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残酷な派遣法撤廃せよ
トヨタ九州労働者に聞く
               政府は職を与える責任    2008年11月10日付

 トヨタ九州労働者に聞く 米国発世界恐慌のもとで、トヨタ、日産、マツダなど自動車をはじめ大企業が相次いで派遣労働者の切り捨てを打ち出したことが大問題となっている。トヨタ自動車九州は今夏に800人の派遣労働者を切ったことに加えて、新たに1000人を削減すると発表。日産自動車は派遣労働者780人、マツダは800人削減するとしている。派遣労働者の多くは身一つのまま派遣会社の寮である家具付きワンルームマンションに入居し、送迎バスで自動車工場へ通う独身者が大半を占める。クビになれば収入源をたたれ、行くあてもないまま住居から追い出される。トヨタ九州の派遣労働者のなかでは「“期限切れだから当然”といわれて納得できる問題ではない。派遣労働を禁止して、全員正社員にすべきだ」と切実に語られている。
 「貯金して家を建て妻子も呼ぼうと考えていたのに…」と悔しそうに話すのはトヨタ九州宮田工場(宮若市)で働く派遣労働者A氏(35歳、男性)だ。A氏は「残業があるから26万円位にはなる」と面接官に聞いて、数カ月前に単身赴任を決意。鹿児島にパートで働く妻と幼い子ども3人を残して宗像市に居住したが、直面したのはあまりに違う現実だった。サブプライム問題以後の減産調整が始まるなか残業はほとんどない。仕事量が落ちるのにともなって1カ月の給与も減る一方だ。現在、給与総額は20万円前後で、保険、年金、工場内での食費、寮費などがひかれると手元に残るのはわずか14万円程度。そこから自分の食費を出し妻子に養育費の仕送りをするが、蓄えをするゆとりなどないのが実際だ。
 「休日の土日も出費を控えるために寮のなかでじっとしているしかない。派遣契約を解除すると通告してきたわけではないが、次の更新時に契約しないのは時間の問題。派遣会社に文句をいっても“トヨタがいらないというのだから仕方がない”というばかりだ。働く側は家族もいるし仕方がないではすまない。政府は派遣労働者を増やすだけ増やしておいて不況になると知らんふり。腹が立ってしょうがない」と強調した。

 退職後3日が退去期限 日研総業の入寮規定
 宮田工場がある宮若市内は、トヨタの工場を除いて下水も水道も充分に整備されていないため、派遣労働者の多くは隣接する宗像市に住む。派遣大手の日研総業などは50棟を超すワンルームマンションを借上げて送迎バスを出し、日総工産も送迎バスを出している。だが6、8月に派遣社員800人が切られたことで、ガラ空きになったマンションが急増。宗像市内に住む商店主の一人は「8月頃にまとめてアパートから出ていく人が多く、トヨタの派遣社員が切られたと近所で話題になった。これまでは送迎バスを何台も連ねて走っていたが最近はあまり人が乗っていない」といった。マンションの内装工事をしていた男性(30代)は「この部屋も日研総業の人が出ていった。いつでも入れるように準備しているが出る人ばかりで入ってくる人が少ない。不動産業者などへの影響も大きい」といった。
 トヨタの派遣社員はほとんどが3カ月間の契約で、現在1400人いる派遣社員の多くは今月末と来月末に期限切れとなる。深刻に語られるのは退職と同時に住居を即座に追い出されることである。日研総業の入寮規定では退職から「3日後には寮を出ないといけない」となっており「友人や親戚など身寄りがある人はいいが、ない人はホームレスになるしかない」と真顔で語られる。派遣社員の男性は「寮内には電子レンジや冷蔵庫、布団などすべてそろい、仕事があれば問題はない。でもいったん切られると生活できなくなる。日頃はヘトヘトで寝るだけだから家具をそろえるひまもないし、就職先を探しに行ったり別の住居を探しに行く時間もない。正社員なら退職金があるから少し食いつなげるが派遣社員はそれすらもない」と話す。
 日研総業の規定では、寮の間取りは5種類。ワンルーム1名(寮費・4万2000円)、ワンルームに2名(1万5000円)、2DKに2名(2万7000円)、2DKに4名(1万2000円)、3DKに3名(2万円)が給与天引き。これからエアコン代(1日・個室150円、相部屋100円)や備品レンタル代(1日・220円)がひかれ、備品が故障すれば退去時に弁償費も加わる。「入寮の心得」では「トヨタ社員であっても他人を寮内に入れてはならない」とか「友人を宿泊させてはならない」など私生活を事細かに規制しているのも特徴だ。それは仕事があるときだけ閉じこめておく「平成版タコ部屋」とも語られている。

 囚人まがいの強制労働 派遣労働者の1日
 派遣労働者の憤りは毎日の扱いのなかでも増幅している。1日の生活サイクルを聞くと早朝、送迎バス(朝5時頃と、昼2時頃に出発)に乗って宮田工場に出勤。到着すると監視カメラ付きの通用門を抜けて、ライン作業に放り込まれる。多くが単純作業で、神経を使いながら同じ作業を勤務時間中継続する。一様に「普通の人はもたない」「ものを考え出すと頭がおかしくなる」と話されている。仕事は何秒にいくつ生産するかなど細かく決められ、作業中に工場内で話す機会はほとんどない。食事休憩も積極的に話しかけなければ無言のまま過ぎるという。
 制服も正社員と期間工は白で、派遣社員は日研総業が青、テクノスマイル(トヨタがつくった派遣会社)が薄紫、日総工産がベージュと一目で分かる様に分類され互いが競争相手となる。とりわけ派遣社員同士では、だれもが「正社員になりたい」と思うため、息の詰まるような競争や神経戦が繰り広げられるという。そして仕事を終えると送迎バスが再び宗像市内に輸送(帰りは夕方3時頃と夜11時頃に到着)する。バスから降りた派遣労働者は一気に近くの24時間営業のコンビニに流れ込んで夕食を買い寮に帰って眠る。派遣労働者の1人は「食事はコンビニの弁当かカップラーメン。1日にほとんど話さない日もある。自分たちはいったいなんのために生きているのかと思う。人とのつきあいも禁止された寮から出て仕事をして帰って寝るだけ。まるで囚人の強制労働。人間扱いではなくモノ扱いでしかない」と話した。

 期間工や正社員も憤り 「人ごとではない」と
 こうしたなかで、トヨタ九州が今回打ち出した「合理化」は6〜8月に契約を解除した派遣労働者800人の再契約の見送りと、2つある組み立てライン(昼夜交替制でフル稼働)のうち1ラインで夜勤をやめることが柱。これに伴い1000人規模の派遣労働者を削減するものだ。それは工場に残る派遣労働者、期間工、正社員も無関係ではない。
 夜勤廃止によって勤務は現在の午前6時からと午後2時55分からだった就業時間が午前8時頃からに一本化され「常昼」勤務となる。夜勤手当や交替手当(1カ月に3万円程度)が切られるのは必至だ。同工場で働く正社員の1人は「自分も派遣社員から試験を受けて正社員になったので人ごととは思えない。この前も愛知に行くか、このまま同じラインに残りたいか、違うラインにかわるか選べといわれた。愛知に行くのも宮田工場に残って残業代が7、8万円カットされるのもおおごと。みんな3つとも受け入れられないというのが正直な気持ち」(20代・男性)と話す。派遣労働者の切り捨ては正社員の先行きもあらわしており、わがこととして話題にされている。
 今年8月に期間満了で切られたトヨタ期間工B氏(48歳・男性)も「自分は独身だからまだいいが“秋に再契約される”と待っていた家族持ちの社員のことを考えると許せない。トヨタはずっと史上最高益をあげてきたが、儲けられたのはいったいだれのおかげか! これまではカローラの組み立てラインで1つの製品を45秒に1つ組み立てていたが、最近はラインが遅くなり75秒に1つとなった。でも受け持つラインは1つではなく4つになった。1人の仕事は過密になるばかりで残る者も大変。そもそも簡単に使える雇用の調整弁として派遣労働を国をあげて促進した政府に責任がある。“日雇い派遣禁止”でごまかさずに、使い捨ての派遣労働など全部なくしてみな正社員にすべきだ」といった。
 トヨタ労働者が共通して憤激を語る「派遣法改悪」は2003年に強行実施されている。01年からすすめられた小泉改革の一環だ。その前段でタクシー、トラック、バスなどは需給調整規制をなくして殺人的な「競争」に駆り立て、「郵政民営化」では1万5000人の郵便局員を削減した。通信「自由化」でもアメリカの接続料値下げ要求に従い日本の通信市場を明け渡し、NTT労働者などの10万人削減に着手した。
 この次の段階として03年に全産業のM&A(合併・買収)や正社員の首切りを促進する産業活力再生法「改定」を強行。これと同時進行で「雇用流動化」とか「国際競争力をつける」と叫んで正社員切り捨てを促進させ、簡単にクビにできる派遣労働者を製造業に送り込めるように派遣労働法を改悪したのである。国があげて正社員から無権利な派遣労働者に振りかえる政策をすすめたことが、現在の非人間的な搾取と「合理化」に通じている。
 こうしたなかで全産業的に吹き荒れる人員削減、とりわけ派遣労働者にかけられた大「合理化」は独占大企業が労働者に犠牲を転嫁して生き延びるための一致した攻撃となっている。独占大企業は、労働者を人間ではなく奴隷か家畜の如く扱って肥え太ってきた。労働者の側は黙って首をつるわけにはいかない。生きていくため、働く者の誇りのためには横暴な資本とたたかう以外にないことを示している。残酷な労働者派遣法は撤廃されなければならず、労働者の全産業的全国的団結を広げる方向で、独占資本集団とその代理人である自民党政府との政治斗争を起こす以外にない。

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