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低投票率依存で逃げる自民党
選挙といえぬ山口県知事選
              対抗馬を潰し審判避ける    2014年2月7日付

 山口県知事選が6日に告示を迎え、自民・公明に加えて労働組合の連合山口(杉本郁夫会長・日本化学エネルギー総連出身)が推薦を決定した元総務省財政企画官の村岡嗣政(41)と、生活の党が推薦する元民主党衆院議員の高邑勉(39)、昨年2度の参議院選に出馬して落選した「日共」集団の元周南市議・藤井直子(61)の3人が立候補を届け出た。1月末に実施された名護市長選で、自民党本部や安倍政府みずからが身を乗り出した選挙で権力側は大惨敗を喫し、続く東京都知事選でははなから候補者擁立を断念して勝ち馬相乗りをやるなど、安倍政治への審判が問われる選挙において、極端に有権者を恐れた対応を見せてきた。山口県知事選では「脱原発」を掲げていた候補が直前になって出馬をとりやめるという不可解な事態にも発展し、選挙があってないような宙に浮いたものになっている。
 今回の知事選挙ほどしらけたものはないことが、県内の有権者のなかで大きな話題になっている。添え物のような雰囲気で、落選をくり返してきた「日共」候補が担ぎ上げられ、高邑陣営といっても選挙体制がないのか、告示日の翌日を迎えても掲示板にポスターが貼られていなかったり、のっけから消化試合のような様相を呈している。
 前回2012年の知事選では、投票率は過去最低だった08年の37・21%を上回る45・32%を記録し、福島原発事故の翌年という状況のもとで「脱原発」が大きな注目を浴びた。自民党や公明党が推した山本繁太郎(25万票獲得)に対して、脱原発や反原発を叫んだ候補が3人立候補し、飯田哲也が18万6000票、高邑勉が5万5000票、三輪茂之が3万7000票を獲得した。
 批判票として投じられたおよそ28万票が分散しなければあわや自民党は惨敗というもので、「投票率が50%になったら負ける!」(自民党県連)と終盤になって慌てふためいていたのが実態だった。山本知事体制といっても全有権者からの支持率は21・3%で、選挙テクニックで切り抜けたにすぎないこと、「保守王国」の極めて脆弱な支持基盤を露呈していた。
 あの選挙から2年も経たないうちに再選挙になったのは、選挙期間中から倒れ、がんの疑いが持たれてきた山本知事が、今年に入って辞職を表明したことがきっかけだった。当選後は入退院をくり返しながら県庁不在の状態が続き、いったいなんの病気なのかも伏せられ、復帰するメドがあるのかないのかすらだれにもわからないという、異例の事態が続いてきた。その間、用意周到にタイミングをはかっていたのが自民党で、年明けの辞職発表と同時に総務省財政課財政企画官の村岡嗣政の擁立方針を固め、いっきに選挙日程を動かした。
 昨年から水面下では「知事選の再実施が不可避」といわれ続け、安倍首相の周辺が東京でキャリア官僚を幾人も物色していることが話題にされてきた。候補者選定がまとまるまでは身動きがつかない山本体制を「復帰するかもしれない」雰囲気を醸し出しながら温存し、辞表提出から50日以内という短期決戦で、他陣営の体制がとれないうちに選挙を実施して、再び自民党が知事ポストを牛耳っていくプログラムを展開した。
 これに対して前回選挙で次点に泣いた飯田哲也が年明けに出馬の意向を表明していたが、10日もしないうちに出馬断念を表明するという意味不明の行動をとり、有権者のなかで「なにがあったのか?」と物議を醸した。名護市長選の追い風を受けて東京都知事選と続き、さらに首相お膝元での審判として全国的な注目が高まっているなかで、世論が沸いている最中に悲しい顔で断念する姿を見て、舞台裏でのやりとりにだれもが疑問を抱く行動となった。
 飯田出馬の動きを追いかけるように出馬の意向を表明していた高邑についても、正式な出馬表明は告示の1週間前で、いざ選挙がはじまってみると出陣式は数十人の小集団であったことや、県下のポスター掲示板の多くがなにも貼られないまま放置されている様子を見て、有権者の多くが選挙体制のなさを感じている。「あの男は飯田哲也とたたかいたかったのだろうか?」「なにがしたかったのだろうか?」といぶかしがる状態となった。
 名護市長選後にあらわれた急展開に、有権者の多くが疑問や不信感を抱いている。結果からはっきりしていることは、飯田出馬断念でもっとも喜んでいるのが自民党県連なり、連敗を恐れている自民党本部、安倍政府という点だ。水面下でだれとだれがどのようなやりとりを交わしていたのかを抜きにしても、有力と見られていた批判票の受け皿の一つが消えたのは事実で、水面下で人にいえないような出来事があったに違いないと多くの有権者が受けとった。
 人騒がせをした飯田哲也についても、「やっぱりやめた…」といって黙って引っ込んでいく姿勢に批判が強く、いかがわしい印象だけが焼き付くものとなった。敵前逃亡するのならはじめから出馬の意志など表明しなければよいのに、なぜ10日間で断念することになったのか、有権者が納得するような説明はなされていない。

 弱体化した「保守王国」 選挙構図自体を操作

 「対抗馬」と思える存在がなく、有権者にとって票の持って行き場がない。こうしたしらけた選挙構図のもとで、投票率は過去最低を更新し続け、たいして支持のない自民党がポストを押さえていくパターンが全国的にも増えている。
 山口県はその先進地で、「低投票率」狙いが一つの選挙テクニックとして認識され、早くから実行されてきた。低投票率であればあるほど組織票が強みを増し、自民党と公明党、さらに連合などの補完勢力も含めた勢力の支持率が20数%であっても、有権者の60%が選挙に行かなければ勝てるという数式で成り立っている。選挙によって選ばれた者というよりも、選挙構図そのものをコントロールして、せいぜい「日共」集団や泡沫候補をアリバイ的に配置して面白くないものにし、自民党が勝っていくのが恒例になっている。裏通り選挙で有権者を排除するのに最大の特徴がある。
 9日に投開票を迎える東京都知事選も共通で、あれだけ郵政選挙で小泉劇場を演出した商業メディアが、今回は自民党が舛添を全力で応援している状況を反映して、小泉・細川の元首相コンビをまったく画面に登場させないという、不思議な対応をとっている。さらに、何度も「舛添が圧倒的リード。細川、宇都宮を足しても勝てず」という世論調査を垂れ流して有権者をしらけさす。「結果がわかっている選挙に行っても仕方がない…」という世論を意図的につくりだし、低投票率に持っていくシカケが首都決戦でも浮き彫りになっている。
 山口県の選挙ではこれまでも、県民に支持を訴えて当選するという代物ではなく、「日共」候補と自民党擁立候補の一騎打ちで消化試合にしたり、あるいは乱立選挙に仕立てて批判票を分散し、自民党が公明党との組織票でかつがつ当選させたり、あるいは立候補段階から潰したり、選挙コントロールをやるのは常套手段となってきた。民主党はじめとした野党が自民党の付属物になっており、県議会でも地方議会でも総翼賛化していることが、こうした出来レースを保証する最大の基盤となっている。飼い慣らされた「野党」勢力はなんの脅威でもなく、その枠外から動きが出てきた時、さらに候補者がどうであれ、浮動票が動き始めた時にのたうち回るのが、前回知事選でも示された「保守王国」自民党の実際の姿である。
 県政与党の民主党は今回の知事選対応をめぐって自民党と相乗りで村岡を推薦したいのに、村岡側から面会すらしてもらえないという屈辱的な対応をとられ、自主投票を決めた。しかし母体の連合は村岡推薦を決め、決起大会で挨拶するなど与野党総ぐるみでの選挙戦となっている。どこまでも与党利権に追いすがる情けない姿をさらし、民主党の終焉を感じずにおれないものとなっている。翼賛政治の残骸たちに県民の信頼がないのも特徴だ。
 既存政党がみな自民党の付属物になっている状況は国会以上に先行している。まともに対抗する野党がおらず、受け皿がない状況が、それほど支持のない自民党の独走態勢を開けて通す。選挙がとり上げられたような状況のなかで、有権者としては直接民主主義によって下から行動し、支配構造を突き上げるしかないこと、うらぶれた既存政党を叩きつぶして、新たな政治勢力を結集する課題をつきつけている。
 同時に「低投票率狙い」という姑息な手段によってしか知事ポストを押さえていくことができない姿を裏返せば、自民党政府なり「保守王国」の牙城といって威張り腐ってきた連中がいかに審判を恐れ、弱体化しているかをあらわしている。支持率20%で吹けば飛ぶようなものが、だらしない野党によって支えられている関係を暴露している。

 全国団結の運動に活路 山口県私物化する姿

 山口県は、上関原発計画や極東最大の米軍岩国基地をめぐる問題など、日本社会全体にかかわる重要争点をいくつも抱えている。本来なら、名護市長選、東京都知事選ともつながって、安倍政治への厳重なる審判が問われなければならない。しかしふざけた選挙構図のもとで、選挙結果や投票行動としては複雑なあらわれとならざるを得ない。
 首相のお膝元といわれ、県選出の国会議員たちが自民党副総裁や政府の要職を総なめにするのと引き替えに、全国が嫌がる原発や米軍基地などの迷惑施設が県民に押しつけられ、彼らの出世の道具として郷土が売り飛ばされてきた。産業は全国的に見ても抜きんでて衰退し、少子高齢化の進行も47都道府県のなかで5本の指に入るほどひどい地域となり、疲弊しきってきた。農漁村の衰退だけでなく、瀬戸内海側でも企業群の海外進出にともなう工場閉鎖などで大量の労働者が路頭に放り出され、受け皿はない。
 首相のお膝元である下関でもこの20年来、すなわち安倍首相や林芳正農水大臣、江島潔参議院議員らが登場して以後の衰退ぶりは深刻で市街地を歩いてみるだけでも歴然としている。郷土をこれほど無惨に荒廃させ、食い物にしてきた連中が、国全体を繁栄させる意志や能力など持ち合わせていないことは、全国のだれよりも地元の有権者が知り抜いている。
 安倍首相の肝いりで知事になったのが山本繁太郎だったが、当選する前から闘病生活で2年もたたないうちに再選挙の実施である。ガン患者みたいな者を担ぎ上げた責任はなんら問われず、次の知事も東京裁定で送り込み、山口県を私物化していく姿を見せつけている。日銀の私物化やNHKの私物化が騒がれているが、この私物化癖は山口県や下関では早くから実行されている。
 安倍政府が発足したおかげで、山口県では新規立地の上関原発計画を進める動きが強まりさらに岩国は極東最大の米軍の出撃拠点として差し出され、普天間ヘリ部隊の移転などが矢継ぎ早に打ち出されてきた。知事はそうした国政を実行していくための道具に成り下がり、代議士連中が使い勝手の良いキャリア官僚をあてがう構図を露呈している。
 名護市長選を突破口にして、東京都知事選、山口県知事選と続く三連戦が全国的な注目を浴びている。連敗すれば死に体となるのが安倍政府で、名護市長選も経た軌道修正によって、山口県では「審判」が表にあらわれにくい選挙が押しつけられた。勝負を逃げ続け、「低投票率」依存症に陥っているのが自民党で、胸を張って「勝った」といえるような状況ではない。
 この間、「アベノミクス」といって金融緩和の大盤振舞がやられるかたわらで、米軍普天間基地の辺野古移転や岩国基地の大増強をはじめ、原発再稼働や輸出、TPP、消費税増税といった政策が次次とごり押しされ、さらにアジアの近隣諸国との緊張関係を激化させながら、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使など露骨な戦時国家体制作りが進められてきた。
 対米従属の日本破滅の道を進むか、独立して日本の立て直しの道を進むか、戦争・貧困の道か、平和・繁栄の道か、聞く耳のないファッショの道か、民主主義の道かが、鋭く問われている。安倍政治があちこちで破綻し、外交だけでなく内政も経済も行き詰まる気配を見せ、ドミノ倒しがはじまろうとしているなかで、山口県知事選は県民世論との真っ向勝負から自民党が逃げていった。選挙になんの期待も持てないなかで、全国的な世論とつながって、大衆運動の力を強めることが重要になっている。

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