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TPP以上の譲歩米国に宣誓
破綻後も批准目指す意味
              日米FTAで丸裸にさせる危険性    2016年12月12日付
 
 安倍政府は9日、環太平洋経済連携協定(TPP)承認案と国内対策などの関連法案を参議院本会議で強行可決した。TPPはそもそもアメリカのオバマ政府主導で進められてきたが、先のアメリカ大統領選で大きな争点となり、圧倒的多数のアメリカ国民の反対世論のなかでクリントンもトランプも「TPP反対」を掲げざるをえず、「大統領就任時にTPPからの脱退表明」を公約に掲げたトランプが当選した。TPPの発効のためにはアメリカの参加が不可欠であり、TPP破たんは明白になっている。そのなかでなお安倍政府が参加12カ国のなかで先頭に立ってTPPを承認した。TPP発効が不可能であることが明白な段階になってもなお安倍政府がTPP承認を強行したのは、トランプ次期大統領がすでに公言している米日自由貿易協定(FTA)でTPP以上に譲歩することも辞さないことを表明し、対米従属を一層深め国益を差し出すことの意志表示にほかならない。
 
 関税撤廃を不可逆的な公約に

 TPP参加12カ国で議会承認を終えたのは、ニュージーランドに次ぎ2番目となる。ただしニュージーランドは11月15日の議会承認後に総督の署名で正式承認となるはずであったが、その前にTPP推進の旗を振ってきたキー首相が5日に辞任したことで、正式承認は絶望的になっている。
 TPPの発効には、アメリカの批准が不可欠だが、トランプは来年1月の就任初日にTPP脱退を通告し、各国と2国間貿易交渉を進める方針を表明している。
 安倍首相は9日、トランプ次期米大統領の離脱表明で発効が見込めないなかでも日本がTPPを承認する意義について「日本がTPP並みのレベルの高いルールを、いつでも締結する用意があることを(他国に)示していく」狙いがあると説明した。TPPで日本は農産物での高水準の自由化などを受け入れたが、今後進める他の貿易交渉でも、TPPの合意水準を議論の土台にするとの考えを示し、「世界が目指すべきルールだと、しっかりと国の意志を示していくことは重要だ」と強調した。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構想にもTPPの合意内容が「強い影響を与えていくことになる」とのべた。
 日本は2013年7月にTPP交渉に加わり、15年10月に大筋合意。農林水産物では82%で関税を撤廃する高水準の自由化を受け入れた。国会決議で「聖域」とした重要品目でも、コメは計7万8400㌧の輸入枠を新設、牛肉は関税を現行の38・5%から9%に削減することを容認した。農産物以外の分野でも医療や公共事業における外資の参入、ISDS条項にもとづき外資が国を相手どって訴訟を起こす権利など、国民生活の全般にかかわる分野で多国籍企業の参入を大幅に認める内容で合意した。
 安倍政府はTPP承認を強行することで、今後欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や、RCEPなど他の貿易協定でも、TPPを日本の市場開放の基準とする方向である。さらに、トランプ政府が表明している日米FTA交渉でもTPPを上回る水準の市場開放を求めてくることは必至であり、これにこたえる用意があることをアピールしたものである。
 こうした狙いを含むTPP承認強行に対し専門家は厳しい警鐘を鳴らしている。TPP参院特別委参考人質疑での醍醐聰氏(東京大学名誉教授)の発言の内容を要約して紹介する。

 「二国間協議の入口」 醍醐・東大名誉教授

 もはや発効が見込めなくなったTPP協定だが、それでも国会で承認するということは、ただ無意味であるというにとどまらず、危険な行為だ。協定案をスタートラインとして、2国間協議に入って行くことがどうして危険なのか。
 全国の約850人の大学教員、名誉教授などがつくった「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」が11月28日に緊急声明を発表した。「死に体のTPP協定をわが国が国会で承認しようとするのは、無意味であるというにとどまらず、危険な行為である。協定文書を国内で承認すれば、仮にTPPが発効に至らないとしても、日本はここまで譲歩する覚悟を固めたという、不可逆的な公約と受けとめられ、日米2国間協議の場で協議のスタートラインとされる恐れが多分にある」。 この点を強調したい。 これは安倍首相自身が国会でいっている。協定案が国会で承認されるならば、「日本がTPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があるという国家の意志を示すことになる」と明言している。TPPの原理主義で例外なき関税撤廃に向かってひたすら走り続けるということだ。
 そのようなTPP協定を国会が承認するということは、そもそもなぜ危険なのかというと、危険に警鐘を鳴らした国会決議に背いているからである。ある議員が「日本は他国に比べて多くの例外を確保した」といっていた。他国がほぼ100%関税を撤廃したのに対して、日本は全品目では95%、農林水産品では82%という。
 だが重要5品目594ラインで、そのうちの28・5%170品目で関税を撤廃している。また、269品目45・3%で税率削減か新たな関税割当をしている。このような内容抜きに、よくやった! ととてもいえるものではない。しかもこの協定案がファイナルではない。これからむしろ、どんどんとTPPバスが先へまっしぐらに走り続ける。協定案の附属書には随所に協議、協議という言葉が登場する。セーフガードについても牛肉は16年目以降4年間連続で発動されなければ廃止。豚肉は12年目で廃止。軒並み廃止だ。「関税の撤廃時期の繰り上げについて検討するため、協議を継続する」という事も明記している。関税を下げる、撤廃の方向にひたすら走る協議だということは、動かせない事実だ。
 さらにTPPのなかに2国間協議の入り口がリンクされている。TPPを承認するということは、2国間の協議に入ることを約束するということになる。あるいは、TPPが発効しなくても安倍首相の言葉を借りれば、それを「国際公約として胸を張って約束する」ということだ。
 以上、醍醐氏の発言要旨にもみられるように、発効不可能であるにもかかわらず安倍政府がTPP承認を強行したのは、そこに含まれる内容を今後もアメリカの多国籍企業に保証するためであり、さらにはより一層の譲歩をも約束する態度表明にほかならない。

 

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