トップページへ戻る

商店・企業・青少年、新鮮に響く
礒永詩祭の取組広がる
              現代に生命力持つ詩や童話     2011年9月30日付

 11月5日に下関市生涯学習プラザで開催予定の「没三五35周年記念・礒永秀雄詩祭」に向けたとりくみが勢いよく広がっている。下関市内を中心に、自治会掲示板や小・中・高校、公民館、各地の商店街などにポスターが貼り出され、各自治会が詩祭のチラシを回覧している。礒永秀雄の詩と童話を紹介した本紙号外1万枚以上が届けられて各地で話題になり、『礒永秀雄の世界』『おんのろ物語』が9月に入って約200冊普及され、礒永作品にふれた人たちのなかからチケットを預かってとりくみに参加する人が増えている。礒永秀雄の詩や童話が、これまで詩とは無縁であった商店や企業で働く男性や婦人たち、戦争体験者や被爆者、青年や子どもたちなどのなかで大きな反響を巻き起こしている。
 
 自らの人生重ねる戦争体験者

 「礒永秀雄詩祭」のポスターを届けて趣旨を説明すると、どこでも歓迎され、目立つところに積極的に貼り出されている。下関市内のある自治会長(86歳)は、「私も戦時中、船会社に勤めていたが、船ごと徴用され、アメリカに沈没させられて200人があっという間にわずか5、6人になった。私も生きた心地はしなかった。その後アメリカの捕虜となり、敗戦後日本に帰ってきた。こんなことは初めて話す」といい、家の前にポスターを貼り出した。ある学校の校長は、ポスターを届けると「私が新採のとき、大先輩の礒永さんと同じ光高校だった。礒永さんは戦争体験に特別の思いをもっている人だと感じていた」と感慨深げに話した。
 礒永号外を読んだり、『礒永秀雄の世界』『おんのろ物語』を購入して読んでいる商店や企業の男性や婦人たちが積極的にポスターやチラシ、チケットを預かって詩祭を楽しみにしている。長府の商店主は、『おんのろ物語』を購入して主人が全部読み、今奥さんが読んでいる。これまで演劇などのポスターは倉庫に貼っていたが今回は店の一番目立つところに貼り出している。安岡の企業の男性は、童話「とけた青鬼」に感動し、「人間には表面だけではわからない大事なことがある」「今の政治家に読ませてやりたい」といってチケットを購入し、社員にも勧めている。
 下関市内のある土建業者の婦人は、礒永号外の「とけた青鬼」を読んで「このように安心して読める物語は少ない」といって孫に読み聞かせをした。小学校で読み聞かせしている母親たちも「おんのろ物語」を読み、「すごくいい作品だ。善悪や正義について考えさせられる」「テレビのお笑いとかではなく、子どものためにいいものを与えてやりたい」「礒永秀雄さんを初めて知ることができてよかった」と感激している。公務員の母親(30代)は、本紙に掲載された「四角い窓とまるい窓」を小一の息子に読み聞かせするととても喜んだといい、「寝る前に読んでやれる。長さもちょうどよい」といって『おんのろ物語』を購入した。
 礒永号外を読んだ民生委員の婦人は、「死んだ父は、兵隊として南方に送られるさいに米軍の潜水艦によって沈没させられ、負傷して病院船に乗って日本に帰る途中に再び沈没させられた。『八月の審判』に涙が出た。自分の痛みになってくる詩だ。『一かつぎの水』を読んで、日本人だったら昔はみんなこんなふうに他人を思いやる気持ちをもっていたと思う。私の祖父も戦災孤児をひきとって育てたし、私はそれを見ていたので民生委員を引き受けた」と自分の人生を振り返った。コーラスグループの婦人は、「『ゲンシュク』の詩がよかった。友人とボランティアで通っている老人ホームで読みたい」といっている。
 30代の店長は、「東日本大震災と福島原発事故が起こったあと、マスコミや学者は信じられないと思い、それからテレビや新聞を見なくなった」と語りつつ、「一かつぎの水」などを読んで「この人の詩が今後の人生の支えになるかもしれない」といって『礒永秀雄の世界』を購入した。川中地区の華道の教師は、兄が戦時中は長崎にいて、3年後に白血病で亡くなったことを話しつつ、「これまで何十年と華道一筋だったが、最近になって“視野を広げないといけない”とお弟子さんたちと話になり、戦争体験を絵画にした作家の作品を見にいこうと話していたところ。詩祭も一緒に参加できれば」と話している。
 「東北の被災地の瓦礫を見ると戦争の焼け跡を思い出す」とか、「自分たちの親世代が、戦争の焼け跡のなかから立ち上がって復興させた。そのことを今、自分たちが学ばないといけないと、近所の主婦のなかで話になっている」と話す婦人たちが『礒永秀雄の世界』を購入している。礒永作品が、戦争と戦後日本を振り返り、これからの生き方を考える糧になっている。
 韓国人の大学教員は、礒永秀雄が戦争を体験し戦後のまやかしに惑わされず真実を詩にしてきたこと、死後も五年ごとに顕彰するための詩祭をやってきたことを訴えると「そんな人がいるのか。勉強させてもらう。ポスターは学部の掲示板に貼る」といい、詩祭を楽しみにしている。
 劇団はぐるま座は、北海道から沖縄まで全国の700人の協力者に、礒永秀雄詩祭のチラシ、号外、『礒永秀雄の世界』『おんのろ物語』の書籍案内を送った。現在、本の注文とあわせて、「国難とも思う地震災害、人災とも思う原発事故等、大きな警鐘乱打で、安穏に生きてきた全国民が個々の利害も捨て原点に戻り大きな思想、信念を考えるべきである」(呉空襲体験者)、「皆さんのひたむきさに頭が下がります。頑張ってください」(詩吟関係者)などをつづったメッセージが届き始めている。

 出演や出品も強い意欲 朗読や書など

 さらに当日の出演や出品について、下関原爆被害者の会や下関市民の会では、詩の朗読で詩祭に参加しようと活発に論議されている。原爆被害者の会は今回初めて、役員みんなで一つの詩を群読することになり、「夕焼けの空を見ると」「閉じろ ごま!」「一かつぎの水」の詩を拡大コピーして回し、どの詩を読むか検討している。ある被爆者は、毎回届く本紙に掲載されている礒永作品が楽しみで、「これもよい、あれもよい。どの詩もよいので一本にしぼるのが難しい」「とくに『おんのろ物語』がよかった」といっている。敗戦後の苦労した自身の子ども時代を重ねて読んでいる。市民の会でも「連帯」「前へ」「ゲンシュク」「夕焼けの空を見ると」「一かつぎの水」などの詩がいいねと論議されている。
 また、沖縄県うるま市文化協会会長で沖縄県書道美術振興会顧問の運天清正氏から、「八月の審判」のなかの、沖縄出身の兵士が残虐に殺されたくだりを書にして表装したものが、事務局まで届けられている。下関市の書家は「新しい火の山に想う」の一節を額装にして出品することを申し出ている。

トップページへ戻る