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      狙撃兵   苦労も痛みも伴わない博打        2016年8月29日付

 国民年金や厚生年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、その運用損失が今年4〜6月期は5兆2342億円にのぼったことを発表した。1〜3月期と併せると、わずか半年で約10兆円もの資金がマネーゲームで吹き飛んでいった。これでは下下がいくら汗水垂らして納めても老後の安心などおぼつかない。ただでさえ支給額は下がっているのに、余計にでも減らしてどうするのかと思わせている。
 毎月の保険料を納めている側、積み立てている側の思いを逆なでするように、いつも年金資金は為政者のオモチャにされて消えていく。財政投融資で厚生年金施設を山ほどつくったり、記録がずさんだったのが批判されて、あれほど「消えた年金問題を解決します!」と叫んでいたのに、自民党に握らせたらまたとんでもない使い方を始めた。同じ10兆円を使うにしても、財政投融資のように国内施設やインフラ整備など形に残るならまだしも、今やっているのは金融市場のカモにされて姿形が何も残らないギャンブルによる消失である。国民のために使うべき老後の蓄えを金融資本に献上しているだけで、以前よりはるかに悪質だ。
 こうした運用損失について、メディア解説の多くは「中国経済が傾いたから」「イギリスのEU離脱問題が響いたから」等等に理由を求め、問題の本質に迫ろうとしない。中国やイギリスの事情は株価下落の要因であって、年金基金が消失した要因はそこではない。年金基金を金融市場に突っ込んだからだ。パチンコに行かなければパチンコに負けることはないのと同じ理屈で、博打に参加しなければこれほどの損失にはならなかった。
 GPIFは「トータルではプラス(通算成績では勝っている)」とギャンブル狂いの口癖みたいなことをいっている。大損しておいてまったく懲りていない。取り立てるときは問答無用の強面で催告状を送りつけたり、財産を差し押さえたり、サラ金みたいな延滞金を持っていく。企業であれば銀行にまで手を回して取引停止に追い込むような事態もザラだ。それで老後は安心どころか不安にさらされ、端から使い果たされるのだから、納めている側にとってはたまったものではない。
 苦労なく手にした他人のカネでやる博打ほど無責任なものはない。    吉田充春

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