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全国から祝島に激励カンパ届く
「補償金拒否貫け」と2000万円
               原発阻止に熱い連帯     2014年7月25日付

 山口県漁協祝島支店の昨年度の赤字が約940万円にふくらみ、その穴埋めとして組合員が1人当たり17万8000円を負担しなければならない事態が明るみに出るなかで、これまで祝島住民とかかわりを深めてきた島外の人人が中心となって、全県全国に向けて「上関原発に反対する祝島の漁師にカンパを届けよう」と訴えが発せられ、とりくみに賛同した人人から続続とカンパが寄せられている。7月18日時点で2010万6106円(2536人)に達し、「その後も途切れることなく続いている」と語られている。この間、祝島を巡っては県漁協主導の漁協経営によって毎年のように多額の赤字を計上し、その度に組合員に補填を迫ってきた。嫌気がさした組合員が原発の漁業補償金に飛びつくよう誘導する効果となり、みなが難儀な思いをしてきた。今回、断固反対が貫けるよう兵糧攻めに対抗する形で全国カンパがとりくまれたところ、その訴えは一気に広まり、必要額をはるかに上回る額となった。祝島の斗争がいかに全国から熱い眼差しを注がれているか、期待を寄せられているかを示すものとなった。
 
 赤字常態化の抜本解決が責務

 祝島では今回のカンパについて、「全国の人人からの熱いカンパをいただき本当にありがたい」「これまでの補償金受けとり拒否の運動を支持してカンパしてくださり、“もっと頑張ってくれ”と激励されている」「祝島だけの問題ではなくなっている。全国とつながった運動だ」と明るい表情で語られ、「全国の人人に感謝してありがたくカンパをいただき、今後の漁協運営の変革につなげていきたい」と意欲が語られている。昨年は13万円、その前年も10万円近くを補填し、毎年のようにお金の工面には頭を悩ませてきただけに、ホッと胸をなで下ろすような気持ちをみなが抱いている。同時に、全国からの支援に甘んじるのではなく、何としても赤字経営の転換をはからなければならないという使命感も強まっている。
 島民の一人は「全国からのカンパには感激している。ここまできて祝島一点、祝島ピンポイントだけのたたかいではなく、全国とつながったたたかいになっていることがわかった。2000万円以上のカンパをいただき本当にびっくりしている」と語り、「全国の人たちも無関心ではない。上関原発をつくらせてはいけない、みんなの海を守ろうという思いを持ってやってくれている。もう祝島だけの問題ではなくなったと思う。全国の問題だ。私たちも全国の人人とつながってさまざまな問題をもっと真剣に考えていかないといけない。努力して赤字を減らすことが恩返しになると思う」と話した。
 別の島民は「あれだけの人たちが一緒になってたたかっているということは心強い。私たちが知らないところで全国の3人の方が呼びかけて始めたカンパだった。何十人で始めたわけではない。それが2500人以上の方の協力をいただいた。今回は祝島からお願いしたのではなく、全国の人の思いでやられている。その思いに応えなければいけない」と語った。
 別の男性島民は「本当にありがたいことだ。このカンパをどう活用させてもらうかが重要になると思う。今までと同じやり方でこれからも漁協運営を続け、カンパを赤字につぎこんでいくようなことをすれば、全国の人たちの思いを裏切ることになる。カンパを使い込むことだけは絶対にしてはいけない。漁師の赤字補填に対する分配は全額でなく半額でもいいと私は思う。残りのカンパをむしろ今からの漁協経営の改善に役立てていく資金として有効に使わせてもらうことを考えてもいいのではないか。全国の人たちの思いは“赤字を減らして漁協経営を成り立たせ、漁業を守って原発を阻止してほしい”というものだ。そこに応えるためにも、販売方法や加工などさまざま考えていかないといけないと思う」といった。
 そして「販売ルートについては現在の福山へのルートを切ってもいいのではないか。別のところに持って行って、金額によって出荷先を決めるような主体的な販売をしなければ、現状のような言い値では買い叩かれるだけだ。経費を使って遠方に運んで買いたたかれるより、自分たちで値を決めて漁師自身が販売できるような方法ができないものか。加工については島の年寄りがやれることもある。仕事ができればもっと島に活気が出る。県漁協は原発を推進する側で、補償金を受けとらせようとする側だ。そこに頼らずに独自に考えてうまくいく方法を探していくべきだ」と語った。
 赤字補填という目前の対処療法では期待に応えることにならず、甘えるだけならむしろ人間がダメになってしまうのが常である。なんとしても島の漁業生産が安定するまで改善しなければならず、赤字を垂れ流すに任せている現在の運営について問題点を突き詰め、具体的に解決する事が迫られている。

 漁師の困難を喜ぶ人達 支援敵視するチラシ

 島内全体はカンパを喜び、より一層原発反対を貫く気概に燃えている。ところが一方で、素直に喜べない人人がいることも浮き彫りになっている。21日に祝島の漁師へカンパを届けるための催しがおこなわれたさい、前日の夜に何者かが波止場やイベント会場などに「支援カンパを受けとるつもりはありません」と題したB4サイズのチラシを山積みにして置いていたり、島のあちこちに掲示・配布するなど、闇夜に紛れて不可解な行動をとったことが明らかになっている。
 問題のチラシを見てみると、冒頭に「折角ですが、私○○(名前の記入なし)は赤字補てん金支払いのための“支援カンパ”を、受け取るつもりはありません。お断りします」と書かれ、その理由が延延と記されている。
 「漁協祝島支店の赤字補填にむけて、組合員のためという名目の“支援カンパ”がすすめられているようで、島外で色色な意味で話題となっていると聞いている。しかし、とりくみの経過も島のほとんどの人は知らず、祝島支店組合員の誰にどのように配分するのか、漁協組合員や島のみんなはなにも聞いていない」「わからないことが多すぎ、これでは長い間原発に反対してきた組合員の間の新たな分断にもつながりかねない」「わが家は、今までどおり自身の漁協負担金を払っても、厳しいながらなんとか生きていける。もとより漁業補償金を受けとる気などはじめからもっていない」と展開している。
 さらに「30年以上にわたる祝島漁師の原発反対運動は、生活のかかった自分たちの漁場を守るたたかいだった。何人にも海を売り渡さず、島を大切に思い、漁師の尊厳をかけ、補償金も拒否し続けてきた」「組合員の困難を金で解決しようとするなら、補償金を受け入れようとする組合員の姿勢と、どう違うのか教えてほしい!」「祝島がピンチという島外の方たちの言葉は、どこから出てくるのか。あまりにも浅いし軽いと憤りを感じる。カンパを呼びかけている方たちの言い分は、今までずっと苦しい生活をつづけながら、頑張ってきた祝島の漁師を、心の底では見下し、馬鹿にした物言いにも聞こえる。こういうことは上から目線ではなく、祝島の漁業・漁協組合員の歴史と実態を学んでからにしてほしいと思う」と記している。全国から寄せられたカンパがうれしくないし、面白くないというだけでなく、敵意を示しているのが特徴だ。
 さらにチラシでは「組合員を増やして販売額を増加させる」という事態打開の解決方向について、「今の島の現状でどうしたら漁協組合員数が増やせるのか」と反論し、「より付加価値の高い市場を探す」という意見に対しては「そんな市場があればまず教えてほしい」と反発。「事務経費を削減する」という方法については、「組合員でない方たちにも内輪の漁協経営に関する発言権があるのか」と記している。そして「残念ながら漁協祝島支店の運営は県漁協に実権を持たされているという現実をふまえて考え発言し、組合員の迷惑にならないよう行動してほしいと思っている」としめくくっている。
 闇夜の抜き打ちビラであるが、島の人人はほぼ誰がやったことかわかっている。わかったうえで、どうしたものかとみなが話題にしている。
 この間、本紙に対して全国の読者・支持者のなかから「山戸貞夫氏からこんなチラシが届いたんだが…」と情報提供があり、まったく同じ内容のチラシであることが確認されている。祝島で配られたチラシとは別に手紙が同封されており、カンパについて「あまりにも地元島民や漁民をないがしろにしたもので、過去30年以上の漁師のたたかいをまったく無視した内容で了承できない」「彼女らの主張にはとにかく原発に反対するなら何でもありという表現でいいのでしょうか。肝心の島の当事者たちの思いとはかけ離れ、地元住民に対する温かい気持ち・配慮は感じられない。要するに都会の方方の(本来あるべきでない)価値観、つまり田舎の人たちへの蔑視の感覚を覆い隠した自己満足のとりくみとしか見えない」「金で動くならとうの昔に受けとる権利のある補償金をもらっている」などと綴られていた。

 新規立地の策動に打撃 全県・全国団結の力

 原発推進勢力にとっては兵糧攻めが効果を発揮し、祝島の漁民が困窮してにっちもさっちも行かない状況に追い込まれることが嬉しくてやれない関係だ。ところが全国が全面支援に乗り出したから、これまでの苦労が水の泡になって腹を立てていることは疑いない。
 近年は慢性的な赤字体質から抜け出せず、決算が迫る度に組合員が涙を呑んできた。「赤字の繰り越しは認めない(黒字は本店に没収)」という県漁協ルールに基づいて精算が迫られるからだ。漁協合併前に89人(平成17年度)いた正組合員は53人にまで減少し、水揚げは僅か8年の間に6〜7割以上も減少する事態となった。そして一方では、推進勢力が祝島の漁業権を剥奪するためにあの手この手で懐柔や恫喝をくり返してきた。福島事故前まではゼネコンを動員して準備工事パフォーマンスをくり広げ、「原発はできるのだからあきらめて補償金を受けとれ」といい、福島事故後は「原発はもうできないのだから安心して補償金を受けとれ」という迫り方であった。
 安倍政府が登場し、村岡知事になったもとで、原発予定地の田ノ浦について公有水面埋立許可を延長するか否かは判断がさらに1年延長となった。通常なら失効すべきところ、計画が振り出しに戻るのを避けるために村岡知事は引き延ばした。そして県庁の役人が経済産業省に出向いて、「上関は新規立地の可能性を残してほしい」と懇願し、国も計画を温存する対応をとっている。公有水面の延長判断を一年引き延ばした意味合いを裏返すと1年以内に漁業権放棄の3分の2同意を取り付けるというものであり、祝島のたたかいは今後も続くことを示している。推進勢力としては祝島の結果待ちで、組合員の3分の2が漁業権放棄に同意しなければ海にさわることすらできない。他にやることがなく、漁業権放棄の同意を取り付けることが最重要課題になっている。これをクリアしなければ原発ができないからである。
 全国カンパは祝島の島民を激励し、そのたたかいが祝島現地だけでなく全県、全国とつながったものであること、連帯と団結の輪が確実に広がっていることを示した。新規立地を白紙に追い込む斗争の重要な点火剤になったことは疑いない。


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