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全産業で首切りや大「合理化」
              日本襲う米国発世界恐慌    2008年11月3日付

 米国を震源地とした世界経済の破たんが日本を襲うなかで、対米輸出を中心にボロ儲けを続けてきたトヨタ自動車などの大企業が大がかりなリストラに着手している。それは自動車の材料をつくる鉄鋼業界、物資を運ぶ物流業界をはじめ、関連する下請企業にも波及。広範な労働者家庭の家計を直撃し消費を冷え込ませている。マンションの買い手がつかず不動産業界、建設会社の大型倒産が深刻化。庶民が生活を切りつめるなかでスーパーも閉店ラッシュとなっている。自民党政府が「構造改革」と叫んで進めてきた売国奴政治と属国経済の犯罪性を示している。

 4000人規模の削減と減産 自動車業界
 世界恐慌の影響を真っ先に受けたのは自動車業界の派遣労働者や期間工だ。円高や株価暴落のなかトヨタ自動車は減産に着手。子会社のトヨタ自動車九州が、「4万台減産」を打ち出し、派遣社員2200人のうちテクノスマイル(福岡市)、日研総業(東京)、日総工産(横浜市)に所属する派遣社員800人の契約を解除(6月から8月)した。さらに減産のため300人の労働者を九州から愛知県に3カ月間配転。今は現在働く派遣労働者1400人を切る案まで検討している。
 名古屋にあるトヨタの工場で働いていた期間工の男性(40代、現在失業中)は「自分は今回切られた派遣労働者の前に期限切れで切られた。友人がトヨタのラインで働いているが、“1ライン250台つくっていたのに170台となった。170台つくったあとは、別のラインで仕事を続ける。残業がない”といっていた」と話す。男性は「自分のときは日給9000円(月20日)に、夜勤手当と交代手当(月に約2万円)と残業20時間(残業手当は約5万円)ぐらいあった。年金、保険、所得税、食費代が引かれ手取りは1カ月21万円程度だ。でも残業代がゼロなら16万円。派遣や下請や孫請はまだ劣悪」といった。ラインはここ数年1台当たりの儲けを多くするため高級車量産体制に変化したといわれる。「国内では割安な軽自動車などの需要は高いのに米国の金持ちに高級車を売ることばかり考えること自体が失敗の始まり。だから円高などですぐガタガタになる」と悔しさをぶつけた。トヨタ自動車の下請である日野自動車も、米国向けスポーツ用多目的車(SUV)を生産する羽村工場(東京都羽村市)の期間工850人を雇用契約満了でクビにする方向となっている。
 日産自動車下請で働く派遣労働者も突然「今月で契約を解除したい」といわれ苦境に直面している。日産は派遣社員2000人の4割に当たる780人を九州、栃木の2工場で削減する。来年3月までの5カ月間、米国向け大型乗用車を6万5000台減産する方向だ。
 そのほかマツダも12月に派遣社員約800人を削減。本社工場(広島市)と、防府工場(山口県)で7万3000台を減産する。スズキも来年3月末までに国内3工場で7万8000台を減産し、派遣労働者600人を削減する方向。三菱自動車も今月から5カ月で10万台の減産に入った。名古屋製作所(愛知県岡崎市)と子会社のパジェロ製造(岐阜県坂祝町)で残業を減らし生産速度を落として対応する。自動車業界での派遣労働者削減数は明るみに出ただけでも4000人近い規模となっている。

 希望退職募集や工場統合も 鉄鋼や電機で
 新日本製鉄も先月末、2008年度下半期(10月〜09年3月)の粗鋼生産量を上半期(4〜9月)実績の1657万dより約100万d(約6%)減らすと発表した。自動車メーカーの減産や国内外での鉄鋼需要低迷を反映した。だが減産すれば当初予定から300億円の収入減。そのため大リストラに動くのは必至と見られている。
 自動車部品用工作機械大手森精機製作所(名古屋市)も今年4月から9月は平均で月650台生産したが、10月以後は500台しか生産しない。650人いる派遣社員も年度内に300人減らすとしている。
 電機メーカーでは、富士フイルム傘下の富士ゼロックスが09年度までに非営業職の2500人を対象に早期退職を募り、1250人削減する方針を表明。早期退職を拒めば営業部門に配置転換するとしている。
 キヤノンも関連企業でリストラに着手。コピー機部品製造のキヤノンプレシジョン(青森県弘前市)は10月31日に派遣労働者約240人を「契約解除」でクビ。残る非正規労働者約3000人が、いつ「契約解除」となってもおかしくない状態となっている。
 カラープリンターなどのOKI(沖電気工業)も管理職約1250人を対象に希望退職を募り300人を削減する予定。ソニーは追加リストラをすることを発表。具体的にはテレビなどの組み立て工場を統廃合して人員削減することを検討している。

 円高や燃料高で減便や運休 物流・運輸
 材料や製品を運ぶ物流業界も燃料高騰とあわせ影響は大きい。商船三井と川崎汽船は先月からアジアと北米、欧州を結ぶ定期コンテナ航路を減便。アジアと北米を結ぶ定期航路を週14便持つ商船三井は来年春まで2便休止する。20フィートコンテナ換算では1万個以上減ることになる。川崎汽船も週7便あるアジア―欧州・地中海航路で1便減らした。
 日本航空も来年1月から北米路線の貨物便を大幅に減らす。シカゴ経由をふくめて週7便ある成田―ニューヨーク線を全廃。週19便ある成田・ロサンゼルス線は週10便に半減する。新北九州空港を拠点とする航空会社・スターフライヤー(北九州市)は先月末、従業員460人の約1割に当たる約50人派遣社員を年内に削減することを発表した。
 そのほか、北九州市門司港と韓国の釜山港を結ぶ定期フェリー「モジライン」(定員542人)が運航からわずか2カ月で無期限運休。西日本海運(北九州市門司区)も関門海峡周遊の遊覧船・ヴォイジャーの運航を11月30日で廃止すると発表している。

 上場企業の大型倒産相つぐ 不動産や建設業
 そして深刻なのは、不動産関連の大型倒産だ。今年に入ってから、上場不動産会社八社が破たん。6月のスルガコーポレーション(負債総額・620億円、連結従業員数・136人)はじめ、ゼファー(949億円、308人)、アーバンコーポレイション(2558億円、1544人)、創建ホームズ(338億円、二三五人)など。9月以後は、Human21(464億円、94人)、リプラス(325億円、1013人)、シーズクリエイト(114億円、201人)、ランドコム(310億円、57人)がつぶれた。この上場八社の従業員総数(連結)は約3500人に達した。
 不動産経済研究所(東京・新宿)が発表した9月のマンション市場動向を見ると首都圏の販売戸数は前年同月比53・3%減の2427戸、近畿圏も43・8%減の2047戸。首都圏は13カ月連続の前年割れでマイナス幅が50%を超すのは96年10月以来、約12年ぶりだ。実際に売れた数を示す契約率も首都圏は60・1%、近畿圏も62・4%で、好不調の境目とされる70%を割り込んだ。
 こうしたなか東証2部上場の建設会社・井上工業が先月に破産。負債総額は125億円で労働者280人が失職した。記者会見した同社社長は「工事が完成しても資金が回収できないなど今年に入って急激に資金繰りが悪化した」とのべた。日本の不動産買いを主導してきた外資系の投資ファンドなどが、相次いで手を引き、銀行が融資を絞り込んで失業者を増加させている。

 消費減退で閉店の動き加速 流通・外食産業
 大量の首切り・失業の進行は消費購買力を減退させ、流通業界にも影響を及ぼしている。
 イオングループは西日本のジャスコやサティ、ホームセンターなどを対象に09年度までに60店閉店することを発表。全国に107店あるサティでは8月に北九州市の門司サティが閉店。来年2月には下関の山の田サティも閉店となる。一方、イオン本社の正社員約600人を店舗に配転するため、パートなどの首切りにも拍車がかかると見られている。
 米ウォルマート・ストアーズ傘下のスーパー・西友(393店)も09年半ばまでに約20店舗閉鎖することを発表。同時に店舗に勤務する35歳以上の労働組合員約1200人を対象に希望退職を募り、約350人を退職させる。
 三越伊勢丹ホールディングスも三越の百貨店4店舗閉鎖を発表した。池袋店(東京都)と鹿児島店(鹿児島市)は来年5月、武蔵村山店(東京都)や名取店(宮城県名取市)、小型売店の三越鎌倉、三越盛岡は3月に閉店。正社員400人のうち100人を希望退職でやめさせ、それ以外は配置転換する。そのほか、セブンイレブンなどの運営をするセブン&アイホールディングスが2010年度までに総合スーパー3〜5店、レストランを140店閉鎖。Jフロントリテイリング(大丸と松坂屋)は愛媛・今治、横浜の2店閉鎖を発表している。
 外食産業の閉店は数100店規模となっている。9月には外食大手の「すかいらーく」がバーミヤンなど全国の約4000店のうち約200店を閉鎖し、約300店を低価格店「ガスト」に業態転換すると表明。吉野屋ホールディングスは今年度中に傘下のすし店「京樽」の23店閉鎖を発表した。
 長崎ちゃんぽんチェーンのリンガーハットも今年度中に全店の約1割に当たる53店を閉鎖する。それは流通・外食産業で働く無数の店員を失職させ、生活の糧を奪うものとなっている。
 小泉・竹中から麻生へと続いてきた自民党政府は、グローバル化・構造改革を唱えて労働法の改悪をすすめ、「雇用流動化」「終身雇用制の廃止」を叫んで派遣労働をはじめとする非正規雇用を増やしてきた。それは人人を食えなくさせ、日本社会をさんざんに破壊してきたが、アメリカの金融破綻、そのもとでの日本企業による大リストラまで来て、日本中の産業と富をつくり出す生産活動を壊滅的な破壊にさらすところにきたことを示している。
 麻生内閣は「市場安定化」といって、金融機関への資本注入を可能にする新・金融機能強化法をつくり、公的資金を注入する予算枠を2兆円から10兆円に拡大し、一方で消費税を3年後に増税することを公言している。それは国民に犠牲を転嫁し大企業の延命やリストラに奉仕し、巡り巡って米国の金融資本に日本の資金を流す仕掛けとなっている。こうしたなかで全産業的に吹き荒れる人員削減、大「合理化」は独占大企業の一致した攻撃であることをあらわしている。それは全産業の労働者が団結してたたかわなければ、労働者は生きていく権利すら保障されない日本社会の現実を示している。

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