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底なし競争やめ市内に仕事回せ
下関・中尾市政の業務入札
           災害復旧に必須の地元業者   2011年7月1日付

 下関市の中尾市政が発注する公共工事や業務において、相変わらず単価が見合わず地元企業が赤字を負っていること、地元でできる業務なのに市外発注をすること、地元業界のAクラスが元請をやっても、下請や孫請を九州や筑豊から引っ張ってきて市内企業には回ってこないことが問題になっている。「公共工事の地産地消!」「地元優先発注!」といって市長に就任したが、部長らを市長応接室に招集して15分程度のテレビ撮影用パフォーマンスをやるだけで、事態は何も変わらない。そればかりか、複式簿記を職員にやらせるなど、さらに地方公共団体を効率優先の私企業のようにしていく方向に対して、市の業務にかかわる人人の苛立ちが募っている。
 7月19日に開かれる市議会総務委員会に土木建築協同組合から参考人招致して、代表者から話を聞くことが話題になっている。「傍聴に行こう」の世論も高まっている。入札にかかる最低制限価格の落札率を80%から八五%に引き上げることや、解体業にも最低制限価格制度を導入することなどを求めて六月議会に陳情書が提出され、初めて実情を聞く動きに発展したものだ。
 市内企業の関係者は「二井県政も7月1日から最低制限価格を85%から87%に引き上げる。2年前から業界は中尾市政に求め続けているが放置されている。下関も同様に引き上げてほしい。市長選であれだけの公約をぶったのだから、もっと率先して対応するべきだ」と思いを語った。
 江島市長時代に、下関では横須賀市に次ぐ全国2番目に電子入札が導入され、底なしのダンピング競争が何年も強いられた。あり地獄のようで、一度足を踏み込むと資金繰りを回すために次の工事も低価格で落札し、最終的につぶれていった企業も少なくなかった。その後、全国で同様のダンピング競争が起きて社会問題になるなかで、国レベルで見直しが進み、最低制限価格を引き上げる動きにつながっている。導入は、全国先端で二井県政よりも先んじて実施し、見直しは全国でも後発というのが下関市の姿勢で、なかなか動かない。
 別の企業の関係者は、「安く叩いて工事を完了したら、担当した市職員の手柄のようになっている。“当初予算に対して入札残が20億〜30億円になった”などと市議会議員が自慢していたが、本来の積算である適正価格に対してそれだけ出し惜しみをしただけで、利益のない仕事を企業が背負ったということだ。みんなが経費も込みで仕事をやり、賃金を受け取って子どもを養い、下関市内で買い物をしたり、電気・ガス代を払い、銀行を使ったり、市役所に税金を納めることで成り立っているはずなのに、取ることしか考えていないのだ」といった。

 押下げられる積算価格 赤字かぶる企業も

 積算価格が土木建築分野であれば従来よりも1〜2割近く下がっている。直接工事費といわれる必要不可欠な部分にプラスして、下請、孫請に落としていくための経費も加算され、国土交通省が統一基準ではじき出しているものだ。「昔80%くらいの落札率でとった金額が、今の積算価格」と金額のシビアさが指摘されている。
 押し下げられた積算価格に対して、損益分岐点になるのが落札率80%といわれ、中尾市政になって最低制限価格をそこまで引き上げた。しかし、土木工事などで地面から水が噴き出したり、予想しなかった事態に遭遇すると80%の金額では対応できず、赤字は企業がかぶっている。
 「80%なら会社の経費が出ず、儲けはないがトントンという数字。おかしな現場を当てると悲劇」「下関ではみなが80%付近を目指して入札に参加している。“利益は認めない”という最低制限価格だが、一方で総合評価方式で選定される事業は価格の高い県外大手が選ばれたり二重基準だ」と語られている。
 土木会社の男性は、「市長選のときに中尾は“地元企業がまともな価格で仕事を請け負って税金を払うなら、下関にとっても良いことじゃないですか! 私は最低制限価格も引き上げますよ!”と叫んでいた。市庁舎や満珠荘も公約破棄だが、口八丁が過ぎる」と思いを語った。ブレーンの異議田市議(元建設部長)も「(落札率を)90%くらいまで引き上げるぞ!」と選挙のときだけ大きなことをいって、当選したら知らん顔をしていることについて、業者の憤りはすごい。

 ライフラインの守り手 地元企業の持つ役割

 地元の測量設計企業と山口県公共嘱託登記土地家屋調査士協会も、「地籍調査」業務を指名入札で市内企業に発注するよう求めて陳情書を提出している。「地元でできる仕事なので、私たちに仕事をさせてほしい」という要望を、わざわざ議会にぶつけなければ事が動かないことに、歯がゆい思いが語られている。物品や委託業務の分野は最低制限価格が設定されておらず、激しいダンピング競争が放置されている。しかも、宇部市や北九州は地元企業に徹底して発注しているのに、逆に宇部市からは興産系列の“御三家”といわれる県内コンサル大手が押し寄せ、仕事をさらっていく。
 関係者の男性は、「宇部モンローのように徹底した地元主義をできるはず。市内のアパートを一室借りて、だれも住んでいないのに“下関市内に本店または営業所があること”の条件で認められる。他市のように職員が出かけて確認するようなこともない。このままでは設計・コンサルなどをする地元14社は共倒れしかねない。若手を育成する体力がどの会社も乏しく瀬戸際に追いこまれている。後継者すら育てられないのは、土木や建築会社についても同じで、地元企業がつぶれていたら災害などで対応する人間がいなくなる」と危惧していた。
 上下水道の仕事をしている企業関係者の一人は「水道業界では24時間体制で地元企業が当番をしている。“○○地区で配管が壊れた”というような事態が起きると、水道局から連絡をもらった当番企業がいつでも駆けつけるようになっている。ライフラインの守り人としても、地元企業の存在は大切なものだ。安ければ市外へ、というのは是正されるべきだ」といい、市長にも地元発注を要請しに行った様子を話していた。
 災害や非常事態において土木建築、あるいは水道や電気にしても、地域に根付いている企業があればこそ、防災や復旧作業においても役割を果たしうること、地域共同体のコミュニティーや企業も含めた連携がなければ立ち直ることなどできないことが、東日本大震災の重要な教訓として論議になっている。
 行政の低価格発注とかかわって、最近では、土木建築分野でも福岡の業者が北九州に乗り込み、北九州から下関に低賃金の業者が押し寄せている。筑豊などの業者になると、最低賃金さえ疑わざるを得ないような安月給とされ、「こんなことをしていたら、日本全体でむちゃくちゃな低賃金が蔓延する」と話されている。大型店の出店競争や価格競争によるつぶし合いと同じで、勝者が市場を独占するまで続く安値競争の性質が問題視されている。「受注価格が低ければ、人件費を削るしかなくなっている。そのしわ寄せが下部に回っている。下請や孫請を外されたら小さな企業は食っていけない。地元で形成されてきた縦系列にも変化が出ている」と様子が話されている。
 ゴミ収集をしている業者は、「役所の仕事は安値でも金は確実に入ってくるから、銀行が融資してくれるため赤字でも落札する企業が増えている。結局叩かれるのは人件費だ。下関の人件費は高いといわれるが、以前は1万円をこえていたのが、今は7000〜8000円になっている。そういうことをするからまた消費が落ち込んで、経済が疲弊して、いざというときに足腰が立たなくなってしまう。産業廃棄物を扱う業者のなかでは、請け負う値段は下がっているのに、奥山や吉母の産廃処分場に持っていったときの手数料が去年までは100`で500円だったのが、今年から1500円に値上がりしているから解体業者などは泣いている。民間の仕事でも客に手数料が上がったことを説明しても理解してもらえないから業者がかぶるしかなく、市に陳情に行っても受け付けてもらえない」と話した。そして、一般のゴミ収集業務も参入する業者が増えているために競争が激しく、凄まじい安値で仕事を奪いあっている状況を語った。

 書類の量も尋常でない 零細企業ほど重荷

 市外大手に発注したがることについて、「書類や事務手続きが行政にとって楽で済む」という理由を指摘する声も少なくない。江島市長時代に指名競争入札から排除され続けていた企業の男性は、十数年ぶりに公共事業を請け負って驚いた。500万円程度の仕事にもかかわらず、書類だけで三〇a以上もの量が積み上がり、記載や様式にミスがあればやり換えの連続。市役所と会社を何度も往復し、役所担当者の表情を見ると「こんな書類もできないなら落札するなよ…」といわんばかりだったのが強く印象に残っている。現場での仕事は工期の半分くらいで完了したが、その間、市の担当者が見に来ることはなく、すべてが書類だけで流れていく仕組みに唖然とした。
 「10年以上前に3000万円くらいの仕事をしたこともある。やり方がまるで変わっていた。1に書類、2に書類、3、4がなくて5に現場という感じだった。完成していく過程を見ながら判断するのではなく、机の上で済ませて責任回避のために書類が存在している。私らの力量をその視点から判断されたのではたまらない」と話した。
 書類作成に費やす時間が尋常ではなく、専属で職員をつけなければ回らないほどになっていることが、とくに零細な中小企業ほど重荷になっている。別の企業の男性は、「大手なら従業員が山ほどいて、時間を割いても経営の苦にならない。しかし一人、二人の人員がかけずり回っている中小企業では、膨大な書類をこなすために缶詰になると仕事が回らない。もっと簡素化して、完成品で判断するようにしてほしい。楽だから大手に発注するといって、地元が寂れて税収が入らないことの方が下関にとってもマイナスだ」といった。
 企業が賃金も払えないほど体力を失い、従業員が失職することによって、下関の街を支える力がなくなってジリ貧になっていくことに誰もが危機感を抱いている。人口20万人以上40万人未満の全国68都市のなかで、1985年から2010年にかけての人口減少率がワースト3位の13%であったことや、若者の市外流出に歯止めがかからず、高齢化率の上昇が全国でも屈指であること、その根本に産業の衰退があり、中心になって機能を果たすべき行政の姿勢が問われている。
 ところがみなの切実さに反して、大型箱物や市街地開発など不要不急の食い潰し事業ばかりがやられ、しかも地元で資金が循環しない。公共施設の指定管理といえば県外大手を招き入れ、図書館に納入する書籍まで全国大手が独占。全国先端の市場原理市政がもたらしている街の荒廃状況について、黙って見ているわけにはいかないとの思いが強まっており、各業界が行動を起こしはじめている。


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