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神鋼養う下関の水ビジネス
200億円かける長府浄水場
              遠慮を知らぬ安倍出身企業    2016年9月2日付
 
 下関市では市内の水道水の80%の浄水を担う長府浄水場の更新計画が動き始めている。当初、25年間で総額255億円とされたこの大型事業は20年前から検討されてきたものだ。江島市長の時代には別の場所に移転して全面更新する計画だったが、土地交渉がうまくいかず2008(平成20)年に現地更新の方針へと転換し、計画の具体化が進行してきた。そのために水道料金を大幅に値上げし、市民にも負担を強いてきた。しかし、基本計画も策定し、いよいよスタートというところで不可解なろ過方式の変更がおこなわれ、当初噂されていたプラントメーカーがはじき出されて、かわりに安倍首相の出身企業である神戸製鋼が受注する動きとなっている。市民の水道料金によっておこなわれる市民生活のための水道インフラ整備事業が、神戸製鋼を養う利権事業になろうとしている。

 急遽変わったろ過方式 水道代値上げは神鋼のためだった

 長府浄水場は、旧下関市、豊浦町、菊川町の一部にかけて広範囲に水を送っており、市内の80%の水を賄っている。08年に現地更新の方針が決定して以後、水道局の技術職員を中心に、施設を稼働させて市民に水を送り届けながら、どのように施設を更新していくのか、さまざまな方法が検討された。その過程で「255億円の大型事業」に色めき立ったのは、水ビジネスを手がけるプラントメーカーだった。最初にプラント建設を受注すれば、今後何十年にもわたってメンテナンスや更新などが自動的に入ってくるからだ。さまざまなプラントメーカーが入れ替わり立ち替わり、上下水道局に営業に来ていたといわれる。
 そうして検討を重ねた結果、2010(平成22)年段階で、現在と同じ急速ろ過方式でおこなうことが決まり、
・第1期(平成22年度から平成31年度)
 排水処理施設、管理棟、中央監視設備、浄水池、自家発電施設
・第2期(平成32年度から平成41年度)
 ポンプ室、薬品注入設備、急速ろ過施設
・第3期(平成42年度から平成46年度)
 着水井、場内整備、既存設備撤去
 という具体的な工程まで市民向けに発表されていた。
 ところが、工事が本格化する直前の2013(平成25)年に突然、ろ過方式の再検討がおこなわれ、①処理水質の安全性が上がること、②建設費用の削減が可能であること、③建設期間の短縮が可能であること、④建設スペースが小さいこと、⑤将来の人口減少に対応可能であることを理由に、「生物接触ろ過+膜ろ過方式が有効である」という判断が下された。
 すでに基本計画までできあがっていた事業の大幅な変更は通常では考えられないことで、携わっていた多くの職員がこの突然の変更に疑問を感じ、説明会の開催を求める動きもあったようだ。現場サイドから見ると「トップセールスとしか考えられない急な動きだった」という実感が語られている。
 そして約1年間(2013年10月11日~2014年12月15日)の実証実験をおこなう一方で、市議会建設委員会には「生物接触ろ過+膜ろ過方式で更新をおこなう」ことを説明。昨年度に新たな基本計画が策定され、今年の6月議会で処理方法の変更が報告されるという急展開となった。多くの職員がかかわって時間をかけて検討を重ねてきたものが、わずか2年ほどでひっくり返ったのである。
 その背後で動いていたのは神鋼環境ソリューションだった。江島市長時代には奥山工場ごみ焼却炉の建設(110億円)を皮切りにリサイクルプラザ(60億円)や終末処理場、下水関係など大型公共事業を一手にし、現在では下水道事業の半数ほどにも入りこんでいるといわれる神鋼が、2010年頃から上下水道局上層部や携わる職員に強力な働きかけをしてとり込んでいったのだと語られている。プラントメーカーを相手にした交渉は常に汚濁にまみれたもので、相当の慎重さと、市側の明確な意志が必要であることは、携わった経験のある職員なら誰もが知っていることだ。これほどの急展開にみなが驚き、「安倍首相の出身企業である神戸製鋼が力技で奪っていった」と注目を集めている。

 生物接触ろ過方式 後進国売込みに勤しむ

 水ビジネスをめぐっては、全国でももっとも多く導入されている急速ろ過方式は長年の蓄積で技術が洗練され、すでに完成していることから、新たな手法を開発する動きが活発化している。と同時に、後進国に水ビジネスで乗り込むうえで、「高度処理」の開発が盛んにおこなわれており、膜ろ過や生物接触ろ過などの手法もその過程で出てきたものだ。簡単にいえば汚い水を効率よく処理するための方法だ。
 生物接触ろ過方式は、北九州市上下水道局と神鋼環境ソリューションが、九州でもワースト上位に入るほど汚染が深刻な遠賀川から取水するに当たって開発した方式。臭い物質となるプランクトンや水に溶けたマンガンなどの溶解性物質を除去できることをセールスポイントにしている。
 北九州市では本城浄水場と穴生浄水場の2カ所に、それぞれ17億円、22億円をかけて、急速ろ過方式に付け加える形で生物接触ろ過池を増設した。記録の残っている穴生浄水場は、戸田建設と青木建設のJVが建設工事を、機械・設備関係を神鋼パンテックが受注している。
 北九州市上下水道局と神鋼環境ソリューションは、この方式の国内特許をとっており、生物接触ろ過が普及すれば特許料が入る関係でもある。さらにはベトナムの自治体に売り込んで現地法人が工事を受注するなど、後進国への売り込みにいそしんでいる。
 今回下関市が導入しようとしているのは、さらにそれを膜ろ過と組み合わせるという全国的にも前例がない方式だ。県内の水道局関係者たちも、浄水場にかかわる企業関係者らも、「膜ろ過を導入する自治体はあるが、生物接触ろ過というのは聞いたことがない」「生物接触ろ過+膜ろ過は前例がないのではないか」「山口県は水がきれいだから必要ないのではないか」とみな首を傾げている。そこで、全国的に導入している自治体があるのかどうか厚生労働省に問い合わせたところ、首相のお膝元に遠慮したのか「生物接触ろ過+膜ろ過の設備を導入している事業体数は把握していない」と煙に巻く回答だった。

 下関の水はきれい 鮎も泳ぐ原水の木屋川

 長府浄水場が原水にしている木屋川上流は、アユやオヤニラミなど、きれいな水にしか生息しない魚や生物、植物が生息している。遠賀川や都市部の河川のように汚れていないどころか、昔とほとんど変わらないくらいきれいな水が流れている。
 クリプトストリジウム(原虫)の対応(上流に牛舎があったり、下水が普及していない地域に義務づけられている)や、六月から秋口にかけて発生する臭い物質のプランクトンなどは、急速ろ過方式でも薬剤や活性炭を使ってとり除いて水質を保証しており、マンガンなどの溶解性物質についても、薬剤で固めた後に砂でろ過する方式でとり除いている。この部分を生物接触ろ過に変える計画だが、生物の働きが弱い場合を想定して、活性炭と薬剤処理する施設をバックアップとして設置するという。

 老朽化というが…「築70年以上」も嘘

 下関市は「長府浄水場は築70年以上を経過して、施設の老朽化が顕著になっている」と主張し、「全面更新」する巨額事業として進めてきた。しかし実際に築70年たっているのは、すでに使われていない緩速ろ過池のみだ。現在使用している浄水施設は、古いもので54年、新しいものでは45年、39年など、コンクリート構造物の法定耐用年数60年さえも超えていない施設がほとんどだ。ところがまるで全施設が老朽化しているような言いぶりで事業は進んでいる。
 現場を知る技術者たちは、「今の施設を耐震化するなどして大切に使いながら、将来的に人口が減ったときに古い施設から廃止していくなど、やり方はさまざまある」「他の自治体ではアセットマネジメントシステム(損傷や劣化などを将来にわたり把握することで、もっとも費用対効果の高い維持管理をおこなうための方法)を導入して、長期間使用することで経営の安定に努め料金値上げを引き延ばしている」など、全面更新に対する疑問も多く語られている。
 上下水道局は新たな方式の利点として、建設コストが削減できることをあげているが、最大の節約は、今ある施設を大切に使っていくこと、必要以上に巨額の事業をしないことである。
 この長府浄水場の更新事業のために、2011(平成23)年4月には約15%もの水道料金の値上げが実施されており、市民は「水道は毎日の生活に必要だから」「水道インフラを守ることは大事だ」と、なけなしの財布から高い水道料金を払い続けている。
 しかし、その値上げした水道代は200億円超の長府浄水場整備に吸い上げられ、安倍出身企業である神戸製鋼が20年計画の水ビジネスで懐に入れようとしている。26万市民は水道代を払うことで神鋼を養わなければならないというものだ。人口の減少とともに水道の使用量も減り、水道料金の収入は減る一方となっている。このなかで、200億円を使うことを目的にした事業がくり広げられ、「下関の安全な水を確保する」を隠れ蓑にして薄汚れた利権がやられていることが問題視されている。
 神鋼が下関市民を養っているのではなく、下関市民の税金にしがみついて環境ビジネスやインフラビジネスを総なめにし、養われている関係を赤裸裸に暴露している。江島市長時代に大暴れしてひんしゅくを買い、しばらくおとなしくしていたかと思ったら、代議士の出世で出身企業までが調子づいてしまい、怪しげな動きをしている。


 

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