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市長選動かしはじめた市民の力
下関・ゴミ袋値下げの会が主催
              会場を埋め公開討論会が成功   2005年3月15日付

 豊関合併にともなう下関市長選をまえに12日、下関市長選公開討論会(主催・有料指定ゴミ袋を値下げさせる会)が、下関市幸町の勤労福祉会館でおこなわれた。公開討論会には、市内や旧郡部から約350人が会場を埋め、江島潔氏(元市長)、中尾友昭氏(元県議)、松原守氏(元県議)の市長候補予定者3人が参加。ゴミ袋値下げ問題や粗末な学校教育費、市民を食べられなくさせている公共事業政策、あるかぽーと開発を中心とする大型店政策など、市民の声をぶつけて、3氏の姿勢を問いただした。公開討論は、選管の指導により、公正を期する努力が払われたが、ひじょうに緊張したやりとりとなり、参加者の大多数が「ひじょうに有意義だった」とのアンケート回答を寄せた。市長選挙をめぐって立候補予定者を呼んで開いた公開討論会ははじめてであり、「市民の力が市長選挙を動かしはじめた」と多くの市民が確かな手ごたえを感じるところとなった。
 主催者を代表して、有料指定ゴミ袋を値下げさせる会の西岡文子氏があいさつした。「思想、宗教、政治がからまない全市民が対象の市民運動として発足1年9カ月。市民のきびしい生活の実態、憤りをまのあたりにして、なんとか市民の悲痛の声を市政に訴えるべきではないか、それが10万5000人分の署名へ責任をはたすことになると決意した。1市4町合併により県下最大の都市が誕生するが、市民の不安をぬぐいさることができない。市民の声に聞く耳を持つ市政でなければならない。わたしたち市民がなすべき道は、市民の力を結集して、市政と市民の双方向で、市民が希望ある新しい下関を誕生させること」と、市長選公開討論会にあたり意義をのべた。
 市長候補予定者3人にたいする質問項目は、@環境行政について、A教育行政について、B商業活性化、C公共事業・雇用問題の四点と、会場からの疑問として、3氏の政治姿勢を問うこととなった。司会は事務局の兵頭典将氏がおこない、壇上に並んだ候補者にたいして、市民の声を代表する形で会場から質問者が立ち、それぞれの項目ごとの説明をおこなった。
  
 ゴミ袋問題
 はじめに環境行政で質問に立った婦人は、「ゴミ袋を高くすればゴミはへる、50円を30円にしたのでは市民に減量意識を持たせることにならないといわれているが、ほんとうにそうだろうか」と問いかけて、以下のようにつづけた。
 「ゴミ袋有料化から半年間で、市直営が集めたゴミ総量はへったが、資源ゴミや不法投棄なども考えると、ふえているのではないか。県内で一番高く、山口市より5倍、原価が5円なのに他市と比べて、なぜこんなに高いのか。ほかの都市では資源ゴミは無料なのに、下関は市民に負担をかけずにとりくむというのはむりなのか。ゴミ袋の下のビラビラした安全グリップは、収集車の方も持っているのを見たことがなく、必要があるとはいくら考えても思えない。下関で使うゴミ袋なのに、なぜ下関で製造しないのか。最後に市民の切実な思いがこめられた、10万3000人分の署名にたいしての考えを聞かせてほしい」。
 江島氏は「8割の自治体がゴミ手数料として、平均的に1g当り1円とっている。今秋には福岡も下関と同レベルに引き上げ、北九州も追随するとみられる。いま国もガイドラインをもうけて、平均的な金額を国で決めようという動きもある。下関でとりくんでいることが、きわめて全国であたりまえのようにやられる時代がくるということを、ご理解いただきたい」とのべた。1袋50円の燃えるゴミ大袋を値下げする意志はなく、むしろ全国に先がけた自慢すべきこととする姿勢を示した。安全グリップや、ゴミ袋の地元製造、署名への態度については回答はなかった。
 中尾氏は「ゴミ袋を高くすればゴミがへるという、高圧的な考え方、押しつけに問題がある。10万人の署名が集まったのは、市民にたいする説明が足りない。半額ぐらいに下げたうえで、精査させていただく」とのべた。
 松原氏は「まず70枚前後を無料で配る。それをこえた場合は、現行料金の半分程度とする。大型ゴミのときに、すでに有料化に入っており、ゴミにかかる負担はそうとう、家計を圧迫している。ゴミ行政を洗いなおして、ムダなものは省いて節約していくべき」とした。
   
 教育予算
 教育行政については、小・中学生1000人分をこえるアンケート調査に参加した一児の母親が質問した。アンケートをはじめて1カ月半のあいだに、市内50校の全部から回答が寄せられたこと、教育予算削減により子どもたちが劣悪な環境で学校生活を送っていたことがはっきりしたと、つぎのようにのべた。
 「機械警備をやめて、宿直を置いてほしい。掃除してもにおうトイレをどうかしてほしい。図書室にいい本をふやしてほしい。算数セットなどは備品として置くべきなど、多くの意見が寄せられた。なかでも下関市の給食食器は、ひじょうに粗末。熱い温食を持って食べることができない」「たくさんの意見のなかでも、@ムダな支出をへらして教育費をふやす、A学校設備の破損を早急に修理、補充する、B粗末な食器から耐熱性のある食器にかえる、C教材は備品として備えつけに、の四点を実現していただきたい。子どもの教育を最優先させる市になることを望む」とのべた。
 江島氏は「まず教育全般にかかわることを話したい」とのべ、「人材を育てるために、ノーベル賞学者とか宇宙飛行士などの生の声を聞いてもらい、夢を持ってもらう事業をとりくんでいる。細江には図書館と文化会館、長府には博物館を観光施設として、野球場はプロ野球が年間何試合もできるような電光掲示板をつけたい。こういうフィールドができることで、活気が出てくるのだろうと思う」とのべた。
 そのうえで「いいところの食器と下関の食器を比べたら、確かにいい方がすばらしいと思うが、財源的なこともある。施設改善も、教育委員会がつねに査定しながらとりくんでいる。必要なものはかならずつけさせていただく」とのべた。
 中尾氏は「最近、幼稚園と小・中学校を見学して、一部壊れているところがある。大規模なものについて長年放置されている状況は、たいへん問題がある。食器についても下関が劣っているのであれば、早急な対応が必要。学校現場、PTAなどの意見も真摯(し)に受けとめる」と語った。
 松原氏は家庭のたいせつさを語ったのちに、「心身に障害のある9000人の市民には、子どもも多くふくまれており、相談窓口の一元化をはかるために、総合福祉センターの設立にむけて努力をする。学校の安心、安全のために警察官OBや民間退職者を、用務員的におくことを構想に持っている」とのべた。
  
 商業活性化
 商業活性化策については、司会者から「商業の現状は、市外、県外の大型店出店ラッシュで、地元商店街はシャッター通りとなり、さんたんたるありさま。豊関合併後の商業活性化について、どのようなビジョンを考えているか。地元商業界から白紙撤回の要求が出されている、あるかぽーと開発計画についてどう考えているか」と、質問内容が読みあげられた。
 江島氏は「あるかぽーと地区には、民間活力を導入して、地域のにぎわい、若者の集まりをつくり出していく。既存商店街は待ちの姿勢でいるだけでは、自治体にはそんな体力はない。ひじょうに大きくなった下関で、地域間競争も生まれてくることが健全」と、あくまで計画をすすめることを明言した。
 中尾氏は「商店街はたいへんな冷えこみで、まだまだ廃業続出のきびしい状況。あるかぽーとは、いきなり商業施設があるかどうかではいけない。既存の商業施設と、適切な競争は成り立たず、おたがいが疲弊する。あるかぽーとはもどるだけ計画をもどしたい」とのべた。
 松原氏もあるかぽーと開発反対の立場で、「あまりにも大型店が多すぎ、その街の周辺は大半が閉店している。あるかぽーとは大型店ではなく、門司レトロに負けない立派な海浜公園として整備するべきだ」とのべた。
  
 公共事業や雇用の問題
 最後に市民の大きな関心事となっている、公共事業について失業中の婦人建設労働者が質問した。「以前、唐戸市場の工事に入ったが、大手が九州の業者を下請に入れて、地元は孫請はほとんど入っていなかった。水族館も九州の下請がほとんどで、リサイクルプラザもそうだった。なぜ九州の会社なのか。下関の建設業者はだめなのか」。だんだん熱がこもり怒りが伝わっていった。「唐戸のウッドデッキも東京の業者で、地元業者に“この仕事できないのか”と聞いたら、できると話していた。市報といっしょに配られるチラシは、“下関の業者に仕事を”というが、実際には下関のトップが下関をつぶすようなことをしている」と迫った。
 江島氏は、「予算がへっている」とのべて、「インターネット入札の競争で落札価格が下がっているが、行政サイドとしては有効に税金を使っていることになる。孫請、下請で市外業者に発注されるという件は、ときどき耳にするが、監督制度というものをガチガチにしていくことを検討しなければいけない」とのべ、なぜ九州や市外業者が多いのか、大手企業ばかりなのかはふれなかった。また建設会社も多角化が必要だとして「福祉とかそういう分野に進出したり、合併してムダを省くなど、きびしいなかを生き残っていく努力をする会社は存続していく」と語った。
 中尾氏は「地元でできることも地元でしない、これが腑(ふ)に落ちない。経済の原則からいえば、税金が市内に循環しなければ、雇用も若者の就職もできない。建物はできたが、みなさんは幸せにならない。下関だけはよそからどんどん来てお金が外に行く、それではいけない。インターネット入札もいるが、99%の高値になったり、地元は安値のたたきあい、これには矛盾を感じる。市民にむいた市政がたいせつ」とのべた。
 松原氏は過去五年間の企業倒産で、建設業が76社にのぼっていること、541人が職を失ったとのべ、「家族をふくめて約1500人が、食べるすべを失った。原則的には発注、下請は地元優先で、お金が市内を循環するようなシステムをつくる。これを守らない場合は、入札参加をやめていただくぐらい、市長がきびしい姿勢を持つべきだ」とした。

 3氏の政治姿勢を問う 会場からの質問
 つぎに会場の参加者から寄せられた、3氏にたいする質問を、主催者がまとめた形で出した。プライバシー問題の質問が多かったが、ひかえることとなったことを説明。まず江島氏にたいしては、日本新党、新進党、社会党、自民党そして市民党と毎回、推薦される政党が違う点について。
 江島氏は「どの政党の推薦を受けるかということは、支持していただける政党、いただけない政党、また推薦をいただくタイミングをのがしてしまった場合、いろいろとある。今回は自民党推薦をいただいたが、3人とも市民党ですよということになると思う」とのべた。つづけて「わたしが推薦願いを出した自民党は政権政党であり、つぎの総理候補と目される安倍代議士もいる。安倍代議士が総理になるのはすべての市民の要求。国としての下関の役割分担というものを訴えていく」とのべた。
 中尾氏への質問は、自民党に推薦願いを出して、そのあととり下げて草の根といっているが、どうして最初からそうしなかったかについて。中尾氏は「市議、県議をとおして無所属でやってきた。このたび、選挙にあたってこれだけ市政にたいする批判が多いから、どの政党からも推薦をいただくということで出した。一角の政党から推薦をもらえず、すべての政党支援でなければ市民党にならないから、とり下げた。これからもいかなる政党に所属するつもりもなく、政治生命のつづくかぎり市民党でいく」とのべた。
 松原氏にたいしては、県議時代に「民主・連合の会」会長であったが、同会の推薦がなく、「自民党の政策は、わたしと同体」と発言するなど、従来の支持基盤をなくして市長選に勝てるのかという疑問。松原氏は、県議22年の経緯にふれ、「民社党で出馬して、これも発展的解消をして12年間無所属できた。しかし代表質問権を得るために会派をつくり、1昨年の改選でわたしは連合の名前をいただいてきた。これからも市民党で努力していく」と語った。
 プログラムの最後に西岡代表が、あいさつしてしめくくった。「これほどきっっちり答えを返してくださったのははじめてだと認識している。もしどなたかが当選されたものの、いっさい耳を貸さないといわれるかもしれない。そのときは市民が力を合わせて、討論会で自由に話しあうことを要求していきたいと思う。今回の草の根のように、1人が1票を確実に自分の目で入れていくことにかかっている。会社でいわれたとか、家族にいわれたではなくて、ほんとうの姿勢、いつわりのない言葉を理解できるまでしっかりと聞きつづけて、下関を託すことができる代表者を選ぶきっかけになればさいわいだ」とのべると、会場からは拍手が起こった。
   
 参加市民も手応え アンケートに切実な思い
 公開討論会後に寄せられたアンケートは、158枚で参加者の4割強にのぼった。うち「たいへんよかった」「よかった」と答えた人が104人と、七割近くを占めた。下関ではじめてとなる市民が直接、候補予定者に問いただすという公開討論会で、市民があきらめでなく、市長選を動かす確信を感じる意見が多かった。
 「母親の生の声を聞いて、候補者の方が子どもの未来を考えるきっかけになればと願います」(30代・女)、「中味があったし、候補予定者も責任を感じただろう」(70代・男)、「候補者の意見がはっきり聞けて、だれがどういう気持ちでいるか、まじめさがよくわかった」(30代・女)、「市民1人1人の力で町が変わる可能性という希望の火がともった。がんばって下さい」(50代・男)と、期待感が寄せられた。
 食えなくなっている市民の実態や、壊れたトイレや粗末な給食用食器に象徴された下関市の教育行政にたいして、生の声を聞きまのあたりにした市民から、新鮮な怒りも共通した。「公共事業の実態がよりよくわかった。給食の食器を見て、下関は教育にあまり力を入れていないように思われる。ゴミ施設に莫大な予算をつけないで、教育に回して欲しい」(50代・女)、「下関は教育に力を入れるべきだ。教育アンケートに驚きました」(70代・男)と、声が寄せられた。母親たちや教師がつくった「教育アンケート・パネル」や「下関のゴミ行政・パネル」、食器や資料を手にとって見る市民が多数いた。
 参加したことで他候補に変えたり再考したいと思った人、参加することで決まったという人が、全体の2割を占めた。「こんな市民対話の討論会を機会あるごとにふやしてほしい」「勢いのある人に出会えた。期待してみるか?」(50代・男)、「街頭演説ではわからない考えを聞くことができた」(30代・女)など。
 支持する候補がいなかった54人のうち、8割は「まだ決まらなかった」とのべており、「質問は切実だが、回答が抽象的で物足りない。3人は市民の方に顔をむけて下さい」(60代・男)、「現市長の内容のなさがめだった。弁舌はさわやかだが」(50代・男)と、用心深く見きわめようという意見も根強い。
 市内の40代の公務員は、「いままでは組合や知りあいから頼まれて、投票したりしなかったりだった。今回、ニュートラルな状態で参加したが、はじめて自分の判断で決めることができた。とくに公共事業の雇用問題で、地元の人たちが働けないということに、おかしいと思った。三人とも市民党といっていたが、ほんとうに市民の声を聞こうとしているのか、大企業の代弁ばかりしようとしているのか、違いがはっきり出ていた」とのべた。
 彦島の30代の婦人は、「自分で聞いて判断することははじめて。とくに教育と環境について関心があったが、差がよくわかった」と記した。商店主は「市長は言葉はたくみにいろいろいうけど、質問からつるっと逃げたりして、真実味がないことがよくわかった。顔が青ざめていたではないか」とのべていた。

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