トップページへ戻る

全町団結の力を示す上関町議選
本紙記者座談会
              推進派の雪崩打つ瓦解    2009年12月23日付

 計画浮上から27年をへた上関原発を巡って、県内でも重大な関心がよせられている。30年前に中電を叩き出した豊北町、漁場壊滅を危惧する瀬戸内海の漁業者たち、米軍再編とたたかっている岩国市民、被爆地の広島をはじめ、国策とのたたかいがそれぞれ他人事ではない自分たちの問題として受け止められている。中電は原子炉設置許可申請を提出したが、祝島の漁業権、田ノ浦の未買収地を手に入れなければなんのメドもなく、毎度やってきた「できるできる」の空疎なパフォーマンスでしかない。来年2月に町議選が控えるなか、上関をめぐる情勢と進撃方向について記者座談会を持って論議してみた。
  祝島が漁業補償受け取りを拒否し、埋立工事の阻止行動を続けているなかで中電が18日に「原子力設置許可申請」を経済産業省に提出した。これをどう見るか。
 B 「原子炉設置許可申請」をしたが、町内推進派の表情が冴えない。柏原町長が強ばった顔でインタビューに応じているのが印象的だった。春先から「準備工事」といって、どっと入ってきていた外部企業は夏頃にはみな引き揚げた。原発計画が動き始める条件が整っていないからだ。町民のなかでは「もうできる!」と何回もダマされた経験があって、「また中電が選挙前のパフォーマンスをやった」と落ち着いて見ている。
  最大の焦点が祝島の漁業補償受け取り問題だ。年末にかけて、二井県政や県漁協が登場して「受け取らなければ税金をかけるぞ!」と恫喝を加えたが、事実を確かめると広島国税は「誰がそんなこと言っているのか」と驚く始末で嘘がバレてしまった。最高裁の判決も「共同管理委員会の契約は有効」で「祝島はそれに拘束される」というのが、県や県漁協の言い分だった。「拘束される」というが、祝島の漁業権が無効になったとはいっていないことが暴露された。祝島の漁協総会で3分の2の特別議決をとり、契約を結んで、補償金を受け取って初めて、漁業権放棄となる。当事者が知らないところで漁業権が消滅するわけがない。
  「設置許可申請」を提出する3日前に、埋め立て工事妨害といって中電が祝島の漁民と外来のシーカヤック4人にたいして、4800万円の損害賠償金を求める裁判を起こした。予定地の田ノ浦は四代の地先漁業権だが、隣接する旧107共同漁業権の海域は、7漁協の漁業権放棄の契約は成立していても、祝島の漁業権は生きている。埋め立て工事による汚染や、タイなどの産卵地をつぶす関係からして、祝島の漁業には確実に影響が出る。この影響補償問題を放置して工事を強行するなら、漁業権侵害になる。瀬戸内海の経験豊富な漁協に聞いてみると、「祝島が裁判をしたら100%勝てる」「総会議決もなく、受領もしてないなら最高裁判決も何もあるか」と笑っていた。これも祝島が補償金を受け取らなければどうにもならないことを暴露している。
  白紙撤回になった巻原発(新潟)の例が典型的だが、残り3・8%の民有地が取得できずに電力会社が20年たって設置許可を取り下げた事例がある。上関は漁業権も土地も未解決だらけだ。
  祝島の漁業権のほかに、敷地内に未買収地が30カ所近く残っている。田ノ浦の先端部分から炉心を取り囲むように虫食いになっている。地権者のなかには秋葉忠利・広島市長の名前も見えるほか、山戸氏や清水氏など反対派幹部の名前がある。反対派の集団所有地になっている土地がある。そして27年土地を手放さなかった地権者がいる。これが解決しなければ、いくら中電が申請しても、国が設置許可を出すことはできない。
 E 手続き上のネックは漁業権と土地だ。これを守り抜く力は所有者だけの力ではできず、反対運動の力だ。これがひじょうに活性化している。衆議院選挙で戦後50年つづいた自民党政府がつぶれたが、上関原発をめぐっても「どんでん返し」の様相となっている。

 町民の反対の力活性化

  この間、中電側が力を入れたのが、人人を諦めさせることであり、「室津が崩れた」「祝島が崩れた」と欺いて、反対運動をつぶそうとしてきた。しかし町民の反対の力はいささかも崩れていなかった。それどころかもっと活性化してきた。
  「室津反対派が崩れた」と言うとき議員の外村勉が反対派から推進派に寝返ったことだ。福島瑞穂・社民党党首が上関まで来て選挙演説までしていた旧社会党員だ。室津を崩れたと思わせ、祝島を崩す、そのために中電に身を売った。前回町議選では中電が中電職員票や祝島の推進票を200票ほどまとめて議会にねじ込んだ。これはいまや賞味期限切れとなった。
  祝島を見ても同じで、山戸氏が漁協運営の問題で失権したから「祝島が崩れた」と言っていたが、実際は違った。島民自身の原発反対の意志は揺るぎないものだ。昨年末には最高裁が「管理委員会の議決に祝島も拘束される」というインチキな判決を出し、二井知事が公有水面埋立を許可し、中電は残る半金の補償金を支払ってしまった。それで「反対が崩れた」という祝島も補償金を受け取るかと思ったら覆された。祝島の運動は婦人たちを中心にして島民が主導的にたたかう力を強めた。二井知事や中電は泡を食って立ち往生しているというのが現在の局面だ。
  運動が島民主導になってきているし、「平井知事は味方」などといっていたところから、国策、二井県政とのたたかいになってきた。国から県から最高裁から県漁協、要するに国策を振りかざして権力で襲いかかっているのだ。そして島民の側は、全町団結、全県全国団結を切望している。以前のような町民対立の方向とは違って運動の質が変わってきた。自分たちの生活だけの問題ではなく、日本全体のためという意識が強まっている。島を守らなければならないという思いと同時に、瀬戸内海の漁業を守り日本人の魚食を守るため、ミサイルの標的にして国土を廃虚にしないためとか、国を潰すデタラメな国策などつぶして真の国益を守るという意識が強まっている。これは重要な発展だし、権力に負けない強い力になっているということだ。
  祝島に渡ると「長島の人たちといっしょに頑張らないといけない」と方々で耳にする。広島や岩国の人たちの全県や大分、福岡の漁業者の応援などをひじょうに喜んでいる。婦人たちが主力になっていて、町内でも田名埠頭の行動にたいする共感は強かった。長島側で補償金をもらった漁師でも「受け取り拒否はすごい。27年間貫いてワシらは頭が下がる」と言っていた。
  中電と二井県政が祝島を切り崩すのはきわめて困難な情勢だ。80年代にいったん断念して、90年代に平井知事が前面に出て推進の巻き返しをやった。世界は社会主義の崩壊というので国内の諸勢力が沈滞するなかだった。信漁連問題を仕組み、漁協が反対できないような仕掛けをつくり、水産行政の力を使って関係漁協に漁業権放棄をさせていった。祝島も平井知事が何度も乗り込み、四代地先の共同漁業権を放棄させた。この20年近くかけた仕かけでやっぱり、行き詰まってしまった。これを立て直すことは不可能と言っていい。

 町潰す中電に怒り充満

  「反対派は崩れた」「原発はもうできる」と空中戦をやってきたが、しかし崩れているのは推進派組織だ。「いい事をしたのは一握りで、あとの大多数はダマされて利用された」との実感をみなが抱いている。
  四代に行けば山谷議長の4階建て民宿御殿“やま家”がその象徴として語られるし、白井田に行けば片山元町長の3階建て家屋や右田議員の御殿を見てみなが指さす。「原発御殿なのだ」という。これらの元町長や議員たちが漁業経験もないのに漁協組合員として漁業補償をとったりしてきた。「上に立つ者が自分だけいい事をする」の批判世論は全町で渦巻いている。中電の子会社である推進組織の町連協は見る影もないし、いまや推進で動員できる層は限られている。原発離れは相当なものだ。
  あと春先からの「できるできる」詐欺で証明されたのは、いざ工事となったら、外部からドサッと工事利権に群がる大手業者が押しよせて、仕事を奪っていく怖さだった。「暴力団の町になってしまうのではないか」と。土建関係者の男性が「よそから土建業者がバンバン入ってきて、しかも大阪とか危ない感じの連中に町内業者が太刀打ちできるわけがない」と漏らしていた。蒲井の飯場計画にしても「地元出身者が引っ掛けられた」と話題になっていた。これらの業者は工事が進まないと分かって撤退した。
  商工業者でつくった事業協同組合は昨年、ボスの座を奪い合ってもめていた。しかし、結局中電に相手にされなかった。「原発がきたら町が潤う」の欺瞞が破産している。初期の原発誘致は商工業者が中心になって旗を振ったが、多くが廃業したり消えていき、「上の者と漁師だけ補償金をもらって、骨折り損だった」という思いが語られている。町を売り飛ばす上層部と好き勝手する中電への怒りは、こうした人人のなかでとりわけ充満している。
  ちなみに上関原発の建設工事は鹿島建設が元締めというが、宇部でも下関でも鹿島建設の下請業者が一番倒産している。ゼネコンの下請叩きはすさまじい。地元が潤うための原発建設では決してないのだ。
  上関原発問題をめぐる情勢は大激変している。「原発はすぐできる」のではなくて、祝島が補償金を受け取らなければ原発は終わりという局面であるし、土地の問題も未解決で難題山積だ。原発終結が目前の情勢になっている。二月の町議選はそういうなかで争われる。
  町議選は推反逆転の情勢にあるというのは町内でも実感が強い。反対票が崩れるよりも推進票が崩れる条件の方がはるかに大きいとみなが思っている。漁師のなかでは「補償金はもらったが原発はできない方がよい」というのが本音だ。これまでと明らかに違う。ちなみに、漁業補償金でいうと、37年かけて撤回になった芦浜原発(三重)では電力側が「補償金を返せ」とやったが、結局「返却は求めない」で終結している。先走って振り込むからいけないのだ。
  選挙は推進派の側が中電の「できるできる」詐欺に乗って、勝った気になって混戦模様だ。実態は推進離れがすごいのに、欲深い推進利権争いは激化する。「できるできる」といわなければ祝島があきらめない。中電もジレンマだ。現職は足元を見て青ざめながら、しかし欲は捨てられずに後期高齢者の現職たちも色気を見せ始めている。女房・子供が「次もお願い」と声をかけて回っているとか、商店にやってきて珍しく腰が低かったとかの様子が話題だ。新人3人も含めると11〜12人が意欲たっぷりで、中電がどう調整するか見ものとなっている。転向した外村議員は某土建会社がハシゴを外したとかで、「用済みで中電に見捨てられたみたいだ」という声もある。内航船を売り払って議員職が唯一の食いぶちになっている議員とか、あと一期で議員恩給がつく町連協出身議員も辞められないようだ。「300万円の報酬にしがみついているのだ」とそれぞれ見なされている。
 C 反対派の側は外部勢力の登場が目立っている。「日共」職員や長島の自然を守る会の高島美登里氏が移り住んできて、「憲法を守れ」とか「カンムリウミスズメやスナメリを守りましょう」とかのチラシを大量に配りはじめた。過去の選挙では数票しかなかった候補もいたが、よそ者では選挙にならないことは歴然としている。地元から候補が出ることを優先すべきであり、地元から候補が出れば外来者は辞退するのが常識だ。先走って名乗りを上げたのでは、町内からの候補者が出にくい状況をつくることになるし、それでは推進派の選挙を助けることになる。推進離れが大きな流れになっているのに、その票を吸収する地元の反対派が出なければならない。外部勢力ではその票は集まらない。
  「おこがましい」という拒否反応も出ている。「日共」集団も小柳元町議の意志を超えた県か中央の判断をあらわしており、高島氏も「上からいわれた」と漏らしているといわれ、背後の政治勢力の何らかの判断が働いているようだ。反対派の側は最低でも町内から6人を出さなければならない。議会を最低六対六にすれば、大転換であり勝利だ。とくに室津から1人出す必要がある。
 C あと山戸氏が引っ込んで山根氏とチェンジするのも不思議がられている。漁協の給料もなく、議員の給料もなくなるのに、なぜだろうと見られている。山戸氏が下がって外部勢力が進出するという形だ。祝島が補償金を受け取らなかったら原発は終わりという情勢になって、推進派も反対派も再編が動いているようだ。
 E 選挙はもちろん議席の争いだが、それだけではない。原発という国策による町の売り飛ばし政治と対決する町民の大衆的な世論の力を示す場となる。祝島の反対運動が質を変えて活性化し、補償金受けとりを拒否して原発を終わりにしようとしているなかで、それに団結する町民の力を示すことが最大の焦点だ。祝島の婦人たちを軸にした全町の団結をいかに強いものとして選挙にあらわすかが最大の注目点となる。

 27年へて町民世論激変

  町民の世論が、27年たって大激変している。「原発による地域振興」といってきたが、中身は町を売り飛ばす売町政治だった。この欺瞞が通用しなくなっている。そして何もかも中電が乗っ取って、中電町にしてしまった。拝金主義、投機主義が町を食いつぶすし、廃町にしてしまうというのは27年の歴史が証明している。
  上関の現状は日本の農漁村が直面している現状を象徴しているし縮図だ。「上関町は10年後には廃村になる」といってきたが、都会から帰ってくるようになった。工業が天下で農漁業はダメというので都会へ行ったが、その子や孫たちは製造業もつぶれて職はなく、食っていけなくなった。小泉や竹中は「製造業もいらない、サービス業と金融立国で行くのだ」とやってきた。その結果、日本社会は散々につぶれてきた。以前は上関だけが寂れたようなことをいっていたが、今では日本中の農漁村が寂れてしまった。しかし、日本社会は農業や漁業がない国にするわけにはいかない。農漁業でもうけさせないことが問題なのであり、食料を生産しないわけにはいかない。上関は食料生産を守れのたたかいの全国先進地になっている。
  日本社会の立て直しを求める世論は強い。衆院選で自民党売国政府が叩きつぶされたように、上関町民の世論もそれとは別ではない。上関でも都会から帰って漁業をはじめている若者が目立っている。都会で食えないのだ。田舎へ帰れば、儲からないが、食っていくことはできる。田舎はダメといっていたが結局、農業と漁業が一番強いんだ。海と山を守れという町民の世論は、以前とは様変わりになっている。国を立て直すというとき、農業、漁業など食料生産から立て直す以外にない。先進国で食料自給率が40%台など他にない。
  水産大学の教授たちもすごい関心で新聞を読んでいる。日本は農業と漁業から立て直さなければならないと、上関にすごい関心だ。上関海域は内海の心臓部という。瀬戸内海で最も恵まれた海域だ。上関の基幹産業は漁業だ。町の発展は漁業を中心にはかるほかない。広島市場に行くと上関の魚といったら質からして一級品と言われていた。上関の一本釣り漁師で福屋デパートから「地下食品売場で販売しないか」と声をかけられたと明かしていた人がいたが、100万都市の評価はそうなっている。広島で販売方法などを工夫したら、いろんな可能性があると広島の人たちはいっていた。日本人は魚を食うのであり、漁業で利益を上げていく方法がないことはないという。豊かな漁場は日本人の貴重な財産であり、電力会社の営利で瀬戸内海漁業を壊滅させるわけにはいかないということだ。
 E 上関は年寄りが多い。戦争体験者が多いということだ。戦争の体験と戦後の苦労が語られる。戦後は上関の海と山に助けられて立ち上がっていったんだ。岩国基地とそれに反対する岩国市民のたたかいに共感が高い。岩国に極東最大の米軍の出撃基地をつくるという国策中の国策とたたかっているんだ。そして戦斗機が飛んだら一分もかからない位置に上関原発を建設するという気狂い沙汰だ。「100年に1度の不況」というが、100年前はみんなが貧乏になった挙げ句に大戦に突入していった。自民党でも清和会が戦争政治の片棒を担いで、岩国でも采配を振るってきたが、一方で戦争するといい、ミサイルの標的になる原発を建設するという売国政治にみんなが怒っている。
  町議選は中電の手下になって町を売り飛ばす政治と、町を町民の手にとりもどし、地道な発展を願うすべての町民との対決になる。原発を終結させて中電を叩き出すことが、最大の課題だ。上関原発は単に上関町だけの問題ではない。全瀬戸内海の利害がかかった問題であるし、国土を廃墟にする売国政治に手痛い打撃を与える機会だ。
 

トップページへ戻る