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我が物顔で進む軍港化整備
下関 人工島や響灘側の都市改造

 下関市の響灘側で、垢田沖の人工島を中心とした都市改造が急ピッチで進行している。人工島は税金を760億円もつぎこんだあげく、2009年の供用開始から民間の利用がほとんどなく商港としては使い道がないなか中古車輸出でお茶を濁し、水面下では昨年から国が主導して港湾計画の改定を進めている。この人工島に向けて膨大な予算を投じて巨大道路網が整備されてきたが、最近では北バイパス(来年3月完成)が国道191号と接続する安岡支所付近から吉見の海上自衛隊基地に向けて道路の拡幅工事が始まるとともに、高速道路のインターチェンジや新幹線駅から人工島に直結する道路の建設も進行。さらに人工島にほど近い安岡沖には全国最大規模の風力発電の建設計画が浮上し、住民が反対の行動に立ち上がっている。関門海峡に面する下関は戦時中、大陸侵攻のために人員や物資輸送をおこなった戦略的要衝であり、自由に写真を撮ることも禁止された要塞地帯であった。戦後69年たったなかで安倍首相のお膝元である下関が、今度は米軍によって朝鮮有事の際に24時間以内に利用する重要港湾に指定され、不気味な人工島と周辺の都市改造が進行していることが問題になっている。
 
 巨大道路群や風力が直結

 道路をめぐっては昨年、幡生綾羅木線(幅25bの4車線道路)が新下関の新幹線駅から旧川中中跡地をへて綾羅木駅近くで国道191号に接続した。通常の規格よりもはるかに頑丈なつくりの橋梁群が道路を支えている。
 この道路建設にあたって、「この歳でいまさら引っ越して新築の家を建てることはできない」という70〜80代の高齢者をはじめ強い反対があったが、県や市の役人が来て強制的に土地を買収していったと語られている。立ち退きに反対していたある商店主は、無理矢理土地をとり上げようとするやり方にノイローゼになって病院に駆け込むと、同じような「立ち退き病」にかかっている人が幾人もいたと話した。
 新幹線駅からイズミ・ゆめシティ前を抜けてきたこの4車線道路は、今後は海岸方向に向けて直線に進み、左折して人工島に直結する計画になっている。川中西小学校や川中西幼稚園のすぐそばを通って通学路を遮断することになるが、児童の安全対策が行政側になにもないことに、父母や地域のなかから「子どもたちの通学の安全のために、せめて高架にしてほしい」という要望が上がり始めている。
 この計画がある綾羅木本町から綾羅木南町は、かつて「高度経済成長」期には新興住宅地だったが、今では高齢者の一人暮らし、二人暮らしが多く、空き家も増えている。息子や娘が下関に帰って面倒を見ようにも、市内に仕事がないので二の足を踏んでいるという話も多い。先日は高齢者の孤独死もあり、そうした不幸な事態を未然に防ごうと自治会長や民生委員が奔走している。人口が減少する寂しい町を舞台にして、ここぞとばかりに用地接収や巨大道路の整備がもちこまれている。「そこのけ」方式で、既に行政側では地図上に青写真が描かれ、立ち退き対象も雲の上で決まっている。

 第2関門橋構想も動く トンネルになるか

 綾羅木方面だけではない。安倍政府が再登板してから、第2関門橋構想も現実味を帯び始めた。従来の関門海峡を渡って小倉市街地につながる導線とは別に、彦島から北九州の日明方面に抜けていく構想となっている。昨年末あたりからは、橋ではなくトンネルになるのだと塩満県議が支持者に吹聴して回っており、従来の彦島荒田から伸びるのではなく、人工島・北バイパスから直接九州方面に伸びていく構想もマリコン関係者のなかで取り沙汰され始めた。トンネルといわれて関係者の脳裏に浮かぶのが関門港湾建設で、安倍代議士の関係企業として急成長を遂げ、最近ではトルコ・ボスボラス海峡の下を走るトンネルを掘りに行ったり、北九州若戸大橋の下で建設中の海底トンネル工事を請け負ったり、特許技術でトンネル工事を得意技にしていることが指摘されている。
 軍事的要衝として見るなら、地上にあらわれている橋よりも地下を走るトンネルの方が優位性があり、短距離よりも長距離の方が角度をつけて深く走らせ、なおかつ工事費をかさ増しできる。歴史を振り返ってみると、現在走っている関門トンネルもそもそもの出発点は軍事計画が中心だった。戦前、中国侵略にあたって人員や物資輸送をおこなっていくうえで、下関と門司を結ぶ関門が敵国の爆撃にさらされれば支障が出るので、その不安をとり除くために関門トンネルの建設に着手した経緯がある。そして第2次大戦が進行する過程で、大陸への輸送拠点であった関門海峡には、米軍が日本全国に投下した機雷の半数を投下して、敗戦を前に関釜連絡船の航行は途絶え、下関は2度の空襲で焼け野原となった。

 安岡は風力の実験台に 全国最大の20基

 響灘側で不気味な都市改造が進み、その最中に安岡では全国最大規模の洋上風力発電を建設する計画も浮上している。事業を進めているのはゼネコン準大手の前田建設工業(本社・東京)で、これにストップをかけようと昨年10月、安岡地区の住民が「安岡沖洋上風力発電建設に反対する会」を立ち上げた。署名活動は地元の会社員や農漁民、医療関係者の運動になって急速に広がり、すでに1万7000筆をこえて熱を帯びたものになっている。反対の会は来月下関市議会に風力発電建設反対の決議を上げることを求める請願書、および市長に反対の表明を求める要望書を提出しようとしている。
 住民が怒っているのは、前田建設工業が一私企業のもうけのために地域がどうなろうと知ったことではなく、秘密裏に4年前から調査を開始し、漁協の上層部に補償金を与えて買収し、経済産業省のゴーサインを受けて昨年12月から着工のための手続である環境アセスメントを実施するなど、すべて住民無視で進めていることである。そして、海を掘り返して安岡沖の海をとり上げていくだけでなく、低周波をはじめとする住民の深刻な健康被害についても、その調査をアセスの項目からはずして強行しようとしていることである。
 建設計画によると、風車は海中にタワーを埋め込み、ブレード(はね)の長さ56〜65b、海面からの高さ80〜100bもあるものを15〜20基つくり、最大出力は6万`h。人体に影響を与えるとされる2`以内には病院や小・中・高校があり、安岡・綾羅木・吉見地区の2万7000人が住んでいる(一番近い住民はわずか600b)。風力発電が生み出す低周波音は、人間に頭痛や吐き気、胸の圧迫感などをもたらし、牛の早産や死産も報告されており、しかもそれは二重サッシにしてもコンクリートブロックにしても防げないといわれ、住民たちは不安を抱いている。
 32基の風力発電が山に林立する豊北町では、騒音で夜も寝られない、回転するブレードの影で目が回って気分が悪くなるなどの苦情の声とともに、イノシシやシカがいなくなり、蜜蜂が激減するなどの被害が語られている。
 科学的な解明は進んでいないものの、ヨーロッパなど風力の先進地では、風力発電は住宅地から最低でも10`〜20`離して建設されている。安岡のように民家に隣接して建設するのは、世界的に見ても例のない計画で、しかも国内の洋上風力は、国が税金を出しておこなう実証実験の段階にすぎず、商業用は安岡が全国初。住民をモルモットにするやり方にも怒りが強まっている。
 地元で開業する医師は「風力ができたら今でも帰ってこない子どもがよけいに帰ってこなくなり、10年後には空き家だらけの町になる。草の根の署名運動で止めたい」と語り、不動産業者も「風力の計画が持ち上がってから、土地の購入計画がキャンセルになっている。不動産価値が下がり、将来的に影響が出た際に引っ越そうにも売れなくなる懸念から、若い世代が安岡に住まなくなる」と指摘していた。
 突如としてあらわれた計画にみなが驚くと同時に、後からやってきた洋上風力発電が我が物顔で地域の住環境を奪いかねない状況に対して、ストップをかけなければと行動が広がっている。

 岩国基地の増強と連動 下関の軍事拠点化

 響灘、人工島周辺で国が巨額の補助金や税金を投入した事業がごり押しされている。人工島については、「中古車販売のために760億円を費やした」では説明がつかず、市民は怒る。中古車販売のためにあれほどの接続道路を整備した、といっても笑われる。利用価値としては軍港、ないしは有事の際の軍事物資の集積地というのがもっとも合点がいくものとなっている。
 鉄鋼の北九州とトンネルで直結し、造船の彦島とも近く、極東最大の米軍岩国基地からは新幹線を使えば30分程度。空から出撃すれば戦斗機なら朝鮮半島まで十数分。海兵隊などの殴り込み部隊は最前線の下関から船に積み込んで出撃していく。軍事物資は幡生コンテナヤードから運び込む。航海に必須の水の確保といえば、長府浄水場が人口減少の最中に過剰な設備を建設中。電力に何か問題が起きても、火力発電や原子力とは別チャンネルで風力発電など独立電源の自然エネルギーを擁し、対応可能といった具体的シナリオがあってもおかしくない。
 「使い道のないものに、どうしてこれだけ税金を投じるのか?」と市民は疑問を抱いてきたが、明確な利用目的がなければ国策でこれほどの事業を進める例などない。
 一昨年、米軍が朝鮮有事を想定して、秋田、新潟、博多、長崎、鹿児島と並んで下関港を重要港湾に指定していたことが明らかになった。江島市長時代の2003年には、米海軍佐世保基地所属の掃海艦「パトリオット」が下関港に入港し、以後頻繁に米軍艦船が入港するようになった。全国初の大規模なテロ対策訓練(04年)や、官邸直結で六連島では「北朝鮮の潜水艦が攻めてきた!」といって避難訓練(05年)をやったり、北朝鮮のミサイル騒動では即日臨検港に指定されたりした。オスプレイはわざわざ関門海峡を通過して岩国に運び込まれ、全国初の飛行訓練で下関の市街地上空を飛んだ。
 人工島建設は、米軍岩国基地の沖合拡張が動き始めた95年前後から、歩調を合わせるように進められてきた。その岩国基地は今夏に沖縄・普天間基地の空中給油機15機を受け入れ、2017年までに厚木基地の空母艦載機五四機と兵員・家族4000人を、受け入れようとしている。そのために愛宕山を借金まみれにして米軍住宅に提供させ、基地内では施設の7割をリニューアルする大規模改修工事が進行している。そして岩国基地につながる道路建設も、下関同様に急ピッチで進んでいる。はじめから米軍や政府中枢は明確なプログラムをもって進めてきたことは明らかで、秘密保護法など十数年前から徹底しているのが実態だ。正体があらわれたときには「夢の宅地造成」が米軍住宅になり、「滑走路の沖合移設」が基地拡張になり、「夢の島・長州出島」は軍事拠点にもなりかねない。
 山口県出身の代議士が首相にとりたてられ、あるいは防衛大臣(林芳正)などに出世し、いつのまにか沖縄をしのぐ山口県全体の軍事拠点化が進められている。原発にしても、代議士連中は東京暮らしをしながら全国が嫌がる迷惑施設を郷土に持ち込み、その手柄で中央政界で出世していく構造を示している。下関なり山口県の軍事拠点化はミサイルの標的になることを意味している。改憲や集団的自衛権の行使を叫び、日中戦争前夜をほのめかすような者が、東京暮らしで郷土を差し出していくことを黙って見ているわけにはいかず、下関市民、山口県民にとっても、これら代議士連中のために標的にされる覚えなどない。
 戦争と平和の問題が差し迫ったものとなっており、これとの斗争が避けられない情勢となっている。

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