トップページへ戻る

投機集団の買占めで物価高騰
石油や穀物が金融商品に
               米国の金融破綻が震源    2007年11月5日付

 燃油代が高騰し、昨年来からの国際穀物相場高騰も加わって食パンも値上げ、カップ麺も、マヨネーズも、味噌も、ハム、ソーセージ、ちくわ、蒲鉾、缶詰、冷凍食品、菓子類にいたる食料品や、紙、ティッシュペーパーなど、身の回りの品品が値上げされている。世界的なインフレのきざしが日を追うごとに深まっているのである。原材料の高騰は全産業を直撃しているだけでなく、低賃金に加え法外な税金をはぎ取られている家計を襲っている。なぜこのような、とんでもないガソリン価格や物価上昇になっているのか。

 ガソリンは1リットル160円台に突入
 10月19日、ニューヨーク原油先物市場の時間外取引で、国際的な指標であるテキサス産軽質油の価格が、ついに1バレル=90jを突破するなど、市場最高値を更新した。これは3〜4年前の3〜4倍という高水準だ。ところがそんなものではおさまらず、同月31日には1バレル=96jをつけるなど、あり得ない領域まで押し上げられることとなった。冬場の暖房油需要期と重なって、相場はさらに上昇すると見られている。
 日本国内でも店頭のガソリン価格はレギュラーが1g=160円台に突入。狂気の沙汰ともいえる事態に、全産業が翻弄されている。日本ではガソリン価格のうち4割ほどは原油関税、原油税、揮発油税、地方道路税などの税金で、そこに税金の二重取りである消費税までかかって、国民が利用するときには2倍近い金額になっている。
 OPECは50万バレルもの増産を打ち出すなど、けっして原油が不足したわけではない。天井知らずで上昇し続けるのは、サブプライムローン問題に端を発した米国の相次ぐ利下げ、ドル安が主原因となり、米国債の含み損拡大を避けるために米国債を売却したヘッジファンドなどの資金が、雪崩を打って先物市場に乱入しているからである。
 世界的な余剰マネー(オイルマネーだけでも運用残高は2兆j=約230兆円に達しているとされている)が原油や穀物相場、信用力が高い金などに投資先を乗りかえ、相場の乱高下へとつながっている。先物買いによる差益を取ることが目的だ。サブプライム問題が深刻化した8月以後、日米欧の株式市場から逃げ出した投機資金は、値上がりが見込める商品市場に流れ込み、上昇をあてにした買いが殺到する事態となった。原油も穀物も実需では説明がつかないほどの高値であり、すでに「金融商品」と化していることを露呈している。

 小麦や大豆も価格高騰
 油と同様に深刻な様相を呈しているのが穀物相場だ。とくに顕著なのが、米国が地球温暖化問題を騒いで推奨するバイオエタノール(ガソリン代替燃料)の需要が増えたことで、原料となるトウモロコシなどの価格が上昇していること。家畜飼料でもあったので、牛肉や豚肉、鶏肉の値上げにもつながったほか、小麦、大豆にもその影響は波及した。
 世界の小麦輸出量の24%を占めるアメリカを中心とした国国で、小麦生産農家が「トウモロコシをつくった方が儲かる」と鞍替えする動きがあり、また主要輸出国であるオーストラリアでの干ばつ、欧州の不作が影響して、世界の小麦在庫は32年ぶりの低水準に落ち込んだ。供給量が減少する一方で、成長著しい中国・インドなどを中心に、経済成長にともなった食生活の欧米化によって需要は増えており、需要と供給のバランスが崩れた。
 ところが、ここには穀物需給のひっ迫を金儲けのチャンスとにらんだヘッジファンドなどの投機資金が流入して、価格はさらに釣り上げられることとなった。小麦価格の国際的な指標になっている米国シカゴ商品取引所では九9月28日、1ブッシェル(約27`)当り9・39jと史上最高値を更新する動きとなった。その後も高値止まりの状態は続いている。ヘッジファンドによる投機の動きが活発になったのは昨年秋頃からといわれ、マネーゲームが価格上昇の大きな要因になっている。
 日本で流通している小麦の約9割は外国産小麦で、国際相場の影響を受けやすい。また、日本国内では小麦価格を決める仕組みが変わったことも背景にある。現状では9割が輸入小麦であるが、その価格は政府が管理する仕組みになっている。商社を通じて全量を買い入れた政府が、そこに関税や管理経費など諸諸の額を加算して、製粉会社に売り渡す制度で、例えば大手商社が諸外国から1000円で仕入れてきた小麦は、政府、製粉会社という販売ルートを経由して街のパン屋さんが仕入れるときには、同じ小麦が8倍の8000円ぐらいの価格になる。
 今年4月、国は、製粉会社への外国産小麦の「政府売り渡し価格」を、それまでの年間固定制から価格変動制へと変更し、年2回(4月と10月)見直すことになった。この10月に10%の値上げとなったのもそのためで国際穀物相場や為替の動きにいっそう翻弄される構造にもなっている。
 そうして、業界大手の山崎製パンが24年ぶりにパン・和洋菓子など約500品目を平均8%値上げすると発表し、敷島製パンも食パンや菓子パンなど520品目を17年ぶりに5〜15%値上げ。フジパンも平均7%の値上げと続いた。即席めんでは、日清食品が七〜11%の値上げを来年1月から始めるほか、明星食品、サンヨー食品、東洋水産、エースコック、まるか商事、ハウス食品も値上げを発表。“カップヌードル”“チャルメラ”“うまかっちゃん”“赤いきつね”“サッポロ一番”もすべて10〜20円値上がりする。
 パスタ・小麦関連では日清フーズ、日本製粉、昭和産業が11月中旬から9〜17%の値上げをそれぞれ発表。食用油・味噌は10月1日から日清オイリオ、J―オイルミルズ、まるや八丁味噌が値上げ。その他食品を値上げした企業では伊藤ハム、日本ハム、丸大食品、プリマハム、はごろもフーズ、日本水産、ニチレイフーズ、ヱスビー食品、キユーピー、味の素、ヤマキ、明治乳業、森永乳業、カルビー、江崎グリコ、森永製菓、ロッテ、明治製菓などで、果汁商品やカレールー、缶詰、冷凍食品、ハム・ソーセージやちくわ・蒲鉾、チョコレート、コーヒー豆、チーズ、削り節にいたるまで、すべてが値上げラッシュとなっている。クリーニング料金やサランラップ、紙製品、タクシーや航空運賃なども上がる。
 原油にせよ、穀物相場の高騰にせよ、国民生活の隅隅に弊害をもたらす。自給率の落ち込んだ日本のもろさと同時に、グローバル化の波が直接に波及する経済構造をあらわしている。また、これが世界的な金融パニックに根をもった現象になっている。

 世界的な金融不安 サブプライムローンが発端・崩壊の危機に
 アメリカにおけるサブプライムローン問題を発端にして、世界的金融不安が高まり、世界の余剰資金が株式や不動産から、国際商品市場すなわち実体経済へと向かったことから大パニックに拍車がかかっている。世の中を騒がせている米国の低所得者向け高金利住宅融資(サブプライムローン)問題とはいったい何なのか。
 この問題は、今年8月初旬にヨーロッパで表面化した。サブプライムローンを織り込んだ証券が売れなくなり、資金難に陥ったファンドが営業を凍結し、慌てたECB(ヨーロッパ中央銀行)は948億。(約15兆4000億円)の緊急通貨供給をおこなった。ドイツ・IKB産業銀行もサブプライム関連への投資が焦げ付いて損失をこうむり、政府系金融機関から緊急融資保証を受けた。また、ゼクセン州立銀行は経営難に陥り、ドイツ州立銀行最大手のバーデン・ヴェルテンベルク銀行に買収されるなどの動きとなった。西欧の金融市場が、アメリカを震源地としたサブプライムローン問題によって大パニックに陥ったのである。
 しかしそれはヨーロッパだけにとどまらず、当然、震源地であるアメリカのヘッジファンドや金融機関も襲った。米連邦準備制度理事会(FRB)も940億j(約10兆4000億円)の通貨供給をおこない、相次ぐ利下げをおこなった。日本では株価下落と同時に円高が進むこととなった。日銀も通貨供給を増やして、欧米中央銀行と歩調を合わせた。
 アメリカのサブプライムローンの焦げ付きを発端にした金融パニックが全世界を巻き込んだ株価下落、金融不安を引き起こしたのである。しかしその対応としての米国の利下げや、各国中央銀行による通貨供給増大という対策は、一時的に事態を沈静化させるとしても、金融危機の直接の原因となる金融バブルをさらに増幅させ、世界金融崩壊の度合いをより深めるものにもなっている。
 サブプライムローンというのは、返済能力の乏しい低所得者層を対象にした住宅ローンで、借りた当初の返済金利を低く設定し、一定期間がたつと金利が跳ね上がる仕組みで、住宅ブーム末期に大流行し、04〜05年には貸し出し競争まで起きた。利用者の割合は白人は20・4%であるのにたいして、黒人は55・3%、ヒスパニックは46・6%。低所得者がはかない夢を追いかけて、返済が滞ったいまでは家を追われている。
 その住宅ローンを貸し付けた金融機関は、ローンを証券化して売り出し、債権を回収するという手段を使った。その証券を投資ファンドや投資銀行に販売し、買い取った投資ファンドはこの証券を担保に金融機関から融資を受け、さらに自己資本の10〜20倍もの証券投資をおこなっていた。これらの証券が低格付けローンを適当に組み合わせたことで高い格付けを得て、そこへの投資が全世界的規模に広がるという構造だ。債務を証券化して、さらに証券化するというアメリカ得意の「金融工学」というものをやって世界の金を吸収した結果、実体を離れた擬制資本が、バカみたいに大膨張していったのである。そして、そのもとであるサブプライムローンの借り手のローン返済が滞って、虚構のマネーゲームは大崩壊することとなった。住宅ローンの証券化商品は世界中の金融機関が購入していた。
 05年〜06年にかけて契約したサブプライムローンは、これから高金利に切り替わる時期を迎えていく。06年だけで、約6000億j(約68兆円)もの残高がある。全米住宅ローン残高は、約10兆j(約1150兆円)でそのうちサブプライムローンは1兆3000億j。返済焦げ付きや自宅の差し押さえ件数が急増し、事態は一段と深刻になることが想定されている。来年末までに低所得者層など150万世帯があらたに返済危機に陥ると見られている。
 米メリルリンチは7〜9月期決算で、サブプライム関連の損失が79億j(約9000億円)に膨れあがり、22億4100万j(約2500億円)の赤字に転落。米大手銀行・証券10の直近の四半期決算だけでも、関連損失の合計が230億j(2兆6300億円)にもなった。そのうちシティグループなど七社が減益あるいは最終赤字となった。国際通貨基金(IMF)は、金融機関などに最大2000億j(約23兆円)の損失をもたらすと試算している。しかし専門家からは、リスクがどれだけあるのかは見当がつかない状況で、これからさらに深刻化すると見られている。

 大手は膨大な余剰資金
 今回の問題は、とんでもない金融派生商品に世界的規模の投資が殺到するほど、世界に余剰資金が溢れていること、その金を生み出す産業部門の生産力が発展し、金融機関や大企業のもとには膨大な資本が蓄積されていることを表している。そして、資金過剰をもたらしているのが、日本の超低金利や円通貨供給の増大、それに伴うドル買いが大きな要因であり、世界的には貿易黒字で最大の外貨準備をため込んでいる中国や、原油価格上昇によって潤沢なマネーを蓄えている産油国が、その資金の多くを対米投融資に運用していることも要因になっている。その金に投機集団がまぶりついて、全世界をまたいだギャンブルをやっているのである。
 グローバル化に組み込まれた、日本との関係、対米従属の問題を突きつけるものとなっている。

トップページへ戻る