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軒並み合併の枠組みが崩壊
 山口県の市町村合併
               全県で主権在民の要求が強まる  2004年3月30日付

 日本全国で自治体の強制合併すなわち市町村の解体が進行している。山口県では、二井関成知事が全国でも突出して市町村合併に熱を上げているおかげで、県下自治体はわが町や村をなくするために、山ほどの合併事務作業に追いたてられている。住民が気に留めずにほうっておいたら、気づいたら町や村はなくなっていた、ということが現実に起ころうとしている。「2005年3月」。決められたこの時期までに、隣接する町と町、あるいは市と町は広域が一つになって合体しなさい、という至上命令が国から下され、県知事を筆頭に各自治体首長や議員連中は一目散に走りはじめた。事態がよく把握できていない端くれ議員も合併承認機関の役割を担って、とにかく合併にむけて突っ走っている。これはいったいなんなのか、地方に暮らす住民にとって、合併による自治体消滅はなにをもたらすのか、住民の大論議が沸騰しはじめており、それを束ねた行動がはじまっている。
  
 各地で県民の怒りに火
 山口県では現在、11の合併協議会に47市町村が参加。下松市、阿東町、上関町、玖珂町、和木町をのぞいた9割近くが合併を前提にして動いてきた。「財政難」という理由でトントン拍子に協議をすすめてきたが、ここにきて各地で枠組み崩壊、離脱があいついでいる。「住民説明」ははじめからあってないようなもの。決定事項の事後報告が広報で伝えられるくらいで、実質は上から強権的に合併論議をすすめていることが、いよいよ県民の大反発をくらっているのである。
 すでに合併した周南市では、議会解散請求署名が必要数をはるかに上回る7万人近い署名を集めて市民世論を反映。議員報酬という問題をきっかけに、住民無視の自治体合併にたいする市民の怒りに火がついた。
 今年に入っておこなわれた小野田市、山陽町の住民投票では広域合併反対が上回って、宇部市・楠町との2市2町の枠組みは正式に破たん。もともとは美祢市、秋芳町、美東町もふくめた3市4町の大合併が県の願った枠組みだったが3つに分かれた。県当局は小野田・山陽の住民投票にたいして露骨な介入を実施。ところが、投票結果は宇部市への吸収合併拒否、もっといえば宇部興産の軍門に下ることを多くの住民が拒否した。
 豊関地域では、豊北町、豊田町、豊浦町で合併の是非を問う住民投票を求めて運動が現在進行中。郡部住民のなかでは、自治体消滅によって地域経済の崩壊、衰退に拍車がかかるということ、ギロチンのように農山村を切って捨てることが、いよいよ農漁業を疲弊させることにつながるとして、「しかたない」ではすまされない思いが語られている。
 その他山口県内を地域ごとに見てみると、県央部では山口市、防府市、小郡町、阿知須町、秋穂町、徳地町の2市4町ですすめてきた合併協議は、すでに8割の協定項目の調整を終えていたのが、新市役所の庁舎位置をめぐって県の意向をくむ小郡町と防府市のあいだで意見対立の格好。合併協は破たん寸前で、枠組みは白紙にもどる可能性が大。中核市(人口30万人以上)の新県都構想をすすめたい二井知事のかかわりも働いて、法定協はなんとか息をつないでいる状態。
 萩地域は1市3町4村の枠組みですすめた合併協議は98%まで終了していたが、阿武町、須佐町両議会が今月27日に離脱を採決したことから、近く離脱表明する。田万川町もぬける公算が大きい。萩市、旭村、川上村、福栄村、むつみ村の合併と3町合併に分かれる予定。
 県東部では岩国地域で岩国市、由宇町、周東町、玖珂町、美川町、錦町、美和町、本郷村の1市7町村の大合併を動かしていたところ、玖珂町で合併反対を訴える町長が当選して離脱。ほかの玖珂郡六町村の動きも流動的。

 柳井地域でも枠組崩壊 上関の扱いが焦点
 上関町のあつかいをめぐって注目されている柳井地域では、3月に入って枠組みが崩壊。再編の動きを見せている。上関町・片山秀行元町長が任意協からの離脱を表明した昨年2月以後、法定協議会設置時期は大差ないものの、協議の進捗(ちょく)状況は半分程度。よそに比べて協議はなかなかすすめるわけにもいかず、足踏みしていたことをうかがわせている。そして今年に入ってから、表むきは電算課予算の計上時期をめぐって決裂。残りの1市3町ですすめていた合併の枠組みは白紙にもどった。
 この地域において最大の懸案となっているのは上関町のあつかいであることは疑いない。国や県の意向として見た場合に、原発建設のメドはない上関町をとり残しておくわけにはいかず、予算削減による財政面でのしめつけが現在進行している。あとは地元の「自主的判断」で吸収合併に追いやる誘導策が働いていると見るほかない。
 以上見たように、山口県内では昨年のいまごろ、つぎつぎににわかづくりの法定協議会(合併承認機関)が設置されて、この1年間のあいだに急ピッチに合併作業をすすめてきた。長門地域や大島四町、光市・大和町のように比較的小規模な合併は別として、広域にわたる合併はのきなみ決裂、崩壊、離脱のさんざんな内容となりつつある。
 もともと住民のほとんどは合併の要求などしていないし、住民の大論議が必要な問題なだけに、各地で反発が噴き出し、突き上げが起きてくるのは当然であった。あわよくば住民が知らないうちに市役所や町役場を奪いとろうとしたが、そうはいかなかった。自分の町をつぶそうという計画に簡単に賛成するわけがないのである。すでに合併した周南では人べらしがはじまっていることなども全県で話題になっている。
 広域合併をすすめたい県は、11ある法定協のうち、県の指導としてすすめる広域合併に該当する八地域を「合併重点支援地域」に指定。法定協へは職員を派遣し、交付金を特別配分するなどして合併推進をはかってきた。市町村合併推進室や県民局は、県内の役場や議会、幹部連のあいだをわたり歩いて情報収集とてこ入れに熱を上げ、広域合併のための謀略・諜報活動につとめてきた。しかし県内で合併が進行して9〜10の自治体になれば、その先に待っているのは道州制による県消滅であり、「首切り役人」の役割をかぶせられた県職員たちにとっても他人事ではない。

 予算削減で脅す国 地方に配分せず
  なぜこれほどまでに自治体合併が上から強制的にすすめられるのか。それというのも小泉政府が2005年3月までに全国3200ある市町村を1000に削減する計画を県知事に求めているからである。合併しなければ地方交付税は削ると脅し、期限までに合併すれば交付税のほかに合併特例債(合併市町村の箱物建設にかぎって地方債発行を九五%まで認め、のちに国が元利償還の七割を地方交付税としておろす。10年間限定)を出すといって、予算でしめあげて脅しているからである。
 小泉政府の最大の脅しは、補助金や地方交付税を削減して町村がたちゆかなくするというもの。05年度予算が山口県内でも発表されたが、「三位一体改革」のおかげで、のきなみ市町村に配分される交付税は削減となった。
 もともと国と地方の財政支出では、その7割ほどは地方で支出されるものであるが、税金は国税で七割ほどをとって地方税は3割という制度を決めている。はじめから国が地方に税金を分けなければならない仕組みになっているのを、政府が配分せずに吸い上げているから地方自治体が苦しくなっているのである。
 この合併は、自治体も借金まみれになっており、国も赤字財政で財政難だからと装ってあおられている。しかし、自治体のかかえた借金は、バブルが崩壊した90年以後、政府がアメリカの要求にそって指導した630兆円もの内需拡大の「景気対策」を行政にやらせ、必要もない箱物建設、デタラメ事業をやらせた結末である。自治体にやらせた大事業は、大借金にあえいでいたゼネコンをもうけさせ、その金は銀行に流れてさらにアメリカのバブル経済を支えるために流すという政策をつづけてきた。
 そして政府は政府で、バブル経済でデタラメをやって破たんした金融機関に数十兆円の公的資金を流し、アメリカが乱発する米国債を年間100兆円に近づく勢いで買い、戦争で破たんしているアメリカ国家財政の穴埋め役になっている結果である。

 アメリカの世界戦略と連動
 合併によって、医療、福祉、教育、農漁業など全般にわたって地方生活を切り捨てていく問題は、アメリカのグローバル化戦略と、アメリカが要求する有事法制化のたくらみと切り離して考えることはできない。政府がイラク戦争などアメリカの下請戦争への道に歩をすすめ、軍事政策を重視するとなると、当然金が必要になるし、軍備のために日本全国、山口県内の金を強引に吸い上げている。こうして県市町村はみな赤字財政を余儀なくされている。この赤字のために必要な教育、福祉などの社会保障費が削られて、県民や市民、町民のために金は使われなくなる関係である。
 町村をつぶすということは農漁業を基盤とした商工業や地方生活をつぶすということにほかならない。助けあい、協力しあってきた共同体としてのつながりを解体すれば戦後農漁業の著しい衰退に、追い打ちをかけるものにならざるをえない。
 合併すれば財政が豊かになって国民が住みやすくなるわけではなく、行革、自治体職員の人べらし、住民サービスのカットによる「効率化」が目的であり、とりあえず目先10年間は箱物行政をやらせて、その後は切り捨てる計画である。しかし重要な問題は、地方自治が奪われるという問題、主権在民が形のうえからもなくなり、地方に暮らす人人の口はふさがれ、上意下達の官僚国家になっていくという問題がある。
 地方生活の破壊、自治の剥奪など、戦争の反省から憲法が国民に約束した「主権在民」「地方自治」をなくす戦後の大改革をやるため、財政理由だけで町や役場を奪おうというのである。あまりに横暴で権力的なやり方でやってのけようとするところに今日の特徴がある。
 地方自治は、地方に住む住民の民主的な自治組織というたてまえであるが、実際にはこれが国政執行の末端機関となって、町村合併の方針が出されると、実際の事情がどうであれ強引にやってのけようとしているこの合併問題は、かつての戦争の体験から定められた地方自治の破壊である。すなわち国の主権を民ではなくて一部の独占大企業とアメリカの主権として固めるものであり、露骨な独裁国家にしようというのである。フセインや金正日が独裁者などといっちゃおれないのである。
 この地方自治つぶし、民主主義圧殺をまねく自治体合併にたいして、「しかたがない」といいなりになるわけにはいかない。郷土を守る力を横につなげて全県の合併を跳ね返す力と行動を束ねていくことが求められている。

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