#14/二世たちの生きかた

『ブラジルの日本人』 田宮虎彦 朝日選書(朝日新聞社)

 戦前戦後をとおして、南米ブラジルへの日本からの移民は、何十万人の単位で行なわれた。したがって、ブラジルの日系人に関する本もまた、これまでに何百冊も出ている。それらは、誤解を恐れずに言えば、“日本民族を異文化の中に放り込むという壮大な実験”の、経過報告といえる。

 小説家の田宮虎彦も、「民族性はどのように変化するのか」という興味を持って、1969年にブラジルを訪れた。第1回移民から60年後の時点であるから、日系一世や二世の時代だ。そこで彼が出会った日本人たちは、思った以上に多種多様な生き方をしていた。
 田宮は、話を聞いた主に二世の人たちを、大きく三つのタイプに分類している。まず一つは、古い日本の思想・心情を、日本にいる日本人以上に、純粋に保持している人。二つ目は、ブラジル社会に適応するために、日本的なものをあえて否定している人。そして三つ目は少数だが、もはや日本語も理解せず、完全に現地に同化している人。環境や資質の違いもあるのだろうが、第一と第三の型は、この時点で、すでに交流もないほど隔たってしまっている。
 日本人の民族性は、全体が同じ道をたどることはなく、いくつかの核を中心に、個別の変化を示していたようだ。

 この本に登場する二世の映画制作者O氏は、日本人社会が持っている閉鎖性をわずらわしく感じ、そのすべてを否定する発言をするが、田宮はこのO氏の本質を「才能豊かな自由人」と見て、その複雑な精神的背景を「充分理解出来る」と記している。
(1975年初版)

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