#18/ハンバーガーの自然観

『グリーンフィンガー』 ジュリアン・ラズボーン 山本やよい訳 新潮文庫

 中米コスタリカを舞台とした冒険小説。中南米の農畜産業を牛耳る国際フードチェーンの手段を選ばぬ企業活動と、それに抵抗する少数の人々への弾圧を描く。作者はイギリス人で、環境保護や民族開放運動を強く支持している人だそうだ。だが、本書には説教くさいところはほとんどなく、エンターテイメントとして面白く読める。

 コスタリカの貧しい農民たちが、山奥にコミューンを作り、自給自足を基礎とした生産活動をしようとするのだが、たまたまその土地に自生していた収穫量の多い新種のトウモロコシをめぐって、企業家や植物学者や、国連職員が出入りし、農民を追い出し利権を得ようと血みどろの抗争をくり広げる。
 作中、農民コミューンのリーダーは嘆く。「ヤンキーどもは安いコーヒーと、安い牛肉と、安いバナナを手に入れる。そして、わしらの貧乏は続く・・・・昔みたいに、自分の土地で、自分の食料とちょっぴりのコーヒーを育てられるようになるまではな。そして、それこそ、わしらがここでやっていることなんだ・・・・」

 それに対し、世界的ハンバーガー会社の支社長がジャングルの中で語る言葉が象徴的だ。「昆虫は昆虫に襲われ、その昆虫は小鳥に襲われ、小鳥は蛇に襲われ、蛇は猛禽に襲われる。−中略− 鷲は赤んぼ猿をさらい、ピューマはでかい猿を狙う。−中略− 敗者はすべてを失い、勝者はすべてを手に入れる」・・・・もちろんこの自然観は一面的にすぎる。生命の循環は勝ち負けの問題ではないのだから。人間がその勝者になろうとすれば、たちまち森林は滅んでしまうだろう。
(1989年初版)

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