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植民地的略奪の年次改革命令書
                郵政に続き医療や流通も    2007年10月31日付

 アメリカ政府が日本政府に対して、今年もまた『年次改革要望書』を提出した。宗主国アメリカが植民地・日本に出す政策命令書のようなもので、1994年以後、毎年10月に出されてきた。この売国政治の指南書に書かれた内容を実現するために、日本政府がせっせと奔走する異常な関係であり、近年は知識人や良識的な言論人によって、その存在が暴露されてきた。今回の要望書でとくに力を入れているのは、医療分野での市場開放、流通再編のさらなる推進、郵政の本格的な解体、銀行における保険商品の窓口販売の完全自由化を予定通り実施することなどが上げられているが、膨大で詳細な規制改革要求はその他多岐にわたっている。
 10月18日、東京で開催された日米貿易フォーラムの会議冒頭、ウェンディ・カトラー米国通商代表部代表補(日本・韓国・APEC担当)が、共同議長を務める外務省の小田部陽一経済局長に要望書を提出した。
 スーザン・C・シュワブ米国通商代表は、「米国は、日本が経済改革と市場開放を一層進めるという方針を引き続き堅持するよう期待している。これは日米双方にとって有益である。これらの具体的な改革措置は、コストを削減し、効率性を向上させるほか、日本の全国民の利益となるような新しい革新的な製品やサービスの開発を促すことによって、成長と機会の拡大に貢献するであろう」などといっている。
 項目ごとに見てみると、
 通信技術
 ワイヤレス通信分野のメーカへの減税によって、競争の促進。ビデオ配信事業のルール作りを、透明、かつ最小限の規制にする。NTT東と西に競争的値下げをさせる。助成金を出さない。他のキャリアの参入を促すようなコンサルタント、助成をおこなう。
 情報技術
 民間の参入を促し、ルール作りを透明化する。政府のIT事業への入札を透明化する。健康へのITの応用をプロモートする。知的所有権をオンラインで盗まれる事を防止する。とくにアジアで知的所有権の防御ルールを世界レベルで作ること。とくにビジネスの場でのプライバシー確保に努力する。
 医療器具及び薬品
 先進的な器具及び薬品に対する医療報酬の引き上げ。器具、薬品の試験承認期間を短縮。血漿(しょう)製剤の値段を上げる。栄養サプリメントに食品の1つとして権利を与える。化粧品、半医薬品の承認過程を透明化すること。
 金融サービス
 規制の透明化。貸し過ぎの防止にクレジットビューロー制度を導入する。情報の共有化と共にファイアーウォールも整備する。
 競争に関する方針
 カルテルの許認可を厳しくする。JFTC(Japan Fair Trade Commission)の手続きを公平、透明にする。不正入札に対してペナルティーを強化する。
 商法の改正、及びシステムの刷新
 三角合併の成功例を再調査する。会社乗っ取りの防衛策における株主の保護策を図る。コーポレートガバナンスを強化。代理投票権を認める。外国企業の日本参入の障壁を下げる。Article 821が外国企業の日本での活動に不利益を生まないようにする。外国の弁護士を日本で活動させる。
 透明性
 政府御用達の弁護士による顧問グループを作る。Public Coment Procedure(PCP)をおこなう機関の強化。透明性の考え方をより一般化して、APECにおけるスタンダードにする。
 その他の政府業務
 銀行による窓口での保険販売を許す。民間企業と共済の協業。日本におけるビザ再発行の負担業務を軽減する。農作物への薬物混入の許容値を科学的に規定し、かつ検査を徹底し、世界規模でスタンダード化する。特区の推進。
 民営化
 郵政銀行に民間と同様の税金、規則を課す。郵政銀行の貸し出し業務、保険業務、および元本非保証の投資業務を認可する前に、銀行と保険業界に同等の活動の場を与える。宅急便業者に郵便局と同等の営業条件を与える。ジャパンポストの刷新内容の透明化を強く求める。
 流通
 課税を下げる。空港業務に民間企業の導入、及び透明性を高める。配達用車両の一時的な駐車場所を確保する。すべての流通物品への課税をすべての流通業者で同一とする。
などとなっている。従来からの要望をさらに進展させるよう求めているのに加え、新たに議論をおこなう分野も含まれている。

 日本市場明渡しを要求 93年の合意以来
 『年次改革要望書』は、1993年の宮沢―クリントン会談で合意し、翌年から毎年10月に提出されるようになった。表面的には両国の双務的な意見書の体裁をとっているものの、一方的な政策命令にほかならず、内政干渉の領域など通り越した驚くべき内容に彩られている。主にアメリカによる日本市場の明け渡し要求を基調としたものだ。
 これまでに成し遂げてきたものとしては、1997年には独占禁止法改正、持株会社の解禁を要求。98年には大規模小売店舗法廃止、大規模小売店舗立地法成立(2000年施行)、建築基準法改正。99年は労働者派遣法の改正、人材派遣の自由化。02年は健康保険において本人3割負担の導入。03年は郵政事業庁廃止、日本郵政公社成立。04年は法科大学院の設置と司法試験制度変更。05年は道路公団解散、分割民営化など、代表的なものを見ただけでも、要望した政策指令はつぎつぎに国会審議にかけられ、すべて実現してきた。
 小泉純一郎が叫んだ、「聖域なき構造改革」などというのはこの一環で、なかでも『年次改革要望書』で10年以上前から要求してきた郵政民営化は最たるものであった。郵貯、簡保の国債分を除いた200兆円もの膨大な国民財産は、民営化によって、いつアメリカ金融資本に奪われても不思議でない状態になった。とくに狙い目となっている120兆円資産の簡保は、今後「透明性のある競争の確保」「民業を圧迫する政府保証を排除せよ」などといって弱体化させ、最終的には分割、解体、経営破綻に追い込み、M&A(企業の合併・買収)や営業権譲渡などによって、米国系民間保険会社に吸収させることが目に見えている。
 郵政民営化のつぎは共済、国民健康保険が狙われているとも指摘されている。今回の要望書のなかでも触れているが、簡保を突破口にして農協・漁協などの相互扶助組織がおこなってきた金融・共済なども解体されるすう勢で、早くからアメリカ資本に乗っ取られた巨大銀行などと同様の運命にさらされることが懸念されている。国内金融機関としては巨大な「世界のノウチュウ(農林中央金庫)」などもどうなっていくのか。
 また、医療分野であらわれているのは医療と医療保険の乗っ取りであり、06年6月には「医療制度改革関連法」が小泉内閣のもとで成立した。アメリカが「医療改革」と称して迫っているのは、アメリカの医療機関が日本で自由に医療活動すなわち営利活動ができるよう、日本の医療制度を緩和せよということで、それは国民皆保険制度の解体などの動きにもなっている。医療費引き上げで患者が減り、医師不足などでやっていけなくなった病院はハゲタカ外資が二足三文で買い取って、売り払うという事態も現実味を帯びてくる。

 巧妙な仕掛け作り推進 郵政民営化も
 政府やマスコミが存在を必死になって隠蔽してきた『年次改革要望書』が、いわば植民地傀儡(かいらい)政府の指南書になって、日本の優良資産や国有財産をただ同然で奪っていくために、巧妙な仕掛けが施される。郵政キャンペーンだけ見ても、マスコミが抵抗勢力(米国に楯突く者)を袋だたきにして世論を扇動し、売国政治家である小泉純一郎や竹中平蔵のような人物が担がれて、平然と差し出す。
 格差社会で非正規雇用が増大し、若者が食っていけないのも、年寄りの年金や金融資産がつぎつぎと食い物にされて生きていけないのも、大型店の襲来で中小零細商店がなぎ倒されるのも、公共事業では大手の談合はやりたい放題なのに地元建設業界が締め出しを食らうのも、ISOなどという意味不明のたかり機関が国際スタンダードなのだといって、地方の中小企業までが上納金を巻き上げられるのも、すべて米国の対日要求に沿ったものなのである。
 そして、「財政難」だと大騒ぎしながら、アメリカ国債を無理矢理に買い取らされて、400兆〜500兆円もの国内資金を垂れ流す。貸した金であるのに、けっして「返せ!」とはいわせない関係になっている。日本の大企業なども儲かった金はほとんどアメリカに回して米国債を買って「運用」し、巨大銀行も同様に100円を上回る額を「運用」しているといわれている。要するに原爆を投げつけて占領した米国に丸裸にされて、たかられているのである。
 『年次改革要望書』があらわしているのは、売国的な政治がまかり通ることの異常さであり、これに対して、属国状態を打破する全国民的な運動を巻き起こすこと、怒りの世論を吹き上げていくことが切実に求められている。

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