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地域密着の流通構築に確信
              広島 行き詰まる大型店商法    2010年10月8日付

 広島市内では、規制緩和ではじまった大型店の乱出店とともに市内の商業、流通システム、農業生産にいたるまで大きな打撃を被ってきた。「自由競争」「効率化」といって進められてきた大手量販店の参入は、地元の卸業者、生産者からは商品を買い叩き、地場商店街をなぎ倒して地域コミュニティーを崩壊させる略奪商法であることが問題視されてきた。だが、物量にものをいわせた仁義なき低価格競争の結果、市民の購買力の減退とあわせてその荒稼ぎ商法にも陰りが見えはじめている。地場商店のなかでは、「営利第一」商法に脆弱さをみるとともに、生産者の集落営農などの新しい動きとも連動して、「地元密着」の強みを生かした新たな流通システムの構築が模索されている。
 今月1日、広島駅東口で市と民間による再開発事業のデベロッパーである大和システム(大阪市)が633億円の負債を抱えて倒産した。「アクティブインターシティ・広島」と銘打った開発は、市有地を使って、外資のシェラトンホテル(アメリカ)をはじめ、地上33階建ての高層マンション、9階建ての高級賃貸住宅、商業施設として巨大ビル群を建設。市内では、アーバン・コーポレーションや章栄不動産などの大型破産が相次いでいるさなかでもあり、はじめから「今どきこんな高い物件に誰が入るのか」とささやかれていた。増床分を証券化してファンドなどが買い取るなどの手法で進められたが、竣工後に外資系ファンドが撤退。たちまち生まれた186億円の負債の穴埋めに広島市が44億円もの税金を投入する大盤振る舞いをやるなどしていた。
 だが、巨大ビルができあがったものの、目立った入居テナントはマックスバリュくらいで、3階まで半分以上がからっぽの「あき箱」状態となっている。
 また、昨年3月にオープンした新市民球場(マツダスタジアム)周辺では、にぎわいづくりの柱となる集客施設の開発事業体として三井不動産(東京)が指定されたが、飲食や物販などの需要が見込めないことからテナント誘致が行き詰まり、昨年2月のはずだった基本計画の提出は無期限延期。球場の周囲は、舗装もされていない四・四fもの空き地が広がり、バブル感覚の放漫な乱開発の無謀さを物語っている。
 国内企業がたじろぐなか米会員制ディスカウントストアのコストコ・ホールセールの誘致に乗り出しているが、市民のなかでは「まるで飢えた怪物が街を荒らし回って共食い競争をやり、税金までむさぼったあげくにつぶれている。結果市内は寂れ、市民の購買力はどんどん落ち込んでいく。こんな地元の実情も無視した開発は、長続きするわけがない」とあきれて語られている。
 広島市内では、「国際平和都市」を標榜する秋葉市政のもとで、ここ10年で外資系企業や大型店が数`ごとに乱立。市街地の商店街を寂れさせてシャッター街にし、再開発で大手不動産が買い占めるというスクラップアンドビルドが露骨に進められてきた。

 生産者と直結した強み 意気軒昂な小売店

 某大型店の目の前で八百屋を営む男性(30代)は、「大型店の安売りは脅威だが、みなダイエーの後追いをしているようにしか見えない。バックでは、三井や三菱などの銀行がやらせている。最近では、中四国では割と大きいスーパーチェーン・マルナカ(高松市、岡山市)をイオンと三菱商事がM&Aで吸収したりウォルマート傘下の西友も中堅スーパーの買収をやっている。生産者のことや、市場、地元商業者のことなどまるで関係のない人間が市場を操作して荒稼ぎをやる。怪物が大暴れしているようなものだ」と憤慨する。
 だが、「逆にいえば、大手スーパーはロットが大きすぎて、数が限られる地場産物をコントロールできず、全国の契約農家などから東京や大阪経由で仕入れている。低価格で安定供給するためには自社ブランドなどで全国一元化しなければもたないからだ。だが、地元には地元に見合った特産物や旬の食材が求められるし、地産地消の循環があってはじめて地域経済は成り立つ。それができるのは小売店しかない」と強調する。「研修でいった東京の流通業界では、大量仕入れが原則なので、たとえ良い物をつくる生産者がいても小規模では市場では相手にされない。そこを小売店が、小規模農家と直結して仕入れることで両者の商売が成り立っていると聞いた。生産者と結んだ商売ができたら強いと思う」と話した。
 南区の商業者は、「小泉改革にはじまる規制緩和で弱者をいじめてきた結果、社会的なマヒが起こっている。南区はまるで詰め将棋のように大型店に取り囲まれた格好だが、“あいつら今に潰れる、みておれ”と思って観察している。車に乗る若い者をターゲットにしているが、若者はカネを持たない。安売りをすれば、安い物目当ての客層しかいかない。年寄りの方がまだ蓄えがあるし、地道にでも地域に根付いた商売をやるほうが強いに決まっている」と意気軒昂だ。
 「広島市内でも、郊外の団地などで買い物難民が増えている。電話注文を受けたり、お年寄りを送迎したりのサービスも負担ではあるが、親の時代から人間関係が財産だといわれて続けてきた。地域の人たちも敬老会では地元商店街限定の商品券を配ってくれたり、お互いに助け合いながらやっている。低価格路線は限界がある。吉野屋が良い例だ。中国産ばかり使っていた外食産業のガスト・バーミアンも、中国ギョーザ事件から急速に客足が減って傾いている。生産者のことも、商店、消費者のことも考えた流通システムが必要。小売店もまとまらないといけない時代ではないか」と話した。
 広島中央青果市場の卸業者は、「市場にセリに来る八百屋が当初の3分の1にまでなった。魚屋、肉屋なども同じだ。仲卸はスーパーを相手にしなければやっていけないが、大手になると完全な買い手市場で買い叩かれる。だから、スーパーだけに依存した業者はどんどん潰れていった。セリをしないで、仲卸、荷受け、スーパーの三者協議で値を決めるが、大型スーパーは3カ月前に値を決めてチラシを刷る。予定通り納めなければ取引停止だ。そんな調子で潰された」と話す。
 「最近では、業者が産地と直結して指定した農産物を作ってもらい、すべて受け取る方式をとったりしている。小売店でも工夫をしているのでスーパーより安いところもある。なによりも地元の生産者が元気になってもらわなければ話にならない。いくら効率化といっても、農村に人がいなければ持続可能な農業や食料自給など絵に描いた餅だ。国も行政も口先だけで“地産地消”とか“日本型食生活”などといって、実際には輸入に頼っている。中国騒動などをみても自国の産業を捨てれば砂上の楼閣にすぎない」と第一次産業の再建の必要性に力を込めた。
 

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