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つぶせなかった反対の力

メドがなくなった上関原発
 
     計画除外の反対派用地が必要  沖合漁業権の消滅も
                                2002年5月4日付 5747号


 中国電力の上関原発計画は計画浮上から二一年目を迎えて、すっかりとん挫しめどは立たなくなっている。中電は二五年まえに総力をあげて豊北原発計画を推進したが、完膚なきまでにうち負かされた。中電はそうとうに構えなおして国、県と連動した権力、金力を総動員して巻き返しをはかった。とりわけそれは反対運動の内部に反対の力を売りとばすインチキどもを配置したことが重要な特徴であり、そのために上関町民にとっては複雑で困難な過程を強いられた。しかしいまや、逆立ちしても原発を建設することはできなくなった。上関原発をめぐる状況を見てみたい。
 【上関】上関原発計画は昨年、二井知事の建設同意で、国の基本計画に組みこまれた。それから一年になるが、安全審査もその前提となる精査調査も、一歩もすすんでいない。二井知事は「神社地問題が解決しなければ(精査調査のための許認可)はしない」といって、裏では宮司解任の策動を弄(ろう)している。だが原発建設のための手続き上の問題として見ても神社地だけが問題ではない。
中電は用地買収は八割を確保したといっている。それは【図】で明らかなように、当初一四五万平方bとしていた計画を、反対派の土地(八万平方b)を虫食い状態で除外した形で、一三七万平方bに縮小し、電調審上程(基本計画組み入れ)のかっこうをつけるというインチキであった。国は上関計画を基本計画に組み入れるために、意図的にハードルを下げたのである。だが建設するには、反対派の土地すべてを買収しなければできるわけがない。
 隣接地に原発のようなものを建てられたら、その私有地はまるで無価値になるのは当然であり、この国に民法が効力をもっているのなら、地権者の承認あるいは買収なしに原発を建てることはできない。しかも原発が自衛隊による防衛対象となり、有事法制化をするような時勢で、原発を見おろすような土地を未買収で放置するようなことができないのは常識である。
 ちなみに全国で行きづまっている原発計画を見てみると、電源開発が青森県ですすめる大間原発の場合、一三二fの計画地のうちの二%弱の用地交渉が難航し、埋め立て造成工事に乗り出そうとしたものの、まえにはすすめない状態。新潟県の巻原発の場合は、残り三%の用地取得が難航し、八一年には国の電源開発基本計画に組みこまれたものの、八三年以降は安全審査が中断したままである。
 用地だけを見てみるならば、上関は神社地以外にも共有地や一般地権者用地など頑強な反対の力で二一年間がんばってきて、いまさらあきらめるようなものではない。
用地問題ではそのほかに、送電線用地も必要だが、いまもって論議にも浮上していない。上関大橋も原発の大型トラックが行きかうのには耐えず、つくりかえなければ話にならないし、道路も必要だが話も出てない。
 神社地問題を買収できなければ建設はもちろん、精査調査にも入れない。しかも神社地と隣接して炉心部に位置する共有地は裁判中であるが、それも所有権が確定するのは数年後とされており、神社地にかかわりなく数年は確実に精査調査に入る手続きすらメドはないのである。
 また中電がかくしてきた問題は、埋め立て地沖合二〜三`にわたって、占有海域をつくること、すなわち一〇七共同漁業権関係八漁協の漁業権消滅の手続きが不可欠であるという問題である。現在の計画では、埋め立て海域だけの漁業権消滅で、港を建設する計画はない。原発は「トイレのないマンション」といわれるが、玄関もないのである。
 北海道の泊原発の例を見れば、専用港をつくり、埋め立ての岸壁から沖合一四二二bにわたって漁業権消滅区域をつくっている。さらに沖合一七一〇bまでは漁業制限区域をつくっている。消滅区域は一一九f、制限区域は九八fにおよんでいる。伊方でも他でもそうなっている。
 原発は燃料にせよ核廃棄物にせよ、海上輸送が欠かせない。それらの数千d規模の貨物船が優先的に使用できなければならず、漁船が操業しているから沖合で待機しておくというわけにはいかない。
 とくにアメリカのテロ事件後、保安庁が海上から原発を警備する体制をとったが、有事態勢で爆撃対象となる原発の沖合海域は厳重な警備海域とならざるをえない。四代田ノ浦の場合は、祝島とのあいだは航行禁止となるものと思われる。そのためにもあらかじめ占有海域とせざるをえないのが常識である。
 そうすると占有水域は、地先三〇〇bから沖の一〇七共同漁業権区域にかかることになる。したがって、この漁業権消滅の同意は四代、上関の地先漁協だけでなく、祝島漁協をふくむ八漁協全部の総会における三分の二以上の同意による特別決議が必要となる。そこで一漁協でも同意の議決をしなかったならば、漁業権の消滅はできないのである。
上関原発の建設のメドは、以上ざっと見ただけでもはてしなく遠い。中電社長は基本計画組みこみで、「登山口まできた」といったが、そこから先をのぼっていく用意があるのかどうか、口でいうことと違って行動では、その気はないというのが町民の評価である。

万策がつきた中電

 中電のプログラムは、九四年に平井前知事と山戸貞夫氏とのあいだでやった、共同漁業権放棄の取引による埋め立てに必要な地先三〇〇bのいわゆる単独漁業権で、基本計画組み入れまで推進し、そのあいだに反対の力を切り崩すことをもくろんだ。とくにそこまでに、祝島漁協を屈服させることが至上課題であった。祝島の反対を崩せば、あとの用地も、沖合の漁業権消滅も簡単にいけると踏んだのである。
 そこのところに、九四年の漁業権書きかえで裏切りを見せた山戸氏の役割があるが、その正体が広く暴露されることとなった。かれらが裏切っても裏切っても反対の運動はつぶれなかったのである。選挙をやれば、祝島の反対票の倍ほどが長島側の票である。そのほとんどは、山戸氏などの指図には従っていないのである。上関町内ではいまや、山戸氏がまじめに反対をする人物とみなすものはいなくなった。裏切りのカードがなくなったのである。
上関町民はいま、町が静かになったと喜んでいる。それは中電が金をばらまかなくなったからだと語られている。中電の推進活動は金をばらまく以外にはなにもない。四代の地権者との関係でも、「電調審に上程されたら残り半分を支払う」と約束していたが、一年もぶらまかしている。
もう一つの動きとしては現在町内で、右田勝氏が町議をやめて、来年の町長選に片山町長に対抗して出るといって準備している。推進派の二〇年選手であった田中元商工会長が早く失脚し、今度の選挙では西元議長が失脚した。そして、右田、加納、西町議らが、推進派の「改革派」として片山町長ら旧ボスとケンカをはじめている。
 それは中電の差し金なしでやられているものではない。中電は、あっちこっちで「二井知事がダメだからうまくいかない」といっている。町内では「片山町長ら古手がダメだから行きづまっている」といって、右田氏らを「われこそは」と踊らせているのである。それは中電が逃げるために二井知事や片山町長らに責任をなすりつけているのを真に受けた動きとしかみることはできない。

「家内安全」放棄するか 宮司解任問題山場  神社本庁の態度注目

 以上のような情勢のなかで、やはり神社地問題が焦点となっている。上関町でこの間、もっとも中電と体をはって抵抗しているのは林宮司という評価は一致している。しかも林宮司の土地を売却しないという姿勢は、山戸氏らを使った中電の反対派つぶしの枠をこえたところでの行動である。その行動が、全町民の反対の思いを激励し、全県、全国の圧倒的な大衆の心からの共感を得ている。中電としてはまことに憎たらしい存在といえる。ここでカギを握っているのが宮司解任問題をかかえる神社本庁の動きである。
 神社本庁は昨年七月、宮司と総代(中電)側双方の意見を聞いたうえでその処遇を検討するとして、意見書の提出を求めた。中電・総代側は昨年九月に提出し、宮司側は解任手続きをすすめていくものとして抗議、中電側の狙いについて反ばくした内容の上申書を二度にわたって提出した。今年三月、本庁は再度五月二日を期限として意見書提出を督促していた。宮司側は二日、回答書ではなく、再度抗議文を郵送した。
 今年一月、山口県三区選出の自民党代議士・河村建夫衆院議員は、県庁での年頭記者会見で「神道政治連盟など神社本庁とのパイプもある。解決のために支援していきたい」などマスコミの前でのべた。現在の神社本庁総長は、原発や核燃料処理施設で有名な青森県の工藤伊豆氏(高山稲荷神社)である。その右腕といわれる秘書係で、神道政治連盟の中央の会長をやっている人物が、ほかでもなく山口県に精通した美祢市厚保の神功皇后神社宮司である宮崎義敬氏である。
 美祢市は河村代議士の選挙地盤でもあり、そのパイプは宮崎氏のことである。美祢市はまた二井関成知事の地元である。宮司解任の裁判騒動で、二井知事の盟友である末永帆本弁護士があらわれたが、神社本庁も二井知事人脈が働いていると見るほかない。表では「神社地が解決しなければ許可しない」といい、裏では宮司解任の手を回す、という二井知事の官僚的な「裏表政治」であろう。
 元県神社庁長であった宮崎氏は、工藤氏とは二人三脚で運命共同体といわれている。中電による原発建設を撤回させた豊北町阿川の出身であるが、わけあって忌宮神社(下関)をやめて上京。東京ではKSD事件、ものつくり大学などの悪事がばれて失脚した自民党・村上正邦代議士のカバン持ちでもあったといわれている。
 KSD問題では「宮崎はそうとうにやばかった」といわれていたところ、工藤総長がかばったのだといわれている。村上元代議士の選挙運動で山口県の神社界もおおいに動員されたのは、そのような背景をもっている。





神社地だけでなく 
神社そのものを売る姿暴露





 この間、県神社庁上層部は解任騒ぎをそそのかしてきたことが暴露された。裁判にまで発展した役員名簿閲覧問題では、記載ミスを上田俊成庁長と金長広典副庁長らが中電側に漏洩していたこと、当時の黒神公直庁長(徳山商工会議所会頭、元吹田ナ後援会会長)らをして屈服を迫っていたことなど、神社地だけでなく神社そのものを売りとばす側にいることが露呈した。
 現在も林宮司を排除して四代に別の神官を送りこみ、公民館で祭りをやらせているのは県神社庁である。田布施町の教育委員長もしている金長広典氏(田布施・高松八幡宮)などは推進派一部総代と祭りに乗りこんで、直接妨害に出る有様である。室津賀茂神社の分裂騒ぎでも、分裂側を調子づかせているのも県神社庁であり、相談役は主として金長氏である。
 ちなみに町内では、同じ神職でも、祝島の守友宮司と林宮司のあつかいが違うことが語られる。推進をやって祝島島民から嫌われ島から出ていった守友氏は解任問題はないどころか、その後は柳井市伊保庄に住居を移し、その息子は四代の推進派地権者会会長が事務長を務める柳井自動車学校の事務に座り、その娘は県神社庁を務めていた黒神公直氏が遠石八幡宮(徳山)の禰宜にとりたてて世話をみたことが知られている。
 中電に土地を売らないといった林宮司は解任騒ぎになっており、神社庁の基準では、その地の氏子、住民がどうかは関係なく、原発に賛成するかどうかであり、中電やお上にしっぽを振るかどうかが重大な基準になっているのである。
 神社は、「家内安全」「商売繁盛」を祈って人人からさい銭をもらうところである。戦争の標的になる原発という国民の生命、財産をなくしてしまうものの旗を振るのは、郷土愛も愛国心もないことを証明することになる。しかも原発は、大きくはアメリカの命令で、電力会社も自由化は押しつけられるなかで嫌やっているものである。
 アメリカは余剰ウランを処分し、原水爆製造のためにやれというもので、原発が爆破されようが関係ないという立場である。神社本庁がこのようなアメリカや大企業の機嫌をとって、自分の商売に励もうということで、神社本庁の神様がアメリカになっていたというのでは、日本の神社道も地に落ちたといわざるをえない。神社本庁が日本民族の生命、財産の安全の側か、アメリカを神様に仰ぐ側か、注目される。

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