トップページへ戻る

全面的な国売飛ばしと対決
               TPP 製造業も医療も農業も潰す     2013年1月9日付

 TPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加をめぐって、アメリカのいいなりになって日本の富をまるごと差し出す道を暴走しようとする安倍政府・財界と、日本民族の将来のためにTPPに反対する広範な国民世論とが大激突する情勢になっている。安倍政府は発足早早に訪米しアメリカに忠誠を誓うため、今月28日の通常国会前の日米首脳会談を打診してきたが、TPPなどで具体的進展が望めないとしてオバマ政府にはねつけられた。昨年の総選挙で自民党は、政権公約に「聖域なき関税撤廃を前提にするかぎり、TPP交渉参加に反対」を掲げて国民を欺いたが、オバマ政府に一喝されるとすぐに「交渉には参加しながら守るべきものは守る」(自民党政調会長・高市)と本性をあらわし、財界も「TPP参加が遅きに失する。訪米を早く実現し、参加を表明せよ」(経団連会長・米倉)と尻をたたいている。一方、マスメディアは報道しないが、農協や医師会が全国的なTPP反対の運動を起こし、各分野の知識人が各地を講演して回り、八日には官邸前での「TPP断固阻止」のデモ行進がおこなわれるなど、国民の大運動になっている。戦後の対米従属の鎖を断ち切ることをめざし、「安保」破棄の大運動に合流する様相になっている。
 
 米国の対中国包囲戦略の一環

 2期目のオバマ政府は、TPPによる中国封じ込めのブロック経済政策を強めている。現在、TPPの原加盟国・交渉参加国は11カ国(中国や韓国は参加の意志を表明せず)で、これに日本が加われば、市場規模は日米両国でその81%を占める。アメリカから見ればTPPの55%が日本市場となる。TPPは、工業製品や農産物、サービスなどすべての関税を全面撤廃する(日本側の関税自主権の放棄)とともに、医療や保険、労働、金融、不動産、政府調達、知的財産権などの規制緩和による非関税障壁の撤廃である。つまり、小泉・竹中の新自由主義改革を全面的に徹底させ、日本の富を食いつぶすのが狙いである。
 そこにはアメリカの深刻な危機がある。オバマ政府は減税打ち切りと歳出削減が重なる「財政の崖」を回避したといっているが、削減を2カ月延期するなど先送りしたにすぎず、同じ時期には政府の借金残高が法定上限に達し、2年前と同じ債務不履行の危機に直面する。5年前、アメリカの住宅バブルが崩壊してリーマン・ショックとなり、その後財政を投入して金融機関救済に動いたが、一方で職がなくフードスタンプで暮らしている人は4000万人ともいわれ、経済格差はますます拡大している。アメリカ資本主義が歴史的な瓦解に向かって進んでいることは明らかである。

 食料自給率13%の危機 国土も崩壊へ

 TPPに反対する運動が全国に広がるなかで、それが農業だけの問題にとどまらず、生活の全分野で民族的な利益を根こそぎ売り飛ばすものであり、日本社会の土台を根底から崩すものであることが広く暴露されてきた。
 国内の農業生産を維持し食料自給を確保することは、独立国として最低限の条件である。ところが日本の場合、戦後アメリカによって農産物自由化が一貫して押し付けられ、現状の39%という食料自給率自体が先進国では最低レベルである。TPPに参加すれば、それは13%という壊滅状態になる。食料という国民の生殺与奪の権を外国に握られるとともに、農林業の衰退は山や田畑の荒廃につながり、水害を防止し豊かな水を提供する機能も失われ、国土崩壊の危機となる。
 すでに米国政府は、TPP交渉参加の前提条件として、米国産牛肉の輸入規制緩和を日本に迫り、昨年11月、野田政府が受け入れることを表明した。2003年、アメリカで狂牛病が発生したさい、日本は米国産牛肉の輸入を停止したが、米国政府の圧力で05年、「月齢20カ月以下」に限って米国産牛肉の輸入を再開した。だがそれが、米国の出荷牛の1割にすぎなかったため、米国政府は出荷牛の9割をカバーする「月齢30カ月以下」に緩和せよと迫り、それを今回のませたのである。アメリカはTPPで、狂牛病感染の疑いが濃厚な牛肉を大量に日本市場に持ち込むとともに、日本の畜産農家がうち立ててきた「全頭検査」も「輸出拡大に不都合」といってやり玉に上げようとしている。

 投資は外資の規制徹廃 産業空洞化にも拍車

 TPPは製造業の海外移転・産業の空洞化をいっそう進め、日本を失業社会にする労働問題でもあることに、研究者たちは注意を喚起している。
 TPPは、農産物貿易の自由化だけを目的にしているのではなく、自由貿易圏内の労働者の国境をこえた移動の自由化を目的にしている。それはアジアの低賃金労働者が大量に日本にやってくることであり、そのために経団連など財界は「日本の移民国家化」を奨励している。その結果、植民地なみの労働条件が強要されることになり、日本の農村も都市も失業者だらけになる。
 米国政府はTPPの「投資」分野で、外資系企業に対する規制を撤廃させ、外資を国内企業と同等に扱わなくてはならないという「内国民待遇」を求めている。米国の投資家やファンドの投資戦略は、日本のどんな企業を買収し、いかに転売して短期で最大のキャピタルゲイン(売却益)を稼ぐかであるが、すでに日米投資イニシアチブなどでは、米国の投資家による日本企業の買収をやりやすくするためとして、「確定拠出型年金の早期導入」「有料職業紹介事業の規制撤廃」「労働者派遣事業の自由化」「労働基準法における労働者の権利や福利の後退」を求めてきており、TPPはその延長線にある。

 米国式の自由診療拡大 医療分野

 TPPは医療の分野でも、すべての国民が医療を受けられることをめざす国民皆保険制度を崩壊させ、金のある者だけを対象にするアメリカ式の自由診療拡大となる。
 米国政府は80年代から、日本に混合診療の全面解禁、株式会社の医療参入、薬価引き上げを求めてきた。現在日本では、医師の手術料も処方薬の価格も、厚労省が診療報酬として全国一律に定め、病院や製薬会社が自由に決めることはできない。ところが混合診療が認められると、公的保険が適用される保険診療とともに、保険外で、病院や製薬会社が価格を自由に決められる自由診療ができることになる。
 アメリカでは医学の進歩である高度な手術も新薬も、すべてその特許を握る独占大企業のもうけの道具である。TPPでこれを日本にも広げようとしており、米国企業が特許を持つ手術は日本では制限されるようになり、米製薬会社が医薬品価格の決定権を持つようになる。現在、新薬の特許が消滅した後の後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、新たな臨床試験が不要とされ安価で提供できるので、それによってHIV治療薬の価格は最初の1%にまで下がって世界各地のエイズ患者の命を救ったといわれるが、アメリカはTPPで特許を含む知的財産権の保護強化を要求しており、今後は安価での入手が困難になると懸念されている。
 混合診療の全面解禁によって自由価格の医療市場ができれば、外資が一斉に参入し、公的医療保険の給付範囲の縮小となる。だが外資を含む株式会社の経営は、コスト優先で乱診乱療が広がり患者の安全が脅かされ、不採算な診療科・部門・地域からの撤退や医療経営自体からの撤退がおこり、患者の選別や囲い込みが起こることが危惧(ぐ)されている。アメリカでは現在、約4000万人が無保険であり、年間四万人以上が医療を受けられずに死亡しているが、日本の公的な医療を崩壊させアメリカと同じ医療後進国となることに、日本の医療関係者は強く警鐘を鳴らしている。

 郵貯資金の略奪も狙う 郵便局も潰す方向

 アメリカはTPPで、「金融」と「投資」を重視している。それは、日本の1491兆円にのぼる個人金融資産、そのなかでもゆうちょ・かんぽ資金267兆円という国民資産をヘッジファンドなどが略奪することが狙いである。
 アメリカは小泉内閣に郵政民営化を実行させて以降も、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険会社に対して「日本政府が100%出資という暗黙の政府保証があり、民間と公平な競争条件が確保されていない」と攻撃してきた。
 TPPに参加すれば、郵政の完全民営化(株式売却)を要求してくるのは明らかである。51%の株式を取得すれば、267兆円の金が自由に使えることになる。現在、ゆうちょ資金の74%、かんぽ資金の約70%を日本の国債で運用しているが、この資金を米国債などに変更することも可能になる。
 現在全国で2万4500局ある郵便局のうち、特定局が1万8900、簡易局が4000あまりで、その46%が銀行や農協・漁協のない過疎地の町や村にある。完全民営化になれば、こうしたもうからない地域から撤退していくことは必至であり、地域の住民にとってさらに困難が増すことになる。
 ある研究者は、米通商代表部が農協、漁協、全労済、県民共済など協同組合組織が運営する保険部門に、民間保険会社と同じ規制基準の適用を求めていると指摘する。協同組合の保険は、身元がわかっている特定多数による保険であり、不特定多数による民間の保険よりもはるかにリスクが低く設定でき、したがって掛け金(保険料)は安く、共済金(保険金)は高くできる。これを参入の障害と見たアメリカの保険業界が、規制を撤廃させ、総資産46兆円のJA共済市場などを開放せよと迫っているのである。

 国益放棄し外資を優先 ISD条項

 さらにTPPのなかでは、「投資家対国家間の紛争解決」条項(ISD条項)が、その国の国家主権をも剥奪する「治外法権」の侵略条項として問題視されている。
 ISD条項では、その国の法律や制度で不利益をこうむったとみなした外資が、その国を相手取って訴訟を起こせる権利を認めている。この条項によって、環境保護や有害物質の規制、食品や医薬品などの安全規制、消費者保護のための規制など、国民の生命や財産を守るための政府の規制でさえ、「投資家の利益を損なった」という理由で外資に訴えられ、巨額の損害賠償を命じられることになる。しかも訴訟を受けつける先が、米国人が総裁を独占し続けている世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターである。紛争案件のうち、ほとんどが米国企業による相手国政府への訴えであり、米国政府が訴えられたわずかな例のうち米国政府が負けた事例はゼロである。
 一例として、メキシコ政府は、メキシコで有毒廃棄物処理施設の建設をおこなおうとする米国のメタルクラッド社に対して、住民の健康被害をもたらすとして廃棄物処理の許可を取り消した。これに対して同社は提訴し、メキシコ政府が損害賠償として同社に1670万j(約13億円)を支払った。
 アルゼンチンで民営の労働災害保険を運営する米国保険会社コンチネンタルカジュアルティ社は、アルゼンチン政府が財政危機への対応としてとった財産の国外移転の制限、通貨切り下げ、国債の債務返済繰り延べの政策で経済的不利益をこうむったとして提訴。裁判ではアルゼンチン政府に、損害賠償金280万j(約2億2000万円)の支払いが命じられた。
 その他米国のセンチュリオン健康会社が、カナダ政府を相手取り、「独占的な国民皆保険制度によって米国の民間企業に損害を与えているのは、政府独占を制限するNAFTA違反」として、1億6000万j(約128億円)の損害賠償を求めて提訴した。

 日本の独立が根本問題 富根こそぎ奪う米国

 以上のように、TPPはアメリカによる日本の富の完全な食いつぶしであり、日本社会を根底から破滅に導くものである。そして、オバマ政府のTPPによる中国封じ込めのブロック化は、アジア重視の「新軍事戦略」と一体のものである。アメリカは戦後、日本を一時的に肥え太らせたうえで富を根こそぎ奪いとり、果ては対中国の原水爆戦争の盾にして日本全土を廃虚にするたくらみを進めている。
 そのことは、日本で失業をなくし工業や農漁業を振興しアジア諸国との貿易を発展させるうえでも、医療や福祉を充実させ安心した生活を送るうえでも、なにより将来にわたって戦争を阻止し平和を実現するうえでも、アメリカへの隷属の鎖を断ち切って日本の独立を勝ちとることが根本的な問題としてあることを教えている。さまざまな分野でたたかわれているTPP反対の行動を一つに合流させて大きな力にするとともに、全国民的な規模で民族的な固い団結によって「日米安保条約」破棄の大運動を巻き起こすことでありそれによってのみ勝利することができる。今、その機運はかつてなく高まっている。


トップページへ戻る