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安岡漁師が風力反対貫き陳情へ
県漁協副組合長の恫喝一蹴
              9割反対で「総会決議」は無効    2014年9月24日付

 下関市の安岡沖洋上風力発電の建設予定地に漁業権をもっている山口県漁協下関ひびき支店の漁師たちは24日、同支店の正組合員48人中42人の署名・捺印を添えて、中尾市長に対して風力発電建設に反対を表明するよう求める陳情をおこなう。これにあわてた山口県漁協の幹部が、恫喝を加えてなんとか思いとどまらせようという動きを起こしたが、断固とした漁師たちの行動によって一蹴されている。

 漁業者の同意ないこと証明

 20日、漁師たちの陳情を知った県漁協幹部は、2日後の22日に漁協の臨時総会を開くこと、松並統括支店長が参加できないため、彦島海士郷の廣田統括運営委員長(県漁協副組合長)がかわりに説明をおこなうことを通知した。これに対して漁師たちは、これは市長への陳情をとり下げさせるためのものであり、行く必要はないということでボイコット。臨時総会は中止となった。
 翌23日、廣田氏、松並氏、安岡の運営委員長の3氏が安岡漁協に集合し、そこに今回の陳情にかかわっている漁師たち約10人を呼んで陳情をとり下げさせるための恫喝と懐柔を再度試みたが、漁師たちは「これ以上論議してもむだ」と途中で席を立ち、再び一蹴されることになった。
 この会合の場で廣田氏は非常にあわてた様子で、ときには声を荒らげる場面もあり、「市に陳情することだけはなんとか思いとどまってもらいたい」「そうすればなにもかもぶち壊しだ」「それだけはやめてくれ」と何度も脅したりすかしたりをくり返したという。漁師たちは、組合員が知らないうちに漁協幹部が1000万円というカネを前田建設工業からもらっていたこと、「反対したら2〜3倍を払わなければならない」と脅すようにいったことを追及した。そこで廣田氏は次のようにのべた。

 一〇〇〇万円勝手に受取り 県漁協幹部

 「下関外海の7支店で総会をやり、そこで風力に賛成か反対かの決議をとったところ、みな賛成が3分の2をしめた。安岡でも去年、3分の2以上で賛成となった。それをもって私が前田建設と契約を結んだ。20年間海を貸す、その使用料として7漁協で総額8億円、年間4000万円という契約だ。その手付け金としてすでに1000万円を共励会がもらっている。風車は人工島の埋め立てとは事が違うので補償金は出ない。風力発電の設置は海を貸すのであって、使用させるだけだ。風車はやめたら元に戻る」
 「あなた方がもし明日、反対の陳情に行けば、新聞が“漁師が反対に立ち上がった”と書きたてるし、そうしたら風力発電の計画は90%つぶれる。県漁協として賛成したものを地元の組合員が反対して計画がポシャったら、これは前田から損害賠償請求の訴訟を起こされる。業者の方は訴訟を起こしますと明言している。今環境調査をやっているが、それにも業者は何億という金をかけており、これまでかかった金を払えということになる。県漁協が訴えられるが、県漁協は払えないので、下関外海の統括支店の責任において払いなさいということになる。原因をつくったのは安岡なので、その額は安岡の漁師が払わなければならなくなる」
 さらに廣田氏は「安岡は7漁協のなかで孤立して、共同漁業権の海ではもぐりができなくなる」と恫喝し、それが効かないとわかると今度は「20年で8億円といっているが、一括で8億円ではどうだ」と懐柔策も見せる有様だった。しかし漁師たちは少しもひるまず、風力発電建設反対の姿勢を最後まで貫いた。そしてやりとりのなかで、昨年7月、ひびき支店の総会で風力発電建設に「3分の2で同意した」というものの実体が暴露された。漁師たちは次のように発言した。
 「あのとき組合は風車のことをろくに説明もしないまま決をとった」「風車に賛成しなければ人工島の補償金はもらえないと、まったく別の2つのことを一緒にして、意見がいえなくした」「“沖の土砂の迷惑料で年間700万円入っているのがなくなり、このままでは賦課金を1人20万〜30万円よけいに払わなければならなくなる”と赤字ばかり強調して、賛成にしむけた」「あのとき風車を建てるといったか? 環境調査についての同意だと思っている漁師が何人もいる」「その頃自分たちは風力についてよくわからなかったが、その後勉強して悪いものだとわかった。それで総会を開いて採決をやり直してくれと申し入れたが、支店長が拒否した。だから陳情という行動になったんだ」
 つまり、漁協幹部が漁師たちをまるで詐欺にかけるようなやり方で、みながわけがわからないうちに風車建設の3分の2同意をとりつけたのであった。なお、原発に反対している祝島漁協を見てみると、総会での3分の2の決議は何度もひっくり返しが可能であると県水産部が指導している。組合員の九割をこえる安岡の漁師たちの陳情は、昨年の総会決議を否定し、そのインチキを世間に広く暴露する行動となる。廣田氏のあわてようがそのことを証明している。総会は正組合員が五分の一の同意を得て理事に招集を請求すれば開催することが可能であると水協法ではうたっている。よって、正式に「建設合意」なるものを否定することが待ったなしとなっている。

 組合員に支払い義務はなし 損害賠償されても

 なお、臨時総会が予定されていた日、下関市の環境部長も「漁師が陳情したら事業者に訴えられるぞ」と発言していた。ただ、環境調査にどれだけのカネがかかろうと、風力発電の環境調査は国の補助金でやるもので、事業者の懐はほとんど痛まないことは研究者が各地で報告している。まだ風車が建ってもいない環境アセスメントの段階で、風車の建設が中止になったからといって「訴える」というのはたんなる脅しにすぎず、ウソである。建設が中止になったなら、それは漁師の反対以外にも、医療関係者や自治会や商工業者などの反対行動や7万人にのぼる署名、1000人のデモ行進など市民全体の立ち上がりにある。それでも訴えるというのなら、漁師だけに恫喝訴訟して腹いせするような企業として、広く世間の笑いものになるほかはない。東京からやってきて郷土下関の人間が嫌がるものを設置しようと走り回ったあげく、漁師からカネをむしりとっていった企業として前田建設工業の名前が刻まれることは疑いない。そのさいは、廣田氏はじめとした漁協幹部の責任追及に発展することも当然避けられない。
 手付け金を1000万円もらっているのなら、そのまま前田建設工業に返せばすむことで、仮に損害賠償請求がされたとしても、組合員には支払い義務などなく、組合員が知らないところで勝手に契約を結んだ者が、みずからの責任において解決しなければならない。
 今回の安岡の漁師たちの市長への陳情は、風力発電建設を阻止するうえできわめて大きな意義をもっている。

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