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総会議決無視し県漁協が受領
祝島補償金巡る本紙座談会
               慌てた中電と二井知事      2010年5月12日付

 上関原発計画が頓挫している最大要因である祝島の漁業補償金を巡って、一昨年から二井県政や山口県漁協が大騒動して「受け取れ!」と恫喝してきた。ところが祝島は屈服せず、二度も「受け取らない」と議決。15日は供託金没収の期限となり、祝島との漁業権交渉は最終的に決裂というなかの今月7日、県漁協本店が「配分してほしいという要望もあり、紛争になってはいけないから」などといって祝島支店の議決を無視し、供託金を引き出すという超法規行為に及んだ。埋め立て許可無効が決定づけられる二井知事と中電のあわてぶりを暴露した。このような情勢をどう見るか、記者座談会をもって整理してみた。
  まず何が起きているのか、状況を出してもらいたい。
  祝島には総額で10億8000万円が充てられたが、漁業権放棄に応じていないし、受け取らないから補償金は宙に浮いていた。法務局に供託されていた2000年支払い分の5億4000万円が没収期限を迎えるなかでの出来事だ。没収になれば漁業補償交渉は決裂し、振り出しに戻ることを意味する。だから、なりふりかまわず県漁協を使って引き出した。直接に供託したのは共同管理委員会だからという理屈があるが、それは祝島が受け取らないという姿勢をしていることに付合したものだった。今度は祝島は受け取らないと議決しているのに、それに逆らって受け取った。
 C 昨年2月の支店総会では反対35票、賛成33票の2票差で否決し、今年1月の総会では43対15で否決している。祝島では「補償金は受け取らない」「供託金も受け取らない」で決着がついている。ところが執拗に受け取りを迫る動きに発展していた。3月4日に再び県漁協幹部らが開催した説明会では、正組合員68人のうち、原発に反対する組合員47人が「県漁協としても供託金を受け取らず、そのままにしておくこと(5月15日で国による没収)を求める」と連判状を提出。さらに昨年度、中電から山口県漁協に支払われた補償金の残り半分について「県漁協で仮受け状態にあるこの金については直ちに中国電力に返還するよう求める。中電が受け取らない場合は法務局に供託するよう求める。仮に税金分の負担名目で祝島支店組合員に支払いを求めることがあっても、いっさい応じないし、場合によっては法的措置も考えることを決議する」と求めていた。
 D 祝島の補償金受け取り拒否、中電への返却要求が圧倒的多数であることが明らかなのに、その議決を無視して県漁協が勝手に補償金を受け取った。そして勝手に法人税として3億7800万円を納め、しかも受け取っていない祝島に税金を負担させると脅してきた。ヤクザ顔負けのやり口だ。実際に「税金分を負担しろ」とやりはじめたら大騒動に発展することは疑いない。祝島は国に没収させ、中電に返還せよと要求しているのに、勝手に受け取って勝手に法人税を払うというのだから、その責任はすべて県漁協にある。祝島が受け取ってもいない金の税金を払う理由などない。それは祝島を脅すつもりだが、受け取った県漁協の方も扱いの難しい金となる。幹部連中の首が飛ぶような行為だ。
  今回の問題について全県の漁協関係者たちに聞いて回ると、みな言葉を失っていた。「水協法はどこへいった?」「地元支店が議決しているのに、本店が勝手に受け取るなど常識外れも甚だしい。真面目に水協法を論じてもラチがあかない」「県と県漁協、中電や法務局、税務署がグルになって、法を超越した力で原発推進しているのだ」「“3分の2ルール”は飾り物なのか。浜の最高議決のはずだ」「合併の狙いはこれだったのだ」と口口にいっていた。あり得ないことが起きたといった感じだ。
 いくら県漁協がならず者漁協といっても単独でできる行為ではないし、県がお墨付きを与えて、幹部職員が暴走しているのだと見なされている。そもそも「県漁協が受け取りを決定した」というが、理事会決定なのか誰が決めたのかも問題視されている。「県が裏で指示しているのだ。県漁協にそんな知恵はない」と水産行政に携わってきた人たちほどいう。県漁協が原発を推進するのなら、県下の組合員の同意がいるはずだ。協同組合ではなく、ただの株式会社のようにしたのが合併だったのかということだ。

 決裂必至のヤクザ手法 祝島の逆鱗に触れる

  県漁協が受け取るのなら、何度も議決など求めなければよいのだ。受け取りの議決がいるから何度も挑んだ。しかし失敗したということだ。これで原発は終わりになって、追いつめられて、超法規の禁じ手を使ったということだ。
  この間、退職してただの人になった元農林水産部審議監が「証人」として祝島に乗りこみ「山戸氏は運営委員になってはいけない」「合併の時の約束だ」と主張したり、補償金に何の権限もない県漁協がしゃしゃり出て受け取ったり、人の常識を超えたことをやっている。裏を返せば「漁業権問題は解決済み」なのではなく、祝島を崩して容認させなければ原発は終わりになるという事情を非常に浮き彫りにした。超法規のやくざ政治をやったらますます祝島との関係は決裂に向かわざるをえない。
 A 議決無視という非常識だが、この間やってきたことは全て非常識の連続だ。28年が水の泡になって原発が終結するから、中電、二井県政がムキになっているのだ。しかしこれは自爆コースだ。県漁協で祝島に乗り込んで恫喝してきたのは前田総務部長と仁保参事(旧越ヶ浜漁協参事)だが、これらの幹部たちは今後、祝島に平然と乗りこむことができるか? 無謀な突っ走りは火に油を注いだようなもので、中電と同じように上陸阻止行動をされてもおかしくない。脅すしか手がなくて、交渉窓口として使い物になるのかどうかだ。「前田、仁保は来るな!」と祝島の逆鱗に触れている。
  県漁協は「適正な税処理をおこなう」といっている。今度の受け取りでは「県漁協が保管する」といっているが、保管なら税金を納める理由はない。しかし実際は、所有権が確定しない補償金を県漁協の所得として計上し、法人税として3億7800万円を納めると真顔で説明してきた。仮に強行した場合、「個人配分をすれば修正して応分を還付できる」と受け取りを誘導してきたが、税理士などに聞くと税金の修正可能な期間が一年間。減免措置を適用されるのも一年以内となっている。供託金没収をまぬがれて、勝手に「保管」などといって一年間勝負の延長戦に持ち込んだ格好だ。
 ただ一年後まで受け取らなかったら、県漁協、二井県政の側が完全にアウトとなる。無理を押したツケが噴き出す。税金として払った3億円余は県下の漁民の負担になるとなると、県漁協は大騒動になる。残りの7億円をどうするのかも問題は残る。なによりも二井知事の埋め立て許可が無効となって、二井知事の首が飛ぶ楽しみがでてくる。
  もし3億7800万円を祝島の68人の組合員に払わせようとすると、一人当たり500万円超となる。「それより配分した方がまし」と誘導したいわけだ。県漁協は受け取り理由として「地元の約20人の組合員が配分を求めているから」「紛争になるのを避けるため」といっている。県漁協に要望書を出した者のせいにして「500万円払え!」をやった場合、島内で肩身が狭くなるのは彼らで、余計にでも多数派から遠のくだろうし、それこそ紛争になる。
  漁業補償金の問題は、2000年4月に中電と107共同管理委員会が125億円で「妥結」したことからはじまった。当時、関係八漁協のうち四代、室津、上関、平生、田布施、牛島、光の七漁協は各総会で議決(3分の2同意)していたが、祝島はテーブルにもついておらず、ましてや議決などしていないものを「管理委員会の多数」などといってゴリ押ししたのがきっかけだ。
  中電は合法的に進めるためには祝島の同意が必要なのを知っているから、2000年に支払ったのはそのうちの半額だった。残りの半額は成功報酬で、二井知事が公有水面埋め立て許可を出した一カ月後までに支払うという約束だった。公有水面埋め立て許可というのは、「関係するすべての漁協の同意を得た状態」を前提としている。つまり祝島漁協が漁業権放棄に同意して、問題がすべて解決したら全額支払うという意味合いだった。
 C 半金払いというのも前例がないが、要するに未解決だったのだ。この膠着状況が動きはじめたのが08年秋口で、2000年から争っていた『漁業補償契約無効確認訴訟』の最高裁判決が出た頃からだ。「(祝島の)組合員は管理委員会の決議に基づく契約に拘束される」という判決文をもって、祝島の敗訴と騒いで、まるで漁業権がなくなったかのように振る舞ったのが二井県政と中電だった。
 D すました顔で「漁業権問題は解決済み」といい、「条件は整った」として二井知事が先走って埋め立て許可を出したから、中電も残りの六十数億円を払わないといけなくなった。そして海面に手を出せないとわかっていて「工事着手」と大がかりなパフォーマンスを展開。工事業者が町内に押しよせ、田ノ浦では土を掘ったり森林伐採してみたりで、対岸の祝島に向かって「原発はもうできるからあきらめろ」とメッセージを送り続けた。表からも裏からもすごい攻勢だったようだ。
 A 二井県政や県漁協は最高裁判決を盾にして、さも祝島の漁業権問題は解決済みの前提で突っ走ってきた。ところが最高裁の判決は祝島の漁業権がなくなったとはいっていない。その裁判は管理委員会の契約の無効を求めるものだった。7漁協については、漁協総会で3分の2の議決を持って契約しているからそれを無効とはいえないとはいえても、祝島の漁業権がなくなったとはいっていない。祝島の漁業権を放棄できるのは組合員の総会だけだ。これは日本の漁業界の根本原則だ。総会による3分の2の議決がいるし、契約の印鑑、さらに補償金を受けとった事実があって初めて漁業権交渉成立となる。解決しているなら放置すればよいのにムキになるから「補償金を取らなければ漁業権は生きている」の姿が余計にあぶり出された。
 C 二井知事側が、祝島を崩すには、条件斗争派つまり補償金つり上げのための反対運動派を獲得する他はない。補償金は15fが消滅する旧四代漁協が23億円、3fが消滅する上関漁協が21億円で、もっとも被害を受ける祝島が10億円余。四代漁協の組合員は一人当たり6000万円、影響補償のみの室津漁協なら700万〜800万円が配分されたが、祝島も室津並。祝島に対しては二束三文で絞め殺すというほかに、逆らってきたものには、もっとも恥をかかせ、笑いものにするという魂胆を含んでいる。今度の県漁協の受け取り問題も、祝島の推進派の要望によりとして、責任をかぶせる扱いを受けている。推進派が要望したために税金を払う羽目になるわけで、3億円余の法人税負担も推進派が志願し、お願いしたという格好になる。
  いずれにしても、最高裁であろうと、二井知事であろうと、祝島の組合員以外のものが祝島の漁業権を変更することはできない。「共同漁業権の全部又は一部の放棄又は変更には、漁協総会における3分の2以上の書面同意が必要」というのが法治国家としての決まりなのだ。漁協合併にしても同じだが、漁協ルールを逸脱しているし、水協法などあってないようなものならば“ならずもの国家”ということになる。

 全県全国漁民の問題に 超法規国家の縮図

  抗議行動をすれば1日500万円支払えとやったり、中電と二井県政や県漁協に法務局や税務署、裁判所、商業マスコミなどがグルになって、力ずくで島民を絞め殺そうとしている。ウソやだましや脅しの政治だ。日本は超法規国家になっている。その見本みたいな現象だ。
 こういったやり口は祝島に限ったことではない。岩国では極東最大の米軍基地を建設するために「沖合移設」とだまして沖合拡張をやり、愛宕山開発といってだまして「借金が膨らんだから米軍住宅化」とやったりしてきた。沖縄・普天間問題にしても同じだ。日本は法治国家ではないんだ。
 B 今度の件は、二井知事側の暴走で、上関原発終結が一年延長となった。後一年ウソと脅しで祝島を崩したいところだろう。しかし、県漁協、県水産行政の暴走により、問題は祝島だけではなく合併でひどい目にあってきた全県漁民の問題になってきた。それどころか、岩国をはじめ、市町村合併にしろ二井県政のウソと脅しで絞め殺されるような目にあってきた全県民と共有する問題になってきた。
 祝島の相手は、中電、二井県政だし、県漁協、そして裁判所や法務局、国税など要するに国策とのたたかいであることが浮き彫りになってきた。それらがぐるになって、原発を認めさせ、漁業をつぶし、国をつぶし、戦争に引きずり込もうとしているのだ。祝島のたたかいは、全県、全瀬戸内の漁民、岩国、全県民、広島など全国との団結が力となっている。
 「上関原発計画の終焉」が現実のものになろうとしているのが現実の姿で、追いつめられているのは中電、国、県の側だ。漁業補償金の受け取りを断固拒否してたたかうなら、勝てるところにきている。

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