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      狙撃兵 欧米はテロの被害者か?   2015年11月16日付

 風刺画でイスラム教を揶揄して襲撃されたシャルリー・エブド事件の記憶を呼び覚ますかのようにパリで同時多発テロが発生し、130人近い一般人が死亡する惨劇が起きた。直後に「イスラム国」が犯行声明を出し、「フランスがISの支配地域を空爆していることへの報復だ」と主張した。AFP通信は、容疑者たちがコンサート会場の壇上からオランド大統領を名指しで批判し、銃を乱射しながら「シリアに介入する必要はなかった」と叫んでいたと伝えた。
 テロは決して許されるものではない。何の罪もない一般人に矛先を向けて手当たり次第に殺戮する残酷さは、人質の首をはねてネット上に晒してきたのと同様、各国で大衆的な恨みを買い、イスラム教徒への憎悪を掻き立てる材料にしかなり得ない。テロによって欧米諸国による中東支配が解決するわけなどなく、むしろ軍需大国に跋扈する死の商人たちが大喜びで戦火拡大のチャンスにすり替え、中東に攻め込む口実を与える効果しかもたらさないのである。
 事件発生後、欧米各国のリーダーたちは相次いでフランスへの連帯を表明し、テロ撲滅を叫んだ。欧米各国は「やられた」側、被害者側というものだ。「やられた」のだから倍返ししても当然だという理屈で、武力参戦の口実にしたい欲求すら感じる。しかし彼らは正義なのだろうか。
 中東の矛盾を見た時、一局面の「やった」「やられた」だけで善悪を決めつけることなどできない。シャルリー・エブド事件を契機にしてシリア空爆に参加したのがフランスだったが、歴史的に侵略や殺戮をくり返し、中東で血なまぐさい蛮行を働いてきたのはアメリカやイギリス、フランスはじめとした国国である。シリア空爆によって殺戮された一般人の数たるや130人という範疇ではおさまらない。おかげで数百万人ものシリア人が住み家を失い、流浪の民となって欧州各国をさ迷っているのである。
 「イスラム国」台頭の引き金となったのはイラク戦争だった。アメリカ筆頭に欧米諸国が残虐な空爆をくり返し、フランスもその一味だった。一連のツケが跳ね返っていることを抜きに「被害者」面をしても誰も納得しない。石油利権強奪のために、いったいどれだけのアラブ人を殺してきたのか、「やられた」ことだけでなく「やった」ことについて曖昧にはできない。
 日本人にとって他人事で済まないのは、中東の複雑極まりない矛盾のなかに安倍晋三みたいな男が首を突っ込んで、「テロに屈しない」などと叫んで回っていることだ。今年2月に起きた邦人2人の殺害事件は、関係もないのに欧米側に与して「イスラム国」撲滅を叫び、カネをばらまいた結果だった。反知性なら黙っておけばよいのに、○○の一つ覚えのようにバラマキ外交をやり、おかげで国内がテロの標的にされるのである。道連れにされる訳にはいかない。                                           吉田充春

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