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対米従属で暴走構図の菅政府
参院選巡る記者座談会
              米軍再編、消費税、郵政も    2010年6月16日付

 民主党・鳩山政府が米軍再編・普天間基地の辺野古移転ごり押しの日米共同声明を出して退陣した後、菅政府が発足し「支持率が急上昇」などといって24日公示、7月11日投開票の参院選を迎えようとしている。前政府が野たれ死にしたのは、「普天間基地の県外移転」「米軍再編の見直し」といって衆議院選挙で票を集めながら、実行することは自民党の小泉、安倍政治と同じように対米隷属をやり、国民世論の大反発を食らったからである。ところが登場した菅直人政府は、鳩山・小沢体制とはまったく別物になったという振る舞いである。なるほど米軍再編は「日米合意に基づいて進める」とか、消費税増税と法人税減税、郵政法案の廃案など、昨年の衆議院選挙公約のひっくり返しをやろうとしている。メディアはそれを持ち上げ、民主党を衆参両院多数派にしてまるで自民党小泉体制の時のような突っ走りをやらせる様相となっている。
 A まず、この間の動きや特徴から見てみたい。
 B 山口県内を回っていても、「自民党から民主党にかわっても世の中は何も変わっていない」「選挙で大嘘をついて、やっていることは自民党と同じではないか」と各所で話題になる。岩国では米軍再編問題と関わって厚木の空母艦載機移転や、愛宕山の米軍住宅化が問題になってきたが、平岡代議士が調子の良いことをいって批判票を集めただけで、当選したら民主党は愛宕山関連の予算をさっさとつけ、大裏切りをやったと怒りが充満している。一年がたって、あのマニフェストは何だったのかと話になる。それと菅内閣をどう見たらいいのかというとまどいもある。
  昨年の衆議院選挙では「普天間基地の県外移設」「米軍再編の見直し」「インド洋での無償給油支援活動停止」「日米地位協定見直し」「郵政民営化の見直し」などといって選挙をやり、与党になると「抑止力について勉強が足りなかった」といって、自民党がアメリカに約束していた日米合意に戻った。そして辞職する間際に、国内合意は何もないのに辺野古移転の「日米共同声明」を出して、野たれ死にしたのが鳩山だった。要するにアメリカが譲らなかったことと、日本の首相というのが、選挙で国民に約束したことよりもアメリカの意向こそ絶対的なものとして実行していく姿を見せつけた。
  鳩山が退いて菅の登場になったのだが、一連の首相交代劇の最大の要因は普天間問題、米軍再編問題、日米軍事同盟問題だった。ところが国内メディアは、「政治とカネ」問題にすり替えて「小鳩体制を葬れ」「小沢がけしからん」「古い政治との決別」などと大騒ぎをして、菅直人が首相になるとガラッと民主党が生まれ変わったような印象にしている。20%台に落ち込んでいた内閣支持率が60%台に急上昇したとか、「V字型回復」などと世論誘導している。メディアが菅民主党政府を持ち上げているのが特徴だ。「世襲首相ではないたたきあげの首相」とか「市民運動出身」とかほめあげている。
  なにも変わっていないのに、民主党が様変わりしたかのようなことをいっている。小沢が守旧派、抵抗勢力で、それを排除した菅は改革派、という構図だ。それは橋本や野中らを抵抗勢力といって小泉が改革派として売り込んだ“小泉劇場”の構図だ。そして菅は、「日米共同声明」(辺野古移転案)をひき継ぐと表明するし、派遣法改正や郵政改革法案も廃案にした。15日の参議院では「(公約は)改めるべきものは改める」などと発言して、「消費税は四年間上げない」という約束も覆して、さっそく増税論議にとりかかる動きだ。昨年衆議院選挙のマニフェストはなかったことにしている。鳩山が修正に修正を重ねて野たれ死にしたあと、菅政府は公然とそのマニフェストをなかったことにしようとしている。公約違反内閣だ。昨年の衆議院選挙は国民をだました詐欺だったということだ。
  鳩山退陣の過程で、社民党・福島瑞穂を切って、小沢一郎を片付けて、郵政民営化阻止に動いていた国民新党・亀井静香を排除して、そして親米派の若手民主党政治家たちが登場してきた。要するにアメリカが持ち上げているのだ。今年の4月23日、副総理だった菅直人は訪米して、アーリントン墓地(無名戦士の墓)に神妙な顔つきで献花しているのがニュースに出ていた。あれはどういう心境をあらわすのだろうか。第二次大戦でアメリカと戦争してごめんなさいというものではないか。5月26日には北沢防衛大臣が同じくこの墓地を訪れ、それ以前には3月に岡田外務大臣が訪米して献花している。小泉純一郎も献花したことがある。菅は次期首相としての扱いを受けたということではないか。
  閣僚の特徴を見てみると、副総理で官房長官になったのが仙谷由人。旧社会党出身で、東大時代には全共斗運動のリーダーをしていた人物だ。前原グループ・凌雲会の会長もしていて、同派閥からは党内人事で枝野幸男が幹事長に抜擢された。選対本部長には元NHK記者でこれも親米派といわれる安住淳が登用された。
 B 社民連合出身の菅直人だけでなく、民主党政府では旧社会党や民社党といったアメリカ仕込みの「革新」部分の重用も目立つ。文部科学大臣の川端達夫は東レ労組・民社党出身であるし、法務大臣の千葉景子も社会党出身で副書記長をした人物だ。その後社民党の副党首までやって97年に離党して民主党入りしている。経済産業大臣の直嶋正行はトヨタ労組出身で民社党出身。内閣府特命担当大臣(防災担当)の中井洽も父親が社会党右派の代議士で、分裂時期に離党して民社党から国会議員になった経歴の持ち主だ。
 E 閣僚には、さらに自民党から鞍替えして民主党入りしたのも多い。松下政経塾の出身者としては、財務大臣になった野田佳彦、前原誠司と同期生だった玄葉光一郎が新たに大臣ポストに就いた。総務大臣の原口一博も松下政経塾出身だ。前原誠司は守屋事件の時期に、外務省の外郭団体で日米防衛利権を取り仕切っていると疑惑になった「日米平和・文化交流協会」の理事だったことが暴露されたこともあった。米軍事産業とつながった部分や、市場原理主義、構造改革論者が勢揃いといった印象だ。
  菅は自分で「奇兵隊内閣」などといい、メディアは「サラリーマンの息子」とか「居酒屋で酒を酌み交わす庶民派の宰相」とか、「市民運動出身」などといって持ち上げている。奇兵隊は植民地反対の攘夷戦をたたかい、徳川幕府とたたかって権力をうち倒した軍隊だ。アメリカに屈服した幕府権力の側にいる菅がそういうのは、アメリカと売国独占資本の代理人として突っ走ろうとしていることを、非常に気にしていることをあらわしている。「サラリーマンの息子」というが宇部では「セントラル硝子の重役の坊ちゃんじゃないか」といわれている。
  急に鳩山をやめさせて菅を登場させ、国民が判断できない間に、つまり素性がバレない間に庶民派のような雰囲気をふりまいて参議院選挙をやり、民主党を参議院で多数派にしようというのだろう。民主党が参院選に勝てば議席数は衆議院も参議院も圧倒して暴走体制が完成する。2005年の郵政選挙で自民党がボロ勝ちして、選挙をやらずに安倍、福田、麻生と首相をかえ、2009年に惨敗するまで、強行採決オンパレードで日米同盟、構造改革まっしぐらをやったのと同じ形になる。アメリカのいうがまま、国民に聞く耳のない大暴走をはじめる危険性がある。
  小泉の時も「純チャン」などと騒いだが、今度も谷亮子や原田大二郎とか、元プロ野球選手とかタレントを多数出すのも特徴だ。雰囲気、ムードの選挙にして、鋭い政治問題を隠蔽しようとしている。
 C 菅直人のブレーンには、米証券大手ゴールドマン・サックスの元幹部や、人材派遣パソナグループ代表のほか、オリックスの宮内義彦は新年会に招く関係で、竹中平蔵にも昨年は経済政策について意見を求めるなどして「応援してもらえる」などと発言している。そして財務省官僚や経済産業省官僚などのアメリカ人脈がバックアップしている関係が取り沙汰されている。
  「財政再建の菅直人」なのだといって消費税増税に着手する動きだが、一連の動きがアメリカの危機とセットで進行している。鳩山が辞める直前の五月中旬にはアメリカの意をくんだIMFが、「消費税を10%にしろ」と日本政府に増税を強要する声明を出して圧力を加え、同時期には郵政についても米国の世界貿易機関(WTO)大使とEU大使が「深刻な懸念」などといって、日本国内で見直しの動きがあるのを牽制していた。案の定、郵政改革法案は廃案にして闇に葬った。
  消費税増税は日本の財政危機が深刻だからというが、アメリカによこせという要求だ。郵政資金の320兆円もアメリカが巻き上げるということだ。株式上場されたら外資が買い占めて、郵貯やかんぽ資金を横取りするつもりでいた。ところが衆院選でプログラムの実行者だった自民党が惨敗し、民主党が「凍結」にしてストップがかかった。衆議院を通過して参議院に回っていた郵政改革法案が残り数日で成立すれば「株式は日本政府が保有する」になって夢がついえる関係だった。アメリカの側は郵政見直しの動きに激怒していたのは間違いない。亀井辞任というのは、選挙後も法案が復活する見込みはないということだろう。
  アメリカ国内ではオバマが登場して、住宅バブルの破裂によってはじまった金融危機を、いかさま商売で暴利をむさぼってきた大銀行などに巨額の税金を突っ込んで救済してきた。欧米も同じで、今度は国家財政の危機が連鎖するといって焦っている。「第二のギリシャになる」といわれているのが日本だが、日本の財政危機といっても日本は世界一の債権国だ。アメリカ国債を売ればよいし、証券などで総額500兆円ともいわれるアメリカに流れている資金を引き戻せば済むことだ。しかしアメリカは、借りた金は返さないし、もっとよこせというものだ。日本の大企業も同じで、消費税は下げるかなくして、法人税をもとに引き上げればよい。今不況対策といってやっている、エコ減税というトヨタなどへの減税などやめればよい。IMF出資金も引き揚げればよいだけだ。何が消費税増税かだ。とにかく貧乏人から搾り上げろになっている。
  小泉構造改革・安倍戦争政治がたたきつぶされ、民主党の圧倒的多数となったのが09年の総選挙だ。国民は構造改革路線のもとで、郵政民営化に代表される国民資産の投げ売りや外資・大企業優遇、福祉切り捨てや増税のオンパレード、米軍再編のごり押しと戦争政治に腹を立てたし、売国的な日本の指導者たちが社会を散散に崩壊させてきたことへの怒りがうっ積している。これを民主党政府が引き継ぐのだから、自民党を倒した力が今度は民主党に向くし、国民との矛盾がさらに激化する。
  自民党であろうと民主党であろうと、だれが政府を握っても、アメリカと売国独占集団の代理人になる。国会のすべての政党がアメリカ崇拝であり、メディアも検察や学者も、アメリカの代理人制度が構造的にできあがっている。反抗するものを袋叩きにする仕組みになっている。日本の主権がアメリカにあるのだ。このなかで、政党政治に期待するものがまるでないのが現状だ。
  自民党の方も哀れをかこっている。消費税増税を、正面から掲げて選挙をやるといっている。国民の方ではなく、アメリカと財界に認めてくれということだ。社民党は辺野古移転反対で筋を通したという格好だが、やっていることは県外移設、全土の基地化で民主党と変わらない。「日共」集団はオバマ賛美でアメリカに認められたことが大喜びで、韓国哨戒艦沈没問題では北朝鮮攻撃の急先鋒をつとめている親米派だ。
 C 自民党も民主党もだめで、参議院選挙といっても「入れるところがない」とシラケている面もある。政党政治が当てにならないからどうしようもないかだ。議会を通じた民主主義、間接民主主義では国民の声は届かない。直接民主主義しかだめだ。下からの全国民的な大衆行動で政治を動かすほかはないという現実だ。安保斗争のような、明治維新のような大衆的な政治行動だし、そうなっていくすう勢にある。
 D 参議院選挙は来週に公示だ。米日反動勢力と日本人民のあいだにある争点はなにかをはっきりさせることと、大衆運動の力を強める方向でたたかうことだ。民主党菅政府は米軍再編の強行、郵政民営化再推進、消費税大増税・法人税大減税など、小泉自民党政府がやってきた方向を継承してアメリカと財界の代理人として突っ走ろうとしている。小泉政府以来の自民党政治で、国民はさんざんに貧乏にされた。農漁業も製造業もつぶされ、商店街はつぶされ、教育も医療も福祉、介護も破壊され、学問や文化もガタガタにされた。政党は国民の声を聞かず、民主主義はどこへ行ったかわからない。そしてアメリカのための戦争に引きずり込もうとしている。
  いくら選挙をやっても変わらないからといって、座して死を待つわけにはいかない。権力者よりも国民の方が圧倒的に多数だ。対米隷属で総すかんをくらった権力者は例外なく野たれ死にしてきた。小泉、安倍、福田、麻生、鳩山とつづいた権力者の末路だ。アメリカの盾にされて核攻撃の標的になること、富もなにもかも巻き上げられて破滅に向かう政治をぶっつぶさなければ、日本社会がつぶされてしまうし、そうさせるわけにはいかない。60年安保斗争のような下から大衆主導となって全国的な政治斗争をつくることが急務だ。参議院選挙では国民の大論議を起こさなければならない。

 

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