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税収激減のなか箱物散財予算
貧弱な産業振興・雇用対策費
              下関中尾市政 市食い潰す略奪政治    2011年2月23日付

 下関市の中尾市長が就任3年目の市予算を発表した。市長選が終わった後は公約破棄のオンパレードで、安倍・林代理の箱物政治を丸ごと引き継いできたが、江島前市長をしのぐ過去最大規模の予算編成となっている。総額で200億円を投じる新庁舎建設、150億円を投じる下関駅にぎわいプロジェクトなどの目玉事業に巨費を投じる内容で、大不況で市民生活が窮乏化し、市財政がかつてなく枯渇しているおりに、政治家や銀行だけがハコモノ三昧に明け暮れるものとなっている。
 新議会発足後初の3月議会を間近に控えるなか、中尾市長は「元気・一丸!」予算とネーミングした来年度予算案を発表した。一般会計の当初予算としては史上最大規模の1250億円を計上。前年度の1175億円から75億円(6・4%)アップとなった。これは合併前年に各自治体が大幅に予算額をアップさせた平成16年の旧豊浦郡四町と旧下関市の予算を合計した1230億円をも上回っている。
 歳入のうち自主財源である市税(市民税、固定資産税、軽自動車税、市たばこ税、都市計画税など)は、前年度から約4億円減の約335億8000万円を見込んでいる。リーマン・ショックが起きた平成20年度予算の見込額が約360億4000万円だったのから比較すると、わずか3年で約25億円も減少しており、毎年のように見込額は減り続けている。
 市税収入のなかでも二本柱になるのが市民税、固定資産税であるが、来年度の見込額としては市民税が約147億5000万円、固定資産税が約150億6000万円。数年前に地方税を値上げしたにもかかわらず市民税は近年急激に落ち込んでおり、固定資産税の方が金額として上回るという異常事態が起きている。
 ここ数年の経過を見てみると、20年度予算の市民税見込額は約167億8000万円だったのが、21年度予算では約158億3000万円(実際の決算額は153億1000万円だった)となり、22年度予算ではさらに減少して約148億6000万円。市税収入として目減りしてきた約25億円のうち、約20億3000万円を市民税の減少分が占めている。とどまるところを知らず市民経済が縮小していること、下関が危機的な状況にあることをあらわしている。
 そして地価は下落傾向なのに、固定資産税はむしろ大不況どこ吹く風で、150億円台を横ばいで推移してきた。新椋野や川中・伊倉地区の区画整理による大規模開発で、田んぼを「金のなる木」よろしく固定資産税を生み出す「金のなる土地」にした結果、地主たちが地価の高騰と税金負担に頭を抱えることになったほか、中尾市政になって問答無用の差押えが急増し、とくに固定資産税を払えずに不動産を売り払われて回収される事例も多発。それらが影響していると見られている。
 なお、市税収入の激減と同時進行で中尾市政が力を注いできたのが差押えで、平成20年度を境に件数が急増。平成17年度に739件だったのが、21年度は1742件と1000件以上も増えた。そのことによって60億円近くを回収して「市税収入」に上乗せしてきたのから見ても、いかに地元企業やそこで働く市民の経済状況が冷え込んでいるかがわかる。「地元中小企業の4分の3は赤字経営」と税理士たちが指摘する状況が普遍的に存在し、貴船町の職安は連日長蛇の列ができ、働く場を求める市民があふれる。下関の経済情勢を物語るものとなっている。
 こうして市民から巻き上げた税金だけでは1250億円の大判振る舞い予算はまかなえず、地方交付税289億円、国庫支出金174億円をプラスしても足りない。基金を17億8000万円取り崩すほか、予算の13・7%にあたる171億円を借金である市債発行でまかなうことになっている。
 歳出のなかで借金返済にあてる公債費は約160億円で、箱物資金の償還が次次と迫って、市財政の重荷が増しながら、新たな借金額はさらに上回るものとなっている。市債残高は一般会計だけで1229億円に達するとし、市財政の蓄えである基金は23年度末にはついに200億円台を割り込んで、約196億円になると見込んでいる。
 財政の弾力性を示す経常収支比率は97・9%で、依然として高い数値を見通している。従来から都市で80%、市町村では75%を超えると財政の自由度を失って経費を抑制するよう注意するべき数値といわれてきたが、そんな常識をはるかに通り越して、異常な財政悪化の状況を示している。
 特別会計は976億7800万円、企業会計は386億円を計上した。

 駅前開発等は大盤振舞 農漁業育成に出さず

 市税の異様なる激減状況。これに対して市民や地元企業が税金を払えるように産業振興、雇用確保に全力を尽くすのかと思ったら、出てきた予算案は箱物オンパレードとなった。
 「建て替えない」と叫んでいたはずの市庁舎整備には15億6500万円。そのうち勝山地区拠点施設整備事業(勝山公民館、勝山支所、保健センター整備の設計・地質調査予算)に8500万円、消防庁舎整備事業は基本・実施設計や地盤改良、土地購入費用として8億7700万円、教育センター整備の基本・実施設計業務に6000万円といった費用が計上されているほか、委員会棟の解体撤去、用地整備なども盛り込んだ。
 総事業費17億5000万円の市立大学の新校舎には、今年度分として13億3000万円、川中土地区画整理事業に12億2500万円、国体のサッカー競技場、ソフトボール専用球場を整備する乃木浜公園整備には5億7100万円、沖合人工島関連には10億円、「老人休養ホーム」ではなく民間委託の観光施設にする満珠荘の建設に4億7400万円、山口国体関連に9億1700万円、総額250億円を投じる長府浄水場の整備(必要以上の規模を想定)等に7億8700万円と、箱物は尽きない。
 前年度に25億円をぶち込んだ「下関駅にぎわいプロジェクト」は、今年度分として開発ビル建設や駅前広場整備に15億2000万円をつけた。大不況のご時世に駅前に開発ビルをこしらえ、店だらけにしたところでだれももうかる市民などおらず、潤うのは銀行だけ。「山銀にぎわいプロジェクト」というべき開発が本格的に進行する気配を見せている。
 こうした箱物散財にたいして、産業振興、雇用確保対策の貧弱さが際立っている。肝心な雇用対策としては「緊急雇用創出事業」として7億6200万円を計上している。そのうち4億4200万円を注ぎ込む重点分野雇用創出事業には、介護、医療、農林水産、環境・エネルギー、観光、地域社会雇用、教育・研究といった分野のほか、県が進める「21の戦略プロジェクト」の4分野を含めた11分野での雇用創出を掲げている。具体的には医療分野では献血の啓発といった業務、農林水産では有害鳥獣の被害対策や、環境・エネルギーでは街の美化パトロールといった仕事を、嘱託として1年間雇用して従事させたり、市から民間企業に業務委託するための費用とされている。
 前年度も緊急雇用創出事業には同額を注ぎ込んでいるが、職員削減などのあおりで手が回らず放置されていた業務を各課があげ、緊急としてあてがったのが特徴で、本来職員が通常の人件費のなかからやるべき仕事を国の補助金によってまかなう格好になっている。
 自治体財政のなかでは、本来雇用対策のための投資的経費として「失業対策事業費」という項目がある。これは多数の失業者の発生に対処して、臨時的に就職の機会を与え、道路整備や工場、住宅団地の造成といった事業を自治体が実施することが法律で定められ、その経費を計上する項目であるが、今回の市予算にはまったく費用が計上されておらず、空欄扱いになっている。
 県下最大の耕作地を抱え、水産業の街でもあるが、農漁業分野も生産振興に注がれる予算はないに等しい。農道整備、漁港整備など箱物的要素のものには億単位の予算をつけるが、生産そのものの育成に注がれる予算は微微たるものとなった。農業では担い手育成に300万円、漁業ではニューフィッシャー確保育成にわずか45万円。たった45万円で漁業の後継者をどうしろというのか、その程度の金額でいったいなにができるのか理解できない額となった。対照的に外国人漁業研修生受け入れ事業には1050万円もつけている。
 また、地産地消のとりくみには460万円がついたものの、内容はサポーター店登録推進、「第3回たべりーね!下関農水フェア」開催費用、バス広告の掲載費用(サンデンの収入)。肝心の流通基盤整備には90万円だけとなった。豊北道の駅建設に10億円もかけるくらいなら、もっと市民の食卓に地元の魚や野菜、果物などが届くような、大型店にできない流通システムを構築するために力と金を注いだり、失業者を雇って耕作放棄地を復活させたり、荒れた山林を整備するなど、生目のある政策に注ぎ込んだ方がはるかに有益であることは疑いない。

 抜本的な考え直し急務 市民経済悪化を加速

 大型箱物や開発バブルを実行することから、下関市政はじまって以来の予算規模となった。失業者が街にあふれ、市財政そのものも窮乏の一途をたどっているなかで、追いはぎのように市民から税金を巻き上げ、収入はないのに使うことばかり考えていることへ、市民の怒りが強烈に充満している。
 いまや地方交付税依存といっても国税収入そのものが減り、国からの地方自治体への割り当ても減っている。その分を「合併特例債」の体裁で地方自治体の借金に貼り替えながら、さらに散財させ道州制へと導いているのが国である。
 合併特例債の償還期間の間、国家財政がもつかどうかすらわからないなかで、中尾市政が破滅的な箱物バブルにのめり込んでいる姿が露呈している。
 この調子でいけばますます下関がつぶれること、安倍・林代理の略奪政治による食いつぶしを黙って見ているわけにはいかず、予算案も抜本的に考え直すことが求められている。若者に職がなく人口流出に歯止めがかからず、倒産や失業の波が容赦なく襲いかかる。市民経済が危険水域ともいえる状況に直面しているなかで、なおも箱物偏重・民託化の市外発注路線で暴走する中尾市長は、下関市政はじまって以来の悪たれ市長として名前を残す可能性をもっている。

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