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植民地奴隷にする労働法改悪
人間的生活条件も破壊
             全国的な政治斗争に活路   2007年1月12日付

 パートや派遣、アルバイト、フリーターといった不安定な非正規雇用が広がり、若者は結婚もできず生活のメドもたたない奴隷状態が急激に拡大している。このなかで安倍政府は生活できるように改善するどころか「多様化する働き方にあわせる」と財界やアメリカの要求に従い、いくら残業をしてもタダ働きさせる「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の適用除外制度)導入にむけた法案を今月の国会に提出すると発表した。「金を出せばいくら働かせてもいい」と超過密労働に駆り立てた挙句、今度は「金は出さなくても働け」というきちがいじみた体制に変えるというのである。そして今国会への提出をたくらむ労働法制には、労働契約法の新設、派遣労働法の改悪など、雇用形態の抜本的な転換が企まれている。規制改革とは労働法制改悪が基本であり、植民地的な労働者の奴隷化である。

 大資本は天国、労働者は地獄
 厚生労働省の労働政策審議会は昨年末、労働条件分科会で最終報告書「今後の労働契約法制及び労働時間法制のあり方について」をまとめた。この今後の労働法改悪の指針に「ホワイトカラーエグゼンプション」導入を軸にした労働時間法制改悪、労働者を個人請負業のような扱いにする労働契約法制の新設を盛りこんだ。
 現行の労働基準法は原則として労働時間を1日8時間、週40時間で、それをこえて労働者を働かせてはいけない、としている。ホワイトカラー・エグゼンプション制はこの労基法を変え、労働時間規制からホワイトカラー労働者を外すものである。
 最終報告では導入対象として、「労働時間では仕事の成果を評価できない業務に従事する者」「業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者」「業務遂行の手段及び時間配分の決定などについて使用者が具体的な指示をしない者」をあげた。厚労省は年収条件は900万円以上としているが、財界は400万円と主張している。いずれにせよ全労働者に拡大していく意図は見え見えで残業手当てをなくし、残業の概念自体を崩壊させるのが狙いである。そして「1日8時間労働」という歴史的に勝ち取られてきた労働者の権利を奪い歴史を逆戻りさせようというのである。
 もう一つの柱が「労働契約法」の新設である。「労働契約ルールの明確化」「就業規則変更による労働条件の変更」を盛りこんだ。これにより労働者は請負業者のように、会社と個人契約を結ぶことになる。「出向、転籍、懲戒ルール」をはじめ会社側が一方的に決める就業規則を認めなければ就職できず、いったん就業規則を認めればどんな扱いを受けてもすべて「自己責任」となる。「反抗したらクビ」「ミスをしたらクビ」「私語禁止」などの異常な契約内容でも「労資合意」があれば、国の指導も排除して、会社側が堂堂と労働者の首を切る体制である。
 このような法制に労働法学者も「契約原理に反する労働条件を変更法理の固定化は避けるべきだ」と反対声明を出している。当初盛り込もうとしていた「解雇トラブルの金銭解決」は先送りされたが、中心眼目は労働者に物もいわせぬ無権利な就業形態を押し付け、大資本の天国とし、労働者の地獄をつくることである。経営労働政策委員会が出した05年版報告では「最近の労働行政は、企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著である」と主張。「タダ働き、労働条件切り下げ、首切りの自由」を保障する法制である。
 さらに厚労省は「労働者派遣法」を大幅に変える検討をはじめた。現派遣法では個別の派遣社員に、派遣先の企業が事前面接をやって労働者を直接選ぶ行為を禁じている。この「事前面接の解禁」と、派遣会社が選んだ労働者の受け入れを拒否できるようにすることを検討している。原則3年の派遣期間延長や派遣業務拡大も狙っている。
 政府は05年3月に閣議決定した規制改革・民間開放推進3カ年計画で「米国を参考にした労働時間規制の適用除外を検討する」ことを柱にした「労働ビッグバン」を進めてきた。規制改革・民間開放推進会議の宮内議長(オリックス)は01年に執筆した「経営論」で「日本の企業経営にいま、求められているのは“アメリカに向かって走れ”ということではないでしょうか」とのべたが、アメリカ型労働形態にかえることが中身だった。

 1日8時間労働も崩す 10数年で労働法激変
 そしてこの10数年で雇用形態、労働時間をはじめとする就労形態、職場の安全、外国人労働者の受け入れにいたるまで労働法制を激変させてきたのである。
 雇用形態では戦後一貫して禁止されてきた派遣労働を解禁した。1985年に労働者派遣法を制定し、専門性の高い16の業務で労働者派遣業務を合法化した。その後96年に派遣対象業務を26業務に拡大し、99年には1部の例外を除き、ほぼすべての業務を労働者派遣の対象にした。そして2004年3月からは製造現場への派遣を解禁し、派遣期間も最高3年までに延長した。
 労働時間に関する法制では、「1日8時間、週48時間」で1日に働くのは8時間まで、合計が週に1日休みで48時間という規制を取り払った。87年の労基法改悪で1週間40時間労働制に変更した。1日は週5日・40時間以内であれば8時間以上働かせてもいいようにした。変形労働時間制を拡大し、1カ月が1日6時間であれば次の月は残業手当なしで1日10時間働かせてもよくした。
 ノルマを決め、その仕事の時間配分を労働者自身にゆだねる裁量労働制も導入した。98年の法改定で各企業の本社に勤務する企画や立案などをするホワイトカラーに対象を拡大し、03年の改定で本社以外の支店を含めたホワイトカラー業務に適用を拡大した。このことで延延と長時間労働を続け、過労死にいたるサラリーマンが増えた。05年になると、年間総労働時間を短縮するために作った時短促進法を廃止することを決めた。

 女性や外国人搾る体制 安全破壊の法も整備
 女性や外国人労働者の労働形態も変えた。18歳以上の女性はもともと、残業を1日2時間、週6時間、1年150時間とし、深夜勤は禁止していた。この残業や深夜勤を禁ずる規制を男女雇用機会均等法改定で99年に全廃した。「女性差別はいけない」といい「男子同等に搾り上げる体制」にしたわけである。
 外国人労働者の受け入れも90年から「開発途上国の人材育成に貢献する」といい「研修生」といって受け入れだした。93年には1年の研修を終了しても実習生として2年間働くことを認めた。最初は、対象職種が17種だったがいまは建設、食品製造、木工など62業種に拡大している。日系人については90年の入管法改定で「日本人の配偶者」または「定住者」として在留する条件で就労制限を取り払った。現実は外国人労働者が日本語を話せず、帰国しても生活が厳しいのをいいことに、低賃金過密労働が横行している。96年に64万人だった外国人労働者は03年段階で81万人に上っている。
 そして2005年には労働安全衛生法(06年4月施行)を改悪した。以前は残業を月間100時間した労働者には医者が診断と指導をするよう企業に義務付けていた。それを「労働者の申し出があった場合」とした。過労死や過労自殺も労働者の「自己責任」にするものであった。

 事故や過労死が相つぐ 破壊される全産業
 こうしたなか各産業で労働破壊が輪をかけて進行してきた。JR、バス、トラック、タクシーなどでは「週休2日制」導入と引き換えに1カ月単位の変形労働制が導入され、長時間拘束される深夜交代制労働が横行している。とくにトラックは市場開放を求めるアメリカの要求による物流2法改定(02年)で、営業区域規制が廃止され、1回の運行が14四時間以内であれば全国どこへでも配送できることになった。タクシーも需給調整規制の緩和によってタクシー台数増加に拍車がかかった。タクシー運転手はタクシーのなかで寝起きするような状態が広がっている。
 トヨタなどの製造現場でも期間工、パート、派遣、契約、アルバイトなど不安定な労働者ばかりとなった。トヨタの製造ラインは一直勤務が7時から午後3時で8時間だが、2直勤務は午後3時から翌日の午前2時50分で深夜の長時間勤務が横行している。国立病院では1996年から看護師への「長時間夜勤2交代制」が導入され1日の拘束時間は17時間30分に及ぶようになった。日本郵政公社が04年に導入した「深夜勤(ふかやきん)」は夜から朝にかけて拘束11時間、実働10時間を4日繰り返す過酷な深夜労働となっている。
 派遣労働者にいたっては「無料お試しキャンペーン実施中! 1週間無料、1カ月○%オフ、3カ月○%オフ」などのチラシをもって派遣会社の営業マンが契約集めに回っている。派遣労働者はモノ扱いで、ダンピング競走にさらされ、働くためには長時間勤務でも低賃金で生活できなくても働かざるを得ない状況に直面している。
 こうして事故が多発している。03年には北海道の出光興産でタンクが炎上し、新日鉄八幡でも解けた鉄をかぶり3人が死傷する事故が起きた。そのほか、三重県の発電所爆発で消防士2人が死亡、エクソンモービル名古屋製油所の火災で6人死亡、新日鉄名古屋工場の爆発事故、ブリヂストン栃木工場の大火災が立て続けに起きている。05年にはJR西日本の宝塚線で乗客107人が死亡し約550人負傷の大惨事も引き起こされたが、どの職場も人事ではないという実感は切実なものとなっている。
 日本では過労死ラインといわれる年間3000時間以上働く正社員が6人に1人にのぼり、過労死認定は年間310件を超している。精神障害と脳・心臓疾患者の請求件数は1525件(05年)となり、10年前の2倍となった。
 こうして現在進めている労働法制は労働者が生きていけないような状態にし、全産業を破壊していく、野蛮で売国的な植民地状態を浮き彫りにしている。
 労働者がますます生存費すら保障されず、人間的な生活条件も奪われている。それは個個の企業の資本だけではなく、アメリカ資本とそれに依存して生きのびようという独占資本集団全体の意図であり、自民党政府が法制度をかえて強要している。これにたいして、労働者が企業をこえ、全産業的全国的に団結した政治斗争をめざさなければ活路がないことを示している。

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