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自然法則に背く営利追求の帰結
鳥インフルエンザに思う
                   川崎市医師  柳田  明   2004年3月11日付

 今年に入り、鳥インフルエンザがアジア各地でまんえんし、日本をはじめアジア各国の人人の食生活に影響が出はじめています。
 ご存じのように、現在の養鶏は国内でも外国でも、1カ所の養鶏場で何千羽、何万羽という大規模方式です。これは1960年代にアメリカで開発された「ゲージ養鶏」という方式で、「より少ない飼料で、より多くの肉や卵を、早くつくる」生産方式で、これが今回の鳥の大量感染死に関係している。
 窓のない鶏舎で、照明、換気、室温を人工的に調整し、24時間照明とか、1時間点灯、・2時間消灯のやり方などでエサを食べさせつづけ、急激に太らせ、卵を産みつづけさせる。エサも人工飼料と感染予防の抗生物質入り飼料を食べさせ、この結果、ブロイラーの幼鳥は50日で60倍の約3キロに肥大して食肉にされる。ヒナの段階からワクチン接種、ビタミン剤、飼料添加物、約20種の抗生物質や抗菌剤入り飼料と密集したゲージ鶏舎で飼われるため、いったん伝染病が発生すれば、薬づけの無菌室のような大規模鶏舎で育った抵抗力の低い鳥群ではウイルスが急速に伝染し、養鶏場の鶏が丸ごと倒れてしまう。
 その結果、何千、何万羽の鶏が廃棄処分にされ、養鶏場の経営者は深刻な経営難に見舞われることになる。この方式の長年のくり返しでさらに耐性菌が生まれて、人間に感染するウイルスに変化する危険もいわれている。
 ブロイラーは“おさない鶏”という意味で、1940年代にアメリカで開発された。アメリカのアーバーエーカー社がタイの財閥CPと合弁会社をつくり、養鶏事業に乗り出した。
 ブロイラーのヒナ、飼料、ブロイラーの育成技術、ワクチン、鶏舎の設計を現地の養鶏業者に提供し、日本の商社と共同でアメリカで開発したブロイラーの大量解体工場を建て、ブロイラーの大量解体と冷凍チキンの製造をおこない、タイから日本への鶏肉の大量輸入を開始した。
 この成功で中国でもコンチネンタル・グレーン社が進出した。配合飼料もカーギルやコンチネンタル・グレーンなどアメリカ資本が握り、従来のアジアでの養鶏方式が、アメリカのゲージ養鶏方式にとってかわられた。

 食糧危機を生む米国多国籍企業
 今回の鶏の集団死は、自然の摂理を無視し、数十万年かけてつくられた地上の生命とその法則にそむき、後先を考えない、ただ営利生産第一、もうけ第一を要求し、追いつめた結果でもある。米多国籍企業の方針と考え方を自然界や生命の法則に優越するものと錯覚し、きびしく罰せられたといえる。
 すなわち米多国籍企業がアジアの食糧危機を生みだしている。今回の鳥インフルエンザ感染が確認された養鶏場は、どこもアメリカの多国籍企業がからんだ大規模経営で、アジアの安い労働力を狙い、養鶏場をアジア各国に移し、そこで生産した鶏肉をマクドナルドなどの外食産業をつうじて世界に販売してきた。
 これはホルスタインの急速な成長や乳量の増加を追求して、草食動物の牛に動物性の肉骨粉などの配合飼料を食べさせ、ホルモン剤で急激に太らせ、乳房を巨大化させるなどの自然の摂理に反した結果あらわれたBSE問題と共通した内容をふくんでいるのである。
 今回の出来事は、米多国籍企業が展開する地球規模の食料戦略が各国の人人の生活と対立し、理論的にも行きづまりを見せていることを象徴している。成長と発展と消滅という内的な法則を持ち、生命と自然の悠久の歴史をつくりあげてきた自然界の摂理にたいして、効率やもうけという私的野望を対峙したスタンダードは、現実と乖(かい)離し、アジアの貴重な養鶏業を破壊し、人人の長年の食生活歴史と対立した。
 大規模ゲージの中で、生命法則の外部から、鶏肉の効率的収穫を目的にした働きかけは鶏の内部の生命活動の法則と乖離していった。この方式は鳥の生命活動を破壊してゆき、衰弱した鳥群は、抵抗力を低下させ、地上の衰弱したどの生命体にも訪れる細菌感染、ウイルス感染で生命活動が止められ、自然の摂理にしっぺ返しを受けた。
 その企業論理の具体化はニワトリの生命活動との矛盾の解決ではなく、矛盾の引きのばしであり、抗生剤などの対症療法の量的拡大と耐性菌との競争であった。引きのばされた矛盾はついに爆発し、大規模ゲージは大量死で終わった。
 これは牛や養鶏などの病気にとどまらず、現代医療においても先端医療の陰で増加する各種の難病の発生、放置される慢性病、下火にならず毎年のようにくり返されるインフルエンザの流行などにみられるように、共通した規範の限界というものを暗示させる。
 数千年もの歴史のある各国の民族性、地域性とつながる人間的特質を現実的なものとして尊重し、自然や生命の歴史を尊重し、それを基礎にしたグローバル化の研究が必要であり、現実の民族生活や文化と発展で得られた法則や真理を否定したグローバル化とは生命法則にも人人の生活にも受け入れられないものである。
 このようなよこしまなスタンダードは、みずから歴史の舞台からは引き下がらない。日本や世界各国の平和と真理を愛好する医療関係者の手で引きずりおろす必要がある。
                                              (新しい医療の会)

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