りの行動をつくり出している。全県の漁業振興を求める行動とたたかいは、この間、金力と権力の金縛り状態におかれた上関町内の漁民を激励してきた。上関現地の漁民が原発計画に抗してがんばることはもちろんだが、権力、金力にたいしてたちむかう力は、内海全域、全県漁民、さらに瀬戸内海全体と結びついた共通の利益に立った団結の力である。
 県1漁協による山口県漁業破壊をやめさせ、漁業を発展させることは、上関原発を撤回させて内海漁場を守ることと結びつかなければならない。中電は上関原発のための詳細調査の申し入れを県と町にしているが、内海全域の漁民が一致して指摘している伊方原発の影響による内海漁場の激変について、県水産部や水産庁をして、徹底的な海域調査をやること、それなしに上関原発計画をすすめさせてはならない。

トップページへ戻る