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対米従属・新自由主義による人災
大震災と原発災害が示すもの
            国内産業立て直しに転換を   2011年4月4日付

  東日本大震災と福島第一原発の大事故が引き起こされて3週間以上すぎた。これは大自然災害だが、それをめぐって政治的、経済的、社会的な諸問題が暴露されている。つまり戦後日本社会の根本的なありようが問われている。なぜこのような大災害になったのか、どういう方向で被災地のみならず日本社会を立て直さなければならないのか、記者座談会を持って論議してみた。
 
 日本の歴史に即した国つくりが不可欠

 司会 まず地震の規模、影響からみてみたい。
 A 今回のマグニチュード(M)9という規模は、平安時代の869年に起きた貞観地震(宮城県沖〜福島県南部沖)以来のもので、まさに1000年に1度の未曾有の大地震といわれる。震源域は、青森沖から房総半島沖まで南北500`、東西200`という広範囲にわたり、複数の震源が連動することで、地震のエネルギーは阪神大震災の1000倍以上に膨れあがった。宮城県では地盤が東南東に4・4b移動し、岩手県では地盤が最大で75a沈下したとの結果が出ている。海底地盤は最大で5b隆起していた。国内史上最大で世界でも第4位の超巨大地震だ。これまで地震学者がもっとも警告してきた東海、東南海、南海の連動型巨大地震とは、位置的にはズレたところで起こっている。
 さらに、震源から海岸まで最低で25`という至近距離だったので、時速300`といわれる津波があっという間に沿岸部に到達し、続いて20分程度で高さ10b以上の第2波が押し寄せて町丸ごと飲みこんだ。
 また、M5以上の余震が3月11日から4月2日までに454回も連続的に起きており、まだ続いている。これが長野の直下型地震、伊豆地方での地震を誘発している。箱根では群発地震が起きており、富士山の火山活動を活発化させている。江戸時代に起きた富士山の噴火では、江戸の町には10aも灰が積もったが、これが噴火すれば東京は大被害になる。
  地震、火山活動はこれまでの静穏期から、阪神大震災時期から活動期に入っている。今後30年以内に必ず起こるといわれる東海から南海にかかる地震の震源域は1000`で今回の2倍だ。この数十年がたまたま地震の安定期だっただけの話だ。とくに三陸地方は、地震と津波の歴史だ。1896年の明治三陸大津波は30b以上の津波が押し寄せ、2万2000人が死んでいる。77年前にも昭和三陸大津波があり、この115年の間に三つの大津波が起きている。51年前にチリ沖地震の津波被害もあった。こんなところに福島原発10基もつくって40年も稼働していたらやられるのは当たり前の話だ。
  今回の地震と津波による被害を見ると、4月3日現在で死者は1万2009人、行方不明者は1万5472人、避難者は31万人を超えている。建物被害は、全壊が4万5769戸、半壊が8792戸、床上浸水が2774戸、床下浸水は1371戸、一部破損は13万7638戸だ。津波による浸水範囲は、少なくとも合計401平方`bで、東京山手線面積の6・4倍にあたる。最大で6`内陸まで浸水していた。
 農漁業被害は、農水省がいまだに被害状況をつかんでいない。4月1日現在で判明している被害では、壊滅した漁港が、北海道で20、青森で17、岩手は111(全漁港)、宮城142(全漁港)、福島10(全漁港)、茨城15、千葉10となっている。被災した漁船数は、各自治体からの報告で、宮城は登録漁船数1万3570隻のうち1万2011隻が被災。岩手では4市町村だけの報告で4014隻だがほぼ全滅状態とみられている。そのほか北海道703、青森441、福島855、茨城249、千葉258。全地域で大幅に増大する見こみで市場、水産加工施設なども岩手、宮城、福島ではほぼ全滅している。
 津波による農地の流出・冠水による被害面積は、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の6県で2万3600f(田2万151f、畑3449f)と発表(3月28日時点)。全耕作地面積の約2割に及んでいる。宮城では全耕作地の1割以上が流され、茨城、千葉では農地の液状化や、パイプラインの損壊などの被害も大きい。
 D 工業関係では、トヨタ、日産、ソニー、キヤノン、富士通、日本製紙など上場企業1135社の生産工場、事業所が被災。エネオスの仙台製油所、コスモ石油の千葉製油所などで大規模な火災が発生。液化天然ガスの大型タンクが10基以上爆発した。石油化学関係では、茨城県鹿島コンビナートでは三菱化学、花王、旭硝子など20社以上の工場が被災。中小企業も含めた全貌の把握はできず、震災による経済的損失は20兆〜30兆円に上るとされる。
 C 平安時代の貞観地震というのは、地震学者が数年前に発表していた。日本列島は地震、津波、火山、台風などはつきものだ。これを無視したらひどい結果になるのは当たり前だ。自然災害になるが、それをメリットにもしてきた側面もある。火山の噴火によってもたらされた火山灰の土壌(シラス台地)は、年月が経つとともに特有の肥料効果をもたらすため、大豆、馬鈴薯、さつまいも、大根、ブドウ、キャベツ、レタスなどの生産には好適な土壌になる。火山地帯は年間5億dもの温泉がわき上がり、浴用、農業用暖房や地熱発電にも利用されている。

 自然無視の軽薄さ証明

  この日本の自然条件に対して、原発に象徴される戦後の重化学工業化がいかに傲慢で軽薄なものだったかが証明されたということだ。自然と人間の関係では、自然が第一義であって、自然の法則を認識し、それを利用して生産をやり、生活をしてきたのが人間の歴史だ。今度の地震エネルギーは、広島原爆の数万倍だという。いかなる工業力も自然に勝てるわけがない。原発はアメリカが押しつけたものだが、200年ほどしか歴史がないかれらには、何百年、何千年単位の日本の自然条件など理解できるわけがない。そのアメリカにいわれるまま従ってきた戦後の売国政治の問題だ。
 A 「地震や津波を想定していなかった」という福島第1原発は、ゼネラル・エレクトリック(GE)の設計を丸ごと持ち込んで1号機から4号機まで作っている。50年代から法整備をはじめ、70年代の初めには早早と稼働している。それを「最先端技術だ」とうやうやしく持ち上げて導入した。
 C 地震は活動期に入っており、あと30年のあいだには東京から四国、大分に至る大プレートの大地震が起こるのは確実だと地震学者がいっている。浜岡、伊方などの原発は直撃だ。日本中に54基の原発があるが、福島はよそ事ではない。
  都市作りにも共通している。明治以後、関東平野もふくめて、広大な耕作地をつぶして都市化してきた。一番いい耕作地が住宅密集地となった。その結果被害がひどい。ご先祖の経験に学ぶというか歴史的な視点、将来への展望を欠いて、目前目先の利便性やもうけだけを追求した国作りの破綻だ。
  やはり自然の現実に立脚した視点、しかも目先の損得優先ではなく歴史的な視点を持った国づくりでないと大失敗するという教訓だ。近年では新自由主義といって目先の銭金勘定だけが基準で歴史的な視点を破壊してきた。歴史学会なども興味と関心でメチャクチャだ。
  東京が右往左往している。石原など露骨に地方をバカにしていたが、地方がだめになれば東京には電気はこないし、野菜、牛乳、肉、魚などの食料はこず、水ものめない。地方を収奪して大東京ができたが、地方がないと都市は成り立たないということだ。これも転倒した観念を正さなければならないことだ。東京一極集中で威張っているが、生産の根は地方にある。東京という大きな葉っぱばかり目立っているが、葉に隠れていた幹がやられるとたちまち葉っぱは枯れる。「金融立国」といって生産活動を軽視することが、いかにバカげているかということだ。
 
 体なさぬ震災対応 「小さな政府」の結末 統治機能は崩壊

 B 災害対応をめぐって、政治家、官僚、大企業、メディア、専門学者などの対応がまるで体をなしていない。メルトダウンしているのは原発より先に国の統治機構の方だ。テレビに出てくる連中というのが、何の責任感も緊張感もない。国民との対話能力がない。とくに現場の実感がないし、現場が救助なり生存者の生活なり復旧なりでどうたたかっているのか、なにを求めているのか、国民はなにをすればいいのかが伝わらない。市場原理改革といってきたが、国民のことは自己責任で社会的な責任などはすっ飛んでしまっているようだ。
  フランスの救援隊が、日本の官僚機構がまったく動かないことに「フランスなら3時間で解決することが3日もかかる」としびれを切らしていた。ロシアも、「5分で決まることが一つも決まらない」という。各国も最近のニュージーランド地震でいわれていた「72時間」のタイムリミットに向けて急いで駆けつけたのに、日本側が対応できない。フランス救援隊にはハイチ大地震で多くの人命救助をした経験があるが、日本政府は「救助犬が不衛生だ」と難癖をつけて活動を拒否。中国が、救援物資を送ろうとすると「現地までもっていけ」という。こういう対応が世界の笑いものになっている。
 D 下関の内航船の船員が、「三陸沖を通ると、お腹が膨らんだ遺体がたくさん浮かんでいる」「20海里付近もガレキだらけで航行もできない」と驚いていた。3週間たってはじめて海上から行方不明者の捜索を開始したというが、自衛隊、米軍が2万5000人態勢で捜索して70人ほどだった。海に流された遺体は、早くしないと沈んでしまう。手遅れもいいところで米軍が恩を着せるパフォーマンスだ。
  生存者もほったらかしにされていた。実状が把握できないから動きようがないようなことをいっていた。どんな被害を受けているかはすぐわかっているし、すぐになにが必要かはこれまでの経験でわかっていることだ。自衛隊とか医師とかすぐ救助隊を派遣するとか、ヘリを動員して薬とか水、食料とかどんどん投下するとか、陸路がダメなら内航船を仕立てて、港に入れなければ沖から小型船でピストン輸送するとか、道路交通を確保するために全国の土建屋と重機を動員して片づけさせるとか、すぐにやればよい。そういう行動を先行しながら現地の把握をして、もっと現地の実状に応えるようにしていけばよいことだ。政府も「自治体はなにもいってこない」という現地責任論の調子だ。
  メディアも完全な傍観者だ。現地の状況に対応してどうすれば良いという理念がない。「あそこも孤立している」「ここもかわいそうだ」というのを延延とやっている。来る日も来る日も、同じ津波の映像を流している。孤立した病院でヘリが来たので手を振ったが、取材のヘリで、誰も迎えに来なかったという現地の声もあった。被災者を「かわいそうな人人」扱いだが、現地はそんなひ弱なものではない。現地の住民が消防団などを機能させてどんどん片付けている。現地の住民こそがその土地を立て直す原動力であり、それを援助する外部支援者の役割があるのに、それが見えない。復興となると、なおさらその土地に根ざした農業、漁業を基本にして現地の住民が産業を立て直す以外にない。昔からそうしてきた。
  津波で役場が流されたり、職員も被災して相当なダメージを受けている。亡くなった人もいれば、身内が亡くなったりしており、市町村役場や県が機能しないのは当たり前だ。地方自治体は合併しているので、ただでさえ職員が少なくそれが災害対策の大きな障害になっている。政治家や官僚機構が動くかといえばそうでない。各省庁が即座に体制を作り、民間の力を動員する。厚労省は医療関係、農水省は全国からの食料確保、国交省は全国のトラックや船などを掌握しているのだからやることがあるはずだ。それがさっぱり動いた形跡がない。もっとも効率化ばかりで、自治体職員も消防隊員も医者も食料も不足。災害対応などできない構造になっている。東北道路は地震で崩れてダメなのかと思っていたら、緊急車両だけ通すといって民間車両を封鎖していた。
  阪神大震災の時以上に民間を規制している。現地ボランティアも限定されたNGO団体だけで、個人有志というのは認めていない。かなり統制している。
  安倍内閣から事務次官会議を廃止したり、省庁間の横のつながりをなくして、「官邸主導だ」とやってきたが、まるで政府の機構が動かない。自民党政府からつづく市場原理改革、新自由主義改革で「小さな政府」とかいって、役に立たない政府になっている。
 
 原発では真実隠す 住民の安全は二の次 米国の軍事機密優先

  ひじょうに深刻な問題が福島原発の大災害だ。原発を推進してきたリーダー連中が右往左往して、原発をまるでコントロールできないし、かれらの説明がなにをいっているのかわからない。
  国民の前には、枝野官房長官、保安院、東電などが出てくるが、一般市民にはわからない数字や専門用語を並べて、「たいしたことはない」を繰り返す。だが、次次に起こるのは爆発や放射能漏れなど「たいしたこと」ばかりだ。
  東電や保安院も「申し訳ない」という態度がない。自分は安全なところにいて平気でウソをいう無責任さにみんな頭に来ている。海外の方がよほど緊張感がある。
  あとでわかったのは、昨年10月に、経産省所管の原子力安全基盤機構が、電源喪失の事故シナリオを出していた。それによると、電源喪失から1時間後に燃料棒破損、2・4時間後に落下、3・3時間後に圧力容器破損、14時間後に破壊となっている。実際に地震当日の夜、保安院は「3時間以内に炉心溶融がはじまる」と予測していた。そんなことは専門家は知っているはずなのにいわない。民放で東工大のヒゲの教授が、一号機建屋が吹き飛ぶ場面を見ながら、「蒸気が出ただけ」「爆破弁を使ったガス抜きだ」など好きなことをいっていた。
 A 全国の電力会社に共通しているが、原発の事故隠しとデータねつ造は日常的だ。最近広がっている学術論文ねつ造があるが、原子力関係が先行している。アメリカお抱えの御用学者育成の花形分野として原子力が突破口になり、学問分野全体にねつ造がはびこりはじめる。原子力安全委員会は本来チェック機関だが、委員長は原発推進派がやる。チェックなどしない。現委員長の斑目春樹・東大教授は元東芝社員で原子力メーカー代表だ。チェックする格好をして推進する。
  保安院というのは経産省の役人だ。テレビに出てくるヘラヘラした男はTPP担当役人らしい。原発の専門家ではない。「チェック機関」のふりをして推進する。「不安院」だ。こういうイカサマがこの分野では常態化している。
 A 東大には東電から5億円の寄付講座があるとか、原子炉実験所なども国の予算をもらわないと運営できない。完全な金漬けで学問もメルトダウンだ。武谷三男、湯川秀樹などの物理学の伝統は断絶されている。
 B メディアも「安全だ」とくりかえすが、現場にカメラがない。原発敷地にカメラを何台か据えて24時間回したらよい。すべて東電、政府を通じた窓口取材、間接報道で、大本営発表報道だ。屋内退避の30`圏内にもいかず、NHKも現地民には電話中継だけだ。専門家も現場を知らない。保安院や東電の説明を聞き、国民が理解できるように説明できなければ登場する意味がない。普段から世間とのかかわりを絶ったところで生息しているから、国民との対話能力もなくなっている。
  地震と津波で原発施設全体がどの程度壊れているのかをはじめから見せれば、おおよその見当がつくはずだ。油タンクや温排水のポンプが流されたとか、たくさんのパイプも相当打撃があるとか、はじめからわかっていることだ。また爆発したりして隠せなくなるまで、真実を見せない。放水した水が海に流れているはずだとみな思うが、長いこと知らぬ顔をし、高濃度の海水汚染がばれたあと海につづく穴があったと認める。
  原発はこの期に及んでも秘密のベールが多い。1〜4号機はGEの設計で多くの特許が詰まっている。それ以上にアメリカの核戦略にかかわる軍事機密だということが最大の障害になっているのは疑いない。事故で一番修復の責任があるのは原子炉メーカーだ。本来GEと東芝、日立が直接乗り込んで修復しなければならない関係だ。
  現場で高濃度の放射能を浴びながらやっている作業員への東電の待遇がひどいのが暴露されている。食べ物もビスケット、毛布も1人1枚なくコンクリの上に雑魚寝という。放射線測定器も一チームに1個という状態。防護服も足りず、カッパのようなものを着せている。20`圏内の運動施設(Jビレッジ)にはきれいな宿泊施設があるが、東電は「汚れるから使わせない」と施錠して、消防隊員らは廊下にごろ寝だそうだ。現場と関係ない偉そうなのが東京で推進し、現場は日当数千円の被曝労働、棄民労働だ。作業者への反人道的な体質と反社会性が結びついている。

 広がる放射能汚染被害

 B 原発災害はどこまで広がるかわからない。福島、茨城、群馬などの野菜や牛乳が出荷禁止になったり、東京などの水道が基準値を超えたり、土壌汚染が広がっている。そして海洋汚染がひどいことになりそうだ。農業とともに東日本の漁業が大変な危機だ。放射能はアメリカやヨーロッパまでとんでいる。いわないが日本中にとんでいるということだ。
 C 各地で放射能が増えたのは水素爆発によると最近いい出した。爆発したときには安心だとしかいわなかった。福島第1原発が今後どうなるかわからない。炉心溶融は確実に進行しており、格納庫の水の中に落ちて水蒸気爆発をする危険性は解決していない。水素爆発も心配だといって窒素の注入をはじめたともいっている。そうしたら敷地内は致死量の放射能汚染で、立ち入りできずにあと5つの原発も連鎖的な暴走になりかねない。
  スリーマイル原発を超えたとされたが、チェルノブイリの規模も超えそうだ。チェルノブイリ原発の核燃料は180dだが、福島第1は使用済み核燃料を入れると1700dという。チェルノブイリは1基だが、福島は4基、ないしは6基だ。世界中が大騒ぎしているのは当然だ。
  30`圏内の住民が戻れる可能性は薄い。避難地域の遺体も放射能に汚染され収容できない。核廃棄物扱いだ。生き残った住民は難民になりそうだ。同レベルの汚染が南相馬市や飯舘村まで広がっている。土壌汚染がひどい。土壌汚染は福島から茨城、群馬まで広がった。3号機が爆発したころには、女川原発付近での放射線数値を発表していたが、それ以後は出さない。東北方面に広がっているのは当然だ。
  爆発しなくても放射能は絶えず放出されつづけている。放射性物質は大気中を飛ぶが、雨で川に流れ、最終的に海に流れる。放水口から流れているだけでなく、最終的にはほとんどが海に集まる。海洋汚染、漁業破壊がたいへんな問題だ。
  アメリカがこらえきれなくなって指揮しはじめている。オバマ政府が「原子力ルネッサンス」と原発売り出しをはじめた矢先の大事故だ。結局米軍の核戦争対応の専門部隊がきて、自衛隊を従えて統合本部に入っている。原発事故をアメリカの都合にあわせて処理するということだ。とくにこの大惨事が戦後の対米従属政治によるという批判が向くのを恐れている。日本の資金を巻き上げてアメリカ経済を持たせているのに、それが破綻したら大変だという関係だ。リビアの攻撃は引き揚げて日本配備だ。
  しかし現場でやるのは米軍ではなく、自衛隊か下請作業員だ。はじめだけメディアも「米軍が協力」と大大的に報じるが、実際行動はなにも見えない。いち早く80`圏内への立ち入りを禁止し、ジョージ・ワシントンも横須賀から逃げ出した。「トモダチ作戦」だといって、子どもでもできる体育館掃除などをやっている。敗戦直後の宣撫工作のような感じだ。
  統治機構に、社会的責任、国益という観念がなくなり、国民の生命、安全を守るという意識がない姿を見せつけられている。大きなアメリカの支配構図のもとで、運命をそっちに預けてゴミあさりをするような腐敗した連中ばっかりが国のリーダーとしてはびこっている。それが自然災害以上の政治災害をひどくしている。個別企業と結びついた自分の地位や金を欲しがるという潮流が、中曽根、小泉の新自由主義改革を通じてひどくなった。そして統治能力をなくしている。
 
 新自由主義転換へ 目先優先で大惨事に 生産を基礎に転換を

  この状況から今後どう復興するかだが、さっそく消費税増税を出している。また被災地の市町村合併をやるといっている。TPPに対応した農業の確立とか製造業の海外移転などともいっている。アメリカに流されて目先利益優先の新自由主義、規制撤廃の方向でいったらデタラメになる。
 F そもそも国の防災対策がなっていない。今回も、行政が効率化優先で決めていた避難所や防災センターが水に流され、住民が自主的に決めていた避難所に逃げて助かったという例がたくさんあった。これで日本を舞台にして核戦争をやるというのだから無謀もいい所だ。
  この大災害を教訓にするならまず日本の自然条件に沿った立て直しだ。それは何十年、何百年、何千年の歴史の継承の上に立たなければならない。戦後の特徴として、とにかく目先のもうけが第一で、歴史の断絶、歴史的なものの見方を捨てていった問題がある。
 A 長期的に見ないと目先だけ見ていたら大惨事になるという教訓だ。日本人は、この厳しい自然条件のなかで生産活動をやり、知識を蓄え、社会を発展させてきた民族的な伝統がある。やられてもやられても立ちあがっていく。基本的にたくましい民族だ。それに外人記者などが驚いている。
 F 「過度な不安を与えるとパニックになると危ない」といいながら、真実を伝えないというのがマスコミと政府の一致した姿勢だが、これも外来思想だ。アメリカでは、治安優先で情報を統制して、ハリケーン・カトリーナのときは軍隊が出動して銃撃騒ぎにもなった。米国人が「同じ事がアメリカで起きたら大パニックになるはずなのに、日本人は並んで電車を待っている」と驚いていた。日本の場合、自然災害に対する構えがあるし、さらに広島・長崎の被爆者たちも、あれ以上ない惨状の中から「放射能まみれの水を飲み、雑草をたべて立て直してきた」と少少のことで動じていない。
  復興という場合、農林漁業を基本とした共同体の立て直しだ。行政主導の避難対策では、この共同体をバラバラにする。阪神大震災では、抽選で平等にという名目で仮設住宅にお年寄りばかりを入れて、結果的に孤独死が200人も出た。今回も、仮設住宅に高齢者ばかりを入れてだれも世話をする人がいない。
  日本の自然条件の無視というのは、農林漁業の破壊に大きな根拠がある。農林漁業は直接に自然相手の生産活動だ。農漁業軽視が、地震や津波などの自然軽視であり無防備につながっている。農林漁業の復興は、経営体としてもうかるかどうかなどで切り捨てられるものではなく、食料安保という面からも、国土保全のうえからも、歴史文化の継承という意味でもすごく大事だということだ。
 C 農林漁業は戦後工業優先で破壊されてきた。工業、都市の発展のために労働力を奪われたし、工業製品の市場としても食い物にされ、また安い農産物で低賃金労働を保障する役目を負わされて、その上に輸入自由化でひどい破壊にさらされてきた。農林漁業を活性化する、食料自給を成し遂げる方向に政治の向きを変えさせることが本当の国益だ。そのために国の予算を回さなければならない。輸入すればよいというわけにはいかない。また被災地が農林漁業を復興させるには、協同組合の機能をなくすのではなく強める必要があり、集団化する方向にならざるを得ない。被災地の漁村では、使えそうな漁船や漁具を集めて、所有者の了解のもとに漁協の共同所有にして漁業を再開しようという動きがある。個人では限度があるが集団では展望がある。被災地の復興はいくら仮設住宅を造っても、現地の産業を復興させなければどうにもならない。
 E 工業の方も、東北の工場がマヒしたら、全国の自動車工場が操業停止になったし、韓国、台湾、東南アジアとかアメリカのいろんな工場が停止している。製造業の海外移転だといってきたが、国内で生産していた部品がなければ海外生産はできないという関係を暴露した。海外進出したら輸出が増えるというやり方でもうけてきたのだ。トヨタ自動車は、在庫を持たないカンバン方式で下請を叩いてきたが、部品製造の中小企業がつぶれたら海外もふくめてすべてのラインがストップした。フォードなどの海外企業も日本の部品が入らず生産停止だ。はやりのアイパッドなど電子機器も精密部品は日本製で、多くは地方の中小企業が担っていた。「日本人の労働力は海外に負けている」というのはペテンであり、日本の労働者の役割の大きさを再認識させている。日本の大企業の強みの源泉は国内の労働力の優秀さに根拠がある。とくに下請の中小企業に依存している関係だ。
  農漁業を収奪してきた工業だが、ここまできた資本主義では、工業、モノづくりも金融資本にさんざんに追い立てられ収奪される関係になっている。株主優先資本主義で四半期ごとの決算で株価を追い求められ、技術継承などを切り捨ててきた。これを外資を中心にした金融優先でこれから先も突っ走ったのでは国はパンクだ。やはりモノづくりを基本にした立て直しだ。

 独立の課題が最大の要

  政府やメディアは、このままでは国債が暴落して債務不履行になり、IMF管理にでもなれば大変だから、増税だと煽っている。だが日本には金はある。農漁業を犠牲にし、中小企業、労働者を搾りに搾って、この間もうけた大企業が240兆円以上の内部留保金をため込んでいる。その半分を税金で回収すれば簡単に経済を立て直すことができる。さらに数百兆円といわれるアメリカ国債を売り払えばいい。日本がつぶれようかというときにアメリカに貸している場合ではない。日本は世界一の債権国であり、それを回収すればどうにでもなる。
 C だからアメリカが慌てている。保険会社が膨大な保険料支払いのために、買いこまされたアメリカの国債や証券を売りたい衝動に駆られているが、先行して米財務官僚が「日本の保険会社は売らないだろう」と発言して脅しをかけている。そうなったらアメリカ経済はパンクするというわけだ。アメリカを救うために日本が犠牲になるかという選択だ。
  農林中金などは十数兆円ほどアメリカの証券投資などで焦げ付かせている。困難な農漁民の預金をパーにしている。それを売り払えばいい。日本の農漁業を立て直すためだ。そういうことをしないで増税などふざけるなということだ。日本を立て直すうえで独立の課題が要だ。アメリカ指図の新自由主義路線の抜本的転換だ。労働価値説を復権させることだ。戦後は目先損得第一のアメリカ型哲学がはびこった。アメリカはたかだか2、300年の歴史で、地震や津波とか何百年、何千年の歴史はわからないのだろう。
  物づくりなしに復興はない。現地はかわいそうでなにもできないと描いているが、今度は、国主導で勝手な図面を書いて「新しい国づくり」といってそれにゼネコンが色めき立っている。「市場が要求する」といって外資の金融資本の餌食にさせてはならない。
  義援金が相当額集まっている。支援の世論はすごい。しかし、かわいそうな人たちに援助の手をさしのべるだけというのはいただけない。自分たちもひどい目にあっているんだ。恩着せがましいことはいっておれない関係だ。これだけの大震災まできて、戦後の対米従属社会の犯罪性が人人に強く実感されるところへきた。この日本の立て直しのために、東日本も西日本もそれぞれの自分たちの問題として日本社会の根本的な立て直しのために連帯することが課題だ。
  被災地で、地域の基幹産業である水産業を興すために造船所の再開を急いでいるとか、漁協青年部が漁を始めている。打ち上げられた船も修理すれば使えるからと漁師が動いている。気仙沼もいち早く漁業再開の気合いを入れていたことに共感が大きい。じっとしていてもめどは立たない。働くこと。漁業と農業だ。
  原発災害がひどいことになっていくが、広島、長崎の原爆はそれどころではなかった。東日本の地震、津波災害はひどいものだが、第二次大戦の戦災はそれどころではなかった。日本民族はその中から立ち上がっていった。戦後日本を復興させた力は、まぎれもなく働く者の力だった。ところがアメリカの支配とそれにつきしたがって自分の地位保全を願った売国反動勢力が、日本社会をメチャクチャにしてしまった。日本の平和や繁栄は独立をしなければ実現できない関係だ。働く者が前面に出て、産業振興の大きな流れをつくることが日本の立て直しの道だ。国民的な大論議を起こすことだ。


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