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渡る世間は“詐欺”ばかり
日本社会の末期症状を反映
               原発神話や食品偽装等等    2014年2月24日付

 「全聾の作曲家」「現代のベートーベン」と持ち上げられてきた佐村河内守が、実はゴーストライターに作曲してもらい、耳も聞こえていたのがわかって世間を唖然とさせている。被爆やHIROSHIMAを語り、悲劇への同情を弄んだ商売っ気あふれる詐欺商法であった。それにしてもいまや世の中は詐欺だらけで、嘘や欺瞞、だましの手口を使っているのは佐村河内守一人にとどまらない。オレオレ詐欺、証券投資の金融詐欺、「原発は絶対安全」の神話詐欺、公約破棄の選挙詐欺等等、社会の全分野で社会正義や公共性などはどうでもよく、嘘でも何でもありで、もっぱら他人を食い物にしていく流れが強まっており、腐朽衰退する日本社会のイデオロギー的な退廃状況を映し出している。
 
 氾濫する佐村河内の仲間たち

 下関市内に住んでいる40代の男性は、最近スマートフォンに「七瀬琴子」という見知らぬ女性から頻繁にメールが舞い込みはじめ、気持ち悪がっていた。どこの誰かもわからないのに、「貴方に2億5200万円の個人贈与をします。受け取ってもらえるなら無税ですが、受け取ってもらえない場合は税金4億7000万円の支払いがあなたにも請求されます。天国と地獄の差ですが…」などと書き連ねている。相続財産を税金で巻き上げられるのは悔しいので、受け取ってほしいとの文面で、1万円札をブロックのように積み上げた写真まで添付している。そして最後に、「YESの返事を待ってます」と返信を迫る内容だ。
 「バカげている…」と思いつつ、男性はどこで自分のメールアドレスが知られたのか気になって仕方がない。「贈与」など大嘘で、手続き等等にひっかけてお金を振り込ませる詐欺で、どこかで入手したメールリストをもとに、手当たり次第にメールを送信しているようだった。「こんな無茶な話でも、そのうちの幾人か、真に受けて引っかかる人がいるんだろうか?」と首を傾げた。
 別の30代の婦人は、頻繁に「0120」(企業のフリーダイヤル)表記の電話が入り始めて困っていた。どこの企業だろうかと思ってかけ直すと、3000万円の懸賞に当選したので個人情報を教えてほしいというものだった。懸賞に応募した覚えなどなく怪しいと思ってすぐに切ったが、直後に再びかかってきて、終いには「人と会話している最中に勝手に電話を切るとは何ですか!」と恫喝風だったので着信拒否にした。気持ち悪くなって調べてみると、同じ番号の迷惑電話に困っている人がたくさんいることや、「懸賞に当たったので個人情報を登録してくれ」と迫られていることがわかった。気になってかけ直した人ほど恐喝しやすい対象とされ、次次と電話がかかってくることもわかったという。「世の中が荒んでますよね…」と実感をこめて語っていた。
 オレオレ詐欺はいまや珍しいものではなくなった。「母さん、オレだけど…」となりすまし電話をかけてお金を無心し、子どもを心配する親心を逆手にとって、他人が財産をむしりとっていく手法だ。そして前述のような、振り込め詐欺、競馬やパチスロの必勝法を教えると称したギャンブル系あり、懸賞など貧しい心をくすぐる系ありで、投資話を持ちかける詐欺も新しい手口が続出。山口県や九州地方だけ見ても、1昨年、昨年は2年連続で被害額が30億円をこえた。他人を嵌(は)めて働かずしてカネをむさぼっていく、むき出しの手口となっている。
 ヤクザ的な詐欺もさることながら、紳士面した詐欺も横行している。
 下関市内に暮らしている70代の女性は、預金していた銀行から営業マンが訪ねてきて、「今どきは利子もほとんどつかないし、外貨で運用した方が賢い財産運用ですよ」といってパンフレットを見せられ、ブラジル通貨のレアルに投資したことがあった。ところがリーマン・ショックを前後する最中にみるみる損失が膨らみ、最終的に300万円を失った。「新興国は伸びしろがあります」「オーストラリアも魅力的」などといってその気にさせといて、焦げ付いたら「投資は自己責任です」といってのける姿に怒りを覚えた。担当者はかわり、別の担当者が何もなかったような顔をして訪問してくるから、怒鳴りつけてやったという。
 別の60代男性は、「野村証券にやられた…」という。どこで資産規模を把握するのか、突然電話がかかってきて証券投資を促され、それに乗った自分がバカだったと悔やんでも悔やみきれない。アベノミクスで浮かれる株価を見ても、同じ失敗はくり返すまいと及び腰だ。「他人のカネで博打をやるのが証券会社。経済そのものが詐欺流行りじゃないか。素人が稼げると思ったのが大間違いだった」という。
 食品偽装も珍しくなくなった。庶民が利用するスーパーのウナギや野菜の産地偽装だけでなく、高級ホテルに食べに行った金持ちも騙(だま)された。“伊勢エビ”に飛びついて、数万円もするディナーを食べたら、「実はロブスターでした…」と発表され、A5ランクの「松坂牛」は牛脂を注入した加工肉。「沖縄まーさん豚」といっていたのがただの豚肉であったり、昨年明らかになった高級ホテルの詐欺商売もすごいものがあった。
 その他にも九条ネギといいながら普通の青ネギを使っていたり、トビウオの卵をレッドキャビアと表示して使用していたホテルもあった。ブランド牛やブランド野菜などが持て囃(はや)されすぎて、いわゆる高級感覚というのも気持ちの問題や味付けの問題なのかと思うほど、素材はいい加減だったことが露呈した。タイヤメーカーのミシュランが勝手に星の数をつけるもんだから、ステイタスを求めた金持ちがやられた。
 電化製品や携帯電話、車やバイクといった産業製品も、「詐欺」とまでいわないにしても、すぐに壊れたりリコールが頻発するようになった。高額な割にすぐに買い換え需要が迫られる代表格がパソコンで、オペレーティングシステムの進化についていかなければ会社業務が滞ったり、ソフトやシステムをみな更新しなければ他社とのやりとりができなくなったり、消費者が半ば強制的にカモにされる仕組みは、何ともいえないものがある。
 
 人を騙し食い物に 「社会のため」を破壊

 しかし、世の中にはオレオレ詐欺や食品偽装、佐村河内だけでなく、警察が取り締まらない詐欺が他にも山ほど氾濫している。
 山口県では沿岸の漁協支店から信用部門を剥奪する動きが顕在化している。職員体制を3人から4人に増員しなければ継続できない、と金融庁が指導したのだといって漁師をだまくらかし、実際には金融庁はそのような指導などしていなかったことが発覚した。漁業団体では信漁連の預金(沿岸漁師の蓄え)を自民党林派が203億円も焦げ付かせ、その負債を解消するために漁師に尻拭いさせてきたが、問題を起こした張本人は無罪放免で逃げていき、財産を使い込まれた漁民側が悪いことでもしたかのような扱いを受けてきた。
 県当局や農林中金は「支援」の引き替えに上関原発計画の埋め立てや下関沖合人工島の埋め立て、岩国基地の埋め立て拡張に反対しないよう漁業団体を封じ込め、信漁連問題を悪用して海を奪っていった。これも一種の詐欺である。
 祝島では上関原発計画にかかる漁業補償金の扱いが焦点になってきた。漁業権交渉のテーブルすらついていないのに、中電が勝手に振り込んだ補償金を受け取れば漁業権交渉妥結と騒ぐペテンで、通常では考えられないような詐欺的な手法による漁業権剥奪が問題視されてきた。「原発はもうできるのだからあきらめろ!」といって、ゼネコンを動員して準備工事のパフォーマンスがくり広げられ、何度も「受け取らない」と組合決議を上げているのにやり直しをさせられ、組合員の意志を無視していく。そのさい、「受け取らなくても膨大な税金を負担しなければならない」という、振り込め詐欺かと思うような恫喝も平然とやられた。恐れを抱かせて屈服を迫る、大きい声を出した後に優しい声をかけて漁業権を剥奪する詐欺的な手法が暴露された。これには国税も加担して、曖昧な見解に終始した。
 また、補償金を受け取らず、漁業権同意の決議を上げていないのに、勝手に公有水面埋立許可を出したのが二井関成前県知事で、案の定、海面に手がつけられず3年以上が経過した。本来なら失効するべき許可なのに、ブイを浮かべて「建設着手」といったり、常識的には考えられないような延命策を講じてきた。中電にせよ、県当局、知事、県漁協幹部たちにせよ、一連の加担者たちが詐欺罪で検挙されてもおかしくないような、大がかりなパフォーマンスだった。
 そもそも原発自体がたいへんな詐欺で、「クリーンで安全なエネルギー」どころか、爆発事故を起こして福島を壊滅的な状態にさらし、人人の生活を根こそぎ奪った。爆発したあとも「放射能は漏れていない」と政府が嘘の発表をくり返し、大多数の住民が放射能のなかにさらされた。国が国民の生命や安全を守るものだと思っていたら、ひどい棄民政策をやり、事故対応にしても何ら準備などない姿をさらした。
 後からわかったのは、大飯原発、柏崎刈羽原発、島根原発、六カ所村など、いたるところで活断層の上に原子力関連施設が立地していたことで、環境影響調査で「影響なし」としていたのも嘘だった。都合のよい「科学」データを寄せ集め、願望に沿って建設してきたこと、御用学者が真理真実を投げ出して、そうした原発推進政策に加担する仕組みも暴露された。そして、「安全神話」を信じる者などいなくなった。
 東日本大震災や福島事故によって、その姿を暴露されたのが原子力ムラだったが、学問分野でも嘘がはびこり、研究論文の捏造や盗用が後を絶たない。真理を地道に探究するよりも、手っ取り早く手柄をあげて成り上がろうとする出世主義が跋扈(ばっこ)して、科学的思考を否定する。歴史学でも「最古の○○発見」といった捏造が目立ち、恣意性が持ち込まれた結果、研究世界が大混乱するといった事例が多発。嘘で歴史を偽造してもかまわないという、学問や社会の成り立ちに対して傲慢きわまりない態度を見せる研究者の存在も明るみになってきた。
 もっとも、政治の根幹をなす選挙まで公約違反があたりまえの世の中になった。勝つためには何でもありで、「TPPには反対します!」と叫んでいた自民党が、与党ポストを牛耳ると交渉参加表明をやり、審判を問うていない集団的自衛権の行使や特定秘密保護法の強行可決、原発再稼働、消費税増税決定など、次から次に好き勝手な振る舞いを始めた。選挙で審判を受けていないのに、「審判を受ける私が最高責任者だ」といって、法解釈まで3代目のボンクラ政治家が思いのままに操ろうとする。オリンピック誘致になると、「汚染水は福島第一原発の0・3`b以内に完全にブロックしている」と世界に向けて大嘘をついて、恥とも思っていない。
 詐欺選挙のルーツである下関では、親分の安倍晋三を真似して中尾友昭(市長)が「市役所は建て替えない!」といって建て替え工事をやり、市民が反発してきた学校統廃合になると、「適正規模適正配置」という詐欺師のような表現方法で実行しようとする。
 世界的に目を広げると、第2次世界大戦にしても「パールハーバーを忘れるな」「原爆投下は戦争を早く終結させるためだった」という欺瞞を振りまき、原爆投下を正当化してきたのが米国で、詐欺的な手法で単独支配を実行してきた。イラク戦争も「大量破壊兵器を持っている」と叫び、世界中の軍隊を集めて大量殺戮をやったのち、「やっぱり大量破壊兵器はなかった」といってはばからない。サブプライム・ローンをはじめとしたインチキ証券も詐欺ばかりで、世界中のマネーを食い物にした。
 資本主義社会が行き詰まるなかで、嘘や欺瞞、人人をアッと驚かせるような程度の悪い詐欺が横行しはじめ、日本社会に流れる一つのイデオロギーとしてその特徴を浮き彫りにしている。社会のため、世のため人のためにみなが協力して、信頼関係のもとに社会生活を成り立たせるというのではなく、もっぱら他人を嵌めたり、騙して食い物にしていくのを特徴としており、みずからの願望や欲を満たすためには手段を選ばない。しかし人人を欺いていることが暴露されたときには大破綻をきたすのも共通している。没落し、破綻するイデオロギーが凶暴な形であらわれている。佐村河内など、その末端の産物にすぎない。湿気がある場所にカビが増殖するように、詐欺師、ペテン師の類が増えている。

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