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対米従属日本の縮図・岩国
政治、経済、教育もみな米軍優先
               独立要求の力示す市長選    2008年1月25日付

 米軍厚木基地の空母艦載機移転問題をめぐって、「おとなしい」といわれてきた岩国市民が断固として拒絶の意志を示してきた。この問題を争点とする岩国市長選は全県、全国の大きな注目のなかで行われている。それは、米軍再編に直接関係するところだけではなく、日本全土を米軍が自由に使用し、ミサイル防衛網をつくって日本をアメリカ本土を守るための盾にしたり、自衛隊を米軍の下請にして海外の戦争に派遣するなど、アメリカの国益のための戦争に日本を動員すること、軍事だけではなく政治も経済も文化も教育も日本全体がアメリカの植民地のようにされて国民生活が破壊されていることへの強い怒りが表面化しているからである。基地のある岩国は、米軍が支配する町であり、日本社会の縮図である。岩国市民が腹の底から怒る対米従属の構造はどうなっているか、市民の意見を聞いてまとめてみた。
 選挙戦は激しいものとなっている。市民からは、「これだけせんない(きつい)選挙は初めて」といわれる状況ともなっているが、「これが60年間続いてきた」のだと語られている。
 自民党側は、「表には出ずに市民党でやる」といい、「財政破綻が争点だ」「岩国がつぶれる」と大騒ぎをして、反対派市民をとり込む作戦である。そしてあらゆる権力、手段を使って総動員態勢をとっている。号令のかかった県議や市議、商工会議所などのボスが飛び回り、脅してみたりなだめてみたりの大騒ぎをしている。建設などの各種業界、自治会、老人会など、いろいろな団体を通じて、「仕事をやらないぞ」などすさまじい勢いの圧力がかかる。本当も嘘もごちゃ混ぜになったチラシが大量に配布され、「岩国がつぶれる」と叫ぶ宣伝カーを走り回らせている。またそういう勢力がかかえる地域新聞、電話や世間話もフルに活用されて、「図書館がつぶれる」というようなうわさ話が、数日のうちに市内中へ広がる状態だ。
 一方で市民の米軍再編反対の世論で支えられてきた井原陣営のなかからも、「米軍再編が争点ではない」「地方自治と民主主義が争点だ」といった主張があらわれ、基地に反対する圧倒的大多数の市民を混乱させ、追いやる面もあらわれている。
 このような選挙の謀略じみた仕かけのなかで、市民のなかでは、全国的な視野と歴史的な体験を結びつけて、艦載機移転が争点であり、米軍基地が存在する根源である日米「安保」条約が根本問題であり、日本の独立が課題だとの論議が力強く広がっている。基地の町岩国は、軍事だけでなく、政治から経済、警察や裁判所、道路や鉄道、電気から水道さらに教育・文化にいたるまで米軍の支配下におかれ、民主主義も繁栄もなかったことが歴史的な体験として思い起こされ、語りあわれている。この岩国の実情こそが対米従属の日本社会全体の縮図なのだ。

 米兵だけ贅沢三昧 市民でなく米軍を守る政治・犯罪はもみ消し
 岩国市内の政治は、「すべて米軍に都合のいいように、ボスをとり込んで市民をだまし、意見がある者は排除して行われきた」と語られる。
 最近は基地労働者の全国ストがあったが、みんなが怒っているのは、日本の国民からは血税を搾り取りながら米軍には贅沢三昧させているということである。米兵住宅は2000万円程度で出来るものを6000万から7000万円もかけてつくっている。学校など、夏には休みなのにクーラーなどつけっぱなしで、米兵住宅も同じで電気も水道も使いっぱなし。これが「思いやり予算」と称して、日本の税金でまかなわれているからだ。自衛隊が使う建物はみすぼらしいもので、基地で働く日本人労働者は、休息室もなく、トイレを更衣室にしているような状態。第2次大戦中アメリカは日本人を人間と見なさず、虫けらと見なせと叫んでいたが、現在もサルと同じような扱いをしているのである。
 そして朝鮮戦争、ベトナム戦争そして現在のイラク戦争、アフガン戦争と、人殺しに出かけ殺されるか気が狂う目にあっている米兵が、つぎつぎと犯罪を犯すが、日本の警察や裁判所もまともに処罰したことはない。日本の法律は適用外の治外法権なのだ。警察や裁判所、基地対策のための国の出先機関も行政も、「市民を守るものではない」というのは常識となっている。
 岩国では米兵の殺人・傷害・婦女暴行・窃盗・ひき逃げなど、屈辱的な事件が数限りなく起きてきた。畑仕事をしていた男性が「鴨と間違えた」といって猟銃で撃たれた事件や、老人を橋の上から投げ込み殺した事件(同様の事件は何度もくり返された)、娼婦をしていた婦人が体中をめった切りにされ無惨に殺された「花子ちゃん事件」とか、凶悪事件が山ほど起きてきた。
 しかし多くの事件が、犯人がわかっていても「本国に帰った」「戦争で死んだ」とうやむやにされた。「警察にいっても、まともに調べてくれたことがない」「反対に何時間も犯人のように尋問された」「第1通報しても駆けつけてこない。泥棒でも家宅侵入でも逃げ終わったころを見計らったかのように警察がくる」と語られる。
 それどころか、警察や地域のボスが「公表してはいけない。おだやかに」とか「内密に」といってわずかばかりの「見舞金」を持ってきてもみ消したり、「さわぐと、仕事がなくなるぞ」と脅したりしてきた。市民が苦労して、事件を公にしてもいつも不起訴や、起訴猶予で事実上の無罪放免になる。「アメリカの兵隊さんが気持ちよく戦争に行くために、日本では贅沢に、日本女は娼婦にしたり、乱暴狼藉も好き放題にしてください」という態度なのだ。
 「市民を守る」ことはしない警察も、米軍を守ることには一生懸命だ。とくに9・11テロ事件以後は基地内の警戒態勢とあわせて、市内では警察が厳重警戒態勢をとった。パトカーや自転車、徒歩、私服の警官が大量に投入され、基地周辺を散歩していた市民や、魚釣りをしていた市民などを、幾度となく職務質問した。「岩国署だけでなく、山口県警本部からも大量に警官が動員されていた」といわれ、市民は「警察や自衛隊は、国民から米軍を守っているんだ」という実感を強めることとなった。「米軍が日本を守るわけがない」というのは岩国市民が戦後60年あまりの全体験で身にしみていることである。

 市民を欺く市役所 莫大な補助金受け取り・基地拡張を推進
 市役所が市民のものではなく、万事米軍のために動いてきたと語られる。歴代の市長は、つねに「基地容認・共存共栄」という姿勢で、迷惑料として交付金や調整交付金、補助金や地域住民に対する周辺整備事業などの補助金を取ってきた。国からの交付金・補助金の総額は1昨年までで約870億円にのぼるとされる。60年のあいだに、全額から75パーセントなどの補助率で学校や供用会館が建設されてきた。しかし、「基地のある川下は道路も下水道もまともに整備されていない」「どこに消えたのかわからない金が多い」「1部の者がもうけただけ」などと語られる。
 また「なにかあれば、すぐに市が防衛施設庁にいき金をもらっていた。その金を市があちこちの団体とか、地域のボスなどに振り分けていた」「直接市長に文句をいいにいくと、担当部局に指示があり、あとから家に訪ねてきて、金をわたして黙らせた」「立ち退きなどでも、人によっては目玉が飛び出すような金を払っていた」と語られる。
 また「表の金だけでなく裏の金もあった」といわれる。自治会など各種団体では、「月1度の飲み会などがあったと聞く。酒から女から全部世話をみてもらっていたが、体を悪くして早死にした者もいる」「市議会も行政となれあいで同じような関係だった」と話される。「井原市長になってからは、市が直接にタッチしないようになり、市議会や商工会議所などが不満を持っていた。今はだれが裏金を管理しているのだろうか」との声もあった。
 そのような支配構造のなかで、市民を欺くペテン政治が行われてきた。九州大学構内への米軍戦斗機F4Cファントム墜落を機に、市民の基地縮小・撤去世論が強まると、「被害軽減のための基地沖合移設」といって市民をだまし、実際は米兵倍増の基地大拡張を進めてきた。愛宕山開発も住宅開発とだまして出来てみたら市に財政破綻を押しつけて米兵住宅にするという。こういうことは、市や市議会、商工会議所などが旗振りになって進めたものだった。
 事業に関係した業者や地元住民は、「はじめから、基地拡張と米軍住宅を予定した青写真があった」「設計図をみて、これは移設ではない。嘘をついているとわかったが、口止めされていた」「米軍や国、県は確信犯だが、市も知っていたはずだ」と語られている。

 巨大道路や新幹線等も すべて米軍の為
 さらに道路や鉄道、港湾から電気、上下水道、通信にいたるまで、すべて市民ではなく米軍が優先されている。かつての朝鮮戦争の時期、鉄道は「すべてをさしおいて米軍物資の輸送が最優先された。日本の客車も貨車も、横に待避させられた。1日に何10両もの量で、絶対命令だった。いざ有事となれば、いまでもまったく同じ体制となる」と話されている。
 「新幹線もはじめは広島から徳山にまっすぐの計画だったものを、わざわざ曲げて岩国に駅をつくったが、これは米軍基地があるからだ」と語られていた。山陽高速道路のインターがあるのも米軍の存在があるからだといわれている。そして最近姿を突如としてあらわしているのが、巨大道路群である。基地を中心にして愛宕山、高速道路、広島などと直結するどでかい道路があらわれている。これが米軍の必要とする軍用道路であることは歴然としている。基地拡張とともに、空母が接岸できる港湾がつくられているが、岩国の商港も米軍の使用が頻繁になるのにつれて整備が進んでいる。
 道路に見られる事情は、中電が関わる電気も、市が関わる水道も、NTTが関わる通信も、さらに病院やあらゆる公共施設も、いざ米軍が必要とすれば、米軍最優先となって市民は2の次の扱いとなる関係である。

 経済は無惨な衰退 煙突の高さ制限で工場の移転も・農漁業は潰す
 岩国の経済は、基地があるための交付金が多いから繁栄したのではなく、基地があるためにすっかり寂れてしまった。「容認」で突っ走る部分は、「基地での繁栄」を叫ぶが「そんな期待をもっている人はいない」と語られる。「基地で商売が繁盛していたのは、1ドル360円の時代だけ。朝鮮戦争からベトナム戦争のはじめまでだった。今は小売店はみんなつぶれている」「日本の税金で、基地の中にはスーパーもバーもボーリング場も映画館もなんでもつくられた。川下には出てこないし、遊びは広島。第1米兵が貧乏だ」と語られる。
 市内の広大な土地が米軍基地に占拠され、工場などの建物も高さ制限で自由にたてられない。滑走路の延長線上にある帝人では、煙突の高さ制限されたため松山に本拠地を移した。「基地がなければ、川下に工場を誘致することができ、産業を発展させ若者の職場をつくることもできた」「企業誘致した和木町以上に発達したはず」60年の損失は20兆円ぐらいになっているのではないか」と語られている。気候も水利もよく工業も発展する可能性を秘めていたが、押しつぶされたのである。
 基地のある土地は広大な農地であった。旧海軍が、強制的に接収して取り上げられたところを、戦後米軍が来て居座ってきた。このために農業が犠牲にされたが、漁業も埋め立てや姫子島での爆薬処理、そして立ち入り禁止区域などで制限されてきた。
 そして教育・文化の退廃が語られる。戦後は、岩国に大量のパンパン(娼婦)が集まり、醜態をさらしていたと振り返られる。「まともに見ていることができない状態だった」「小学校低学年から毎日そんなものを見せられて、親たちは子どもの教育で大ごとをしてきた」「アメリカ村となって、日本人が肩身を狭くしていた」と語られる。しかし、そのようなものに対して、岩国の人間のなかでは教育がされていたが、「今ではよそから女の子たちが遊びにくる。日本人の頭がおかしくなった」「日本の民族はなくなっていく気がして恐ろしい」と語られている。

 大空襲で市民虐殺 日本の克服知った上で・軍事施設狙わず
 数限りない経験が語られているが年寄りたちが声を大にして話すのが、戦争の体験である。「ここから日本の占領が始まった」と語られている。岩国では、日本の降伏情報を知っていた終戦前日の14日に、駅周辺や航空隊が空襲を受け1000近いともいわれる人たちが殺された。空襲は、列車が入り1番人が多い時を狙って行われた。しかも焼夷弾ではなく爆弾であり、「爆弾の密集度では日本1」だといわれる。そして、「なぜ、敗戦がわかってあれだけの虐殺をしたのか」との怒りが語られる。そして海軍の滑走路は自分たちが使うためにちゃんと残した。
 「アメリカは日本人の命などなんとも思っていない」「こんなひどいことをしたアメリカがどうして日本を守りますか」と激しく語られる。また「戦争を終わらせるためなんかではなくて、基地を奪いとって日本全体を占領するために原爆を投下したり空襲攻撃をしたんだ」と話されている。
 米軍再編で岩国は経済制裁を受けつつ大増強計画となっているが、いま自民党政府がすすめているのは日本全土の米軍基地化である。自民党政府は、米軍が全国の自衛隊基地を自由に使い、港や空港、道路や鉄道、通信などを優先使用し、自治体や各種機関、企業を無条件で米軍の作戦に協力させる体制をつくろうとしている。
 対米従属は軍事だけではなく、軍事を武器に逆らえないようにして日本を支配し、搾り取っている。国内にカネが回らないというが、借金によるバブルでやってきたアメリカに、紙切れとなる国債を買い込まされ、日本の銀行や郵便局に集まった金はアメリカに貢ぎ、日本の低金利で借りたカネでアメリカの金融資本が日本の企業を買収するというバカげたことになっている。
 政治家は自民党から民主党、「日共」集団に至るまでアメリカ賛美がそろい、国内の経済はさんざんに疲弊している。世界的な食糧危機というなかでアメリカ農産物を買わされて農水産物の自給を破壊する。農漁業の破壊の上に市町村合併などによって地方切り捨てがすさまじい。山口県では、岩国市の旧郡部など、県東部は集落崩壊地域が多い。これは軍事支配を根幹とする、アメリカの支配、自民党政府の売国政治がもたらしたものである。対米従属を脱皮し、独立を実現しなければ、日本はつぶされてしまいかねないところへ来ているのである。
 岩国の艦載機移転問題を争点とする市長選において、売国政治に反対する市民の力を示すなら、日本全体の様相を変えていく大きな契機となることは明らかである。

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