#21/究極の搾取

『血の商人』 ジョゼフ・マクアントニー 大久保寛訳 新潮文庫

 アイルランド生まれのジャーナリストが書いた小説。グアテマラを舞台に、アメリカ資本による血液ビジネスの実態を描いている。さらに、独裁大統領と左翼ゲリラの抗争、米国からの武器輸出問題、CIAの暗躍など、盛りだくさんの内容だ。もちろん、「ほっそりした体を黄金色に輝かせた」ラテン系美女も登場する。

 HIVへの感染原因として日本で大問題になった輸入血液製剤だが、この本で、アメリカの血液ブローカーたちが中南米でその原料となる血を買い漁っている様子を読むと、本当にあきれ返ってしまう。
 作中その事情を知る者が語る。「グアテマラ市のあちらこちらのスラム街で、血を買う診療所を経営しました。商売のやり方は非道なものでした。最も貧しく最も弱い人々から血を抜いたんです。家族を養う稼ぎ手のいない母親たち。捨てられて金のない子供たち。悪癖を断ちきれないアル中や麻薬中毒者たち。−中略− 診療所で働く者も、ほかの人間と同様貧乏でした。仕事を続けるために、彼らも週に一度自分の血を抜かねばなりませんでした。」
 そのようにして集められた血液は、巨額の利益を生む「商品」として、米国へ送られたのである。

 話の展開がスピーディーで、一気に読める面白い小説なのだが、後半で主人公たちがアメリカ大統領の命を救うために奔走する場面は、ちょっとシラける。「大統領閣下を救えるチャンスなんて毎日あるわけじゃないからね」という台詞は、アメリカの読者へのサービスか? それとも、それを喜ぶ彼らへの皮肉か?
(1990年初版)

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