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町議主導の低レベル推進選挙
上関町長選挙
              「楽勝」「圧勝」叫ぶ不思議    2007年9月28日付

 上関町長選挙は中日を過ぎ、投票日を迎えようとしている。選挙戦が始まって、あらわれた様相を観察しながら町民の論議が発展している。異色を放っているのは推進派柏原陣営が始めた主張である。「楽勝」という空気を振りまきながら「原発の賛成、反対で争うのはやめて、みんな推進で一致して町づくりを」とか「圧勝する」というもので選挙常識を超えたすごい主張となっている。反対派山戸陣営は初め田舎ものをバカにしたような姿勢の屁理屈だと批判されたが、「原発をなくして町民が団結できるようにする」とか、「若いので経験がないが、皆さんに教えてもらってがんばります」といった姿勢に変わっていくことが喜ばれている。
 柏原陣営の異例の「圧勝」訴えが示す第1の問題は、これまでの6対4ではだめで、県議選の65%対35五%以上、7対3ほどにしなければ原発計画が進まないと見なしていることである。それをよく考えると、中電なり国、県の全国的な事情として、上関が現状維持などでは断念せざるをえないという意味であり、推進が危機にあることを示している。
 直接には柏崎地震があり、原発の耐震対策は抜本的な見直しが避けられない。さらに米軍岩国基地の大増強計画があり、爆破攻撃、ミサイル攻撃対策も加えざるをえない。最大の電力会社である東電ですら、電力自由化のなかでの地震で、経営がどうなるか心配されるほどである。島根であがいている中電にとって、上関で建設する無謀さは明らかとなっている。町内推進派としては、圧勝で町民全部が原発を引き留める格好にしなければ逃げてしまうという関係にあると判断せざるをえない。
 「7対3の圧勝」はまた、反対票の4分の1を推進の票に変えるという「壮大」なプランである。それは「室津が崩れた」「祝島が崩れた」というのを根拠にしている。反対派議員が裏切ったから、町民の反対もつぶれたという思いこみを根拠にしている。万事下下は議員のいうとおりになるという思いこみである。これも欲と願望が先行したもので、直接民意を確かめた形跡があるわけではない。
 さらに「推進派圧勝」の叫びは、「反対派」幹部側からの候補辞退・無投票作戦にあらわれた「敗北必至」の情勢認識と共通している。これが相呼応して、町民にあきらめを誘う効果を期待していると思われる。

 足し算だけで引き算がない 「圧勝」論の欠陥
 「圧勝」論の決定的な欠陥は、推進票から反対票に移る部分の計算がないことである。足し算ばかりで引き算がない。欲だけが走りすぎているという点である。選挙戦があらわした推進派の様子は、下の方の推進組織がいままでのように動いていないことである。町民の原発離れがひじょうに進んでいることである。上のものがぐるになって町民をだまし、1部のものだけがいいことをして、町民はひどい目にあったとの世論は大きい。
 選挙をやっているのは一族と議員だけ、一方で「圧勝」といいながら、「少数精鋭でやる」という。これも選挙常識では考えられないことをいっている。利権をもらうのに仲間にいれないという感覚を選挙に持ちこんでいるという不思議である。
 そして推進派の分化が目立っている。推進に熱心なのは元「反対派」の看板を掛けて人を「銭ボイト」といっていた部分の転向者組である。これは彼らから「銭ボイト」といわれた古くからの推進派からは「がまんならない」といわれる関係にある。町内業者も、町の事業は特定業者の一手請負で、多数は排除される関係になり、原発事業といっても町外業者ばかりで矛盾は深刻である。さらに定期的なビラ配りなどで日当をもらって動いている部分と電話代もポスター貼りも今度はカネが下りないと不満を持つ部分との矛盾もある。推進組織が動かないのは、カネが下りないのがもう1の面だとも語られている。
 柏原陣営の自己宣伝は、中電が三3億円の協力金を出し、国が25億円を出すというものである。しかしこれまで、原発の特別交付金は30億円だが、そのほかに国、県からの補助事業で年間20億円あまりの事業をつづけてきた。栽培漁業センターが30億円とか、室津の埋め立てが10数億円、一連の漁港整備でも数10円など、通常の補助事業として数100億円を出している。中電も400億円を使ったといっており、それらをあわせたら1000億円近くが出たことになる。しかしそれは町民にとってはどこへ消えたかわからない。25億円の話も、選挙で圧勝が条件となり、計画の進捗に応じて出るものと見られるが、出たとしてもこれまでの数100億円で寂れたことと比較するならはした金であり、一部の利権にはなっても町民にとって役に立たないことは明らかである。

 中電も県も動かす形跡なし 推進選挙の特徴
 今度の推進派選挙戦があらわす特徴は、これを仕切っているのは町議レベルの知恵であり、かつてあった中電のGHQ的CIA的なプロのレベルではないということである。中電はかつて町中の民家に入りこみ、町民の個人情報を収集し町外、県外まで手を伸ばして町民を脅しつけ、選挙戦の主役となっていた。そして緻密な情勢の分析と作戦について町内推進派に徹底して動かしていた。片山体制はその上に乗っかって選挙をしていた。いまやそういう形跡がない。
 中電としては、80年代の時期は中電から広報のエリートなどがやってきて、まさに中電主導で推進をやっていた。しかし祝島の金田氏を親分とする一心会型運動が破綻し、87年の選挙で拮抗状態に押し戻されると頓挫した。90年代は、平井知事主導で祝島の山戸氏とタッグを組んだ推進運動が特徴である。中電としては、「県がやるというのならおつきあいします」といった姿勢となった。しかし二井県政は知事同意まではしたが市町村合併で上関町を特別扱いせず、合併、解散の方向を進めている。柏原町政になって他町との例外はなく予算もカットしてきた。
 中電および二井県政の上関原発に対する姿勢は、明らかに「町内推進派の方方の自己責任でどうぞ」というものになっている。それが「圧勝」を叫ぶ根拠である。詳細調査をやるのは、中電としては「やる気」なのに、「地元合意が不足」「地元責任」といって現在の推進派の中心である加納派に責任をとらせるパフォーマンスと見ることができる。加納派は2度にわたり町長を辞めさせられただけではないのだ。
 しかし原発は町内の事情で建設されるものではなく、全国的な事情で決まる。したがっていくら圧勝したとしてもズルズルと町の立ち腐れ状態をつづけることを意味するほかはない。ズルズルつづけば、1部のものだけの利権がつづき推進派とインチキ「反対派」議員連中は飯が食え、町民の難儀はつづくという関係にしかならない。
 こうしたなかで、町民の選択は原発をやめて町を正常化する以外にない。6対4の現状から、票差が縮まるなら、推進派圧勝の条件は崩壊することになる。それは91年の反対票46%からの低落傾向の流れが変わったことを意味し、推進派が巻き返す可能性はなくなり、原発計画は断念せざるをえなくなったことを意味する。

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