#1/インターロッキングって何?

『アンデスの芸術』 泉靖一  中央公論美術出版     

 古代アンデスの美術を知りたいという人に、参考書を一冊推薦するとしたら、迷わずこの本。アンデス芸術のすべてがコンパクトに凝縮されている。
 本書では、南米全体の文化史を概観した後に、織物、土器、石、金属など、美術工芸品を素材別に紹介しているので、興味のある分野から読んでもいいし、必要な事項だけを調べるのにも便利。

 美術品を解説する文章のうまさでは、泉は日本のアンデス学者中随一だろう。一般読者に対して、実にていねいでわかりやすい説明をしてくれる。しかも、奥が深い。必要とあらば、かなり専門的な領域にまで踏み込んでいく。
 たとえば、土器の文様で、ロッカースタンピングとかインターロッキングなど、ややこしい技法にも話は及ぶ。これは別の本(『インカ帝国』岩波新書)でだが、泉はインターロッキングを説明するにあたって、「この模様を文章で、わかりやすく表現することは、私にとって、ひどくむずかしい。三回も四回も書きなおしたが、なかなかうまくゆかない。もう一度こころみてみよう。・・・・」と前置きしている。何という誠実な執筆態度! 学術的な文章から人柄まで滲み出している。

 『アンデスの芸術』は、考古学や古代美術に関心のある人には、必ず得るところのある名著である。
 ところで、インターロッキングって?・・・・それは、エッシャーの絵のような複雑な模様だ。
(1964年初版)

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