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TPPの先取りで公約を全面覆し
             野田政府 派遣法、郵政、消費税、年金も  2011年11月18日付

 民主党・野田政府がTPP(環太平洋経済連携協定)参加を急ぎ、総選挙で国民に約束した公約の全面覆しに拍車をかけている。「米軍再編見直し」「普天間基地の県外移設」を軸とする日米同盟、軍事関係は真っ先に鳩山が放り投げたが、野田はさらに輪をかけて労働者派遣法改正、郵政民営化見直し、消費税増税据え置き、年金制度充実、医療・介護の再生など全分野にわたる覆しへすすんでいる。東北で震災復興を妨害し外資が略奪する市場にかえる動きとセットですすむ、TPP参加先取りの暴走に対し、各分野で「アメリカのいいなりになって国をつぶさせてはならない」と国の進路をめぐる共通要求が下から噴出している。
 
 製造業派遣禁止も削除 「派遣法改正案」

 野田政府は国会審議が止まった状態にある「労働者派遣法改正案」について「製造業派遣の原則禁止」などの規定を削除すると明らかにした。禁止規定の削除で公然と野放しになるのは製造業派遣、契約期間が30日以内と短い日雇い派遣、仕事があるときだけ集めて働かせる登録型派遣。どれもリーマンショック以後、派遣労働者が、使い捨てによる失職、住居を追われネットカフェ難民になるなどし「正社員にせよ」と声が上がっていたものだ。
 労働行政に携わる関係者は、「登録、製造、日雇いの派遣を認めれば“改正”でもなんでもない。派遣労働はオブラートに包まれてわかりにくい面もあるが、要するに派遣業者が人を買って働かせる人買い業であり人身売買だ。だから戦後一環して派遣労働自体が禁じられてきたし、本来は廃止しなければならないものだ。これにTPPが適用されれば外国人や外資が入って来るし、派遣先も国内だけではなくなる。今派遣労働の規制を削除するのは、単にこれまでの派遣法が継続するだけにとどまらない」と警鐘を鳴らす。自動車産業の労働者も「派遣労働ができてから求人全体の条件が悪化したが、TPPで外国人労働者や外資が参入すればそことの競争でまだ給与水準は下がる。生活できないから日本の若者は今より働く場がなくなる。雇用を確保するのが必要なときになぜこんなことをするのか」と怒りをあらわした。民主党は公約の製造・日雇い派遣禁止の覆しとともに「最低賃金引き上げ」「規制緩和の適正化」なども逆方向へ突っ走っている。

 郵政株売却へ道を開く策動 郵政民営化見直し

 「郵政」も民営化の全面見直しや株式売却凍結を掲げていたが、あからさまな覆しに局員の憤激が高まっている。「復興財源にあてるため郵政株を売却する」と宣伝するが「株式売却に道を開けば外資に300兆円を超す郵貯、かんぽ資金が食い物にされるのは時間の問題」と強く警戒されている。
 小泉劇場で強行された当初の「郵政民営化法」は郵政株をすべて売却できるようにし、郵貯・かんぽ2社の株式を2017年までに完全売却するとしていた。だが「外資の食い物にさせない」「僻地の局や地域つぶしは許さない」と郵便現場や地域から猛烈な批判世論が噴き上がるなかで、自民党政府はたたきつぶされ、09年12月に「株式売却凍結法」が成立した。同法は「法律で定める日までの間、その保有する日本郵政株式会社の株式を処分してはならない」と規定し現郵政民営化法で規定した株式売却に歯止めをかけてきた。
 しかし昨年10月、菅政府が「五分社化を見直し業務をしやすくする」と郵便現場の意見を吸い上げる装いで新たに「郵政改革法案」を国会に提出。ここに「持ち株会社である日本郵政が金融2社もふくめ議決権の3分の1超の株式を保有し続ける」と条件をつけて、事実上六六66・6%に上る郵政株売却を認める内容をもぐり込ませた。この改革法案とセットで「株式売却凍結法」を廃案にするのが今審議されている「郵政民営化見直し」である。「郵政完全民営化の手直し」というが、内実は小泉でもできなかった郵政株売却に道を開き、アメリカの市場開放要求を具体化するものである。

 「据置き」の公約破棄し8%消 費 税

 消費税ももともとは「現行の五%を据え置き、今回の選挙(09年総選挙)で付託された政権担当期間中に税率引き上げはおこなわない」というのが政権公約。だがそれから一度も総選挙で審判を受けないうちに消費増税を具体化している。
 安住財務相は先月、消費税増税の実施に向け、準備法案を来年1月招集の通常国会に提出し、2013年にも消費税増税に踏み切ると表明。消費税率は3%引き上げて8%にする案が有力視されているが、経団連など財界は18%にまで上げるよう要求している。消費税は国民がなにか物を買うたびに税金を徴収するもので、1%引き上げれば1兆5000億円規模の増税となり、3%引き上げれば年4・5兆円をこす大増税となる。だが輸出企業は「外国に売った商品からは消費税が回収できない」として、輸出額の五%は還付される。大企業は消費税が上がるたびに還付金が増えもうかる仕組みで笑いが止まらない状態となっている。
 税金関係では「ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率を廃止し2・5兆円の減税」などの公約も放棄。軽油引取税にいたっては税をなくすどころか、免税制度を廃止して1g32・1円もの負担をかぶせるもので、農漁業、海上交通、掘削業などを中心に反対の行動が活発化している。

 医療や介護も問題は未解決 医師や介護士は不足

 年金は「“消えた年金”問題の解決にとりくみ厚生年金、国民年金、共済年金を一元化して国民全体の老後を保障する」とし、月額7万円以上の年金を受給できる年金制度(現行は最低保障が六万円)を作ること、年金受給者の税負担軽減が公約だった。ところがそれを守らず、野田政府が打ち出したのはさらなる年金受給年齢の引き上げ。現在進行中の3年に1歳引き上げて65歳を支給開始年齢とするとしていたのを、2年に1歳引き上げるように変え、支給開始を68〜70歳にまで引き上げる。年金支給を遅らせて「掛け捨て」を増やす対応となっている。
 「医療・介護の再生」では「後期高齢者医療制度を廃止」「医師数を1・5倍にする」「介護労働者の賃金の月額4万円引き上げ」「療養病床削減計画の凍結」を公約にしたがどれも問題は解決していない。
 後期高齢者医療は「いずれ死ぬ」という考えで医療費を抑制していく制度をすぐに見直すはずだったのに「2013年度に新制度に移行する」として先延ばし。今も「当面移行を先送りする」として引き延ばしに終始している。医師不足も若干定員数を増やすなどしたが解消せず、原発震災を受けて東北の医師不足は以前にも増して深刻化している。患者がたらい回しにされて死に至るなどの悲劇は絶えない。
 そのうえに社会保障改悪で公的な社会保険庁を解体した悪弊が広がっている。もともと保険料も給付も全国一律だった政府管掌健康保険を廃止し、都道府県別の協会けんぽにし各都道府県に丸投げした。医療費削減を競わせるために各都道府県でバラバラの保険料に変えたことで、労働者や中小企業の負担が増え病院にも行きにくくなっている。
 介護は介護報酬を引き上げるどころか、介護型療養病床の廃止にむけ介護報酬を引き下げる動きになっている。老人保健施設についてはベッドの回転率がよい施設の報酬を引き上げ、そうでないところを引き下げるなど、入所者の早期追い出しを競わせている。また介護保険法改悪で要支援を介護保険の給付対象から外して要支援者を切り捨てたり、今まで徴収していなかった特別養護老人ホームの相部屋の部屋代を徴収(1人当り月8000円程度)させるなど負担ばかり増えている。
 そして介護労働者の劣悪な条件が改善されず、離職者が絶えないことに乗じて、介護・医療現場ではインドネシア、フィリピン、ベトナムなど外国人実習生受け入れを拡大している。

 米国産牛肉は輸入規制緩和 食料自給向上も放棄

 農業政策をみても「主要穀物では完全自給化を目指す」「2020年の食料自給率を50%にする」などの公約をすべて破棄。公約破棄だけでなく、外国の農水産物を洪水のように輸入させるTPP参加を表明したり、米国産牛肉の輸入規制緩和をオバマに表明するなど、反対に外国産農水産物の輸入拡大で暴走している。
 輸入牛肉の対応をみても日本は全頭検査を実施し狂牛病が出回らない体制をとっているが、アメリカはいまだにその体制作りを拒絶し、どんな牛が入るかわからない。だが小泉時期でも「生後20カ月齢以下」としていた規制を「30カ月齢以下」に広げる。狂牛病の危険が高い高齢牛を無検査で輸入して国内の畜産農家や食肉業界をつぶし、食の安全・安心など国の根幹を崩す突破口にしようとしている。

 アジアとの関係破壊で動く 日米同盟を最優先

 こうしたなか民主党がいち早く公約を覆した日米同盟を柱とする軍事強化が、沖縄や岩国で露骨になり県民との激突になっている。もともと民主党は「対等な日米関係」といい、日米地位協定改定、思いやり予算の削減、普天間移設問題など米軍再編計画の見直し、東アジア共同体構想でアジアとの関係を深める、などの公約を掲げていた。だが普天間基地移設問題は結局、自民党と同じ辺野古への新基地建設計画に回帰し、年内に環境影響評価書(アセスメント)を出すため、沖縄県民の意志を無視して勝手に調査を進める有様。厚木基地艦載機の岩国移転も、愛宕山を米軍住宅用地として買い取りに乗り出している。さらに東北震災の復興がせっぱ詰まっているのに米軍の思いやり予算は年間1858億円で例年並みに確保。最近は沖縄や九州で自衛隊が米軍と一緒になって離島を奪う大規模な軍事演習を繰り返してアジアとの関係ぶちこわしに動いている。こうしたなかで動く米軍再編計画は沖縄の海兵隊司令部をグアムに移転させるだけでなく、対中国戦争を想定してオーストラリアにも分散させ、前線基地である日本をミサイル攻撃の盾にして戦争をやるものであり、日本をまるごと核戦争の火の海に投げ込むものである。
 こうして派遣労働、郵政、増税、年金、医療、介護、日米同盟など全分野で進行する野田政府の公約覆しと暴走はどれも、アメリカが日本の富を奪い尽くして食い物にするTPPの先取りであり、日本をアメリカがアジア侵略戦争の盾にする具体化となっている。野田政府の暴走は国民を説得し動員する力を失った脆弱な姿も露呈しており、独立・平和という国の進路をかけた全国的なたたかいは必至の情勢になっている。

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