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消費落ち込むのに高騰する物価
燃油・食料等輸入物中心
               国内農水産物は買い叩き     2011年5月20日付

 東日本大震災による物資の逼迫や生産活動の停滞が、引き続き不況下の困難に拍車をかけている。製造業だけでなく、消費の冷え込みで小売業や飲食業、サービス業も売上げの1〜2割減という状況が普遍的なものになっている。農林水産物は東日本の生産機能がまひしているので西日本側は価格が上がるかと思いきや、逆に「関東の消費が落ち込んでいる」といって暴落。一方で円高なのに燃油・食料を中心に物価は高騰する趨勢で、世界的な金融危機と大震災の混乱に乗じた値上げの動きがあらわれている。生産者たたきや消費者から「巻き上げろ」がトレンドになっている。
 山口県商工会議所連合会(林孝介会頭)が4月末におこなった震災の影響調査では、回答が寄せられた約780社のうち半数にあたる385社が「影響を受けている」と答え、「現在影響はないが将来影響が懸念される」と回答した企業が二八九社に上っている。「影響を受けている」と答えた企業のうち、交通運輸業が43社、小売業が62社、卸売業が40社と、とくに消費活動の落ち込みを反映したものになっている。
 「売上げが減少した」と答えたのは227社で、年間売上高の減少率として、10%未満と答えたのが約6割、10〜19%が約3割、20%以上が1割強という割合だった。建設業その他で原材料の調達難に見舞われたのが224社。工事遅延に見舞われたと答えたのが80社、減産や操業停止になったのが38社。
 物流がストップしたり、消費行動が減退したことにより、サービス業の売上げ減も大きな特徴になっている。
 これは商工会議所に参加している企業のうち主要な部分の大雑把な状況を反映したものだが、その他に商工会議所とは無縁な中小零細企業が山ほど存在し、影響が広範囲に及んでいることを物語っている。

 消費需要自体が落込み 資材滞り以前に

 下関市内で零細な建築会社を営んでいる男性は、一軒家をつくっている最中に震災が起きたこと、その後届くはずの物資が到着せず、現場の作業がストップしたり、再開したりを繰り返してきたといった。
 「予定していたメーカーのユニットバスが手に入りにくいので、別のメーカーに切り替えようと思ったのだが、それでは価格が上がってしまう。施主にそれでも構わないか相談したら、工期は遅れても仕方ない、少しでも安い方が良いという要望だったので、待っておくことになった。ようやく手に入りそうな段階でホッとしている。本来ならば早く手を切って次の仕事に移りたいところだが、今は仕事そのものがない。家を一軒建てるにも電気屋から水道、ガス、資材屋、基礎工事を請け負う者などさまざまな会社がかかわってでき上がっていく。物資が滞ると全体が影響を被る」と語った。
 また、何年か前から民間仕事でも4〜5社による合い見積もりなどザラで、少しでも安くしてほしいという要望が高まっていること、震災にかかわらず経済全体が落ち込んでいることを指摘していた。
 別の建築会社では、当初はコンパネが手に入りにくかったものの、だいぶ落ち着きをとり戻したと語られていた。資材担当の男性は「2〜3割価格が上がってその後は横ばいだが、震災直後には買い占めをしてひどい高値で販売する業者もいた。手に入りにくい資材があるのは事実だが、問題は資材を必要とする仕事や需要そのものが少な過ぎることにある。“うちは影響がない”という同業者もいるが、なにも仕事がないから影響すら感じられないという笑えない話で、“仲間外れみたいで寂しいな…”と苦笑いしていた」と語っていた。

 売値同じで原材料高騰 農業も漁業も

 北浦で漁業をしている男性は「原発汚染や津波で三陸の水産物が減るから西日本は値が上がるかと思っていたが、まったく変化がない。むしろ漁具や燃油は上がるばかりで、三陸から調達していたエサのサンマもどうなるのか、ロシア産を高値で売りつけられるのではないかという心配の方が強い。加えて軽油免税が廃止されたら漁師はやっていけない」と語った。他の漁業者たちも「魚価はまったく変わらない。油代ばかり高騰している」「原材料が高騰しているからといって漁具も上がっている」と口口に語っていた。
 仲卸の男性は水産物価格は上がるどころか、下降気味であることを指摘する。夏場にかけて下がり、冬場に上がるという時期的な要素も十分にあるが、「不足」している状況ではないこと、スーパーが分かりやすい例で輸入物が売場の大半を占めており、廃棄処分する魚介類も含めると国内市場の内外にあふれかえっているからではないかと要因を指摘していた。「築地に出荷していた同業者が、向こうの業者から“消費が落ちてさばけないから持ってくるな”と連絡を受けていた。料亭で閑古鳥が鳴いているのは分かるが問題は大衆消費。築地に買い付けにくる客がいないというのがどういう状況なのかさっぱり理解できない」と首を傾げていた。
 また、「最近は市場外流通が圧倒的な比率を占めていて、水産市場など価格形成の面で機能していないに等しい。スーパーや量販店は規格化されたものを望んでいて、価格もそこに合わせられるからだ。単純に三陸の水産物が滞ったからといって西日本の魚の需要が高まる構造ではないし、売場を支配しているスーパーや輸入物との関係で見ないと解明できないと思う」といった。
 八百屋や農民のなかでも「野菜も花も値が暴落している」と話題になっている。震災後は「関東の消費が落ち込み、生産地が西日本やよその市場に出荷しているため過剰になり、割を食っている」と説明されてきたものの、ここにきて「関東の人人が野菜を食べなくなったわけでもないのに、なぜか?」と疑問が語られている。いずれにしても、漁業者と同じように生産者は以前にも増して買いたたきに直面し、困り果てている。
 街の魚屋や八百屋が姿を消してきたなかで、今や流通で支配的な地位につき、価格形成にもっとも影響力をもっているのが量販店であり、円高のもとで以前より安く輸入物を仕入れてくる商社である。
 都市部ほど市場に輸入物が増え始めていることとあわせて、これらが円高フィーバーしているのではないかという疑問が高まっている。震災に乗じてどんな立ち振る舞いをしているのか、生産者は懐疑的な視線を向けている。

 投機や価格つり上げも 生活必需品狙い

 国内では震災が起き、さらに世界的には金融危機、インフレ圧力の高まりという条件のもとで、ジワリと上昇の気配を見せているのが物価で、燃油、小麦など輸入に依存している分野から影響が出始めている。スーパーの店頭でも昨年からコーヒーや食用油、マヨネーズなどが少しずつ値上がりしてきたことが話題になってきた。
 世界的な動きを見てみると、国際通貨基金(IMF)の統計では、国際商品価格の総合指数は昨年後半から上向きはじめ、今春時点で前年比20%強という勢いを見せている。この影響を直接に被っているのが中東やアフリカで、消費者物価が跳ね上がって政変につながった。中東・アフリカほどでないにしても、先進国でも数%程度価格指数が上昇している。商品価格が前年比二八%も急上昇して物価高が大騒ぎになったのが08年。リーマン・ショック以後、米ドルを筆頭に通貨供給を増大させて金融機関を救済してきたおかげで金余りが助長され、再び商品投機によって世界的な物価高騰を招く危険性が、08年と比較にならないほど深刻度を増している。
 金相場の高騰は暮らしにとって縁遠いにしても、必要不可欠な原油、穀物相場の高騰が一般の生活にも影響を及ぼしはじめ、諸々の値上げにつながっている。今春を境に各種の値上げが既に実行されている。コーヒーでは大手各社が平均的に10〜20%の値上げを実施。コーヒー豆の先物相場が四年前の二倍に上昇したのが原因となった。食用油も既に15%近い値上げが実施されている。電気・ガスも四月に料金値上げを実施。原油価格も上昇の趨勢で、ガソリンの店頭価格は1g=150円台に突入。08年の180円台に向けて再び高騰する可能性もある。
 小麦価格も4月に、政府から製粉各社への輸入小麦の引き渡し価格が18%値上がりした。日清製粉など大手各社は6月下旬以降に10%強の値上げを表明し、それにともなって山崎製パンは7月出荷分から平均5%価格を引き上げると発表。各社も追随すると見られている。
 消費が落ち込み、みなが購買力を失っているなかで、震災による経済活動の停滞が起き、一方で人間生活に必要不可欠な物への投機や価格つり上げがはじまっている。


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